身代わり吸魔が暴君騎士に思うこと

鹿音二号

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フラグ立てる

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「その、こういうことは、よくないと思います」
「……」
「悪いことをしたなら、反省し、悔い改め、謝るべきかと……」
「……」
「ほ、ほら、聖女も見守ってくださっています。今ですよ、彼にごめんなさいと……」
「……」
「あの、私の話を聞いていますか……?」
「……」

以上、僧侶と暴君騎士の会話(?)でした。

まあ、思っていた通り、ダインは無言。
僧侶も気が弱いので、強くは言えない。
アエリアーナも、なんだろう、ダインに及び腰でいちおう俺に謝るように言ってくれてるんだけど……ううん、やっぱりなんか、彼女らしくない。
クリスティナがこんなにいっぱいで口を出すのもって耐えていたんだけど、そのうち怒って、怒鳴ったんだよな、びっくりだ。
この子もそこまで気が強いわけじゃないんだけど……どうしたんだろう。

「いいって、ほら、俺は災禍だし」
「そーゆーのだめですよ!仲間になるんですから!」

うわークリスティナが涙目になっちゃってる。

「まあ、そのうち謝ってもらうさ、ダイン?も、今は受け止められないのかも……」
「でも一言もないなんて!」
「う、うん……」

ダインの瘴気のことは話したんだ。
まあ、何も言わなかったけど。じっとこっちを見ていたな。
物静かというか、無表情で少し怖いんだけど、これも彼のキャラだからな。

「ともかく!謝るまで私も許しません!」
「……」
「もおおおおお!」
「く、クリスティナ落ち着いて……」

僧侶が困った顔でどうどうと手で彼女の肩を叩く。
僧侶の名前はフレェイというらしい。
気弱なのが丸わかりの容姿だ。少し長めの黒っぽい灰色の髪に、茶色の目。眉はずっと下りっぱなしで、優しげとも言えるけど。
アエリアーナとは別の、神院とかいう宗教の、どこかの支部の次席……2番目というおえらいさんだ。
若いんだけどな……このあたりの事情は全然ゲームにもなかった気がする。
こういうなだめるとか慰めるっていうのは、アエリアーナがやりそうなんだけど……ううん、すごい暗い顔。
と、クリスティナたちを見ていたら、近くに突然、ぬっと気配がした。
え、と振り返る……うっわ、ダイン!?
鎧つけたままだし、おっきいんだよ!
背丈は、細かい設定はないんだけど、思うに俺は一番小さいクリスティナの次だ。たぶん、元の世界の俺より小さいぞ、なんとなくだけど。
すごい、見上げて首が痛い。

「……な、なに」
「だめ!リュートに近づかないでください!」

アエリアーナがはっと、こちらに駆け寄ろうとして……
なんか、ダインが手を伸ばしてきて、俺の手を握った。
……うんま。
握った手から流れてくるのは、多分魔力だと思う。普通なら、真っ先に吸うのが魔力。
なんか、甘い、のかな、味覚じゃないから感覚だけど。

「え、なに……?」

ダインが、じーって見てる。
綺麗な目の色。金色って、ファンタジーだよな。顔立ちも精悍っていうのかな、悪くはないんだなー。
っと、アエリアーナが俺の肩を掴んで、ダインの手を引き離して、それから俺たちの間に割り込んでくる。

「おっと?」
「……離れてください」

ダインに言ってる……その声も、身体も震えてる。
アエリアーナは背が高いから、俺はぽかんと彼女の髪を見ているだけになった。ダインまで目が届かない、身長差で。
それに、あれ?クリスティナまで?
俺は今はもう服を借りて、シャツとズボンは身につけてる。布越しに、クリスティナの小さい手が触れてる。抱きしめるみたいになってない?
布越しだとすごく吸収するのはちいさくなるんだけど、あんまり良くないぞ。

「……」

ダインが、どっか行った。

「……怖かったでしょ?」
「ん?え?」
「すみません、気をつけていれば……」

クリスティナとアエリアーナの気遣わしげな顔。

「え?……あ、ああ!」

そうだ、つまり……俺は、強姦された被害者!

「あ、大丈夫だよ、俺男だし、そういうのあんまり感じないみたい」

多分、災禍で吸魔だからだろうなー。吸った魔力がおいしいとか思ってて全然危機感がない。
実際、なんか色々感覚が違っちゃってる気がする。
それはなんだかモヤるんだが……あれとおんなじことがあっても、また腹いっぱいとかって喜びそうな未来が見えるよ……
これってフラグ?
でも……

「ありがとう、うれしいよ」

普通に気遣われてうれしいけど……推しに心配されるって……いいな!涙出そう。
ちなみに、野郎どもは無関心だ。

アエリアーナが俺に同情的なのは、もちろんかばって身代わりになったこともあるが、もうひとつ。
第一の災禍が何百年も封印されていて、漏れ出る瘴気にいつも暗くて草木も生えなかった、この場所が一気に晴れたからだ。
俺が吸ったんだって。
ダインとの……が、終わって、しばらくしてだった、靄状の瘴気が俺にだんだん集まっていって、きれいサッパリ消えた。記憶にございませんが……
それで、敵意がないんじゃないかと思ったらしい。土下座もしたしね。
元は第一の災禍(おれ)のせいで荒れた土地になったわけだけど……

クリスティナはアエリアーナに説得され、おかしいなと思っていたこともあり、一緒に話しかけることにした。
聖騎士コンラートは、アエリアーナ自身から離れろと命令されて、少し離れたあそこにいたらしい。……殺意があったのを見破られたか?
ダインはいわずもがな。いったい彼が何を考えてるのか、さっぱりなんだよなゲームクリアしても。
僧侶フレェイは……きっと嫌なもん見たなーと近寄りたくなかったタイプだ。

俺は、さっき言ったように、人外になったせいかあんまりダインには恨みとかがない。むしろお腹いっぱい食わせてくれてありがとう!だ。
数百年飲まず食わずで封印されていたんだ、弱っていた。ゲームでは真っ先にアエリアーナに髪を巻き付けて補給していたな。眼福だったぜ。
第一の災禍は、見た目はひょろい青年で、髪が長くてギョロ目。
それでみんなを巻き巻きして、ケタケタ笑うからけっこうなホラー演出だったな。普通にボイス付きなんだ。いい声優だった。

スチルで触手プレイを堪能させたあと、なんと暴君騎士が髪から逃れ続けていたことが発覚、討伐。
その後に暴走して……
……あれ?
髪、全然弱いのね。
……しまったかな。
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