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守りの繭
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※痛そうなシーンがあります、ご注意ください。
第四の災禍。
……正直、二次元のゲームじゃなくて三次元(げんじつ)の世界になってしまって、この災禍はスキップしたい。
そうも言ってられないんだけどさ。
7つの災禍は名前が大層なだけあって、放っておけば世界は滅ぶんだろうっていうのは想像できる。
戦闘シーンはいいかげんだけど、災禍のそういうところは妙にしっかり出てくんだよな。
なんかこう、チグハグなんだよな、シナリオの精度と完成度?っていうのかな、バランスが。
ともかく、この次の第四の災禍は、一番ルート分岐が多い。
たしかこの章に入って、ちょっと長めの会話劇があるんだ。内容は、たしか……おお、アエリアーナの過去話とかあった。
アエリアーナは、聖女の力を持っていると幼い頃に判明して、5歳の時に教会に預けられたんだ。
それからずっと教会にいる。そのせいで世間に疎いんだ。……たしかに、旅の最中の細々としたことはコンラートがやってるな。
聖女の使命は何代も昔から変わらず、災禍と瘴気の浄化だ。アエリアーナは何も疑いもせず、使命をまっとうしようと、幼いころから災禍の討伐を言われるままにやってきた。
……そう、純粋培養な上に少し洗脳されている。
だから、7つの災禍をすべて討伐せよ、使命を果たせと言われても、何の抵抗もなかった。
……現実のアエリアーナがイメージとちょっと違うのは、使命感が薄い気がするんだ。
いやいややらされている感じが……しないでもないんだよな、勘違いかもだけど。
ゲームだと、絶対に倒します!と果敢に魔法を使っているシーンがなんどもあるんだけど、あんま見ないんだよ。大きい災禍2回、それと道中の細かい災禍や魔物も討伐したけど。
もちろん、戦闘はちゃんとしてるけどね。
……まあ、そこはおいおい考えるとして。
その会話の最中のいくつかの選択肢の組み合わせで、第四の災禍の戦闘中に起こる、陵辱イベント(……)の内容が違ってくる。
これは、ゲームだからだと信じたいが……アエリアーナの相手がここで変わり始める。そして、クリスティナの陵辱が始まるんだ。
ゲームだから、そういうシーンのための設定なんだ。スチルはくんずほぐれつの肌色の多さよ……スチル回収のために、あんまり見ない攻略サイトをこの時だけは活用したね。
けど、現実、しかもしばらく一緒に旅をした仲間だと、それはやめて差し上げろ、になってしまうな。
なんだかんだ、俺に人の心が残っていてよかったよ。
ちょっと怖かったんだ、別にどうでもいいじゃんとか言い出さないかって。
ここの会話での選択肢は、この章以外にもあとから限定だったり特殊だったりのスチル回収に響いてくるんだが、まあ、それも全部まとめてポイだ。
アエリアーナとクリスティナの貞操は俺が守る!
こんな、エロゲの君たちの可哀想な絵で抜いてた男に、親切にしてくれて……恩返しをしなければ。
……言葉の選択間違った気がする。
とーもーかーく!
アエリアーナとクリスティナを守りつつ、第四の災禍を討伐する。これ目標。
……だけどなあ……
本当に困ったことに、第四の災禍があまりにも厄介すぎる。
第三の毒キノコの比じゃない。今思えば一番いやな災禍かもしれん。
第四の災禍――精神撹乱系デバフてんこ盛り。
ゲームではさんざんだった、まあ、女の子たちが、だけど。
アエリアーナ以外は、全員精神攻撃を食らって、男たちはそれぞれヒロインたちを犯すべくムチャクチャな行動を取り始める。
それぞれの症状詳しく言わねーけど、先の会話での選択によって、アエリアーナの相手が錯乱中の三人の中から決まる。さらには選び方によってはコンラートにめちゃくちゃにされたあと、暴走状態のダインも、なんてものだったり、その……乱交だったり……
俺的には、ドン引きだったのは、クリスティナだったりするんだな……彼女は精神攻撃で、生きているものがぜんぶ羊さんに見えるようになってしまった。
相手は選択肢によるが、ダインかフレェイで、羊さんと遊んでいるのだと思い込んで、アヘ顔で「羊さん~ふわふわ~♡」ってボイスがだな……異常に人気が集中したらしい。
まあ、思い出すのはそこまでにして――
で、肝心の第四の攻略方法だ。
ぶっちゃけ、分からん。
……だってぜんぶ陵辱で終わったんだもの。
戦闘シーンは添えもの、はっきりわかんだね。
どうやって討伐したか、全然出なかった。むしろ、倒したのか?くらいの勢いです。
いちおう、アエリアーナの魔法にデバフレジストはあるものの、剣を振り回しながら追いかけてくるコンラートに、効かなかったんだよな、あの時の絶望顔のスチルもある。
だから、俺はうんうん唸って、デバフの症状は伏せながらみんなに相談して、みんなもうんうん唸って……――
「……っいまだ、アエリアーナ!」
「はい!」
タイミングをはかって、アエリアーナが浄化の力をぶっ放す――俺の髪で包んだ、第四の災禍に。
純白の光が、じゅっ!って、髪をぜんぶ消し炭にして、中からあらわれたのは――四角い白い箱。
大きさは2メートル四方の、いくつか幾何学的な金色の線が入っている。
これがなんなのか、さっぱりわからない。
ただ、災禍の特徴らしく瘴気を振りまき、ときどき幾何学模様を光らせ、ブルブルと震える。
その場所から動かないんだ。それだけは助かった。
――デバフは、瘴気と関わっているんじゃないか。
そう思ったのは、アエリアーナだけがデバフをレジストしたからだ。
アエリアーナは、瘴気の影響を受けない。聖女だから、で済んでしまう能力だけれど……だから、第四の攻撃も効かなかったのでは、と。
それが本当なら、瘴気を、第四の災禍から、減らしてしまえば……?
例えば、デバフも弱まって、魔法でレジスト出来るのでは。
もう、それしか思いつかなかったんだよね。
で、瘴気を減らすために……元々瘴気の塊の俺も影響がなさそうで、おあつらえむきになんと吸魔だ。
アエリアーナのふたりで、第四の災禍の瘴気をできるだけ減らす。
頃合いを見て、全員攻撃に入る。
確実性はないんだけどな……ともかくやるしかないと、俺たちふたりだけで、第四の災禍の封印が解けるときに立ち合った。
目論見は、半分成功した。
俺達には全然デバフが効かなかった。瘴気と一緒に魔力もあたりに散らしているけど、やっぱりなんにも起こらない!
いけるか!?
――と、思ったけれど。
「うっ……」
アエリアーナの魔法の持続が途切れて、俺は慌ててまた髪で第四を包む。
一気にドレイン。
くう、結構つらい。
そこまでおいしくないんだよー!
不味くもないけど、あれだ、飽きたスープをえんえん飲まされてる感じ……
これもう、何度目だっけ。
思った以上に、第四の瘴気の量が多かったんだ。
俺のドレインとアエリアーナの浄化で、ジリジリと削ってはいる。
けれどまだ瘴気はバンバン出すんだよ……
もう2時間くらいやってる。
俺がそこまで量を吸えないのもちょっと失敗だった。ドレインして、咀嚼?みたいな溜める過程がいるみたいで、それに時間もかかってる。
その間に、アエリアーナが浄化の力を高めて、浴びせる。
繰り返してるけど……果てがない。
俺はともかく、アエリアーナが……
「ふ、う……っ」
「アエリアーナ……」
「……いえ、続けましょう」
顔色も悪いし、ふらついている。けれど、やめる気はないみたい。
……使命感がなさそうっていうのは、撤回な。
魔力を補給するポーションは持ってきている。
それをぐぃーって飲んで、彼女らしくもなく、乱暴な仕草で空き瓶をそのへんに放った。
「……行きます」
「ああ!」
また、俺の髪ごと第四に浄化の力が浴びせられる。
溶けた髪を、即座に伸ばし、包もうとして――
ぞくっとした気配を、感じたんだ。
はっと、振り返る――
「……ダイン!?」
アエリアーナが、悲鳴じみた声を上げた。
ダインが、いた。
向こうに隠れているはずの。
様子が、普通じゃなかった。
フラフラとした足取り、鎧が、胸のあたりがへこんでいる。剣は、どこにやったのか持っていない。
頭から、血が、流れている。
目だけは、らんらんと輝いていて……
「あ、ああ……」
そのダインを見て、真っ青になったアエリアーナがじりっと後ずさる。
「アエリアーナ!?」
「……いや。来るな……」
ガタガタと震えるアエリアーナ。そっちも気になるが……やばい、第四が攻撃するぞ!
とっさに、第四の方に髪を伸ばした。
間一髪、瘴気が散る前に包み込めた!
「っふう……え、」
「リュート!」
今度こそ、アエリアーナの悲鳴。
はっと、振り返ったら、うわ!?ダインがいる!?
「ダ、ぐ、ぃ――!?」
素早く伸びてきた腕に、身体を抱き込まれた。
とんでもない力で、拘束されてしまった。っ足、浮いてる。
「ぐ……、ぅ……っ!?」
く、くるしい、いたい!
「リュートから離れて……!」
アエリアーナの必死の声と……たぶん、浄化の力が当たる。
たしかに、このダインは、暴走……うぐ!?
ぼき、って音と、激痛。
まじ、痛、い……!
「ご、ふ……っ」
やべ、血が口から出た。俺の血、黒いんだな……肋骨、いったんだな、すぐに治る、けど……
ダインの力で身体がミシミシいってる。
苦しい、痛い。
「ダ、イン……!」
必死に上を見上げた、ら、え、すっごい見てる……
ギラギラの金色の目が、見開かれたまま、俺を、じっと。
頭の血は、もう乾き始めてるけど、一体何が。
「う、あ……っ!?」
また、ぼきっ、て、う、いたい……
アエリアーナが、ばんばんと浄化魔法を当ててくるけど、今、俺、ぼきぼきいって、回復にエネルギー使いまくって、っ、うあ。
ごめん、アエリアーナ、悪いけど……
髪を、増やした。
今までで一番の量だ……第四の分と、俺を浄化魔法から守るために。
どれだけ厚くしなきゃなんないか、ね、いいかげん骨折るのやめて……いってー……
一瞬意識が飛んだ……と思う。
気がついたら、ダインが、俺に突っ込んで揺さぶっていた。
「……ふ、ぁ、ぁん……っ」
しかもこれ、俺ってば、ダインにくっつくみたいに自分も丸ごと髪を絡ませてる。
髪で周り全部ふさいじゃったから、暗くてよく見えない……暗視能力あるんだけど、そこまで強力じゃない。
……立ったままのダインの腰に、俺は足開いて繋がってて、髪でがんじがらめ。
「ひゅっ……落ち、おちるぅ、……ああ!」
おいしいの、来た。
痛むところも消えたぜ、よか……っああ、また折ったな、なんだよもう!
脚を折られた。ぼきぼきこんな折られて、大丈夫かな……んん!?
あ、なに、一気にきた!なに、これダインのじゃない!
だい、よん?
か、髪、髪作んなきゃ、なんかいっぱい溶け、
「んあああああああ!おいしいのやめ、!いま、だめ、だ、め……ぇ、」
あ、やべ、気絶す………
……………
…………………はっ。
「……ひゃ、いや、いっぱい、おくっ……」
なんだよこれ。
もう。
どうなって。
あちこち、おいしかったり溶けたり、痛かったりきもちよかったり、なんなのかわけが分からない!
どちゅっ、どちゅっ、ってすごい音を立てながらダインが突き上げて、ばちっ、ばちっ、って体の中でおいしいのが弾け、て、あああおいひいのらめぇ。
「んう……ふ、うぐ、……う、うう……っ、ひ」
泣けた。
あちこちすごい色んな感覚が、ランダムに俺の中に入って……どうなってるんだよ。
泣きながら、くらくらする頭で、ダインのことが気になって仕方がない。
待ってろって言ったのに、どうして。
相変わらずまばたきもしないまま、俺を見て揺さぶってる。
ずっと、ダインを味わってる。
おいしいの、限度がない。
「んぐ、う、あ、またきた、きた……ぁ、ぐす」
いいんだよ、よすぎてつらい。
背中がぞくぞくして、身体が反り返っちゃう。ぐらって揺れたから、手で何かつかんだら、俺の髪でした。
周り全部、髪がクモの巣みたいに張ってる……
ダインを閉じ込めてるみたいだな。
ダインは、なんで、俺だったの。
アエリアーナが、いっぱい近くで浄化してた。
なんで、彼女じゃなかったんだろう。
「ひぃんっ、っ、ひゃら、あぅ……っ」
いっぱい、おいしいの、きた……
腕を、ぐっとダインの首に絡ませた。髪もしゅるしゅるって。
「んぅー、も、もう、は、はいんな、あう」
言いながら、髪がめちゃくちゃ巻き付くんだ、ダインに。
なにやってんだろ……瘴気また、吸ってるよ。
「……」
ダインが、ふと瞳を揺らした。
……ん、戻ってきたの……か?
「ん、ダイ……ン」
ちょっと、美味しいのは少なくなった。
気がついたら、第四の災禍に巻いてた髪が消えてる。だいじょうぶかな……もう、どうにも、できないんだけど。
ゆっくり、ダインの味が、体に染みてくる。
……なんか、まだ、固くて大きいのが、俺の中にある。
「……いい、よ……」
もう、ここまできたら、好きにしてくれればいい。
揺れる金色の目に、胸がきゅうってなる。
「だい、じょ、ぶ……」
お前のつらさ、分かってるんだ。
お前だって好きでこうなったわけじゃない。
俺は、お前のおいしいの食わせてもらえば、それでいいや。
第四の災禍。
……正直、二次元のゲームじゃなくて三次元(げんじつ)の世界になってしまって、この災禍はスキップしたい。
そうも言ってられないんだけどさ。
7つの災禍は名前が大層なだけあって、放っておけば世界は滅ぶんだろうっていうのは想像できる。
戦闘シーンはいいかげんだけど、災禍のそういうところは妙にしっかり出てくんだよな。
なんかこう、チグハグなんだよな、シナリオの精度と完成度?っていうのかな、バランスが。
ともかく、この次の第四の災禍は、一番ルート分岐が多い。
たしかこの章に入って、ちょっと長めの会話劇があるんだ。内容は、たしか……おお、アエリアーナの過去話とかあった。
アエリアーナは、聖女の力を持っていると幼い頃に判明して、5歳の時に教会に預けられたんだ。
それからずっと教会にいる。そのせいで世間に疎いんだ。……たしかに、旅の最中の細々としたことはコンラートがやってるな。
聖女の使命は何代も昔から変わらず、災禍と瘴気の浄化だ。アエリアーナは何も疑いもせず、使命をまっとうしようと、幼いころから災禍の討伐を言われるままにやってきた。
……そう、純粋培養な上に少し洗脳されている。
だから、7つの災禍をすべて討伐せよ、使命を果たせと言われても、何の抵抗もなかった。
……現実のアエリアーナがイメージとちょっと違うのは、使命感が薄い気がするんだ。
いやいややらされている感じが……しないでもないんだよな、勘違いかもだけど。
ゲームだと、絶対に倒します!と果敢に魔法を使っているシーンがなんどもあるんだけど、あんま見ないんだよ。大きい災禍2回、それと道中の細かい災禍や魔物も討伐したけど。
もちろん、戦闘はちゃんとしてるけどね。
……まあ、そこはおいおい考えるとして。
その会話の最中のいくつかの選択肢の組み合わせで、第四の災禍の戦闘中に起こる、陵辱イベント(……)の内容が違ってくる。
これは、ゲームだからだと信じたいが……アエリアーナの相手がここで変わり始める。そして、クリスティナの陵辱が始まるんだ。
ゲームだから、そういうシーンのための設定なんだ。スチルはくんずほぐれつの肌色の多さよ……スチル回収のために、あんまり見ない攻略サイトをこの時だけは活用したね。
けど、現実、しかもしばらく一緒に旅をした仲間だと、それはやめて差し上げろ、になってしまうな。
なんだかんだ、俺に人の心が残っていてよかったよ。
ちょっと怖かったんだ、別にどうでもいいじゃんとか言い出さないかって。
ここの会話での選択肢は、この章以外にもあとから限定だったり特殊だったりのスチル回収に響いてくるんだが、まあ、それも全部まとめてポイだ。
アエリアーナとクリスティナの貞操は俺が守る!
こんな、エロゲの君たちの可哀想な絵で抜いてた男に、親切にしてくれて……恩返しをしなければ。
……言葉の選択間違った気がする。
とーもーかーく!
アエリアーナとクリスティナを守りつつ、第四の災禍を討伐する。これ目標。
……だけどなあ……
本当に困ったことに、第四の災禍があまりにも厄介すぎる。
第三の毒キノコの比じゃない。今思えば一番いやな災禍かもしれん。
第四の災禍――精神撹乱系デバフてんこ盛り。
ゲームではさんざんだった、まあ、女の子たちが、だけど。
アエリアーナ以外は、全員精神攻撃を食らって、男たちはそれぞれヒロインたちを犯すべくムチャクチャな行動を取り始める。
それぞれの症状詳しく言わねーけど、先の会話での選択によって、アエリアーナの相手が錯乱中の三人の中から決まる。さらには選び方によってはコンラートにめちゃくちゃにされたあと、暴走状態のダインも、なんてものだったり、その……乱交だったり……
俺的には、ドン引きだったのは、クリスティナだったりするんだな……彼女は精神攻撃で、生きているものがぜんぶ羊さんに見えるようになってしまった。
相手は選択肢によるが、ダインかフレェイで、羊さんと遊んでいるのだと思い込んで、アヘ顔で「羊さん~ふわふわ~♡」ってボイスがだな……異常に人気が集中したらしい。
まあ、思い出すのはそこまでにして――
で、肝心の第四の攻略方法だ。
ぶっちゃけ、分からん。
……だってぜんぶ陵辱で終わったんだもの。
戦闘シーンは添えもの、はっきりわかんだね。
どうやって討伐したか、全然出なかった。むしろ、倒したのか?くらいの勢いです。
いちおう、アエリアーナの魔法にデバフレジストはあるものの、剣を振り回しながら追いかけてくるコンラートに、効かなかったんだよな、あの時の絶望顔のスチルもある。
だから、俺はうんうん唸って、デバフの症状は伏せながらみんなに相談して、みんなもうんうん唸って……――
「……っいまだ、アエリアーナ!」
「はい!」
タイミングをはかって、アエリアーナが浄化の力をぶっ放す――俺の髪で包んだ、第四の災禍に。
純白の光が、じゅっ!って、髪をぜんぶ消し炭にして、中からあらわれたのは――四角い白い箱。
大きさは2メートル四方の、いくつか幾何学的な金色の線が入っている。
これがなんなのか、さっぱりわからない。
ただ、災禍の特徴らしく瘴気を振りまき、ときどき幾何学模様を光らせ、ブルブルと震える。
その場所から動かないんだ。それだけは助かった。
――デバフは、瘴気と関わっているんじゃないか。
そう思ったのは、アエリアーナだけがデバフをレジストしたからだ。
アエリアーナは、瘴気の影響を受けない。聖女だから、で済んでしまう能力だけれど……だから、第四の攻撃も効かなかったのでは、と。
それが本当なら、瘴気を、第四の災禍から、減らしてしまえば……?
例えば、デバフも弱まって、魔法でレジスト出来るのでは。
もう、それしか思いつかなかったんだよね。
で、瘴気を減らすために……元々瘴気の塊の俺も影響がなさそうで、おあつらえむきになんと吸魔だ。
アエリアーナのふたりで、第四の災禍の瘴気をできるだけ減らす。
頃合いを見て、全員攻撃に入る。
確実性はないんだけどな……ともかくやるしかないと、俺たちふたりだけで、第四の災禍の封印が解けるときに立ち合った。
目論見は、半分成功した。
俺達には全然デバフが効かなかった。瘴気と一緒に魔力もあたりに散らしているけど、やっぱりなんにも起こらない!
いけるか!?
――と、思ったけれど。
「うっ……」
アエリアーナの魔法の持続が途切れて、俺は慌ててまた髪で第四を包む。
一気にドレイン。
くう、結構つらい。
そこまでおいしくないんだよー!
不味くもないけど、あれだ、飽きたスープをえんえん飲まされてる感じ……
これもう、何度目だっけ。
思った以上に、第四の瘴気の量が多かったんだ。
俺のドレインとアエリアーナの浄化で、ジリジリと削ってはいる。
けれどまだ瘴気はバンバン出すんだよ……
もう2時間くらいやってる。
俺がそこまで量を吸えないのもちょっと失敗だった。ドレインして、咀嚼?みたいな溜める過程がいるみたいで、それに時間もかかってる。
その間に、アエリアーナが浄化の力を高めて、浴びせる。
繰り返してるけど……果てがない。
俺はともかく、アエリアーナが……
「ふ、う……っ」
「アエリアーナ……」
「……いえ、続けましょう」
顔色も悪いし、ふらついている。けれど、やめる気はないみたい。
……使命感がなさそうっていうのは、撤回な。
魔力を補給するポーションは持ってきている。
それをぐぃーって飲んで、彼女らしくもなく、乱暴な仕草で空き瓶をそのへんに放った。
「……行きます」
「ああ!」
また、俺の髪ごと第四に浄化の力が浴びせられる。
溶けた髪を、即座に伸ばし、包もうとして――
ぞくっとした気配を、感じたんだ。
はっと、振り返る――
「……ダイン!?」
アエリアーナが、悲鳴じみた声を上げた。
ダインが、いた。
向こうに隠れているはずの。
様子が、普通じゃなかった。
フラフラとした足取り、鎧が、胸のあたりがへこんでいる。剣は、どこにやったのか持っていない。
頭から、血が、流れている。
目だけは、らんらんと輝いていて……
「あ、ああ……」
そのダインを見て、真っ青になったアエリアーナがじりっと後ずさる。
「アエリアーナ!?」
「……いや。来るな……」
ガタガタと震えるアエリアーナ。そっちも気になるが……やばい、第四が攻撃するぞ!
とっさに、第四の方に髪を伸ばした。
間一髪、瘴気が散る前に包み込めた!
「っふう……え、」
「リュート!」
今度こそ、アエリアーナの悲鳴。
はっと、振り返ったら、うわ!?ダインがいる!?
「ダ、ぐ、ぃ――!?」
素早く伸びてきた腕に、身体を抱き込まれた。
とんでもない力で、拘束されてしまった。っ足、浮いてる。
「ぐ……、ぅ……っ!?」
く、くるしい、いたい!
「リュートから離れて……!」
アエリアーナの必死の声と……たぶん、浄化の力が当たる。
たしかに、このダインは、暴走……うぐ!?
ぼき、って音と、激痛。
まじ、痛、い……!
「ご、ふ……っ」
やべ、血が口から出た。俺の血、黒いんだな……肋骨、いったんだな、すぐに治る、けど……
ダインの力で身体がミシミシいってる。
苦しい、痛い。
「ダ、イン……!」
必死に上を見上げた、ら、え、すっごい見てる……
ギラギラの金色の目が、見開かれたまま、俺を、じっと。
頭の血は、もう乾き始めてるけど、一体何が。
「う、あ……っ!?」
また、ぼきっ、て、う、いたい……
アエリアーナが、ばんばんと浄化魔法を当ててくるけど、今、俺、ぼきぼきいって、回復にエネルギー使いまくって、っ、うあ。
ごめん、アエリアーナ、悪いけど……
髪を、増やした。
今までで一番の量だ……第四の分と、俺を浄化魔法から守るために。
どれだけ厚くしなきゃなんないか、ね、いいかげん骨折るのやめて……いってー……
一瞬意識が飛んだ……と思う。
気がついたら、ダインが、俺に突っ込んで揺さぶっていた。
「……ふ、ぁ、ぁん……っ」
しかもこれ、俺ってば、ダインにくっつくみたいに自分も丸ごと髪を絡ませてる。
髪で周り全部ふさいじゃったから、暗くてよく見えない……暗視能力あるんだけど、そこまで強力じゃない。
……立ったままのダインの腰に、俺は足開いて繋がってて、髪でがんじがらめ。
「ひゅっ……落ち、おちるぅ、……ああ!」
おいしいの、来た。
痛むところも消えたぜ、よか……っああ、また折ったな、なんだよもう!
脚を折られた。ぼきぼきこんな折られて、大丈夫かな……んん!?
あ、なに、一気にきた!なに、これダインのじゃない!
だい、よん?
か、髪、髪作んなきゃ、なんかいっぱい溶け、
「んあああああああ!おいしいのやめ、!いま、だめ、だ、め……ぇ、」
あ、やべ、気絶す………
……………
…………………はっ。
「……ひゃ、いや、いっぱい、おくっ……」
なんだよこれ。
もう。
どうなって。
あちこち、おいしかったり溶けたり、痛かったりきもちよかったり、なんなのかわけが分からない!
どちゅっ、どちゅっ、ってすごい音を立てながらダインが突き上げて、ばちっ、ばちっ、って体の中でおいしいのが弾け、て、あああおいひいのらめぇ。
「んう……ふ、うぐ、……う、うう……っ、ひ」
泣けた。
あちこちすごい色んな感覚が、ランダムに俺の中に入って……どうなってるんだよ。
泣きながら、くらくらする頭で、ダインのことが気になって仕方がない。
待ってろって言ったのに、どうして。
相変わらずまばたきもしないまま、俺を見て揺さぶってる。
ずっと、ダインを味わってる。
おいしいの、限度がない。
「んぐ、う、あ、またきた、きた……ぁ、ぐす」
いいんだよ、よすぎてつらい。
背中がぞくぞくして、身体が反り返っちゃう。ぐらって揺れたから、手で何かつかんだら、俺の髪でした。
周り全部、髪がクモの巣みたいに張ってる……
ダインを閉じ込めてるみたいだな。
ダインは、なんで、俺だったの。
アエリアーナが、いっぱい近くで浄化してた。
なんで、彼女じゃなかったんだろう。
「ひぃんっ、っ、ひゃら、あぅ……っ」
いっぱい、おいしいの、きた……
腕を、ぐっとダインの首に絡ませた。髪もしゅるしゅるって。
「んぅー、も、もう、は、はいんな、あう」
言いながら、髪がめちゃくちゃ巻き付くんだ、ダインに。
なにやってんだろ……瘴気また、吸ってるよ。
「……」
ダインが、ふと瞳を揺らした。
……ん、戻ってきたの……か?
「ん、ダイ……ン」
ちょっと、美味しいのは少なくなった。
気がついたら、第四の災禍に巻いてた髪が消えてる。だいじょうぶかな……もう、どうにも、できないんだけど。
ゆっくり、ダインの味が、体に染みてくる。
……なんか、まだ、固くて大きいのが、俺の中にある。
「……いい、よ……」
もう、ここまできたら、好きにしてくれればいい。
揺れる金色の目に、胸がきゅうってなる。
「だい、じょ、ぶ……」
お前のつらさ、分かってるんだ。
お前だって好きでこうなったわけじゃない。
俺は、お前のおいしいの食わせてもらえば、それでいいや。
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3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
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初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
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