身代わり吸魔が暴君騎士に思うこと

鹿音二号

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お前の味方

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……う、だる。
目が覚めて、ぐったりしてるの、やだな。
えっとどうしたっけ……………………ああ、なんか、大変だったな、うん。
ふう、とため息をつくと、なんか、俺に密着するなにかが、もぞって。
ん?と顔を上げたら……ダインの顔のどアップ。
もう慣れてきたけど、いったいどうしたんだよ?
なんか、切羽詰まってる……?無表情なんだけど……

「ん、どうし……」

ぎゅっと、身体が強く抱きしめられた。あれ?ダインに抱っこされてる?
首もだるくて、ゆっくり回すと、遠くにアエリアーナたちが立ってる。何か、叫んでない?声が聞こえない……

「……ダイン?どうした……?」

事情を聞かせてほしいんだが、ぜんぜんしゃべらないもんな、声を聞いたことがないんだ。
けど、彼は、ぐっと俺を抱きしめると……頭を下げて、俺の額のところに、鼻をこすりつけた。
……ん!?

「だ、ダイン……?」

すりすり、って、擦り付けられるのが、止まらない。

「……」

……こ、これは、甘えられているのか!?
まるで犬のような仕草!?

「ま、ど、どうし……」
『……れなさい!ダイン!』

ふっとちいさく誰かの声が聞こえた。

『リュートを解放しなさい!』
「……んんん?」

アエリアーナの声だ。
叫んでるけど、距離にしては遠い……あ、近づけないのか。前にダインの覇気とかなんとか……

「……ダイン、な、離してくれ」
「……」

……すっごい不安そうな目で見てくる……!

「だいじょうぶ、どこも行かない。な?」

うーん、同い年くらいのはずなんだけど、弟かなんかみたいな態度になっちゃう。ん?俺って弟いたのかな。
腕を動かすのも重く感じて、髪でダインになんとなく抱きしめるみたいにしたけど……

「……」

お、通じた。
ふっと、周りの空気が軽くなった気がした。

「……リュート!」

アエリアーナとコンラートがものすごい速さで駆け寄ってくる。
うお、すっごい怒ってる!?アエリアーナのこん顔見たことない!

「この……よくも、」
「あーあー大丈夫だから!なっ、みんな無事……無事っぽいじゃん!第四は!?」
「……討伐しました!それはあなたが……!ともかく離れて、」
「……」

またぎゅっとしてくるー。

「ダイン、ほら。アエリアーナも、後で話すよ、ダインをあんまり怒らないで」

第四が倒されたならもうなんにも心配ない。
よかった……目的達成だ。

「……おれ、疲れてて……、な、頼む、後で話そう」

ダインが、ゆっくり離してくれた。
うん、なんか、……撫でたくなるぞ。ヨシヨシって。
いやいや、男にそんな。
……疲れてるんだな。
エネルギーはけっこう残ってるけど、こういうのって精神的疲労ってやつかな。離されたけど、立ち上がる気力ないな……

「わるいけど……ちょっとひとりで休ませて」
「うん。それがいいよ」

クリスティナが、優しい声で、俺に丈の長いローブをはおらせてくれた。

「アエリアーナも、リュートは無事みたいだし、ね」
「……はい」
「……」

しゅん、ってふたりともしょげてる……
フォローはあとにさせてもらおう。
本当にもう、限界。



よく寝たーって思いながら起きたら、もう夜だった。
もともと第四の封印場所が山奥だったから、今日は野宿になるだろうっていう予定だったんだよ。
でも、野営準備をぜんぶみんなにさせてしまった。
悪いなーって謝ったら、

「……お前が一番の功労者だろう」

……コンラート、そんなこというキャラだっけ!?
俺が災禍だから、馴れ合うつもりはないって宣言してたのに……!
ゲームでも取っつきにくい聖騎士が、まさかお疲れさまなんて言ってくれるとは!
感動していると、クリスティナがあったかいスープを器に盛ってくれた。いつもきみはかわいくて親切だ。スプーンがなくて探し回るのも御愛嬌さ。
俺は食べなくても平気なんだけど、食べられないっていうことじゃないから、余裕があるときはご相伴にあずかってる。
こう、人間らしいことをしたいんだよな。未練かもしれないけど。

そのまま食事をしながら報告会になった。
アエリアーナも何が起こったのか、まだ知らないらしい。俺が起きるのを待ってたんだって。
俺たちが第四に苦戦していた頃――待機していたダインに異変があった。
十分な距離を取っていたはずが、第四の漂った瘴気にあてられたんじゃないかな。
ふらりとどこかに行こうとするダインを、止めようとしたら……戦いになってしまった。
同士討ちなんて冗談じゃない、と思うけれど、ダインは理性がないわけで……多少のケガがあったらしい。僧侶フレェイの治癒魔法で、すぐに治るものだったけど……ダインはそのままどこかに行ってしまった。
なるほど、引き留めようとした時のケガだったのか、頭の血は。
クリスティナたちが追いかけていき、第四の……俺のところに行ったのだと、分かったときにはもう、俺の髪の中にふたりで入っていたらしい。

「第四は、あなたが瘴気を髪で抑えていてくれたので、私とフレェイ様の『聖域』で、討伐したのです」

ちゃんと髪で閉じ込めて、瘴気が出ていなかったらしい。心配していたデバフもなかったようだ。
よかったー!ダインに影響あったらってとっさだったんだけど!
それでも、アエリアーナたちは相当力を込めたし、コンラートの聖騎士の魔法で聖属性を増幅できるものがあって、それも総動員してようやく討伐できたらしい。

うーん、こう聞くと第四だけ、とんでもない災禍のような……いや、後半はやっぱりとんでもなかったか。
今は考えないでおこう。頭が痛くなりそうだ。
なんにせよ、みなさん、お疲れ様でした!

「……ですが、さすがにもう、ダインについては黙っていられません」

おう、アエリアーナからダインに敬称が消えた……
うーん怒るのも無理はないんだけど……

「なあ、ダイン。お前は、騎士団に入る前、何をしていたの?」

ダインが『領主の騎士団』で暴君騎士として有名になる前、だ。
領主という人が何者かは、俺はゲームでは拾えなかった。けど、ダインの腕を買って騎士団に引き入れた人物だ。今回の討伐隊にダインを入れたのもこの人。
……その前は何をしていたか。俺は知ってる。

ダインは、ゆっくりとまばたきした。
いつもの無表情。

「……『ゴミ』と言わていた」

……ごめん、俺が悪かった。
初めて聞いた彼の声が、めちゃくちゃ罪悪感に駆られるセリフだった件。
みんな、絶句してる……

「どういう……ことですか」

アエリアーナの声が震えてる。ダインはそっちをちらりと見て、

「暮らせと言われた家でそう呼ばれた」

声、いいな、あんまり低くない……

「俺の母という人は、その家の人間に殺された。その人間らは、そのうち消えた」

……そうか、ダインの中で、彼らは消えたことになってるのか。

「領主に、ここで剣を磨けと言われて、騎士団に入った。……そこでも、よく言われていたことがある」

ダインはゆっくりと、俺を見た。

「謝れと。俺は、何を謝ればいい」

……馬鹿だな、俺は。
何が彼を知っている、だ。
なんにも知らなかった。

「……リュート」

アエリアーナが、空気を吸い損ねたようなかすれた声で、なぜか俺を呼んだ。
俺が考えなしだったな……

「きみが謝れと言われていた時、誰かケガをしていなかったか」
「……していた」
「それ、きみがやったんだ」
「……」

ダインは首を傾げた。

「……なぜ、怪我をさせたら、謝らなければならない」
「……っ」

フレェイが驚いて、スプーンを取り落とした。

(ああ、やっぱり)

なんにも分かっていない、ちいさい子供みたいな男だ。

「……悪いことだからだよ」
「悪いこと」
「悪いことをしたら、謝らないと」
「悪いことって、なんだ」
「……うーん」

ほら僧侶、震えてないで何か言ってよ。あんたそういう説教とかするんでしょ……?
沈黙が、重い……

「……えっと、そうだね、うん」

クリスティナが、ふと、声を上げた。和ませようとしてくれてるのか、いつもどおりを装ってる。
……ちょっと目が泳いでるけど。

「例えば、リュートがダインのせいでケガしたら?」
「……え、俺?」

なんで俺……って、うわ、ダインが、すっごいしょんぼりした!

「……俺は、お前に何をした?」
「えっ……」
「苦しそうだった……」
「そう、それが、悪いことしたなって気分だよ!って、リュート大丈夫だったの!?」

クリスティナがアワアワと忙しそうだ。
ダインもダインだ、蒸し返すなよぉ!

「えっあ、あー……まあ、問題ないよ、たぶん」

だいぶヘロヘロだったもんな。
いろいろ感覚がごちゃごちゃして、渋滞していた。髪が便利だからっていろいろやりすぎたよ。
まあ、骨折られたのはちょっと……だいぶ、痛かったけどな。
それを唯一見ていたアエリアーナは、震えながら膝上でぎゅっと手を握ってる。

「……だから、今までのことは許せと?」

おっと、コンラートはまだ怒ってるっぽい。

「聖女に暴行しようとした罪。今回も、作戦を危うく失敗させるところだったのだ」

ま、それもそうか。

「知らない。たしかに、ダインが色々したのは間違いないし」

ぴく、と肩を揺らして、じっとこちらを見る金色の目。す、すごい訴えてくる……っ?
うーん、やっぱり撫でたくなるんだけど……どうした、俺。

「でも、俺は、許すよ。俺はね。ひとりくらい味方がいないと、かわいそうだ」
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