身代わり吸魔が暴君騎士に思うこと

鹿音二号

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新魔法

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第五の災禍、最速記録で討伐。
もともと第四のあとだとインパクトに欠ける、平凡な(というのもおかしいが)災禍だったから、楽勝だと思っていたけど……

「よっしゃー!成っ功!」

クリスティナ、にっこにこで飛び跳ねてる。
クリスティナひとりで、第五の攻撃を完封してしまった……

第五の災禍は、氷の巨人だ。
モンスター型で、物理攻撃が効きやすい。
ただ巨人というだけあって、5メートルほどの巨体、それと氷を無限に作り出すから近寄るスキがないっていうのがネックだったんだ。
周囲全部凍らしてくるんだ、どうやって近づけと。
まあ、普通に炎系の魔法で溶かしてくのがいいだろって、思ってたんだけど。

封印が破れる二日前に、クリスティナがお役立ち魔法!って新しい魔法を披露してくれたんだ。
なんでも、瘴気を媒介にする魔法を無効化する壁、というものらしい。
うん、分からん。
けど、実験に付き合って!っていうクリスティナにほいほいと俺がついてって、その魔法で作り上げた壁に、壊す勢いでってリクエストに応えて髪を思いっきりぶつけたら……その壁嫌いになった!
触ったとたん、ゾワってして、鳥肌が立った。とにかく、嫌だ!

なんでも、災禍の魔法は瘴気を使って?発動するものじゃないかって、第四のデバフとの関係を考えたときに思いついたらしい。
瘴気を使う魔法……魔力代わりに瘴気を使うってこと?って聞いたら違うって言われた……奥が深い。アエリアーナこと松田は、なんか分かってるっぽいのはさすがオタクなのか。
で、クリスティナは、その瘴気を媒体にして効果が出る魔法?を、禁止する魔法を作ったんだって。
後で松田に聞いたら、ようは『瘴気を魔法にする』魔法をキャンセルできるって。それもよく分からんが……俺の感覚だと、ドレインできないって分からせられる気がして、イライラするし、嫌いになったんだ。

壁っていっても魔法で作りだす半透明の防御壁で、これはクリスティナは前から使っていた。それと合わせた新魔法ってことだ。
物理的、魔法的防御と、その瘴気媒体化キャンセルで、壁の内側は災禍の魔法限定で届かなくなるらしい。炎なら水の魔法とかって考えなくてもこれ1本!だって。
第四の場合だと、デバフの効果だけはなくすようにできるようになったと……え、すごくね?
強度は弱くなったなーって言ってたけど、俺の髪が全力で叩いてもわりと長持ちするんだと思うな。髪……最近力が増したみたいで、大型の魔物なら一発で串刺しにできるようになった。ふふん、こっちもすごいぞ。

とまあ、微妙に俺はその魔法のすごさを実感できないまま――その魔法、第五に大活躍でした!
すごい!壁の効果があるところが凍りつかない!絶対!
霰みたいなのとかつららみたいなのを飛ばしてきたりしたけど、それも壁に当たると同時にしゅって消えて……すっげー!さらに物理防壁でもあるから、巨人がぶっとい腕で殴りかかってきてもぜんぜん!
その壁作るクリスティナの早いこと早いこと。
魔法を発動する時間を研究して短くしたって言ったけど、魔法も使うコンラートがいうには、こんなはやいのはクリスティナの魔法が上手いからだってさ。

いくつも作って隠れながら、第五に全員で接近、ありったけの攻撃浴びせて……わずか5分で討伐。
戦闘開始から、10分のことであった。

「すごい!クリス!すっげー!」
「えへー!」

すっごいうれしそう……
役立たずともおさらば!って言ってたけどクリスティナが役立たずだったことって……あ、第四か。人知れず悔しかったそうだ。
うう、よかったな、きみは天才だよクリスティナ!

「ダイン、大丈夫ですか?」
「……ああ」

アエリアーナ……でいっか、とダインが、短いながら会話してる。
こっちはこっちで、まだぎこちないけど色々進歩した。

っていうか、ダインが、しゃべるようになった。
なんでしゃべらないの、と素朴な疑問を聞いてみると、何を言えばいいのか分からない、って。
色々……それこそなんかみんなで大集合して質問攻めにしたら、答えが自分の中で出ないと黙ってしまうみたいだな。
じゃあ、ともかく、俺たちが話しかけたら、ハイかイイエ、分からない、を口に出す練習をしよう、ということになった。

……結果、「分からない」の多さよ……
みんなもう諦めて子供相手みたいにしている。怒るかな?って思ったけど、ダインは全然気にしない……というか、子供扱いだと気付いていないような……
アエリアーナも、まだ怒りはくすぶってるようだけど、いったん追求はしないことにしたらしい。
ともかくダインが大きな子供から成長せねば、って考えてくれたみたいだ。

で、その歩み寄り最初に、ダインの分からない、が炸裂。
自分にかけられるアエリアーナの魔法が、なんなのか知らなかった。
浄化魔法ですけど!?
えっじゃあ、なんだと思ってたの!?……ふんふん、なんかよくわからないけど体を軽くしてくる……アエリアーナ、絶句。
もしかして、俺とのあれも、そう思われてる……?ええー?ショック……ショック?
けど、瘴気と浄化魔法のことを説明すれば、すんなり納得したようだった。
……そうだ、子供の頃にろくな教育をされてないんだから、常識なんて知るはずもない。
俺たちも学んだよ……くっ、泣ける。

で、だ。
アエリアーナの魔法が、自分の体を良くしてくれるものだと理解したはずの、ダインなんだけど。

「……」
「……えっと」

……今、アエリアーナに浄化魔法かけてもらったじゃん。
なんで、俺のとこにくんの?ちょっと人の髪に顔スリスリしなーい……

「……」

アエリアーナ、なんか不満そうにこっち見てますよ。
アエリアーナの浄化のほうが安全だし、俺のドレインよりはやいんだ。俺は瘴気以外も吸うからな。
それを何度説明しても、いつも、これ。
俺、ドレイン必死で耐えてます。

「ダイン……」
「……」

なんだ?って目で言わないでくれ。
こっちが、なんだ?だよ……

「いやいや、仲がよろしいですねえ」

そう、本当に、仲良しねえウフフみたいに俺たちを見てる……僧侶フレェイ。
……こいつこそ、一番変わった人物だ。
今の表情、本当に休日で子供の相手してる父親みたいな顔してる。
にこにこ、きらきら。
……いったい彼に何が。

前は……そう、笑顔でもなんか卑屈さみたいなのを感じてたんだ。ほかも、言われたことはするけどそれ以上はする気がないみたいな……無気力だったし、なんか、うさんくさい……もともとあんまり好人物じゃなかったよ。
最大の彼の欠点は、ムッツリであるということ。
ゲームではアエリアーナがひどい目にあってるのを見ては、こっそりおかずにしてた。そんなことより僧侶なら、まずはダインを止める努力をしなさい。

極めつけは、第四の精神攻撃以降、洗脳されて解けずに、『体の空いた女の子は犯していい』みたいな謎理論で、隙あらばふたりを襲ってエロスチルを量産するまさに竿役になってしまったことだ。これは俺もあきれた。
まあ、そういう役として作られたんだよな……と、仲間として一緒にいたらしみじみしてしまったけど。

で、今、そんなムッツリ僧侶が、なんの曇もない笑顔でいるわけです。
なんだっけ?菩薩顔?徳の高い僧侶に見えるんだけど……アレ?
いつの間にかそんな顔するようになってたもんだから、さすがに聞いたんだ、なにかあったかって。

「ふふ……天啓を得たのですよ」

と、さわやかな笑顔ではぐらかされた。
はっきりいって……不気味だ。
アエリアーナも気味悪そうなんだが、同じようにはぐらかされて、フレェイがなんでこうなったか原因はわからずじまい。
ただ、前よりも積極的に動くし、特にダインには親身になっていて……俺たちみたいな変な疑いを持たなければ「少し変わったねえ(byクリスティナ)」くらいなんだろう。
……今のところ、悪いことでは……ないんだが。
要観察、だな。

なんだか、いろんなことが起こった気がするな。まあ、俺の場合は松田のことで驚きすぎて、なんだかそれから急に忙しくなった気がする。
でも、第四と第五って、封印が破れる時間も1ヶ月って長かったし、場所も遠かったんだ。その間のんびり旅をしてて、そこまで忙しくなかったはずなのにな。

変化といえば、そうだ……ダインが、暴走することがすごく減ったんだ。
旅を始めた頃はすぐに暴走して……でも、7つの災禍にあてられる時以外はアエリアーナの浄化魔法でもとに戻ってたんだけど。
けど、今はもうほとんど暴走しない。してもすぐに元に戻る。
なんなら自力で理性を取り戻したこともある。
どうしたんだろ?って思ったけど、普通に松田が言い当てたよ。負の感情が少なくなったんだろって。
……そういえば、彼に喋るようにって言ったあとくらいから、少なくなったかも。
ストレス発散みたいになったのかな?それならいいことばっかりだ。

……いや、少しよくないことがあった。
俺の、おいしいごはんがない。
色々瘴気やら魔物の魔力やら、ドレインを試してみたんだけど、その、ダインのより、だいぶ味が落ちる。
……自分でも何言ってるんだ、って思うんだけど、けどぉ!
最初に食ったのが極上のごはんだって気づいてしまったむなしさ!最高級フレンチ食ってもうカップラーメンの生活に戻れなくなるような!
だからかここ最近、なんだか力が入らない気がする。エネルギー残量は減らないようにしてるんだけど、味……
おいしいごはんが、そろそろ食べたい。

(けど、今日もおあずけっぽいなあ……)

さっきからずっと髪にスリスリするダインからはいい匂いはしない。
それでもちょっとだけ吸っちゃった魔力は、飴みたいにおいしい。けど、物足りない。
ものすごく、欲求不満です。

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