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3-12 Bub
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アルフォンスの言う通り学校では今まで通りダーヴィドへの接触を避けていたところ、今度はバイト先に顔を出すようになった。彼の攻略は結構前にしていたので記憶があやふやなところがあるけれど、思い返せばリリーも学校内では彼に声を掛けていなかった気がする。
避けているわけではないが、男爵令嬢が隣国の王子に対し親密な態度を取るのは国際問題にも繋がる。それは俺でも同じだ。
「やあ、ユーリッシュ」
「いらっしゃいませ」
にこりと微笑むと彼も笑みを返してくれる。ここでは彼のことを殿下と呼んだりするのは禁止だ。相変わらず壁のように立っているザイードは俺のほうは見向きもせず、ダーヴィドの横に控えていた。ただでさえ異国人で大きいから店内だととても目立つ。
「もう門限過ぎてるのに」
「いつものことだよ」
誤魔化そうともしないダーヴィドに苦笑して、「注文は?」と尋ねる。
「じゃあ、これと、これをもらおうかな」
「ありがとうございます」
ダーヴィドはいつもこの国特有の食事を楽しんでいる。隣国は質素な食事が多いらしく、ここへ通いだしてからいろんなものを口にしていた。まあ、このゲームを作ったのは日本人だから、俺にとっては慣れ親しんだ料理が多いけれども。
それに王族は基本的に冷めた料理しか口にしないが、ここでは出来立ての熱い料理を食べることができる。最初こそは毒見等、必要ないのかと気にしたものの、庶民が通う食堂に毒見なんてものは野暮だ。冷めきった質素な食事よりも、温かいというだけで料理の印象は大きく変わる。
「はい、お待たせしました。ハンバーグ定食です」
「ありがとう」
目の前に置くとすぐにナイフとフォークを握りしめて、ジュウジュウと音を立てる肉の塊にナイフを通す。その所作一つだけでも彼がとても高貴な生まれであるのは見て取れる。背筋を伸ばして音を一つも立てずにゆっくりと一口サイズに肉を切り分ける。隣のテーブルの子供なんて、フォークでハンバーグを突き刺して口に運んでいるというのに。
「今日もいつものところで待っているよ」
会計を済ませているところに、ダーヴィドがこっそりと耳打ちする。
「わ、分かった」
あれ以来、彼は必ず俺を学校まで送ってくれるようになった。知らず知らずのうちに彼のルートが進んでいるようで、困っている反面、親切にしてくれる彼の気持ちを無下にはできなかった。
避けているわけではないが、男爵令嬢が隣国の王子に対し親密な態度を取るのは国際問題にも繋がる。それは俺でも同じだ。
「やあ、ユーリッシュ」
「いらっしゃいませ」
にこりと微笑むと彼も笑みを返してくれる。ここでは彼のことを殿下と呼んだりするのは禁止だ。相変わらず壁のように立っているザイードは俺のほうは見向きもせず、ダーヴィドの横に控えていた。ただでさえ異国人で大きいから店内だととても目立つ。
「もう門限過ぎてるのに」
「いつものことだよ」
誤魔化そうともしないダーヴィドに苦笑して、「注文は?」と尋ねる。
「じゃあ、これと、これをもらおうかな」
「ありがとうございます」
ダーヴィドはいつもこの国特有の食事を楽しんでいる。隣国は質素な食事が多いらしく、ここへ通いだしてからいろんなものを口にしていた。まあ、このゲームを作ったのは日本人だから、俺にとっては慣れ親しんだ料理が多いけれども。
それに王族は基本的に冷めた料理しか口にしないが、ここでは出来立ての熱い料理を食べることができる。最初こそは毒見等、必要ないのかと気にしたものの、庶民が通う食堂に毒見なんてものは野暮だ。冷めきった質素な食事よりも、温かいというだけで料理の印象は大きく変わる。
「はい、お待たせしました。ハンバーグ定食です」
「ありがとう」
目の前に置くとすぐにナイフとフォークを握りしめて、ジュウジュウと音を立てる肉の塊にナイフを通す。その所作一つだけでも彼がとても高貴な生まれであるのは見て取れる。背筋を伸ばして音を一つも立てずにゆっくりと一口サイズに肉を切り分ける。隣のテーブルの子供なんて、フォークでハンバーグを突き刺して口に運んでいるというのに。
「今日もいつものところで待っているよ」
会計を済ませているところに、ダーヴィドがこっそりと耳打ちする。
「わ、分かった」
あれ以来、彼は必ず俺を学校まで送ってくれるようになった。知らず知らずのうちに彼のルートが進んでいるようで、困っている反面、親切にしてくれる彼の気持ちを無下にはできなかった。
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