36 / 68
2章 遺言状とプリン・ア・ラ・モード
11
しおりを挟む
◇◇◇
「ということなんで、さっきの遺言状の謎解きを解決するのを手伝ってくれませんか?」
あのあと、裕次郎と別れてから久志は、薫のいる神宮寺邸に戻ってきた。先ほど裕次郎を招いた応接室に通されると、そこにいたのは三人は座れるであろう大きなソファにだらりと横たわる屋敷の主人。そんな主人の側に寄り、久志は喫茶店での話を聞かせて今に至る。
「お願いします」
一生懸命に頼み込む久志に、薫はちらりとその澄んだ美しい瞳を向ける。
「言っておくが、僕はさっきの申し出を断った覚えはないぞ」
「富山氏が勝手に出て行っただけだ」と続ける薫に、久志は「確かに」と返す。
「ということは、最初からあの謎解きはするつもりで?」
「でなきゃ、わざわざ君にあんな真似をさせてまで、富山氏を追いかけろだなんて言わないだろう?」
「確かに……」
「富山氏は何やら僕に対して萎縮してしまっていたようだから、へら~とした君を向かわせ、詳しい話を聞いてもらおうと思ってな。害のなさそうな、学生風の君なら口を開くだろうと踏んだんだ」
「んん?なんか、俺、さらっと貶されてません?」
聞き捨てならない台詞に久志がにこにこ笑いながら、そう返せば、すかさず優秀な執事からのフォローが入る。
「『聞き上手な間宮様なら、きっと相手の心を開いてくれるだろう』と思っての言葉かと」
「……かなりの意訳」
あはは、と乾いた笑みを浮かべつつ、薫が乗り気なのは久志にとってはありがたいことである。だが、当の本人はどうやらぐったりとして元気がない様子。久志が「ど、どうかしたんですか」と首を傾げると
「汗を何度もハンカチで拭っていたから、きっと北野の急な坂を歩いて上ってきたのだろうし、うちで出した飲み物にもほとんど手をつけてなかったから、帰りにどこかの喫茶店に寄って話でもするのだろうと思っていたが、こんなに時間がかかるとは……!糖分が足りなくて、頭が働かない……」
と、薫。いきなりなんだ、とギョッと驚いていると、お行儀悪くソファに寝そべっていた薫が急に立ち上がって、久志の服をぐいと引っ張ると、その美麗な顔を近づけてこう言った。
「今日は僕にスイーツを作ってくれる約束だっただろう⁈いますぐ、何か作ってくれ!」と──。
「ということなんで、さっきの遺言状の謎解きを解決するのを手伝ってくれませんか?」
あのあと、裕次郎と別れてから久志は、薫のいる神宮寺邸に戻ってきた。先ほど裕次郎を招いた応接室に通されると、そこにいたのは三人は座れるであろう大きなソファにだらりと横たわる屋敷の主人。そんな主人の側に寄り、久志は喫茶店での話を聞かせて今に至る。
「お願いします」
一生懸命に頼み込む久志に、薫はちらりとその澄んだ美しい瞳を向ける。
「言っておくが、僕はさっきの申し出を断った覚えはないぞ」
「富山氏が勝手に出て行っただけだ」と続ける薫に、久志は「確かに」と返す。
「ということは、最初からあの謎解きはするつもりで?」
「でなきゃ、わざわざ君にあんな真似をさせてまで、富山氏を追いかけろだなんて言わないだろう?」
「確かに……」
「富山氏は何やら僕に対して萎縮してしまっていたようだから、へら~とした君を向かわせ、詳しい話を聞いてもらおうと思ってな。害のなさそうな、学生風の君なら口を開くだろうと踏んだんだ」
「んん?なんか、俺、さらっと貶されてません?」
聞き捨てならない台詞に久志がにこにこ笑いながら、そう返せば、すかさず優秀な執事からのフォローが入る。
「『聞き上手な間宮様なら、きっと相手の心を開いてくれるだろう』と思っての言葉かと」
「……かなりの意訳」
あはは、と乾いた笑みを浮かべつつ、薫が乗り気なのは久志にとってはありがたいことである。だが、当の本人はどうやらぐったりとして元気がない様子。久志が「ど、どうかしたんですか」と首を傾げると
「汗を何度もハンカチで拭っていたから、きっと北野の急な坂を歩いて上ってきたのだろうし、うちで出した飲み物にもほとんど手をつけてなかったから、帰りにどこかの喫茶店に寄って話でもするのだろうと思っていたが、こんなに時間がかかるとは……!糖分が足りなくて、頭が働かない……」
と、薫。いきなりなんだ、とギョッと驚いていると、お行儀悪くソファに寝そべっていた薫が急に立ち上がって、久志の服をぐいと引っ張ると、その美麗な顔を近づけてこう言った。
「今日は僕にスイーツを作ってくれる約束だっただろう⁈いますぐ、何か作ってくれ!」と──。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる