【第2章完】過労死した俺、今度は異世界で影の力を駆使して死なない程度に頑張ります。

疾風

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第2章 過労死した俺、リリアが顔を隠してる理由に迫る。

第17話

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 男の影が地面を這うように伸び、悠斗とリリーナの足元をすくおうとする。悠斗はリリーナを引っ張り、その攻撃を間一髪でかわした。

「リリーナさん、離れててくれ!」

 悠斗が叫ぶと、リリーナもすぐに状況を察し、少し距離を取った。しかし、男は二人を一瞬も見逃さず、その冷たい眼差しを悠斗に向けている。

「リリアのために動いているようだな。ということは貴様らも同罪だ」

 男の影がさらに拡張し、周囲を覆うようにして襲いかかる。悠斗はその場に踏みとどまり、影の力を集中して自身を守るための防御を作り出すが、男の影は異様な圧力でじわじわと迫ってきた。悠斗は冷や汗を浮かべながら、必死にその力を押し返そうとする。

「こいつ……強い……!」

 悠斗は焦りながらも、自分の影で男の影の動きを封じようとするが、男の影は悠斗の影を弾き飛ばすようにしてさらに迫ってくる。

「ユウト!」

 リリーナが手近な石を拾い、思い切り男の頭に向かって投げつけた。しかし、男の影は瞬時に反応し、石を空中で叩き落とす。悠斗とリリーナはその異常な速さと精密さに驚愕し、目を見開く。

「無駄だ。影の一族の技はお前たちの浅知恵でどうにかできるものではない」

 男は冷たく嘲笑を浮かべると、さらに影を操り、悠斗たちを包囲し始める。黒い影が地面を這い、足元からじわじわと二人に近づいてきた。影は触れた草木を枯れさせ、空気までが重苦しいものに変わっていく。

「くそ、どうする……」

 悠斗は自分の影を再び操作し、足元から迫る男の影に対抗しようとするが、男の影は悠斗の影を飲み込むように吸い込み、そのまま二人を包囲していく。

「やはり格が違う……!けどここで終わるわけにはいかない!」

 悠斗は一瞬の隙を突いて男に向かって突進し、影で包まれた拳を放つ。だが、男の影が悠斗の拳を受け止め、逆にその腕を絡め取ろうとする。

「無駄だ。貴様のような偽物が私に叶うわけがない」

 男は悠斗の腕を捕らえようとするが、悠斗は影の力を強めてそれを振り解く。だが、その隙に男は影を鋭い刃のように変え、悠斗の背後を狙って攻撃を仕掛けてくる。

「ユウト、後ろ!危ない!」

リリーナの声に悠斗は咄嗟に身を翻して回避するが、男の影は鋭く動き、そのまま悠斗に追いすがる。悠斗は再び影を使って防御するが、男の影はその上を越えて悠斗の胸元を狙ってくる。

「ここで終わりだ……!」

 男の影の刃が悠斗の胸元に迫ったその瞬間、氷が悠斗の前に立ち塞がった。
 悠斗が横を見やると、リリーナが両手を広げていた。どうやらリリーナの魔法のようである。
 悠斗はリリーナが魔法をここまで操れるということを知らなかった。

「リリーナさん、危ないって言っただろ!」

 悠斗は怒鳴るように叫んだが、リリーナはその声を無視して毅然と男に向き直った。

「ユウト一人が頑張っている状況で見過ごすことはできない!!」

 リリーナの出現させた氷は男の影に押されつつも、悠斗と共に男の動きを封じようと全力で踏ん張っていた。その姿に悠斗も奮起し、再び影の力を解放する。

「リリーナさん、ありがとう。俺も全力で行く!」

 悠斗は自分の影を再び活性化させ、男の影と激しくぶつかり合った。影と影が激突し、周囲には重苦しい空気が広がる。互いの影が交錯する中で、悠斗は男の動きを見極め、隙を突いて攻撃を加えようとする。

「小賢しい……!」

 男は怒りに満ちた声で叫び、影の刃を振りかざして悠斗に襲いかかった。だが、その一瞬の隙を悠斗は見逃さなかった。

「今だ!」

 悠斗は全力で影を操り、男の影の動きを封じるべくその隙を狙って影を叩き込んだ。男は驚きの表情を浮かべ、動きを一瞬だけ止めた。

「くっ……!」

 悠斗はその隙を突き、男に向かって突進した。悠斗の影が男を包み込むようにして押さえ込もうとする。しかし、男の力はまだ衰えておらず、再び影を激しく揺らして反撃を試みる。

「ここで倒れるわけにはいかない……!」

 男は最後の力を振り絞り、影を膨らませて悠斗とリリーナを弾き飛ばした。二人は地面に転がり、呼吸を整えながら立ち上がるが、男もまた疲弊しているように見えた。

「油断した……。お前らと遊んでる暇はない。私の目的はあくまでもリリアなのでな」

 男は冷たい笑みを浮かべ、影を収束させると、そのまま森の奥へと姿を消していった。悠斗は悔しさと疲労で膝をつき、男が消えた方向を睨みつける。

「くそ……逃げられたか」

 リリーナも地面に手をつきながら息を整え、悔しげに顔を伏せた。
 悠斗はリリーナに手を差し伸べて立ち上がり、拳を固めた。戦闘は終わったものの、リリアの行方と彼女が抱える秘密に対する謎は深まるばかりだった。

「リリアが一人で逃げる理由、それに『影の一族』……」

 悠斗は男の言葉を思い返し、険しい表情を浮かべた。リリアが抱えている問題は、二人の想像を超えた何かが絡んでいるのかもしれない。しかし、それでも彼女を見つけるために歩みを止めるつもりはなかった。

「あの男、リリアさんの行き先を知っているような口ぶりだったな。でも、もう手がかりが……。またこの森を進むしかないか」

「ユウト、私に任せて!さっきあの男に精霊をつけておいた。追えると思う」

「精霊??」

 悠斗の頭にははてなが大量に浮かんだ。
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