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70.辛い記憶

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リン『なん…でそのこと…を。』

明らかに同様し始めたリン。ジンが接触していたのはエリーダ・チャーロ。そして正体を暴くに当たって必要な心の傷。嫌な記憶を思い出させるのは気が引けるもののそういう時こそ本性が出てくるもの。エリーダはジンに教えた。エマールが死んでしまった原因は自分にあると強く後悔し、心が壊れるまで自分を責めていたこと。

エリーダは微量の電気でリンの辛い記憶に蓋をした。辛い記憶であればあるほどその記憶の蓋は閉じやすい。リンが学校の試験を受けると前を向けれたのはエリーダが記憶を触ったから。そしてその蓋を開けるために必要な辛い言葉をエリーダはジンに教えた。

それがエマール・チャーロが死んだ原因がリンであると強くいうこと。

ジンの言葉で耳元を抑え小刻みに震えているのがわかる。追い打ちをかけるようにジンはテレパシーを使い続ける。脳内に直接話しかけているから耳をふさいでもジンの声は聞こえ続ける。

ジン「お前は来るなと言われても自分の感情を優先しエマールさんに迷惑をかけて守ってもらって死なせたんだ。直接手を出して無くても死んだのはお前のせいだ。エマール様は偉大な当主様だったのに…命を落とすには早すぎた。何忘れて学園生活を楽しんでるんだ?」

ジンは忘れている理由を知っていても刺激するためには仕方がない。リンの事が知れたらしっかり謝ろうと罪悪感に襲われながら話していた。そんな事情を知らないリンはその言葉に衝撃を受ける。

「なんで私あの後悔を忘れていたんだろう」と。

その瞬間忘れていた後悔と自己嫌悪がリンを襲った。涙を流し頭をかかえ「いやっいや…。」と声が漏れ、嫌な記憶を拒否するように抱えた頭を左右に振っている。そしてジンは言った。

ジン『リン…お前が殺したんだ。』と。

忘れていた反動で当時以上の自己嫌悪。ジンが発した言葉でリンの中で「何か」がプチっと切れた。

急に固まり、頭を抱えていた手を下に落としたリン。ジンはなんだ?どうした?と様子を見るように覗き込んだ時、顔を上げたリンの睨むようなくすんでいる赤い目と目が合った。ジンはその瞬間全身に電撃が走ったような恐怖と共に本能が逃げろと言ってるような感覚に襲われた。

自分が何を感じて恐怖したのか理解できないほどの時間でジンとリンを映していた大会用カメラが爆発した。もちろん大きな音がなったのだ。そっちに目を向けてしまうのは人間の本能だろう。その隙を見逃さないようにリンはジンと目と鼻の先の位置に瞬間移動していた。
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