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可愛がられる聖女
ユーリーの裁縫講座(1)
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翌日。カタリナがクララの部屋に謝罪をしに来た。
「本当にごめんなさいね。馬鹿な娘達で」
「いえ、お怪我がなくて良かったです」
「本当に良い子ね」
カタリナはクララの頭を優しく撫でる。
「まぁ、あの子達が教えてくれる事は、クララちゃんの刺激になると思うわ。良い機会だし、運動の時間とかもあの子達の時間に充ててみたらどうかしら?」
カタリナにそう言われて、クララはリリンの事を見る。
「そうですね。軽い運動は続けて貰いますが、いつものサーファとの追いかけっこは控えましょう。薬室の方は、クララさんが管理しないといけない事もありますので、これまで通りにやって頂きます」
結果、薬室での薬作り以外は、マーガレットとユーリーから学ぶ事になった。今日は薬室での作業なので、明日までお預けとなる。
このことはアリエスにも共有された。
「へぇ~、凄いね。もしかしたら、クララがそっちの道に行く可能性もあるの?」
「さすがに、薬室を辞める事はないかな」
クララがそう言うと、アリエスはホッと胸をなで下ろした。クララへの恩返しが出来なくなる可能性があったからだ。自分を死の淵から救ってくれたクララには、自分の全てを掛けて恩返ししたいと思っていたので、薬室がなくなると困るのだ。
「人族領だと芸術方面はどんな感じなの?」
この質問をアリエスから受けたクララは、徐に顔を上げて考え込み始めた。
「全く分からない。王城とか教会には、沢山飾られていたけど、街中とかには一切なかった気がする。それに、芸術家の話自体あまり聞かなかったから、数もかなり少なかったんじゃないかな」
「人族って、色々抑圧し過ぎじゃない?」
「魔族を滅ぼしたら、解放されるって思っている人が多いからね。絶対そんな事ないけど」
王族や教会と関わっていたクララは、その腐敗具合を知っている。そのため、魔族が滅ぼされたところで、そこが改善されるわけがない事も。
「だから、色々と楽しみなんだよね。どんな事をやるのかなって」
クララはウキウキとしながらも丁寧な作業で薬を作っていく。その様子を見ていたアリエスは、自分も頑張ってクララが色々と出来るようにしようと決意した。
────────────────────────
翌日の朝。クララ達が朝食を食べ終わった直後、ユーリーが部屋にやってきた。
「あ、ユーリーさん。おはようございます」
「おはよう。まだ少し早いけど、部屋に来て。リリンが場所を知ってる」
ユーリーはそう言うと、部屋を出て行った。まだ食器の片付けが済んでないことを確認してそう言っているので、不機嫌なわけではない。
「では、食器を片付けてきますので、クララさんの支度を調えておいて下さい」
「分かりました」
サーファにクララの支度を頼んで、リリンは食器を持っていった。クララはサーファに着替えを手伝って貰って外出用の服になる。
「うん。良い感じ」
「はい。ありがとうございます」
ニコニコと笑うクララをぎゅっと抱きしめていると、食器を片付けてきたリリンが帰ってきた。
「それでは、参りましょう」
「はい」
クララはサーファの手を取って一緒にリリンの後を付いていく。そして、魔王城の上の方に向かって行く。そこは、クララも一度も入った事がないエリアだった。
「この辺りは、魔王様のご家族が使う場所になっています。ですが、クララさんも一度来てはいます」
「えっ? そうなんですか?」
全く覚えがないので、クララは首を傾げている。
「魔族領に来て、最初に目を覚ました場所は、ここから近いところにあります。ですので、本当に一度は来ているのです」
「ああ……あの時は、魔王様だって気付いて、気絶したんでした」
「そういえばそうだったな」
「!?」
唐突に真後ろから声がして、クララは勢いよく振り返った。クララはただ驚いていたが、リリンとサーファは頭を下げている。そこにいたのが、魔王であるガーランドだったからだ。
「頭を上げて良い。それにしても、こんなところでどうしたんだ?」
ガーランドは、クララがここにいる理由が分からずにそう訊いた。
「ユーリー様より、部屋に来るようにと言われたのです」
「ああ、そういえばユーリー達を講師にして芸術と服飾を学ぶんだったな。必要な物があれば、こっちに請求してくれて構わない。道具を揃えるのには、金が掛かるからな。俺からのプレゼントと考えてくれ」
ガーランドはそう言ってから、クララの頭を軽く撫でると、そのままどこかに向かって行った。
「私も大分稼いでいると思うんですが」
「魔王様が払いたいのではないでしょうか」
「それって怒られませんか?」
そんな買ってお金を使ったらカタリナに怒られないかという風にクララは考えていた。
「大丈夫でしょう。カタリナ様も納得されると思います」
「そのくらい愛されているって事だよ」
マーガレットやユーリーも妹みたいなものと言っていた。その言葉の意味を改めてクララは実感する。
「さて、ここがユーリー様の自室です」
リリンはそう言ってから扉をノックする。
「どうぞ」
ユーリーの声が聞こえてから、扉を開けクララを中に促す。
「失礼します」
「変な遠慮は要らない。適当に座って」
ユーリーの部屋は、クララの部屋と同じか少し小さいくらいだった。整理整頓が行き届いており、綺麗で華やかな印象を受ける。そんな中で、一つだけ異彩を放っていたのは、机の上だった。机の上では、布の裁断と糸の巻き取りが自動で行われていた。鋏などの道具や布などの素材が、人が触ってもいないのに動き続けている。その光景は、クララには異様な光景に見えていた。
「これが、マーガレットさんも言っていた魔法を使った作業ですか?」
「ん? ああ、そう。あの机の上に素材を置くと設定された通りに糸と布を作ってくれる。でも、設定された通りの事しか出来ないから、使えるものは限られてくる」
「便利だけど不便って事ですか?」
「そういう事。でも、それもある程度解決している」
「解決?」
別の技術でも生まれたのかと思っていたクララだったが、ユーリーの答えは違った。
「隣の部屋に同じ机をいくつも置いて、それぞれ違う設定にしておいた。これで、あらゆる糸と布に対応出来る」
「おぉ……でも、どうやったら、そんな魔法の使い方が出来るんですか?」
「そういう風に魔法を設定すれば良い」
「??」
ユーリーの言っている事が全く分からず、クララは首を傾げる。それにつられて、ユーリーも首を傾げた。
「魔法の設定って何ですか?」
「魔法は原則自由。何が使うかもある程度自由」
「えっと……魔道具って事ですか?」
これに、ユーリーが頷く。
「そう。あの机も魔道具。私が魔力を補給しないと動かない。布を一定の大きさに切る事と糸を紡ぐという操作を魔法に落とし込んで、机を魔道具化している。魔道具の上にあるもので、設定された物を作るというもの。今のところ、布でしか成功していないけど、その内金属加工とかでも使えたらとは思ってる」
ユーリーは何でもないように言っているが、やっている事は、天才そのものだ。言ってしまえば、新たな魔法を開発したという風になるからだ。
「そんな事可能なんですね」
「出来ないという考え方が駄目。世の中、そういう考え方ばかりだから停滞する。それは、クララもよく知っているはず」
「え?」
クララには思い当たる事がなく、困惑する。そこにリリンが耳打ちした。
「私達との関係では?」
「あっ!」
リリンに言われて、クララもようやく思い至った。人族領にいた頃は、人族と魔族がわかり合える事はないと考えていた。だから、魔族領へ攫われた当初はかなり警戒していた。だが、それは相手の事を理解しようとしていなかったせいだと、思い知らされた。
ユーリーの話は、それと少し似ている。凝り固まった考えをしているから、新しい使い方を思いつけないという扱く当たり前の事だ。
「色々と制約はあるけど、クララも作ってみる?」
「……薬をこれで作るのは、色々と心配なので遠慮します」
これで作る事が出来れば、クララもアリエスも大分楽を出来るのだが、この机を使うには、工程が多すぎるという事もあり、クララは遠慮しておいた。
「そう。まぁ、理由は分かる」
ユーリーはそう言いながら、クララの前に少し大きめの箱を置く。
「これは、何ですか?」
「裁縫道具。ミシンは後で買いに行く。私のお古は古すぎるから」
「頂いて良いんですか?」
「大丈夫。私の道具は、仕事場にある。これは、前に買って結局使わなかった新品」
予備として買っていた物だったが、使う前に城を出たのでは置きっぱなしになっていたのだ。
「ちゃんと使える物かは確かめておいたから」
「ありがとうございます」
クララがお礼を言うと、ユーリーは優しくクララの頭を撫でた。
「本当にごめんなさいね。馬鹿な娘達で」
「いえ、お怪我がなくて良かったです」
「本当に良い子ね」
カタリナはクララの頭を優しく撫でる。
「まぁ、あの子達が教えてくれる事は、クララちゃんの刺激になると思うわ。良い機会だし、運動の時間とかもあの子達の時間に充ててみたらどうかしら?」
カタリナにそう言われて、クララはリリンの事を見る。
「そうですね。軽い運動は続けて貰いますが、いつものサーファとの追いかけっこは控えましょう。薬室の方は、クララさんが管理しないといけない事もありますので、これまで通りにやって頂きます」
結果、薬室での薬作り以外は、マーガレットとユーリーから学ぶ事になった。今日は薬室での作業なので、明日までお預けとなる。
このことはアリエスにも共有された。
「へぇ~、凄いね。もしかしたら、クララがそっちの道に行く可能性もあるの?」
「さすがに、薬室を辞める事はないかな」
クララがそう言うと、アリエスはホッと胸をなで下ろした。クララへの恩返しが出来なくなる可能性があったからだ。自分を死の淵から救ってくれたクララには、自分の全てを掛けて恩返ししたいと思っていたので、薬室がなくなると困るのだ。
「人族領だと芸術方面はどんな感じなの?」
この質問をアリエスから受けたクララは、徐に顔を上げて考え込み始めた。
「全く分からない。王城とか教会には、沢山飾られていたけど、街中とかには一切なかった気がする。それに、芸術家の話自体あまり聞かなかったから、数もかなり少なかったんじゃないかな」
「人族って、色々抑圧し過ぎじゃない?」
「魔族を滅ぼしたら、解放されるって思っている人が多いからね。絶対そんな事ないけど」
王族や教会と関わっていたクララは、その腐敗具合を知っている。そのため、魔族が滅ぼされたところで、そこが改善されるわけがない事も。
「だから、色々と楽しみなんだよね。どんな事をやるのかなって」
クララはウキウキとしながらも丁寧な作業で薬を作っていく。その様子を見ていたアリエスは、自分も頑張ってクララが色々と出来るようにしようと決意した。
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翌日の朝。クララ達が朝食を食べ終わった直後、ユーリーが部屋にやってきた。
「あ、ユーリーさん。おはようございます」
「おはよう。まだ少し早いけど、部屋に来て。リリンが場所を知ってる」
ユーリーはそう言うと、部屋を出て行った。まだ食器の片付けが済んでないことを確認してそう言っているので、不機嫌なわけではない。
「では、食器を片付けてきますので、クララさんの支度を調えておいて下さい」
「分かりました」
サーファにクララの支度を頼んで、リリンは食器を持っていった。クララはサーファに着替えを手伝って貰って外出用の服になる。
「うん。良い感じ」
「はい。ありがとうございます」
ニコニコと笑うクララをぎゅっと抱きしめていると、食器を片付けてきたリリンが帰ってきた。
「それでは、参りましょう」
「はい」
クララはサーファの手を取って一緒にリリンの後を付いていく。そして、魔王城の上の方に向かって行く。そこは、クララも一度も入った事がないエリアだった。
「この辺りは、魔王様のご家族が使う場所になっています。ですが、クララさんも一度来てはいます」
「えっ? そうなんですか?」
全く覚えがないので、クララは首を傾げている。
「魔族領に来て、最初に目を覚ました場所は、ここから近いところにあります。ですので、本当に一度は来ているのです」
「ああ……あの時は、魔王様だって気付いて、気絶したんでした」
「そういえばそうだったな」
「!?」
唐突に真後ろから声がして、クララは勢いよく振り返った。クララはただ驚いていたが、リリンとサーファは頭を下げている。そこにいたのが、魔王であるガーランドだったからだ。
「頭を上げて良い。それにしても、こんなところでどうしたんだ?」
ガーランドは、クララがここにいる理由が分からずにそう訊いた。
「ユーリー様より、部屋に来るようにと言われたのです」
「ああ、そういえばユーリー達を講師にして芸術と服飾を学ぶんだったな。必要な物があれば、こっちに請求してくれて構わない。道具を揃えるのには、金が掛かるからな。俺からのプレゼントと考えてくれ」
ガーランドはそう言ってから、クララの頭を軽く撫でると、そのままどこかに向かって行った。
「私も大分稼いでいると思うんですが」
「魔王様が払いたいのではないでしょうか」
「それって怒られませんか?」
そんな買ってお金を使ったらカタリナに怒られないかという風にクララは考えていた。
「大丈夫でしょう。カタリナ様も納得されると思います」
「そのくらい愛されているって事だよ」
マーガレットやユーリーも妹みたいなものと言っていた。その言葉の意味を改めてクララは実感する。
「さて、ここがユーリー様の自室です」
リリンはそう言ってから扉をノックする。
「どうぞ」
ユーリーの声が聞こえてから、扉を開けクララを中に促す。
「失礼します」
「変な遠慮は要らない。適当に座って」
ユーリーの部屋は、クララの部屋と同じか少し小さいくらいだった。整理整頓が行き届いており、綺麗で華やかな印象を受ける。そんな中で、一つだけ異彩を放っていたのは、机の上だった。机の上では、布の裁断と糸の巻き取りが自動で行われていた。鋏などの道具や布などの素材が、人が触ってもいないのに動き続けている。その光景は、クララには異様な光景に見えていた。
「これが、マーガレットさんも言っていた魔法を使った作業ですか?」
「ん? ああ、そう。あの机の上に素材を置くと設定された通りに糸と布を作ってくれる。でも、設定された通りの事しか出来ないから、使えるものは限られてくる」
「便利だけど不便って事ですか?」
「そういう事。でも、それもある程度解決している」
「解決?」
別の技術でも生まれたのかと思っていたクララだったが、ユーリーの答えは違った。
「隣の部屋に同じ机をいくつも置いて、それぞれ違う設定にしておいた。これで、あらゆる糸と布に対応出来る」
「おぉ……でも、どうやったら、そんな魔法の使い方が出来るんですか?」
「そういう風に魔法を設定すれば良い」
「??」
ユーリーの言っている事が全く分からず、クララは首を傾げる。それにつられて、ユーリーも首を傾げた。
「魔法の設定って何ですか?」
「魔法は原則自由。何が使うかもある程度自由」
「えっと……魔道具って事ですか?」
これに、ユーリーが頷く。
「そう。あの机も魔道具。私が魔力を補給しないと動かない。布を一定の大きさに切る事と糸を紡ぐという操作を魔法に落とし込んで、机を魔道具化している。魔道具の上にあるもので、設定された物を作るというもの。今のところ、布でしか成功していないけど、その内金属加工とかでも使えたらとは思ってる」
ユーリーは何でもないように言っているが、やっている事は、天才そのものだ。言ってしまえば、新たな魔法を開発したという風になるからだ。
「そんな事可能なんですね」
「出来ないという考え方が駄目。世の中、そういう考え方ばかりだから停滞する。それは、クララもよく知っているはず」
「え?」
クララには思い当たる事がなく、困惑する。そこにリリンが耳打ちした。
「私達との関係では?」
「あっ!」
リリンに言われて、クララもようやく思い至った。人族領にいた頃は、人族と魔族がわかり合える事はないと考えていた。だから、魔族領へ攫われた当初はかなり警戒していた。だが、それは相手の事を理解しようとしていなかったせいだと、思い知らされた。
ユーリーの話は、それと少し似ている。凝り固まった考えをしているから、新しい使い方を思いつけないという扱く当たり前の事だ。
「色々と制約はあるけど、クララも作ってみる?」
「……薬をこれで作るのは、色々と心配なので遠慮します」
これで作る事が出来れば、クララもアリエスも大分楽を出来るのだが、この机を使うには、工程が多すぎるという事もあり、クララは遠慮しておいた。
「そう。まぁ、理由は分かる」
ユーリーはそう言いながら、クララの前に少し大きめの箱を置く。
「これは、何ですか?」
「裁縫道具。ミシンは後で買いに行く。私のお古は古すぎるから」
「頂いて良いんですか?」
「大丈夫。私の道具は、仕事場にある。これは、前に買って結局使わなかった新品」
予備として買っていた物だったが、使う前に城を出たのでは置きっぱなしになっていたのだ。
「ちゃんと使える物かは確かめておいたから」
「ありがとうございます」
クララがお礼を言うと、ユーリーは優しくクララの頭を撫でた。
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