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魔族の聖女

今後の予定

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 カタリナによる触れは、瞬く間に住人達に広まっていった。すると、魔王城の前で、多くの魔族が集まって、大きな声を上げた。
 指輪はどんなのが良いかを話していたクララは、その声に驚いて、窓の外を見る。

「一体、何事なんでしょうか?」
「早速触れを出したのでしょう。それを見た住人達が、声を上げているのだと思いますよ」
「声が密集しすぎて、何も聞き取れないんですけど……」
「えっとね……『クララちゃんの結婚式を開いてくれぇ』とか『俺達にも祝わせてくれ』とかそういうのだね。反対意見はなさそうかな」
「ほ、本当に、皆、望んでいるんですね……」

 本当にカタリナ達の言った通りになったので、クララは少し驚いていた。

「ここまで期待されると緊張しちゃいますね」
「皆はクララちゃんを見に来るだけだし、そこまで気負わなくても、普段通りで良いと思うよ。まぁ、結婚式だから普段通りとはいかないと思うけど……」
「そうですよね……じゃあ、ちゃんと指輪を決めないとですね!」
「そうですね。ドレスは、ユーリー様がお作りになるようですので、私達が悩むべきは、指輪のみになりますね」
「でも、指輪って、どこで買うんですか?」

 クララの質問に、リリンとサーファは答えを悩む。

「どこが良いでしょうか?」
「う~ん……迷いますね……今だとどこが良いんでしょう? あまりアクセサリーに頓着しないので……」
「私も同じです。いっその事、城の彫金師に頼むという選択肢もありますが」
「それって、ライナーさん達ですか?」
「はい。研究開発班の中に彫金師がいらっしゃるので、そちらに頼むのもありかと」

 全員の要望に合うものを探すのでは無く、自分達の要望に合うものを作って貰うという提案をする。

「確かに、それは良いと思います。そうしたら、皆の要望も合わせられそうですし」
「それじゃあ、色々と細部を詰めて話し合ってみよう」

 クララ達は自分達が付ける指輪について話し合っていく。その中で、リリンの身体に刻まれている紋章を入れるというものが出て来たが、本人であるリリンが断固拒否した。逆に、サーファの首輪の紋章という話もあったが、これも本人であるサーファが断固拒否した。
 この話し合いのなかで、自分だけ紋章的なものがない事にクララが気が付き、いっそ、クララを印象づける紋章を指輪に彫れば良いのではという話になる。
 そこからクララらしさを考えて、様々な案が出て来る。その結果、一つの紋を彫り、白い宝石を付けるという事で、話が決まった。その案をリリンが研究開発班に持っていく。その間、サーファの膝で刺繍に励んでいると、クララの部屋の扉が勢いよく開かれる。

「クララ!」
「あれ? サラ。どうしたの?」

 飛び込んできたのは、クララの友人であるサラだった。

「どうしたのじゃないよ! 結婚するって本当なの!?」
「あ、うん。リリンさんとサーファさんと結婚する」

 それを聞いたサラは、三秒程固まってから、クララを抱きしめた。

「おめでとう! まさか、こんなに早くクララが結婚するとは思わなかったよ!」
「ありがとう。でも、そんなに早い?」
「うん! だって、私は、まだ結婚してないし」
「そうなんだ。エルフの結婚って、大体どのくらいなの?」

 そう訊かれて、サラは少し考える。

「えっと……二百とか三百とかかな」
「後、七十年も先なんだ。私、お婆ちゃんになってるよ」
「でも、人魚族の血を飲んだから、ある程度長生きするんでしょ?」
「それでも百歳前半くらいだと思う」
「う~ん……クララが生きている間に結婚出来ると良いなぁ。あっ、そろそろ戻らないとだから。じゃあ、結婚おめでとう!」

 サラはそう言って、クララに手を振ってから、部屋を出て行った。そして、サラと入れ替わりにリリンが戻ってくる。

「たった今、サラが飛び出していったようですが」
「カタリナさんが出した触れを読んで来たみたいなんですが、仕事に戻らないといけないらしくて、慌てて飛び出していきました」
「ああ、なるほど。休憩時間に来たのでしょうね。それはそうと、指輪の件は快く引き受けて貰えました。後は、ユーリー様がいらっしゃってからですね」
「それまでは、普段通りということですね」
「はい。結婚式の話は、進みましたので、また別の話をしていきたいと思います」
「別の話ですか?」

 他に話し合う事が思いつかず、クララは首を傾げる。同じように、サーファも分かっていなかった。

「結婚しても、同じ生活をすると思いましたか? 私はサキュバスですよ?」

 そう言われて、サーファの顔が真っ赤に染まる。

「それって今日からですか?」
「いえ、結婚式をして、名実共に家族となってからの方が良いでしょう」
「なるほど……でも、それだったら、まだ話し合う必要は無くないですか?」
「いえ、必要な事です」

 リリンはそう言いながら、ぺたんと閉じているサーファの耳を持ち上げて、ちゃんと話を聞かせる。

「毎回三人でする訳にもいかないでしょう。時には二人きりでという風な気分もあるでしょうから。そこで順番を決めるというのも有りだと思うのです」
「順番ですか?」
「はい。私とクララさん、私とサーファ、クララさんとサーファ、三人を順々に回していくのが一番理想的だと考えています」
「なるほど……そうなると、四日間の内に必ず一日休めるという事になる訳ですね」
「はい。これで問題が無ければ、このまま進めていこうと思うのですが、サーファは如何でしょうか?」

 ここまでの話を強制的に聞かされていたサーファは、限界以上まで顔が真っ赤になっていた。そして、そのまま首を縦に振る。

「それは良かったです。クララさんは如何ですか?」
「良いと思います。でも、私も参加して良いんですか? まだ早いとか言われると思ってました」
「結婚する以上、そこを気にする必要も無いでしょう。取り敢えず、最初は私と交わってもらいます。一度は経験した方が良いですから」

 実際には、クララは軽く経験しているのだが、その記憶はない。なので、一から教え直す必要がある。

「実際の行為は、式の後にしますが、共に寝るというのは、今日から始めましょう。先程の順番で添い寝していくというだけですが」
「私とリリンさん、リリンさんとサーファさん、私とサーファさん、三人って順番ですね。良いと思います」
「サーファは、如何ですか?」
「あ、はい。良いと思います」

 サーファがちゃんと返事をしたところで、リリンもサーファの耳から手を放す。

「クララさんに胸を触らせているのに、この話になると、いつも顔を赤くしていますね」
「別に、ただ触るだけなら、あまり気にならないんです……」
「ふむ……なるほど。これは、サーファとの初夜が楽しみですね」

 初めて、リリンがサーファの事を獲物のように見た。普段、そのような事はないので、サーファの毛が逆立つ。それすらも面白いという風に、リリンは笑っていた。

(サーファさん、頑張れ!)

 クララは、心の中で声援を送っていた。その声はサーファに届くのだろうか。
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