先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい

月輪林檎

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先祖返りの真祖

情け容赦は無用

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 ──時は少し遡る。
 誘拐されたセレーネを追っていたカノンは、街の外に出ていた。そして、外に広がる草原の中に、一部おかしなところを見つけた。

(車輪の跡……まだ痕跡を消せていない。これを辿ればお嬢様に追いつける)

 カノンは、痕跡を辿って進んでいき森の中に入った。

(この森の中を魔動車で移動するのは無理のはず。だから、そこら辺に隠して……)

 痕跡と匂いを頼りに、カノンは魔動車を見つける事が出来た。周囲を警戒しつつ、カノンは魔動車の中を覗く。そこにセレーネの姿はない。

(連れ去られた後……でも、魔動車を隠して置いている以上、この近くにいるはず。幸い、魔物は近くにはいない。比較的街に近いからかな。まぁ、私が行動しやすいという点を考えれば、この方が都合は良い)

 カノンは、自分の耳に意識を集中させる。収集出来る音を取捨選択し、必要な音を探る。すると、カノンの耳に人の声が聞こえてくる。カノンは、すぐに声が聞こえる方に向かった。そして、見つからないように隠れる。そこには、男が二人いて話していた。

「今回の仕入れは、これで最後だよな?」
「ああ。これ以上は街でも大騒ぎになるしな」
「態々街で仕入れるよりも、道中でやった方が安全だよな」
「道中の仕入れは難しいんだよ。魔動列車が普及してから、仕入れられる確率がかなり減ったからな」
「あぁ~……あれに関しては俺達にとっては、かなり痛いよな」

 それ以上聞いても、セレーネに繋がる情報は得られないと判断したカノンは、男達接近して一人の首を貫手で貫く。そして、その男が身に着けているナイフを奪い、もう一人の男の腹を刺す。

「うぐっ……てめっ……うぐぅ!?」

 声を荒げようとした男に対して、カノンはナイフを捻る。傷口が広がり、男が唸る。

「お前達のアジトはどこ?」
「誰が……お前に……」

 カノンはナイフを抜いて、男の腹の別の場所にナイフを刺して捻る。

「お前達のアジトはどこ?」
「がぁ……はぁ……はぁ……」

 このまま何も喋らないと分かったところで、カノンは男の首を斬った。そして血塗れになったナイフを捨てて、今殺した男からベルトごとナイフを奪い、自分に装着する。
 そして、男達の足跡を確認していく。

「……こっちか」

 男達がどっちから来たのかを確認したカノンは、ある程度の当たりを付けて、移動を再開する。そうして移動していき、見張りと思わしき男達を尋問して殺しながらセレーネがいる場所を探っていく。

「こ、ここから北に行った場所にアジトがある! 本当だ!」

 目の前で仲間を殺し、腹と太腿を突き刺して尋問した見張りがようやく情報を吐いた。これまでの見張りは何も吐かなかったので、これにはカノンも怪しんだ。

「本当に?」
「ああ! ちゃんと言っただろう!? 約束通り、見逃し……かっ……」

 カノンは、見張りの首を深く斬り裂いた。尋問の始めにした約束は、『情報を話せば見逃してやる』。だが、カノンはその約束をいとも容易く破った。
 見張りは、口パクでこう呟く。

『地獄に落ちろ』

 それに対して、カノンは蔑みながら見下ろす。

「お前らがな」

 見張りを滅多刺しにし、また新しいナイフを奪う。

(こいつらは、魔術を使ってこない。魔術師はいない……もしくはかなり少ないと考えるべきかな。魔術を使われると、私には不利になる。詠唱魔術しか出来ないような魔術師なら良いんだけど……)

 詠唱をしなければ魔術を使えない魔術師であれば、喉を裂いて声を出させなければ勝てる。だが、無詠唱魔術を使える魔術師であれば、喉を裂かれたところで魔術は使える。カノンとしては、前者を相手にする方が楽に勝てるので、前者である事を祈るしかなかった。それも、魔術師がいればの話だが。
 準備を整えて、北へと移動する。すると、森の中に建てられた二階建ての屋敷が見えてくる。

(大きい……でも、蔦や苔が生えているし、植物が家を侵蝕してる。大分昔の建物みたいだ。捨てられていたのを利用しているみたい)

 屋敷の傍に移動したカノンは耳を澄ませる。そうして中にいる人の数を把握していく。

(三人……いや、地下にもっといる? お嬢様を見つけて逃げるには、中にいる三人は邪魔だ。先に始末する方が良いかな)

 カノンは、軽く助走を付けて、両手両足で壁を駆け上がる。そして、二階にある窓から中に入った。

(戸締まりはしっかりしないとね)

 音を立てずに移動していく。音の聞こえる部屋を耳だけで探ると、そこで一人が睡眠をとっている事が分かった。カノンは静かに部屋に入り、寝ている男の口を塞ぎながら、首にナイフを突き刺す。その衝撃で男は起きるが、そのままカノンは、身体を滅多刺しにして殺した。

「あいつの寝相は直らねぇのか」

 そう言いながら部屋に近づいてくる音が聞こえてくる。カノンは、周囲を見回し短剣があるのを発見した。血塗れのナイフから短剣に持ち替えて、扉の横で待機する。そして、扉を開けて中に入ろうとした男の首に短剣を突き刺す。短剣はそのまま首の後ろに抜ける。上手く頸椎切断しているため、男は何も出来ずに死んだ。
 短剣を回収しようとしたが、引っ掛かってしまい中々抜けなかった。

(仕方ない。この男のものを貰おう)

 殺した男が腰にぶら下げていた短剣を奪う。最後の一人は、一階でテーブルに突っ伏して寝ていた。傍に酒瓶が転がっている事から、酔っぱらって眠りについているという事が分かる。カノンは、近くにあった斧を使って首を落とす。

「後は……やっぱり地下がある……この音……お嬢様!」

 地下から不穏な音が聞こえ、カノンはセレーネの安否が心配になり駆け出す。地下へと繋がる扉を開けて中に入る。すると、そこには地下牢があった。
 そこでカノンが見たのは、四人の遺体と遺体に向かって鉤を振り下ろしている男がいた。

「ハハハハハハハハハ! ざまあねぇな!」

 人の醜悪さを見てカノンは顔を顰める。そんな中、カノンは気付いてしまった。遺体の一人の下に金色の綺麗な髪をした少女が力なく倒れている事に。そして、それが探していたセレーネだという事に。

「っ!!」

 カノンの中に激しい憎悪と怒りが湧き上がってくる。そして、カノンは衝動のままに男に突っ込んだ。

「あ? っ!?」

 斜め上から急接近してきたカノンに気付いた男は、振われる斧を慌てて鉤で受け止めた。斧による一撃により、鉤は使い物にならなくなった。同時に、斧も刃が欠ける。
 だが、カノンの武器は斧だけではない。もう片方の手に持っている短剣を男の左目に突き刺す。

「ぐあっああああああ!! てめぇ!!」

 顔面を殴られたカノンは吹っ飛ばされるが、両脚でしっかりと着地した。
 男は、奪われた左目を押えながら、カノンを睨む。その目には、憎悪が滲んでいる。だが、カノンの憎悪はそれ以上だった。それは男が一瞬萎縮してしまう程の憎悪だった。

「ぶっっっ殺してやるっ!!」

 そう言って短剣を抜く男に向かって、カノンは斧を投げつける。男は斧を避けて、カノンに向かって突っ込んでくる。それに対して、今度は近くにあった木のバケツを蹴り飛ばした。斧を避けた事で、少し体勢を崩していた男はバケツを折れた腕で受ける。痛みが走り顔を顰める。
 ここで一瞬怯んだ男に対して、即座に近づいたカノンは短剣を持つ腕を斬る。しかし、男が咄嗟に反応して身を引いた事により浅い傷を与えるだけになる。
 近づいてきたカノンに対して、今度は男が短剣を突き刺す。右肩を貫かれたカノンだが、そこで怯まずに前に出た。

「んなっ!?」

 カノンは歯を食いしばって、男の腹に短剣を突き立てた。

「ごふっ……!」

 だが、男はこれで倒れない。カノンから短剣を引き抜き、そのまま再びカノンの右肩に突き刺す。傷口と出血が増えるが、カノンは力を緩めない。短剣を捻って相手の傷口を広げていく。

「がぁああああああああああ! てめぇ!!」

 男も同様に傷口を広げるが、それでもカノンは力を緩めない。
 男は、カノンの執念に恐怖を抱く。男はカノンの身体から短剣を抜き、今度はその心臓へと突き立てようとした。

「しぃぃぃいいいいねええええぇぇぇ!!」

 だが、その寸前に右足の踏ん張る力が無くなる。

「な……に……?」

 男が右足に視線を向けると、削り取られた自分の足首が少し濡れている事が分かった。唐突な状況に思考が停止した男の腹をカノンが何度も突き刺し、最後に腹を斬り裂いた。

「あっ……く……そ…………が…………」

 大量出血に加えて、内臓もズタズタにされた男は、そこで事切れた。
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