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達成感と苦しみ
最強の魔法
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「『魔剣術・重圧』」
アルが、剣を縦に空振る。すると、ドラゴン達は、不可視の圧力に押し潰されていた。ただ、そんな一撃でも、完全に潰すことは出来ず、ドラゴン達は、ゆっくりとだが、足を進めようとしている。
「『超重力《ブラックホール》』」
そこに、ネルロの魔法が加わり、ドラゴン達は、地面に完全に縫い付けられた。ドラゴン達は、アル達に威嚇するために口を大きく開けて咆哮していた。
「行きますよ、リンガル君」
「はい、いつでも」
カレナは手を前に伸ばし、リンは弓を構える。
「『聖槍《ホーリーランス》』」
「『魔弓術・氷針』」
カレナとリンは、放った魔法を精密に操作して、ドラゴン達の口の中に叩き込む。ドラゴン達は、大きな咆哮をしながら、地面に伏せる。
「『聖雨《ホーリーレイン》・爆破《エクスプロージョン》』」
カレナが追撃の魔法を放つ。聖雨自体は、光の雨を降らせる効果しかないが、カレナはそこに爆破の付加を行う。つまり、命中すれば、爆発を起こす光の雨が、ドラゴンに対して降っているのだった。
光の絨毯爆撃によって、ドラゴンの身体がどんどん傷付いていく。先程の弱点攻撃で、かなりのダメージを負ったところに、この追撃なので、ドラゴン達は抵抗することも出来ない。
「これで、倒せるんですか?」
「いえ、少しダメージを負わせることしか出来ないです。でも、これで時間を稼げます」
カレナは、深呼吸をして体内の魔力を高めていく。カレナ程の魔力を持ってして、一度魔力を高めないと使えない魔法のようだ。
「先生は何を?」
「完全にトドメを刺そうとしているのね。私達は、ドラゴンの動きを完全に止めるわよ。今のドラゴンなら、私達でも、完全に止められるわ」
アルとネルロは、ドラゴンを足止めしている魔法に更なる魔力を込めて、完全に動きを止める。もはや、一歩どころか、少したりとも身体を動かす事は出来ない。
「すぅ~……はぁ~……行きます!」
カレナは、両手を前に突き出す。
「『絶対零度《アブソリュートゼロ》』」
ドラゴン達の周りの温度が、一気に極低温まで下がっていく。その結果、ドラゴンの身体が先端からどんどん凍っていく。さらに、温度は低下していき、絶対零度までなると、ドラゴン達の身体は、内臓まで完全に凍り付いた。
「すごい……」
ソフィに抱えられながら、後ろを見ていたマリーは、カレナが扱う魔法に圧倒されていた。
だからなのか、その時、マリーだけが、それに気が付いた。それは、空から高速で迫ってきていた。アル達からは、木々の葉で見えない。そう、ドラゴンの新たな群れが襲い掛かってきていたのだ。
「……!!」
マリーの頭の中に、嫌な出来事が蘇る。マリーの身体は、そのせいで震えてしまう。
(怖い……すごく怖い……でも!)
マリーは、すかさず手を空に向ける。
「『火炎槍《フレイムランス》・高速《ハイスピード》』」
マリーは、炎の槍を敵の動きを先読みして撃つ。高速の炎の槍は、ドラゴンの身体に勢いよく命中する。
ドラゴンに、あまりダメージを与えられていないが、狙いを自分にする事が出来た。
「マリー!?」
急な行動に、コハク達も驚きを隠せない。その間に、マリーは、ソフィから降りる。ソフィが本気で掴めば、マリーを止められるが、それはマリーを傷つける事を示している。
主を守るために主を傷つけるという矛盾した考えにフリーズしたソフィは、マリーを掴み続ける事が出来なかった。
「借りる!!」
マリーは、アイリが連れていた馬に跨がって、コハク達から離れていく。それを空からドラゴンの群れが追い掛けていく。
『主様!』
馬で駆けていくマリーをソフィが追う。機械人形であるソフィは、馬に負けないくらいの速度でも走る事が出来ていた。
「マリー! あの馬鹿!」
空からしたドラゴンの咆哮と爆発音から、マリーが何をしたのか察したアルは、苦々しい顔で駆け出した。
「借りるぞ!!」
アルも馬に跨がってマリーを追い掛ける。その時、森の向こうから新たなドラゴンの群れが走ってきているのが見えた。
「カレナ! どうするの!?」
ネルロがカレナを振り返る。そして、その表情を見て、息を呑む。
「ネルロは、生徒の皆をお願い。ネルロなら大丈夫でしょ。私は、あの二人を追う」
「わ、分かったわ。あまり、使いたくはないんだけど」
ネルロの返事と同時に、カレナが猛スピードで駆け出した。人間では決して出せない速度で……
「嘘……」
あまりの速さにセレナ達は唖然としていた。
「あなた達! 私の後ろにいなさい!」
ネルロはコハク達を背後に庇ってドラゴンの群れと対峙する。
ネルロは小さなナイフを取り出すと、刃の部分を掴んで勢いよく引く。ネルロの手のひらから血が滴り落ちる。突然の凶行に、コハク達は開いた口が塞がらない。
「ぶち殺してあげるわ」
────────────────────────
馬に乗って駆けていたマリーにドラゴンが急降下してくる。
「……!!」
マリーは、巧みに馬を操って避けるが、ドラゴンは、逃げていくマリーにブレスを吐こうとする。マリーは、結界で防ごうと考えるが、それには及ばなかった。何故なら、ドラゴンの口がいきなり勢いよく閉じたからだ。
その事態を引き起こしたのは、マリーの後を追っていたソフィだった。金属の塊であるソフィが勢いの乗ったアッパーを打ち込めば、さすがのドラゴンも口を閉じざるを得なかった。その結果、ブレスが口内で炸裂してドラゴンが倒れる。
『主様!』
ソフィは、マリーの馬に追いついて、マリーの横を走る。
「ソフィ!? 何、その速度!?」
『そのような事はどうでもいいです。それよりも、他のドラゴンが上空から追ってきています。急ぎ、避難を!』
「駄目! このまま引きつける! もう目の前で、誰かが死ぬところなんて、見たくない!」
『かしこまりました』
ソフィは、それ以上何も言わずにマリーと並走していた。追ってくるドラゴン達は、マリー達にブレスを吐いてくるが、マリー達はそれを難なく避ける。先程のソフィの攻撃を見ているからか、不用意に降りてくるドラゴンはいなかった。
「全く追いつけない……あいつの乗馬テクニックは、どうなっているんだ!?」
その後を追っているアルは、マリーとの差を中々縮めることが出来なかった。
ドラゴン達は、自分のすぐ下を走るアルではなく、先を走るマリーに目が向いている。自分達に攻撃を加えたマリーを標的にしているのだ。
(くそ! この状態から魔剣術を放っても、ドラゴンに当たるかは分からない。いや、注意を俺に向けることは出来るか!?)
アルは、剣の柄を握り、抜き放とうとする。しかし、その手を後ろから走ってきたカレナに抑えられた。
「ここは私に任せてください」
カレナは、全く息を切らさずに、走りながらそう言った。アルは、カレナの感情を伺わせない無表情さに、無言で頷く。カレナは、アルの説得を終えると、速度を上げてマリーを追っていった。その速度のせいで、地面が捲れ上がっていた。
「どうなってるんだ……いったい……」
あり得ない光景に、アルも思わずそう呟くことしか出来ない。
襲い掛かるブレスをマリーは、ギリギリで避ける。しかし、他のドラゴンが、マリーの逃げた場所にブレスを吐いた。
「やば……!!」
避けたばかりで、急に方向を変えることができないマリーに覆い被さるようにソフィが間に入った。これで多少なりともマリーを守る事が出来る。マリーは、なんとか結界の魔道具が間に合わないかと、動く。だが、その必要はなくなった。
「『神域《サンクチュアリィ》』」
マリーに当たる寸前で、カレナの結界が、ブレスを防ぐ。
「え?」
マリーもカレナが、ここまで追ってきているとは思っていなかったので、突然の結界に驚きを隠せなかった。
「マリーさん、大丈夫ですか?」
カレナは、いつの間にかマリーの横におり、馬を止めていた。
「は、はい。大丈夫です」
「そうですか。お説教は後です。後ろに下がってください」
「は、はい」
カレナは、無表情ではなく少し笑って言ったのだが、マリーは、異常なまでの圧力を感じた。少し怯えたマリーに代わって、ソフィが馬を操り、カレナの後ろに移動する。
「ふぅ……」
カレナは、先程の絶対零度以上の魔力を集めていく。ただそれだけで、大気が震えているのを、マリーは感じていた。
「『破壊《ディストラクション》』」
カレナは、飛んでいるドラゴン達に向かって手を伸ばし、魔法を放った。一瞬、辺りが光ったかと思えば、マリー達に向かってきていたドラゴン達が消し飛んでいた。それだけでなく、マリー達の頭上の木々の枝やその向こうにある雲の一部まで全て消し飛んでいる。それが、カレナの魔法の効果範囲だという事は、マリーでも理解出来た。
「なに……これ……?」
「さぁ、ネルロ達の元に戻りますよ」
マリーは、カレナが使った魔法の意味が分からず、困惑していたが、カレナは全く気にせずに、マリーに戻るように促す。マリーもそれ以上何も訊けなかった。カレナの指示に従い、ソフィが馬を歩かせる。
途中で合流したアルもマリーと同じような顔になっていた。
────────────────────────
マリー達が、コハク達のいる場所に帰ると、辺り一面が血だらけになっており、ドラゴン達の死体の中で、ネルロが気分悪げにしていた。
「マリー!!」
ソフィによって馬から下ろされているマリーの元にコハクが駆け寄る。そして、何かを言う前にマリーの頬をひっぱたいた。
「…………」
ひっぱたいたコハクは、マリーに色々と言おうとしたのだが、それらが声になることはなく、眼から涙が流れ出していた。そして、勢いよくマリーを抱きしめる。
「心配したんだから……!!」
辛うじて発することが出来た言葉は、それだけだった。カレナは、ネルロを馬の上に乗せてから、マリー達を見る。
「さぁ、街まで向かいますよ」
カレナが馬を引いて先導して、マリー達を街まで送っていった。その間、ドラゴンが襲ってくることはなかった。
────────────────────────
空でドラゴンと戦っていたカーリーは、強い魔力の波動を感じて、そちらを向いた。
「この魔力は……カレナかね。これまた、異常な魔法を使うねぇ」
そんな事を言いながら、魔法でドラゴン達を倒し続ける。
「大分減ってきたね。この調子でいけば、後十分くらいで倒しきれるだろうね」
カーリーは、さらに勢いを増してドラゴンを倒していった。
アルが、剣を縦に空振る。すると、ドラゴン達は、不可視の圧力に押し潰されていた。ただ、そんな一撃でも、完全に潰すことは出来ず、ドラゴン達は、ゆっくりとだが、足を進めようとしている。
「『超重力《ブラックホール》』」
そこに、ネルロの魔法が加わり、ドラゴン達は、地面に完全に縫い付けられた。ドラゴン達は、アル達に威嚇するために口を大きく開けて咆哮していた。
「行きますよ、リンガル君」
「はい、いつでも」
カレナは手を前に伸ばし、リンは弓を構える。
「『聖槍《ホーリーランス》』」
「『魔弓術・氷針』」
カレナとリンは、放った魔法を精密に操作して、ドラゴン達の口の中に叩き込む。ドラゴン達は、大きな咆哮をしながら、地面に伏せる。
「『聖雨《ホーリーレイン》・爆破《エクスプロージョン》』」
カレナが追撃の魔法を放つ。聖雨自体は、光の雨を降らせる効果しかないが、カレナはそこに爆破の付加を行う。つまり、命中すれば、爆発を起こす光の雨が、ドラゴンに対して降っているのだった。
光の絨毯爆撃によって、ドラゴンの身体がどんどん傷付いていく。先程の弱点攻撃で、かなりのダメージを負ったところに、この追撃なので、ドラゴン達は抵抗することも出来ない。
「これで、倒せるんですか?」
「いえ、少しダメージを負わせることしか出来ないです。でも、これで時間を稼げます」
カレナは、深呼吸をして体内の魔力を高めていく。カレナ程の魔力を持ってして、一度魔力を高めないと使えない魔法のようだ。
「先生は何を?」
「完全にトドメを刺そうとしているのね。私達は、ドラゴンの動きを完全に止めるわよ。今のドラゴンなら、私達でも、完全に止められるわ」
アルとネルロは、ドラゴンを足止めしている魔法に更なる魔力を込めて、完全に動きを止める。もはや、一歩どころか、少したりとも身体を動かす事は出来ない。
「すぅ~……はぁ~……行きます!」
カレナは、両手を前に突き出す。
「『絶対零度《アブソリュートゼロ》』」
ドラゴン達の周りの温度が、一気に極低温まで下がっていく。その結果、ドラゴンの身体が先端からどんどん凍っていく。さらに、温度は低下していき、絶対零度までなると、ドラゴン達の身体は、内臓まで完全に凍り付いた。
「すごい……」
ソフィに抱えられながら、後ろを見ていたマリーは、カレナが扱う魔法に圧倒されていた。
だからなのか、その時、マリーだけが、それに気が付いた。それは、空から高速で迫ってきていた。アル達からは、木々の葉で見えない。そう、ドラゴンの新たな群れが襲い掛かってきていたのだ。
「……!!」
マリーの頭の中に、嫌な出来事が蘇る。マリーの身体は、そのせいで震えてしまう。
(怖い……すごく怖い……でも!)
マリーは、すかさず手を空に向ける。
「『火炎槍《フレイムランス》・高速《ハイスピード》』」
マリーは、炎の槍を敵の動きを先読みして撃つ。高速の炎の槍は、ドラゴンの身体に勢いよく命中する。
ドラゴンに、あまりダメージを与えられていないが、狙いを自分にする事が出来た。
「マリー!?」
急な行動に、コハク達も驚きを隠せない。その間に、マリーは、ソフィから降りる。ソフィが本気で掴めば、マリーを止められるが、それはマリーを傷つける事を示している。
主を守るために主を傷つけるという矛盾した考えにフリーズしたソフィは、マリーを掴み続ける事が出来なかった。
「借りる!!」
マリーは、アイリが連れていた馬に跨がって、コハク達から離れていく。それを空からドラゴンの群れが追い掛けていく。
『主様!』
馬で駆けていくマリーをソフィが追う。機械人形であるソフィは、馬に負けないくらいの速度でも走る事が出来ていた。
「マリー! あの馬鹿!」
空からしたドラゴンの咆哮と爆発音から、マリーが何をしたのか察したアルは、苦々しい顔で駆け出した。
「借りるぞ!!」
アルも馬に跨がってマリーを追い掛ける。その時、森の向こうから新たなドラゴンの群れが走ってきているのが見えた。
「カレナ! どうするの!?」
ネルロがカレナを振り返る。そして、その表情を見て、息を呑む。
「ネルロは、生徒の皆をお願い。ネルロなら大丈夫でしょ。私は、あの二人を追う」
「わ、分かったわ。あまり、使いたくはないんだけど」
ネルロの返事と同時に、カレナが猛スピードで駆け出した。人間では決して出せない速度で……
「嘘……」
あまりの速さにセレナ達は唖然としていた。
「あなた達! 私の後ろにいなさい!」
ネルロはコハク達を背後に庇ってドラゴンの群れと対峙する。
ネルロは小さなナイフを取り出すと、刃の部分を掴んで勢いよく引く。ネルロの手のひらから血が滴り落ちる。突然の凶行に、コハク達は開いた口が塞がらない。
「ぶち殺してあげるわ」
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馬に乗って駆けていたマリーにドラゴンが急降下してくる。
「……!!」
マリーは、巧みに馬を操って避けるが、ドラゴンは、逃げていくマリーにブレスを吐こうとする。マリーは、結界で防ごうと考えるが、それには及ばなかった。何故なら、ドラゴンの口がいきなり勢いよく閉じたからだ。
その事態を引き起こしたのは、マリーの後を追っていたソフィだった。金属の塊であるソフィが勢いの乗ったアッパーを打ち込めば、さすがのドラゴンも口を閉じざるを得なかった。その結果、ブレスが口内で炸裂してドラゴンが倒れる。
『主様!』
ソフィは、マリーの馬に追いついて、マリーの横を走る。
「ソフィ!? 何、その速度!?」
『そのような事はどうでもいいです。それよりも、他のドラゴンが上空から追ってきています。急ぎ、避難を!』
「駄目! このまま引きつける! もう目の前で、誰かが死ぬところなんて、見たくない!」
『かしこまりました』
ソフィは、それ以上何も言わずにマリーと並走していた。追ってくるドラゴン達は、マリー達にブレスを吐いてくるが、マリー達はそれを難なく避ける。先程のソフィの攻撃を見ているからか、不用意に降りてくるドラゴンはいなかった。
「全く追いつけない……あいつの乗馬テクニックは、どうなっているんだ!?」
その後を追っているアルは、マリーとの差を中々縮めることが出来なかった。
ドラゴン達は、自分のすぐ下を走るアルではなく、先を走るマリーに目が向いている。自分達に攻撃を加えたマリーを標的にしているのだ。
(くそ! この状態から魔剣術を放っても、ドラゴンに当たるかは分からない。いや、注意を俺に向けることは出来るか!?)
アルは、剣の柄を握り、抜き放とうとする。しかし、その手を後ろから走ってきたカレナに抑えられた。
「ここは私に任せてください」
カレナは、全く息を切らさずに、走りながらそう言った。アルは、カレナの感情を伺わせない無表情さに、無言で頷く。カレナは、アルの説得を終えると、速度を上げてマリーを追っていった。その速度のせいで、地面が捲れ上がっていた。
「どうなってるんだ……いったい……」
あり得ない光景に、アルも思わずそう呟くことしか出来ない。
襲い掛かるブレスをマリーは、ギリギリで避ける。しかし、他のドラゴンが、マリーの逃げた場所にブレスを吐いた。
「やば……!!」
避けたばかりで、急に方向を変えることができないマリーに覆い被さるようにソフィが間に入った。これで多少なりともマリーを守る事が出来る。マリーは、なんとか結界の魔道具が間に合わないかと、動く。だが、その必要はなくなった。
「『神域《サンクチュアリィ》』」
マリーに当たる寸前で、カレナの結界が、ブレスを防ぐ。
「え?」
マリーもカレナが、ここまで追ってきているとは思っていなかったので、突然の結界に驚きを隠せなかった。
「マリーさん、大丈夫ですか?」
カレナは、いつの間にかマリーの横におり、馬を止めていた。
「は、はい。大丈夫です」
「そうですか。お説教は後です。後ろに下がってください」
「は、はい」
カレナは、無表情ではなく少し笑って言ったのだが、マリーは、異常なまでの圧力を感じた。少し怯えたマリーに代わって、ソフィが馬を操り、カレナの後ろに移動する。
「ふぅ……」
カレナは、先程の絶対零度以上の魔力を集めていく。ただそれだけで、大気が震えているのを、マリーは感じていた。
「『破壊《ディストラクション》』」
カレナは、飛んでいるドラゴン達に向かって手を伸ばし、魔法を放った。一瞬、辺りが光ったかと思えば、マリー達に向かってきていたドラゴン達が消し飛んでいた。それだけでなく、マリー達の頭上の木々の枝やその向こうにある雲の一部まで全て消し飛んでいる。それが、カレナの魔法の効果範囲だという事は、マリーでも理解出来た。
「なに……これ……?」
「さぁ、ネルロ達の元に戻りますよ」
マリーは、カレナが使った魔法の意味が分からず、困惑していたが、カレナは全く気にせずに、マリーに戻るように促す。マリーもそれ以上何も訊けなかった。カレナの指示に従い、ソフィが馬を歩かせる。
途中で合流したアルもマリーと同じような顔になっていた。
────────────────────────
マリー達が、コハク達のいる場所に帰ると、辺り一面が血だらけになっており、ドラゴン達の死体の中で、ネルロが気分悪げにしていた。
「マリー!!」
ソフィによって馬から下ろされているマリーの元にコハクが駆け寄る。そして、何かを言う前にマリーの頬をひっぱたいた。
「…………」
ひっぱたいたコハクは、マリーに色々と言おうとしたのだが、それらが声になることはなく、眼から涙が流れ出していた。そして、勢いよくマリーを抱きしめる。
「心配したんだから……!!」
辛うじて発することが出来た言葉は、それだけだった。カレナは、ネルロを馬の上に乗せてから、マリー達を見る。
「さぁ、街まで向かいますよ」
カレナが馬を引いて先導して、マリー達を街まで送っていった。その間、ドラゴンが襲ってくることはなかった。
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空でドラゴンと戦っていたカーリーは、強い魔力の波動を感じて、そちらを向いた。
「この魔力は……カレナかね。これまた、異常な魔法を使うねぇ」
そんな事を言いながら、魔法でドラゴン達を倒し続ける。
「大分減ってきたね。この調子でいけば、後十分くらいで倒しきれるだろうね」
カーリーは、さらに勢いを増してドラゴンを倒していった。
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