巨骸山脈

n_tsutamoto

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第三章 調査

16. はじまり

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翌朝、集合場所に向かうとすでにハットが待っていた。
「おはよう!よし、行こうか!」
「あれ、ほかの人たちは......?」
「僕はまだ新人だからね、ひとりまでしか許可されてないんだよ!昨日言ってなかったっけ?」
初耳だった。
大丈夫か心配になったが、逆に色々聞けるチャンスかもしれないと思い直して、ハットの後について歩き出した。

採掘場に着くと、ハットはまず山側から見てみたいとのことで、山の左側に向かった。
左側は初めて来たが、右側とそんなに変わらないようだ。
しばらく歩いていると、ここだ!と「8-629」と書かれた看板の前でハットが声を上げた。
白脈を覗いてみると、かなり奥深くまで掘り進められているようだ。
「ここの白脈は第三層まで続いてるものでね。ちょっと深層を見てみたいんだ。」
僕が驚いていると、ハットは楽しそうに笑っていた。
「僕も第三層を見るのは初めてだからね、どんな景色が広がってるか楽しみだよ!」
ハットは楽しそうに、採掘された白脈の中に飛び込んでいった。

知ってはいたが、白脈の中はとても暗い。
歩き始めはよかったが、外の光が入らなくなってくると急に暗くなり、自分の足元も見えなくなってきた。
カバンの中に入れていた、採掘で使用する光る結晶が付いた紐を手首に付ける。
本来は鎌状切削機に付けるものだが、歩きにくいのでとりあえず手首に付けてみた。
「それいいね!でも、もっと明るくていいのがあるよ?」
そう言ってハットはカバンからより明るい結晶が付いたバンドのようなものを取り出し、かぶっているヘルメットに装着した。
ほら、と言って手渡されたそれを、同じようにヘルメットに装着する。
周りの視界が一気に明るくなる。
こんな便利なものがあったのかと感動していると、ハットが光る結晶について教えてくれた。
「この光る結晶は何か知ってるかい?これは光蛋結晶(こうたんけっしょう)と呼ばれていてね。巨骸の第一層から第二層で採掘できるんだ。取れる深さによって色が変わって、深い階層で取れるものほど、色が青に近づいて明るくなる。」
だから今まで見てきた光る結晶は色がそれぞれ違っていたのかと、妙に納得した。
「巨骸って本当に面白いよね!謎であふれてる。」
ハットの楽しそうな様子を見て、僕が本当は何をしたかったのか、思い出した。

僕は、巨骸を、世界を知りたくて、ここまで来たんだ。
気になることは全部ハットに聞いて、吸収しよう。
巨骸を知ることで、トマに何が起こったのかも知ることができる。
僕の研究は、いま始まったのかもしれない。

ハットは尋ねると様々なことを教えてくれた。
「白脈はどんな機能があるか知っているかい?」
「深層につながる道じゃないんですか?」
「白脈そのものの機能だよ!白脈の破片は土に混ぜると、野菜がよく育つんだ。あと、これは内緒だけど、家畜の食べ物に混ぜても育ちが早い。つまり、栄養なんだ。」
「動物が、食べてるんですか?」
「あくまでも実験だから、公にはされていないけどね。内緒だよ?」
いたずらっぽくハットが笑う。
やはりハットの持っている知識は僕の比じゃない。
「ほかにはどんな実験があるんですか?」
「興味が出てきた?ほかにはね......」

その後も何日か一緒に色々な白脈を探索したが、ハットの話は本当に興味深かった。
僕が今まで採掘場で働いていた時間は何だったんだと思うほど、濃密な時間だった。
僕があまりにも熱心に聞くので、ハットも疑問を持ったのかもしれない。
「シャル君はなんで採掘場に来たの?」
「配給される維持薬が足りなくなったので働こうと思ったんですけど、働くなら前から興味があった巨骸がいいなと思ったんです。」
「そうなんだ......つらいことを聞いたね。もともとは何になりたかったのかな?」
「実は......巨骸の研究者になりたいと思ってました。」
ハットの目が輝くのがわかった。

「本当に君にしてよかったよ!!」
ハットが体全体で喜びを表現する。
「今から変なことを言うかもしれないけど、内緒にしてもらうことはできるかな?」
よくわからなかったが、とりあえずうなずく。
「僕の専門は深層の構造と言ったけど、それはちょっと違うんだ。いや、嘘ではないんだけど......一部というか......」
何やら考え込んだ後、少しうなずいてから意を決したように話し始めた。
「実は、本当は、巨骸の真実を知りたいんだ。巨骸とは何なのか、なぜ、いつから、存在しているのか。僕は、この未知の存在を解き明かしたい。」
目の覚める思いだった。
興奮のあまり、声が裏返るのがわかった。
「僕も、この世界の真実を知りたいと思って、ここに来ました。」

ハットは大きな声で笑ったあと、決めた!と叫んだ。
「君は僕の研究パートナーだ!一緒にこの世界の真実を追い求めよう!」
「はい、お願いします。」
ハットと力強く握手をする。
「ただ、これは危険な研究だ!政府が隠している都合の悪い真実に触れる可能性がある。よって、これは2人だけの秘密とする!」
僕が大きくうなずくと、ハットはこれから作戦会議だと言って、早々に研究室に引き上げていった。
今日までの偵察は、僕の気持ちを確かめるためだったんだと、後から気が付いた。
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