巨骸山脈

n_tsutamoto

文字の大きさ
19 / 25
第三章 調査

18. 鼓動

しおりを挟む
ハットも僕も緊張感が高まっていた。
なぜなら、今いるこの白脈が候補の四つのうちの最後の一つだからだ。
ここがダメなら、もう一度作戦を考えなくてはならない。
一生懸命探しながら進んでいくが、残念なことに紫色の壁が見えてきた。
「ここもだめかぁ......」
ハットが大きなため息とともに座り込む。
僕は黙ったまま、第三層の採掘に取り掛かった。
紫筋層と呼ばれているこの紫の壁は、最初はただ硬いように感じたが、何回も刃を当てているうちに名前の通り筋肉のように弾力性があることに気が付いた。
削れそうな気がするのに削れないのは、この弾力性のせいなのだと思う。

集中して意識を研ぎ澄まし、刃に力を込める。
いつもと違う、何か刃が入り込む感覚があった。
「ハットさん、これ......」
座って休んでいたハットが近づいてくる。
「どうしたんだい?......は、刃が入ってるじゃないか!!す、すごすぎる!!」
鎌状切削機の先端がわずかだが、紫色の壁に入っていた。
「欠片でもいいから採掘できないだろうか!少しでも持って帰れれば、世紀の大発見だぞ......」
「何とか少しでも削ろうとしたんですけど、これ以上は刃が動かないですね......この弾力性さえなければ少しなら取れそうなんですけど......」
「そ、そうか......いま、弾力性って言った?」
「言いましたけど......?」
「紫筋層は弾力性があるのかい?どうしてわかったの?」
「削ってるうちになんとなく......感覚ですけど......」
「大発見だよ!!紫筋層に弾力性があるなんて......もしそれが証明できたらまた一歩先に進めるぞ!!」
ハットが興奮して僕の体を何度も揺さぶる。
「どうにかして削る方法を考えよう!!明日からまた作戦会議だ!!」
そう言うと、ハットは早く早くと僕を急き立てながら、帰り道を急いだ。

その夜、いつものようにパラヤと会議があったので、第三層のことを共有した。
「パラヤにもやってみてほしいなぁ、きっと弾力を感じると思うんだけど......」
「......そもそも第三層に触れる機会がない。」
「それはそうだけど......あ、調査団の件はどうなったの?」
「......ちょうど今日決まった。明日からは僕も調査団。」
「よかった!おめでとう!どんなとこ?」
「......なんか年上の偉そうなおじさんだった。団員もいっぱいいるみたい。」
「それじゃ大規模調査とかしそうだね!すぐに触れる機会が来るんじゃない?」
「......そうだといいけど。とりあえずやっとスタートライン。」
パラヤは柔らかく笑ってこちらに拳を突き出してきた。
僕も笑いながら拳を突き合わせる。
また一歩前進だと嬉しくなった。

翌日は、ハットの研究室でどのように第三層を削るかを話し合った。
昨日の夜に大興奮で帰っていったハットは終始眠そうにしゃべっていた。
「昨日帰ってからずっと調べてたんだけど、第三層は情報が少なくてね......大した成果はなかったよ......」
「削る刃はもっといいものが見つかりましたか?」
「いや、それもダメだね......鎌状切削機の刃は一番いい素材を使っているみたいで、もっと切れ味のいいものはなさそうだ......」
ハットは少しずつ目が覚めてきたのか、大きく伸びをする。
「ただ、手がないわけじゃない。」
「え、どういうことですか?」
「例えば、刃を第三層に刺した状態で、刃の上を思いっきりハンマーで叩く。火で熱してから冷やして削る、とか可能性があると思うんだ。でも、シャル君もわかっている通り、我々は......」
「二人しかいない。」
「その通り!二人ではどうにもこうにも難しいんだよね。だから、これ以上先に進むには、ほかの調査団に協力を依頼する必要があるんだけど、シャル君はそれでもいいかな?」
僕が頭に?を浮かべていると、追加で説明をしてくれた。
「協力を依頼するということは、情報を共有するということなんだ。だから、我々が発見した情報もみんなのものになってしまうんだけど......」
「もちろんです。僕は、自分の手柄にしたいとかはないので。そんなことより、真実を知りたいです。」
ハットが大きな声で笑う。
「そう言ってくれると思っていたよ!それじゃ早速、協力を依頼しにいこうか!もちろん誰でもいいわけじゃない。信頼できる研究員にあてがあるんだ!」
僕は部屋で留守番だと思っていたが、そうではなかったらしい。
いつの間にか元気になったハットと一緒に、ほかの研究員に協力を依頼しにいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。 王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。 風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...