江戸の奉公人ですが美しい神仙の封印を解いたら運命の人でした

闇雲シャルロッテ

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16 覚えのある天井

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 結城に連れられて小料理屋に入り、向かい合って座る。今日も結城の身体からは昨日と同じ妖艶な匂袋の香りがした。

「さあ、煮物でも田楽でも好きなものを頼め。もちろん酒もな」
「いえ、お酒はもう……」
「男子たるもの、酒ぐらい飲めないと駄目だ」

 そう言って並々と猪口に注がれた酒を飲まされてしまう。

「あの、どうしてこんなによくしてくださるんですか?」
「どうしてって、接吻せっぷんした仲じゃないか」
「―――!」
「それに失恋をいやすには、新しい恋をするのが一番だ」

 なぜだろう、結城の傍にいると頭がぼーっとして言われることすべてが正しい気がして、なんでも話してしまいたくなる。

「それって結城様を好きになれってことですか?」

 普段の蒼衣なら決して言わないようなことまで。

「ああ、そうだ」

 何も言ってくれない究竟とは違って、結城の言葉は直線的に響いてくる。

「昨日あのあと、家に帰ってからあの人と喧嘩してしまいました」
「究竟とかいう奴か?」
「はい」
「美人で色っぽいお嬢様とやっていたのか?」
「いいえ。百合江お嬢様から聞いたんですが、好きな人に操を立てたいからと断ったそうです。でも今は、好きな人がいることを知って、もっと落ち込んでいます」
「ほらな、どちらにしても御主は遊ばれていたのだ」

 結城はいつも辛いことばかり言う。でもそれは現実であり真実であって、早く素直に受け入れた方がいいに違いない。

「もう全部、忘れてしまえたらいいのに……」
「そうだ、それがいい」

 そう言うと結城は目の色を変えて蒼衣を力強く睨んだ。
 アレ? タシカ、キノウモコンナコトガアッタヨウナ……。
 次の瞬間、額を人差し指でトンと小突かれて、蒼衣は意識を失った。

 見覚えのある天井だった。結城の屋敷の天井だ。
 また酔い潰れて結城が支払いも済ませて屋敷に運んでくれたのだろう。またしても甘えて迷惑をかけてしまった。究竟と出会ってから、今までの自分なら絶対やらなかったことばかりしている。
 仰向けで寝ている布団から起き上がろうとすると、手首と足首に痛みを感じた。自由に動かすこともできない。おかしいと思い頭だけ上げて自分の身体を見ると、着物も褌もすべて脱がされて全裸にされているうえに、両手首と両足首は麻縄できつく縛られていた。
 まだ頭がぼんやりとはしていても身の危険を感じた蒼衣は、きつく縛られた麻縄を外そうと布団の上で大きく身体を動かしたが全くゆるめることができない。それでも何とか外そうと何度も身体を動かしていると、ふすまを開けて着流し姿の結城が入って来た。

「そんなにジタバタしてもその縄は外れんぞ」

 結城は全裸の蒼衣に近付くと、大きな分厚い手で太腿を撫ではじめた。その感触は、繊細な究竟のそれとは全く違っていた。

「やめてください! こんな酷いことをするなんて! どういうつもりですか!?」
「どういうつもりって、こういうつもりだよ」

 手足を縛られて抵抗できない蒼衣の唇を結城が奪う。思いきり顔を横に背けてもすぐに大きな分厚い手で引き戻されて、また無理矢理唇を奪われる。

「信じてたのに……」
「騙される方が悪い」

 横たわる蒼衣の目の端から涙が零れた。そんなことにはお構いなく、結城は蒼衣を愛撫していく。

「いやっ! やめて!」

 両手足を縛られたままごつごつした指で荒々しく二つの胸の突起を捏ねられ抓られ舐められる。固くなって反応していても、心の中は嫌悪感でいっぱいだった。
 違う、こんなことをしたいんじゃない、されたいんじゃない。今ならはっきりとわかる。自分はただ、究竟が好きなだけだった。究竟だから抱かれたいだけだった。
 蒼衣の上に乗ってきた結城の首から提げている匂袋が蒼衣の顔に当たる。この匂袋の香りをぐと頭がふわふわして何も考えられなくなってしまう。それでも嫌な気持ちは変わらなかった。
 ああ! 早くここから逃げ出したい!
 結城は蒼衣の全身を舐めまわしたあと、両足首をきつく縛っていた麻縄を解いた。
 両足が自由になり立ち上がって逃げようとしたがすぐに結城に両足首を掴まれ、そのまま両脚はぐいと両肩につくまで折り曲げられて、蒼衣の恥部は露わにされてしまった。

「さて、どうするか」

 舌舐めずりしている結城を見て、羞恥しゅうちと嫌悪で顔を横に背ける。

「予定よりまだ早いが、せっかくだから一回やっておくか」

 結城が宛てがったのがわかった。

「いやあああ!!」

 涙があふれる。諦めて顔を背けたまま強く目を閉じた時、ガラと襖が開く音がした。

「もう、そのぐらいにしてやってくれ」

 聞き覚えのある声だった。強く閉じた目を開く。瞳に映ったのは究竟の姿だった。

「究竟様!」

 結城に全裸で組み敷かれたまま、蒼衣は究竟の名を呼んだ。さらに涙が溢れてくる。

「ふん、随分と早かったな。あともう少しだったのに」

「その子は何も関係ない。放してやってくれ」

「そうかな?」

 結城は両手首を縛られたままの蒼衣を起き上がらせて布団の上に座らせると、蒼衣の首に背後から片腕を回して逃げられないようにしたまま、布団の下に隠していた脇差わきざしを取り出した。
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