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24 出生の秘密
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200年前の戦国時代に戦国武将として間宮が治めていた西国にある小さな国へ行った究竟と琥太郎は、まず間宮の城を訪れた。
城自体は残っていたが今は間宮一族とは全く縁も所縁もない外様大名が、徳川幕府によって配置され平和的に統治していた。
国の中を住民たちに間宮の情報を聞き込みをしながら探し歩く。
究竟を封印してから戦に負け続けた間宮は一年もしないうちに、間宮が裏切って殺した、同盟を結んでいた武将の息子によって一族郎党皆殺しにされていた。
村の中だけでなく田畑や河川敷、山奥まで探し回ってやっと田圃の畦道で見つけた間宮の墓は、墓とは呼べないような木の板に「間宮義勝之墓」とだけ書かれた粗末なものだった。
土を掘り返して土葬された墓を暴くと、桶の中にミイラ化した間宮の遺体があった。しかしその遺体には首から上がなかった。
「戦で負けた時、相手方の武将に首を取られ持っていかれたな」
「首はどこに行ったニャ?」
「当時の首塚に集められたのだろう。それらしい塚や祠を探してみるか」
究竟たちは間宮のミイラ化した遺体を桶や名前が書かれた木の板と共にすべて燃やし尽くし、間宮の首を探しに行った。それがまだどこかにある限り、間宮の妖力を奪い切れないからだ。
それから数日間探し回ってやっと見つけた間宮の首は、人里離れた山奥の洞穴の中の祠にひっそりと祀られていた。
石や岩で作られた祠には、蒼衣が捨てられていた時にくるまれていたあの青い布と同じ、丸枠の中に三つの「卍」が三角形になるように描かれた間宮の家紋が刻まれていた。
しかし祠に貼られた札は破れ、供え物などもなく、苔や雑草が生えているなど荒れ放題だった。
「誰がこんなところに祀ったニャ」
「逃げ延びた忠実な家臣が首塚から首を探し出してここに隠すように祀ったのかもしれん」
「荒れ放題で誰にも手入れされてないようだニャ」
祠の石や岩を動かしていくと、中から古びた桐箱を見つけた。この中に間宮の首が入っているはずだ。究竟が桐箱の蓋に張られた札を破り、中を開けようとした時だった。
「あんたら、そこで何しとるんや」
洞穴の外を振り返ると、背負った籠に筍を入れた老婆が訝しげに究竟と琥太郎を見ていた。
「ここには200年前の戦国武将、間宮義勝が祀られているとか」
桐箱の蓋を開ける手を止めて、究竟が老婆に尋ねた。
「そうや。でもその祠には祟りがあるんやで? 近寄ったらあかん」
「祟り?」
「今から20年前のことや。この村にその祠を造った間宮の家臣の末裔の若い夫婦がおった。その夫婦は毎日熱心に掃除したり、供え物をしたりしてこの祠を護っておった。そうして毎日ここに参りに来ているうちに、ひとりの男の子を授かった」
「男の子?」
「その夫婦は生まれて間もない赤ん坊も毎日一緒にここに連れてきて、それはそれは熱心に信仰しておった。それがや、ある日、この洞穴の中で、その夫婦が惨殺されているのが発見された」
「何だと!?」
「かわいそうになあ、それはそれは酷い殺され方やった。そしてその日以来、その赤ん坊も神隠しに遭ったように消えてしもうた。母親が赤ん坊のために心を込めて作ったんやろう、六芒星の背守りを縫い付けられた小さな小さな産着だけをここに残して」
「まさか!」
「せやから、あんたらもここに近付いてはならん。早く行きなされ。ああ、怖ろしい。くわばらくわばら」
老婆は逃げるように足早に去って行った。
「究竟様……その赤ん坊がもしや……」
「ああ、間違いない。それが蒼衣だ」
「蒼衣様……なんてかわいそうニャ」
「間宮は俺から取り上げた通力を封印するための赤ん坊を奪い取るため、その夫婦を惨殺した。そして背中に母親が作った背守りと同じ六芒星の印で結界を張った。俺が神通力を取り出せないように」
「なんて酷いことをするニャ。絶対に許せないニャ。況してやその蒼衣様に究竟様の封印を解かせようとするなんて。でも、その間宮の魂胆にまんまと引っかかって、蒼衣様を誘導した琥太郎のせいでもあるニャ」
「お前は何も悪くない。悪いのは間宮だ。蒼衣が背負っている冥い宿命は、間宮によって背負わされたものだった。ただただ、俺を貶めようとするためだけの」
究竟が桐箱の蓋を開けると、人間の白骨化した頭蓋骨が入っていた。
「この髑髏を今すぐここで燃やすニャ!」
「いや、これは切り札としてまだ残しておく。墓を焼かれて力が弱まり間宮はきっと俺たちが動いていると勘付いたはずだ。そしてまた、蒼衣に何かしようとするに違いない」
その時、究竟が酷く咳込んだかと思うと、地面に激しく吐血した。
「究竟様! 駄目ニャ! 早く神通力を取り戻さないともう時間がないニャ!」
涙を流して琥太郎が究竟を見つめる。
「泣くな琥太郎。俺は大丈夫だ。簡単には死なん」
究竟は口元についた鮮血を手の甲で無造作に拭った。
「今ならわかる。なぜはじめて出会った時から、蒼衣のことが可愛くて愛しくて堪らなかったのか。あの子は俺のために生まれてきてくれた。あの子を冥い宿命から、俺が解放してやらねばならない」
「究竟様……」
「琥太郎、最後まで俺と一緒に闘ってくれるか?」
「もちろんニャ! 琥太郎は究竟様のためなら何でもできるニャ!」
「いい子だ! よし、もうここに用はない。蒼衣のもとに急いで帰るぞ!」
「ニャ!」
二人は一昼夜軍馬を飛ばし続け、蒼衣が待つ屋敷へと向かった。
城自体は残っていたが今は間宮一族とは全く縁も所縁もない外様大名が、徳川幕府によって配置され平和的に統治していた。
国の中を住民たちに間宮の情報を聞き込みをしながら探し歩く。
究竟を封印してから戦に負け続けた間宮は一年もしないうちに、間宮が裏切って殺した、同盟を結んでいた武将の息子によって一族郎党皆殺しにされていた。
村の中だけでなく田畑や河川敷、山奥まで探し回ってやっと田圃の畦道で見つけた間宮の墓は、墓とは呼べないような木の板に「間宮義勝之墓」とだけ書かれた粗末なものだった。
土を掘り返して土葬された墓を暴くと、桶の中にミイラ化した間宮の遺体があった。しかしその遺体には首から上がなかった。
「戦で負けた時、相手方の武将に首を取られ持っていかれたな」
「首はどこに行ったニャ?」
「当時の首塚に集められたのだろう。それらしい塚や祠を探してみるか」
究竟たちは間宮のミイラ化した遺体を桶や名前が書かれた木の板と共にすべて燃やし尽くし、間宮の首を探しに行った。それがまだどこかにある限り、間宮の妖力を奪い切れないからだ。
それから数日間探し回ってやっと見つけた間宮の首は、人里離れた山奥の洞穴の中の祠にひっそりと祀られていた。
石や岩で作られた祠には、蒼衣が捨てられていた時にくるまれていたあの青い布と同じ、丸枠の中に三つの「卍」が三角形になるように描かれた間宮の家紋が刻まれていた。
しかし祠に貼られた札は破れ、供え物などもなく、苔や雑草が生えているなど荒れ放題だった。
「誰がこんなところに祀ったニャ」
「逃げ延びた忠実な家臣が首塚から首を探し出してここに隠すように祀ったのかもしれん」
「荒れ放題で誰にも手入れされてないようだニャ」
祠の石や岩を動かしていくと、中から古びた桐箱を見つけた。この中に間宮の首が入っているはずだ。究竟が桐箱の蓋に張られた札を破り、中を開けようとした時だった。
「あんたら、そこで何しとるんや」
洞穴の外を振り返ると、背負った籠に筍を入れた老婆が訝しげに究竟と琥太郎を見ていた。
「ここには200年前の戦国武将、間宮義勝が祀られているとか」
桐箱の蓋を開ける手を止めて、究竟が老婆に尋ねた。
「そうや。でもその祠には祟りがあるんやで? 近寄ったらあかん」
「祟り?」
「今から20年前のことや。この村にその祠を造った間宮の家臣の末裔の若い夫婦がおった。その夫婦は毎日熱心に掃除したり、供え物をしたりしてこの祠を護っておった。そうして毎日ここに参りに来ているうちに、ひとりの男の子を授かった」
「男の子?」
「その夫婦は生まれて間もない赤ん坊も毎日一緒にここに連れてきて、それはそれは熱心に信仰しておった。それがや、ある日、この洞穴の中で、その夫婦が惨殺されているのが発見された」
「何だと!?」
「かわいそうになあ、それはそれは酷い殺され方やった。そしてその日以来、その赤ん坊も神隠しに遭ったように消えてしもうた。母親が赤ん坊のために心を込めて作ったんやろう、六芒星の背守りを縫い付けられた小さな小さな産着だけをここに残して」
「まさか!」
「せやから、あんたらもここに近付いてはならん。早く行きなされ。ああ、怖ろしい。くわばらくわばら」
老婆は逃げるように足早に去って行った。
「究竟様……その赤ん坊がもしや……」
「ああ、間違いない。それが蒼衣だ」
「蒼衣様……なんてかわいそうニャ」
「間宮は俺から取り上げた通力を封印するための赤ん坊を奪い取るため、その夫婦を惨殺した。そして背中に母親が作った背守りと同じ六芒星の印で結界を張った。俺が神通力を取り出せないように」
「なんて酷いことをするニャ。絶対に許せないニャ。況してやその蒼衣様に究竟様の封印を解かせようとするなんて。でも、その間宮の魂胆にまんまと引っかかって、蒼衣様を誘導した琥太郎のせいでもあるニャ」
「お前は何も悪くない。悪いのは間宮だ。蒼衣が背負っている冥い宿命は、間宮によって背負わされたものだった。ただただ、俺を貶めようとするためだけの」
究竟が桐箱の蓋を開けると、人間の白骨化した頭蓋骨が入っていた。
「この髑髏を今すぐここで燃やすニャ!」
「いや、これは切り札としてまだ残しておく。墓を焼かれて力が弱まり間宮はきっと俺たちが動いていると勘付いたはずだ。そしてまた、蒼衣に何かしようとするに違いない」
その時、究竟が酷く咳込んだかと思うと、地面に激しく吐血した。
「究竟様! 駄目ニャ! 早く神通力を取り戻さないともう時間がないニャ!」
涙を流して琥太郎が究竟を見つめる。
「泣くな琥太郎。俺は大丈夫だ。簡単には死なん」
究竟は口元についた鮮血を手の甲で無造作に拭った。
「今ならわかる。なぜはじめて出会った時から、蒼衣のことが可愛くて愛しくて堪らなかったのか。あの子は俺のために生まれてきてくれた。あの子を冥い宿命から、俺が解放してやらねばならない」
「究竟様……」
「琥太郎、最後まで俺と一緒に闘ってくれるか?」
「もちろんニャ! 琥太郎は究竟様のためなら何でもできるニャ!」
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