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第四章 それぞれの選択
嵐の後の静けさ
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天王寺駅前の居酒屋。
山田に遭遇するというハプニングはあったものの、当初の予定通り御子の希望する居酒屋に来ていた。
来てはみたものの、先ほどの騒動のせいで暗いお通夜状態の雰囲気だった。
二人を除いて。
「ほら、あーん。」
莉緒が唯志に肉を食べさせようとしていた。
「いや、口怪我しただけだろ。恥ずかしいって。」
「照れんなし。」
そう言って無理やり唯志に食べさせていた。
「食べ物よりも、アルコール消毒だろ!」
そう言ってビールを呷る唯志。
「いや、ビールじゃ消毒にならないし。」
そう言って笑っている莉緒。
二人だけはいつも通り明るかった。
(いや、あれの後でなんでそんなに普通にしてられるんだよ。)
拓哉は未だに先ほどのことが忘れられずにいた。
――
唯志は覚悟を決めた人間と山田を評した。
未来から来て、恐らく須々木久寿雄を殺す為に覚悟を決めた人間。
その人間の目と迫力。
自分とは大違いだった。
そしてそんな人間に対して、ぶん殴られる覚悟で・・・
いや、下手したら刺されたり、殺される可能性だって考えたはずだ。
唯志ならそれくらいは予想していただろう。
山田ほどじゃないにしても、唯志だって覚悟して向かっていった。
俺は?
俺はこれまで光ちゃんの為に何か覚悟をしていたのか?
未来に帰すのも、現代で過ごす為の協力も中途半端。
していたことと言えば、好かれたいだのそんなことばかり。
俺は・・・。
――
拓哉は拓哉なりに、先ほどの出来事を真面目に考えていた。
・・・のだが――
「ねーねーただしー。このスタンガンちゃんと効いてたの~?山田っちピンピンしてたよー?」
「いやいや、結構効いてたから追撃してこなかったんだろ。やせ我慢じゃね?」
「あんな睨みながらやせ我慢してたの?ウケる。」
拓哉が真面目に考えてる正面で、唯志と莉緒が楽しそうに談笑していた。
(このバカップル・・・)
「あんたら、緊張感ないなぁ。」
流石の御子でもこれには呆れ顔だった。
「あん?緊張感って、何か緊張することあったっけ?飲みに来てんのに。」
「そーだ!そーだ!」と隣の莉緒も唯志の意見に追従した。
若干酒が入ってるせいで、いつもよりもテンションが高い。
「はぁ・・・。まぁでもせやな。気にしとってもしゃーないか。」
御子も諦めた様で、注文していたカクテルを飲み始めた。
「ほら、ひかりんもそんな顔すんなよ。山田の事は気にしてもしょうがないって。」
「でも・・・。唯志君が危ない目に遭っちゃったし・・・。」
光は露骨にしょんぼりしていた。
唯志が殴られたことに対して、いまだに責任を感じている様だ。
「気にしなくて良いって。それよりも、ひかりんが未来から来たってわかった訳だから良かったじゃん?」
「うん・・・。・・・え!?」
しょんぼりしていた光だったが、一瞬で驚きの表情に変わった。
「どういうこと?」
聞き返したのは拓哉だった。
「どういうことも何も、山田も須々木のこと知ってただろ。未来人二人が共通の歴史に名を残す人知ってたんだし、まぁ八割方ひかりんは未来人だろ。」
「確かに!でも、それでも八割なんだ・・・。」
光は逆に驚いていた。
「二人ともが同じ異世界人で、須々木なんて人はいない・・・。そう言う可能性は?」
拓哉も思わず意見を述べた。
その意見は唯志を真似たものだったが、一応自分の考えを述べている。
「ないな。」
一蹴されたが。
「なんでないの?」
唯志の意見に対して、疑問を投げかけたのは光だった。
「言いたいことはわかるけどな。でも、山田は須々木の写真持ってただろ。」
言われてみれば、山田は須々木の写真を見せてきていた。
「あんなプライベートっぽい写真、未来から持ってきてるわけないからな。どうやったかは知らないが、現代で手に入れたんだろ。だから少なくとも須々木は実在してる。まぁそれでも異世界人の可能性は捨ててないけどな。」
「あ、そこはまだ否定できないんだ。」
光は苦笑いしていた。
「しゃーないだろ。そもそもタイムスリップなんて超常現象がアリなら、何でもアリだし。」
唯志の言うことは尤もだが、それでもみながひかりんは未来人で決定だろうと思っていた。
「唯志君、もしかして私の情報収集の為に須々木さんの名前を出したの?」
「まぁ、それもある。須々木を狙ってなくても、須々木を知ってたら色々と都合が良かったから。」
光は感心した顔で唯志を見ていた。
--
そんな一同のやり取りをぼんやりと眺めている御子。
(それにしても大したもんやな、このバカップル。ほんまにさっきの事、全く気にしてへんな。)
そう思って御子も違う意味で感心していた。
(それにしても・・・。昨日は細かくわからんかったけど、こうして見てみるとなるほどなぁって感じやな。それに、唯志も何か心境の変化があったんやろか。・・・吉田は相変わらず何の変化も無いな。)
御子はぼんやりと眺めている様に見えて、じっくりと色を観察していた。
「ま、でもわかっただろ?山田には関わらないが吉。オーケー?」
「オーケー?」
唯志に続いて莉緒が復唱した。
「うん、わかった。危ないもんね。」
光は素直に頷いた。
そして、声には出さないものの拓哉も頷いていた。
(見てて飽きへんな、こいつら。)
御子は一人、小さく笑みを浮かべた。
--
「それじゃ、また引っ越しの時になー。」
最後は明るく手を振って、御子は去って行った。
なんだかんだ、居酒屋の最終盤は盛り上がって、御子は満足して家路につけたようだ。
山田に遭遇するというハプニングはあったものの、当初の予定通り御子の希望する居酒屋に来ていた。
来てはみたものの、先ほどの騒動のせいで暗いお通夜状態の雰囲気だった。
二人を除いて。
「ほら、あーん。」
莉緒が唯志に肉を食べさせようとしていた。
「いや、口怪我しただけだろ。恥ずかしいって。」
「照れんなし。」
そう言って無理やり唯志に食べさせていた。
「食べ物よりも、アルコール消毒だろ!」
そう言ってビールを呷る唯志。
「いや、ビールじゃ消毒にならないし。」
そう言って笑っている莉緒。
二人だけはいつも通り明るかった。
(いや、あれの後でなんでそんなに普通にしてられるんだよ。)
拓哉は未だに先ほどのことが忘れられずにいた。
――
唯志は覚悟を決めた人間と山田を評した。
未来から来て、恐らく須々木久寿雄を殺す為に覚悟を決めた人間。
その人間の目と迫力。
自分とは大違いだった。
そしてそんな人間に対して、ぶん殴られる覚悟で・・・
いや、下手したら刺されたり、殺される可能性だって考えたはずだ。
唯志ならそれくらいは予想していただろう。
山田ほどじゃないにしても、唯志だって覚悟して向かっていった。
俺は?
俺はこれまで光ちゃんの為に何か覚悟をしていたのか?
未来に帰すのも、現代で過ごす為の協力も中途半端。
していたことと言えば、好かれたいだのそんなことばかり。
俺は・・・。
――
拓哉は拓哉なりに、先ほどの出来事を真面目に考えていた。
・・・のだが――
「ねーねーただしー。このスタンガンちゃんと効いてたの~?山田っちピンピンしてたよー?」
「いやいや、結構効いてたから追撃してこなかったんだろ。やせ我慢じゃね?」
「あんな睨みながらやせ我慢してたの?ウケる。」
拓哉が真面目に考えてる正面で、唯志と莉緒が楽しそうに談笑していた。
(このバカップル・・・)
「あんたら、緊張感ないなぁ。」
流石の御子でもこれには呆れ顔だった。
「あん?緊張感って、何か緊張することあったっけ?飲みに来てんのに。」
「そーだ!そーだ!」と隣の莉緒も唯志の意見に追従した。
若干酒が入ってるせいで、いつもよりもテンションが高い。
「はぁ・・・。まぁでもせやな。気にしとってもしゃーないか。」
御子も諦めた様で、注文していたカクテルを飲み始めた。
「ほら、ひかりんもそんな顔すんなよ。山田の事は気にしてもしょうがないって。」
「でも・・・。唯志君が危ない目に遭っちゃったし・・・。」
光は露骨にしょんぼりしていた。
唯志が殴られたことに対して、いまだに責任を感じている様だ。
「気にしなくて良いって。それよりも、ひかりんが未来から来たってわかった訳だから良かったじゃん?」
「うん・・・。・・・え!?」
しょんぼりしていた光だったが、一瞬で驚きの表情に変わった。
「どういうこと?」
聞き返したのは拓哉だった。
「どういうことも何も、山田も須々木のこと知ってただろ。未来人二人が共通の歴史に名を残す人知ってたんだし、まぁ八割方ひかりんは未来人だろ。」
「確かに!でも、それでも八割なんだ・・・。」
光は逆に驚いていた。
「二人ともが同じ異世界人で、須々木なんて人はいない・・・。そう言う可能性は?」
拓哉も思わず意見を述べた。
その意見は唯志を真似たものだったが、一応自分の考えを述べている。
「ないな。」
一蹴されたが。
「なんでないの?」
唯志の意見に対して、疑問を投げかけたのは光だった。
「言いたいことはわかるけどな。でも、山田は須々木の写真持ってただろ。」
言われてみれば、山田は須々木の写真を見せてきていた。
「あんなプライベートっぽい写真、未来から持ってきてるわけないからな。どうやったかは知らないが、現代で手に入れたんだろ。だから少なくとも須々木は実在してる。まぁそれでも異世界人の可能性は捨ててないけどな。」
「あ、そこはまだ否定できないんだ。」
光は苦笑いしていた。
「しゃーないだろ。そもそもタイムスリップなんて超常現象がアリなら、何でもアリだし。」
唯志の言うことは尤もだが、それでもみながひかりんは未来人で決定だろうと思っていた。
「唯志君、もしかして私の情報収集の為に須々木さんの名前を出したの?」
「まぁ、それもある。須々木を狙ってなくても、須々木を知ってたら色々と都合が良かったから。」
光は感心した顔で唯志を見ていた。
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そんな一同のやり取りをぼんやりと眺めている御子。
(それにしても大したもんやな、このバカップル。ほんまにさっきの事、全く気にしてへんな。)
そう思って御子も違う意味で感心していた。
(それにしても・・・。昨日は細かくわからんかったけど、こうして見てみるとなるほどなぁって感じやな。それに、唯志も何か心境の変化があったんやろか。・・・吉田は相変わらず何の変化も無いな。)
御子はぼんやりと眺めている様に見えて、じっくりと色を観察していた。
「ま、でもわかっただろ?山田には関わらないが吉。オーケー?」
「オーケー?」
唯志に続いて莉緒が復唱した。
「うん、わかった。危ないもんね。」
光は素直に頷いた。
そして、声には出さないものの拓哉も頷いていた。
(見てて飽きへんな、こいつら。)
御子は一人、小さく笑みを浮かべた。
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「それじゃ、また引っ越しの時になー。」
最後は明るく手を振って、御子は去って行った。
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