149 / 179
最終章 未来へ
唯志の作戦
しおりを挟む
「唯志君!・・・唯志君!うわーん!」
光は泣きじゃくりながら、唯志の座るシートに抱き着いた。
「無事だったの・・・?」
拓哉も安心した表情だった。
「ノムさん、とりあえず出してくれ。話なら戻りながらしよう。」
唯志がそう言うと、野村は車を発進させた。
--
走り出して少し。
いまだに光がわんわん泣いている。
それ以外は無言だった。
「・・・銃声、二発聞こえたよ。」
拓哉がポツリと言った。
「ああ、一発は俺を狙ったやつ。」
唯志が答えた。
「良かった。運良く外れたんだね。」
ぐしゃぐしゃの顔で、光が涙を拭いながら言った。
「いや、当たったよ。」
唯志はそう言って、中に来ている防弾チョッキを見せた。
「これ、防弾!?こんなのまで用意してたの?」
拓哉は驚いていた。
運転している野村も聞いていなかったのか、同じように驚いていた。
「でもこれ着ててもめちゃくちゃ痛てえ。多分アバラ折れてる。」
唯志は苦しそうにそう言った。
「ぶっちゃけると、息するだけでも激痛なんだ。」
唯志は「はは」と笑いながら言っていたが、その表情は本当に苦しそうだった。
「ただじぐん、無理じないでえ。無事だっだなら何でも良いよぉ。」
光は力強く言った。
鼻声で呂律も回っていなかったが、三人とも何とか聞き取れた。
「それだけ準備してるってことは、最初からこういうつもりだったの?」
光の意見とは裏腹に、拓哉は疑問を唯志にぶつけた。
「まぁ。山田とかち合うとしたらこのタイミングしかないと思ってたから。」
と唯志は答えた。
「なんで?」
拓哉は続けざまに質問した。
これは光も気になったようで、涙を拭って黙って答えを待っていた。
野村も黙って運転をしながら聞き入っている。
「山田の執念は凄かった。・・・まず間違いなく来ると思ってた。そして来るなら二人が説得に行く、・・・このタイミングしかないと思った。」
唯志は少し息苦しそうに答えた。
「山田さんも俺たちと同じ情報を持ってたってこと?」
拓哉が聞き返した。
「いや、多分あっちは地道に付け回しただけじゃねーかな。」
「なら尚更なんで?かち合うかは運じゃない?」
唯志の答えは、拓哉にとっては疑問を増やしただけだった。
そしてそれは光にも同様だったようだ。
「ただじぐん、なんで?」
相変わらずぐすぐす言いながら、光も唯志に質問した。
「はぁ・・・。二人には悪いけど、俺は未来は変えられないと思ってた。」
「「!!」」
拓哉と光は驚いた。
聞いてた野村も同様で、唯志の方を少しちらっと見た。
「そして、山田が動いた場合に邪魔するのはひかりんの作戦だと思ったよ。」
「なんで?私たち山田さんのことは、少しも頭になかったよ?」
光は泣き止んで、冷静に唯志に問いかけた。
「×□科学研究所って知ってるか?」
唯志は話を続けた。
「確か、何年か前にかなり精度の高い仮想現実の作成に成功したところだっけ?」
拓哉が答えた。
この手の話はネットで話題になるので拓哉も覚えていたようだ。
「そう。」
「あ、私も覚えてる。確か須々木さんの記事にも載ってた。共同研究してるって。」
「そうだな。」
唯志は二人の答えに淡々と返事をしている。
「それがどうしたの?」
野村が横から口を挟む。
「×□科学研究所の仮想現実。現代では足りないデータが膨大すぎて、実現には数十年かかる・・・。そう言われてたやつだ。」
そう言って、唯志は山田に渡した資料を拓哉に渡した。
「御子に頼んで調べてもらったけど、当たりだった。山田が現れた日、その研究所の人間が御子の顧客として屋敷に来てる。後はわかるよな?」
唯志がそう言うと、拓哉と光もハッとした。
「山田の持ち物か何かに、その膨大なデータってのがあった・・・?」
拓哉が恐る恐る聞き返した。
「多分な。さっき山田本人にも聞いたけど、反応的に間違いない。」
「じゃあ、須々木さんの研究は、私と山田さんが過去に来たから成り立ってるってこと?」
ここまで聞くと、光でも話が見えてきたようだ。
「多分な。そうなってくると話が変わってくる。ひかりんと山田が現代に来るのは、未来にとっては必然ってことになる。・・・つまり、二人の行動で未来が変わるわけがないんだ、最初から。」
唯志は自分の考えを述べた。
そしてそれは、三人を十分に納得させる説得力があった。
「だから山田の作戦は失敗する。ひかりんのもだ。可能性としては、二人がかち合うってのが高いと思った。」
「でもそれなら・・・。それだけわかってたなら、なんで光ちゃんに協力しなかったの?」
拓哉は不服そうにそう言った。
「言っただろ。ひかりんが自殺するつもりなら協力できないって。それと、俺にとって怖いのは山田の凶行でお前らに危害が及ぶことだけだ。それさえ防げれば、後は好きにさせても良いって思ったんだよ。・・・言わなかったのは悪かったよ。」
「ううん。良いんだよ、唯志君。結果的に守ってもらったし、それに唯志君は私たちの為を思って動いてくれてたんだもん!」
拓哉はまだもやもやしていたが、光は力を込めて唯志の意見を後押ししたので、何も言えなくなった。
「岡村君。山田さんは?」
拓哉は気になっていたことのもう一つを聞いた。
「銃声、もう一発聞こえただろ?」
拓哉も光もこくこくと頷いた。
「今の話、山田にもしたんだ。・・・もう一発は、自分で頭を撃ちぬいたよ。」
唯志は悔しそうな表情だった。
自分とは無関係とは言え、自分の情報で人が死んだ。
その責任は感じているのだろう。
「復讐。止めろとは言ったけどさ。・・・他の選択肢はなかったのかな。」
暗い表情で言う唯志の呟きを、三人は黙って聞いていた。
そして光の未来を変える作戦は失敗に終わった。
光は泣きじゃくりながら、唯志の座るシートに抱き着いた。
「無事だったの・・・?」
拓哉も安心した表情だった。
「ノムさん、とりあえず出してくれ。話なら戻りながらしよう。」
唯志がそう言うと、野村は車を発進させた。
--
走り出して少し。
いまだに光がわんわん泣いている。
それ以外は無言だった。
「・・・銃声、二発聞こえたよ。」
拓哉がポツリと言った。
「ああ、一発は俺を狙ったやつ。」
唯志が答えた。
「良かった。運良く外れたんだね。」
ぐしゃぐしゃの顔で、光が涙を拭いながら言った。
「いや、当たったよ。」
唯志はそう言って、中に来ている防弾チョッキを見せた。
「これ、防弾!?こんなのまで用意してたの?」
拓哉は驚いていた。
運転している野村も聞いていなかったのか、同じように驚いていた。
「でもこれ着ててもめちゃくちゃ痛てえ。多分アバラ折れてる。」
唯志は苦しそうにそう言った。
「ぶっちゃけると、息するだけでも激痛なんだ。」
唯志は「はは」と笑いながら言っていたが、その表情は本当に苦しそうだった。
「ただじぐん、無理じないでえ。無事だっだなら何でも良いよぉ。」
光は力強く言った。
鼻声で呂律も回っていなかったが、三人とも何とか聞き取れた。
「それだけ準備してるってことは、最初からこういうつもりだったの?」
光の意見とは裏腹に、拓哉は疑問を唯志にぶつけた。
「まぁ。山田とかち合うとしたらこのタイミングしかないと思ってたから。」
と唯志は答えた。
「なんで?」
拓哉は続けざまに質問した。
これは光も気になったようで、涙を拭って黙って答えを待っていた。
野村も黙って運転をしながら聞き入っている。
「山田の執念は凄かった。・・・まず間違いなく来ると思ってた。そして来るなら二人が説得に行く、・・・このタイミングしかないと思った。」
唯志は少し息苦しそうに答えた。
「山田さんも俺たちと同じ情報を持ってたってこと?」
拓哉が聞き返した。
「いや、多分あっちは地道に付け回しただけじゃねーかな。」
「なら尚更なんで?かち合うかは運じゃない?」
唯志の答えは、拓哉にとっては疑問を増やしただけだった。
そしてそれは光にも同様だったようだ。
「ただじぐん、なんで?」
相変わらずぐすぐす言いながら、光も唯志に質問した。
「はぁ・・・。二人には悪いけど、俺は未来は変えられないと思ってた。」
「「!!」」
拓哉と光は驚いた。
聞いてた野村も同様で、唯志の方を少しちらっと見た。
「そして、山田が動いた場合に邪魔するのはひかりんの作戦だと思ったよ。」
「なんで?私たち山田さんのことは、少しも頭になかったよ?」
光は泣き止んで、冷静に唯志に問いかけた。
「×□科学研究所って知ってるか?」
唯志は話を続けた。
「確か、何年か前にかなり精度の高い仮想現実の作成に成功したところだっけ?」
拓哉が答えた。
この手の話はネットで話題になるので拓哉も覚えていたようだ。
「そう。」
「あ、私も覚えてる。確か須々木さんの記事にも載ってた。共同研究してるって。」
「そうだな。」
唯志は二人の答えに淡々と返事をしている。
「それがどうしたの?」
野村が横から口を挟む。
「×□科学研究所の仮想現実。現代では足りないデータが膨大すぎて、実現には数十年かかる・・・。そう言われてたやつだ。」
そう言って、唯志は山田に渡した資料を拓哉に渡した。
「御子に頼んで調べてもらったけど、当たりだった。山田が現れた日、その研究所の人間が御子の顧客として屋敷に来てる。後はわかるよな?」
唯志がそう言うと、拓哉と光もハッとした。
「山田の持ち物か何かに、その膨大なデータってのがあった・・・?」
拓哉が恐る恐る聞き返した。
「多分な。さっき山田本人にも聞いたけど、反応的に間違いない。」
「じゃあ、須々木さんの研究は、私と山田さんが過去に来たから成り立ってるってこと?」
ここまで聞くと、光でも話が見えてきたようだ。
「多分な。そうなってくると話が変わってくる。ひかりんと山田が現代に来るのは、未来にとっては必然ってことになる。・・・つまり、二人の行動で未来が変わるわけがないんだ、最初から。」
唯志は自分の考えを述べた。
そしてそれは、三人を十分に納得させる説得力があった。
「だから山田の作戦は失敗する。ひかりんのもだ。可能性としては、二人がかち合うってのが高いと思った。」
「でもそれなら・・・。それだけわかってたなら、なんで光ちゃんに協力しなかったの?」
拓哉は不服そうにそう言った。
「言っただろ。ひかりんが自殺するつもりなら協力できないって。それと、俺にとって怖いのは山田の凶行でお前らに危害が及ぶことだけだ。それさえ防げれば、後は好きにさせても良いって思ったんだよ。・・・言わなかったのは悪かったよ。」
「ううん。良いんだよ、唯志君。結果的に守ってもらったし、それに唯志君は私たちの為を思って動いてくれてたんだもん!」
拓哉はまだもやもやしていたが、光は力を込めて唯志の意見を後押ししたので、何も言えなくなった。
「岡村君。山田さんは?」
拓哉は気になっていたことのもう一つを聞いた。
「銃声、もう一発聞こえただろ?」
拓哉も光もこくこくと頷いた。
「今の話、山田にもしたんだ。・・・もう一発は、自分で頭を撃ちぬいたよ。」
唯志は悔しそうな表情だった。
自分とは無関係とは言え、自分の情報で人が死んだ。
その責任は感じているのだろう。
「復讐。止めろとは言ったけどさ。・・・他の選択肢はなかったのかな。」
暗い表情で言う唯志の呟きを、三人は黙って聞いていた。
そして光の未来を変える作戦は失敗に終わった。
0
あなたにおすすめの小説
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる