150 / 179
最終章 未来へ
ただいま
しおりを挟む
「このままレンタカー返却に行けばいいの?」
運転していた野村が尋ねた。
時刻は十九時半ごろ。
順調に走れば、ギリギリ返却も間に合う時間だろう。
「ひかりんの作戦は失敗。大人しく家に帰る。それで良いよな?」
唯志は後部座席の二人に問いかけた。
「うん。俺は大丈夫。」
と拓哉は二つ返事で答えた。
「あの、唯志君は?まだやることある?それにその、怪我は大丈夫かな?」
光は唯志の動向が気になったようだ。
「とりあえず今日は何も。それに正直に言うと、めちゃくちゃ痛い。とりあえず怪我が完治するまでは何も動けないかな。」
唯志はそう答えたが、逆に言うと怪我が完治したら何か動くという意味だろうか。
「怪我、辛い?病院とか行く?」
光は後ろから心配そうに見つめている。
「今日はもう病院もやってないだろうし、薬とか買って帰るよ。病院は明日だな。」
「わ、私もついてく!」
光は唯志の言葉にすぐ反応した。
「ひかりん仕事は?」
「あ、そっか。仕事だ。」
そしてすぐしょんぼりとした。
「うー、でも心配だし。」
光はうんうんと悩んでいる。
「大丈夫だよ。ひかりんに貰ったお守りもあるし。」
唯志が後ろを向いてニヤッと笑った。
その手には光が手紙と一緒に投函した、パワーストーンのストラップが揺れていた。
「え!?・・・読んだの?」
光の顔がみるみる真っ赤になっていく。
「手紙?読んだよ。来る途中に。」
唯志は「ふふ」と鼻で笑いながら答えた。
「そう言えば来る時なんか読んでたね。あれ、何だったの?」
野村が何気なく質問した。
「さて。なんだろーね、ひかりん。」
唯志は言いながらくつくつと笑っている。
一方の光は「わーわー」と叫びながら、顔を覆っていた。
――
レンタカーを返却して、四人で大阪駅方面に向かった。
「うー、読まれた。読まれてた。」
光は相変わらず顔を真っ赤にして、ぶつぶつと言っていた。
そしてその様子を見ている拓哉は、どんな手紙の内容だったのかが気になりやきもきしていた。
「じゃあ、ノムさんはそっちの路線だな。」
改札を通った後に、唯志が野村に声をかけた。
「あ、そっか。ノムさんそっちか。」
拓哉も思い出したかのように野村に声をかけた。
光のことが気になりすぎて上の空だったんだろう。
うーうー唸ってた光も、今更気づいたのかハッっとしていた。
「うん、それじゃまたー。」
野村が手を振って自分の路線側に移動していった。
「ノムさん、今日はありがとうー。」
光はぶんぶんと手を振りながらお礼を言った。
そして三人は自分たちの最寄り駅に向かう路線のホームに向かった。
――
最寄り駅までの移動中、三人は無言だった。
光は相変わらずうーうー唸っているし、平然としているが唯志は汗をかいていた。
恐らく怪我が痛むんだろう。
拓哉は何も言えず、ただボケーッとしている。
――
最寄り駅で降りて、三人は歩いてそれぞれの家へと向かっていた。
「じゃ。俺はこっちだから。それじゃ――」
分かれ道で唯志が声をかけてきた。
声をかけられると同時に、光が唯志の方へ一歩近づいた。
「唯志君!」
光は食い気味に唯志に声をかけた。
「?」
唯志は光の勢いに少し驚いていた。
「あの、私、その・・・。怖かった。消えなくてすんで、本当に嬉しい。」
光は涙目だったが、表情は晴れやかな笑顔だった。
「唯志君、あの・・・。守ってくれてありがとう。」
光は唯志の方をまっすぐに見つめた。
「いいって。んじゃ、またな。」
唯志はそう言って片腕をあげると、自宅側に向かって歩き始めた。
「あの、唯志君!」
光は今にも帰ろうとしている唯志に呼びかける。
「どした?」
唯志は光の方を一瞥した。
「えっと、その・・・。また、遊びに行っても良い?」
光はもじもじと小声で唯志に伺った。
「さて、どうかな~?」
唯志はくつくつと笑いながら手を振って去って行った。
歩き方が少しぎこちないのは痛みのせいだろうか。
「唯志君のイジワル・・・。」
光が拗ねたようにボソッと呟いた。
「今のは良いって意味だと思うよ。」
拓哉は不服そうな表情をしていたが、光に伝えた。
「嫌ならはっきりと言う人だから。」
続けてそう言った。
この辺は付き合いの長さが垣間見れる。
「そうなのかな。うー。」
唸っている光を尻目に、拓哉も自分たちの家に向かって歩き始めた。
そしてその後を光が小走りで追いかけていく。
なんとなくだが、一気にさみしくなった気がする。
そう思った拓哉だった。
思えばこのところ慌ただしかったせいだろうか。
一つのことに、区切りがついた。
そんな気がした。
――
部屋に戻ると、御子が泣きながら光に飛びついてきた。
同じシェアハウスの女性同士。
相当嬉しかったんだろう。
「うわーん、光―。無事でよかったー。」
泣きじゃくる御子を光がなだめていた。
「ただいま、御子ちゃん。帰ってきちゃった。」
「ええんやで。ほんま良かった。」
光が御子の頭を撫でてる。
微笑ましいな、と拓哉は思った。
ぐぅ~
家に帰って気が抜けたのか、光のお腹が鳴った。
「あ。その、何も食べてなかったし、緊張してたし!」
光は焦りながら弁明していた。
「カレーあるで!美味いで!」
御子が涙を拭って笑顔で答えた。
「作ったの光ちゃんだけどね。」
拓哉は「ふふ」と笑いながらツッコんだ。
「うっさいわ、吉田!」
ここしばらくなかった。
家を出る前はもうないと思っていた、賑やかな日常が帰ってきた。
運転していた野村が尋ねた。
時刻は十九時半ごろ。
順調に走れば、ギリギリ返却も間に合う時間だろう。
「ひかりんの作戦は失敗。大人しく家に帰る。それで良いよな?」
唯志は後部座席の二人に問いかけた。
「うん。俺は大丈夫。」
と拓哉は二つ返事で答えた。
「あの、唯志君は?まだやることある?それにその、怪我は大丈夫かな?」
光は唯志の動向が気になったようだ。
「とりあえず今日は何も。それに正直に言うと、めちゃくちゃ痛い。とりあえず怪我が完治するまでは何も動けないかな。」
唯志はそう答えたが、逆に言うと怪我が完治したら何か動くという意味だろうか。
「怪我、辛い?病院とか行く?」
光は後ろから心配そうに見つめている。
「今日はもう病院もやってないだろうし、薬とか買って帰るよ。病院は明日だな。」
「わ、私もついてく!」
光は唯志の言葉にすぐ反応した。
「ひかりん仕事は?」
「あ、そっか。仕事だ。」
そしてすぐしょんぼりとした。
「うー、でも心配だし。」
光はうんうんと悩んでいる。
「大丈夫だよ。ひかりんに貰ったお守りもあるし。」
唯志が後ろを向いてニヤッと笑った。
その手には光が手紙と一緒に投函した、パワーストーンのストラップが揺れていた。
「え!?・・・読んだの?」
光の顔がみるみる真っ赤になっていく。
「手紙?読んだよ。来る途中に。」
唯志は「ふふ」と鼻で笑いながら答えた。
「そう言えば来る時なんか読んでたね。あれ、何だったの?」
野村が何気なく質問した。
「さて。なんだろーね、ひかりん。」
唯志は言いながらくつくつと笑っている。
一方の光は「わーわー」と叫びながら、顔を覆っていた。
――
レンタカーを返却して、四人で大阪駅方面に向かった。
「うー、読まれた。読まれてた。」
光は相変わらず顔を真っ赤にして、ぶつぶつと言っていた。
そしてその様子を見ている拓哉は、どんな手紙の内容だったのかが気になりやきもきしていた。
「じゃあ、ノムさんはそっちの路線だな。」
改札を通った後に、唯志が野村に声をかけた。
「あ、そっか。ノムさんそっちか。」
拓哉も思い出したかのように野村に声をかけた。
光のことが気になりすぎて上の空だったんだろう。
うーうー唸ってた光も、今更気づいたのかハッっとしていた。
「うん、それじゃまたー。」
野村が手を振って自分の路線側に移動していった。
「ノムさん、今日はありがとうー。」
光はぶんぶんと手を振りながらお礼を言った。
そして三人は自分たちの最寄り駅に向かう路線のホームに向かった。
――
最寄り駅までの移動中、三人は無言だった。
光は相変わらずうーうー唸っているし、平然としているが唯志は汗をかいていた。
恐らく怪我が痛むんだろう。
拓哉は何も言えず、ただボケーッとしている。
――
最寄り駅で降りて、三人は歩いてそれぞれの家へと向かっていた。
「じゃ。俺はこっちだから。それじゃ――」
分かれ道で唯志が声をかけてきた。
声をかけられると同時に、光が唯志の方へ一歩近づいた。
「唯志君!」
光は食い気味に唯志に声をかけた。
「?」
唯志は光の勢いに少し驚いていた。
「あの、私、その・・・。怖かった。消えなくてすんで、本当に嬉しい。」
光は涙目だったが、表情は晴れやかな笑顔だった。
「唯志君、あの・・・。守ってくれてありがとう。」
光は唯志の方をまっすぐに見つめた。
「いいって。んじゃ、またな。」
唯志はそう言って片腕をあげると、自宅側に向かって歩き始めた。
「あの、唯志君!」
光は今にも帰ろうとしている唯志に呼びかける。
「どした?」
唯志は光の方を一瞥した。
「えっと、その・・・。また、遊びに行っても良い?」
光はもじもじと小声で唯志に伺った。
「さて、どうかな~?」
唯志はくつくつと笑いながら手を振って去って行った。
歩き方が少しぎこちないのは痛みのせいだろうか。
「唯志君のイジワル・・・。」
光が拗ねたようにボソッと呟いた。
「今のは良いって意味だと思うよ。」
拓哉は不服そうな表情をしていたが、光に伝えた。
「嫌ならはっきりと言う人だから。」
続けてそう言った。
この辺は付き合いの長さが垣間見れる。
「そうなのかな。うー。」
唸っている光を尻目に、拓哉も自分たちの家に向かって歩き始めた。
そしてその後を光が小走りで追いかけていく。
なんとなくだが、一気にさみしくなった気がする。
そう思った拓哉だった。
思えばこのところ慌ただしかったせいだろうか。
一つのことに、区切りがついた。
そんな気がした。
――
部屋に戻ると、御子が泣きながら光に飛びついてきた。
同じシェアハウスの女性同士。
相当嬉しかったんだろう。
「うわーん、光―。無事でよかったー。」
泣きじゃくる御子を光がなだめていた。
「ただいま、御子ちゃん。帰ってきちゃった。」
「ええんやで。ほんま良かった。」
光が御子の頭を撫でてる。
微笑ましいな、と拓哉は思った。
ぐぅ~
家に帰って気が抜けたのか、光のお腹が鳴った。
「あ。その、何も食べてなかったし、緊張してたし!」
光は焦りながら弁明していた。
「カレーあるで!美味いで!」
御子が涙を拭って笑顔で答えた。
「作ったの光ちゃんだけどね。」
拓哉は「ふふ」と笑いながらツッコんだ。
「うっさいわ、吉田!」
ここしばらくなかった。
家を出る前はもうないと思っていた、賑やかな日常が帰ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる