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第十七稿 ネタ切れの作家
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呪文学の授業後の昼休み。
私は木陰にある中庭のベンチで、レタスとトマトと卵を載せたオープンサンドを食べていた。
太陽の光はギラギラして、足元に濃い影を作っている。
「ナディア」
また来た!
名前を呼ばれて臨戦態勢に入ったが、自分を呼んだ人物を見て、すぐに体の力を抜いた。
風に揺れる金色の髪に細身の長身。
一瞬ヴィラントと見間違えてしまったが、彼は。
「クローヴィス様!」
ヴィラントの実兄、クローヴィス皇太子は、公務の忙しさが落ち着いてきたのか、最近時々ナディアを訪ねてきてくれる。
仮面文芸即売会や昼休みなど、彼が現れるタイミングはまちまちなのだが、私はこの時間がいつも楽しみだ。
彼は、私が書いた小説の感想を会うたびに伝えてくれる。読者からの意見は、自分一人では気付けない矛盾点や問題点に気付かせてくれるので本当にありがたい。
クローヴィスは私の隣に腰掛けると、本の感想と、何でもないような日常の出来事を話してくれた。
「……ナディア?」
突然、クローヴィスは真顔になって呼びかけてきた。
「は、はい?」
「顔色が悪い。熱はない?」
「無いと思いますけど……」
自分で触ってみても分からない。
「失礼」
クローヴィスは手を伸ばし、額に触れてきた。
心臓が早鐘を打ち始めた。
ひんやりとした彼の手の下で、頬が熱くなってくる。
扇のような睫毛の下から、紫色の瞳がじっと見つめてくる。
待って。これは熱が無くても、上がってくるやつです。
こんな美人に見つめられたら、老若男女誰でも頭がぼうっとする。
「熱は……ないね。眠れてる?」
クローヴィスに言われて、少し考える。
そういえば最近は、次にヴィラントが押しかけてきた時に何を言ってやろうかとネタを考えて、夜更かしをしてしまう日々だ。
しかし、いつでも求婚を跳ね返せるようにしておかねば。
「……悩みごと? 私で良かったら聞かせて」
クローヴィスの真剣な声音に、心臓を素手で掴まれたように身動きできなくなる。
彼の声は、いつもそうだ。
選択権を与えているような響きなのに、自然と従いたくなってしまう。
(甘えたくなる)
いや。皇太子と言う忙しい身の上の彼を頼るのは良くない。ヴィラントについてなんて尚更、実兄である彼に相談する話ではないだろう。
要らない気を遣わせる。
「ナディア!」
「ひぇ、はい!」
クローヴィスらしからぬ厳しい声に、びっくりした。
クローヴィスの手のひらが両頬を包み込み、ゆっくり彼の方に顔を向けさせられる。
吐息がかかる距離で見下ろしてくる、紫の双眸。
「今、何を考えた? 私は、聞かせてほしいと言ったよ」
至近距離でロイヤルな威圧感を放たないでください。
この兄弟は、どうして鈍すぎるタイプと察しすぎるタイプなのだろう。
途方に暮れてしまった。
「ヴィ……ヴィラント様が」
クローヴィスの迫力の前に無言を貫けるわけもなく、結局私は最近の悩みのタネを洗いざらい話してしまった。
私は木陰にある中庭のベンチで、レタスとトマトと卵を載せたオープンサンドを食べていた。
太陽の光はギラギラして、足元に濃い影を作っている。
「ナディア」
また来た!
名前を呼ばれて臨戦態勢に入ったが、自分を呼んだ人物を見て、すぐに体の力を抜いた。
風に揺れる金色の髪に細身の長身。
一瞬ヴィラントと見間違えてしまったが、彼は。
「クローヴィス様!」
ヴィラントの実兄、クローヴィス皇太子は、公務の忙しさが落ち着いてきたのか、最近時々ナディアを訪ねてきてくれる。
仮面文芸即売会や昼休みなど、彼が現れるタイミングはまちまちなのだが、私はこの時間がいつも楽しみだ。
彼は、私が書いた小説の感想を会うたびに伝えてくれる。読者からの意見は、自分一人では気付けない矛盾点や問題点に気付かせてくれるので本当にありがたい。
クローヴィスは私の隣に腰掛けると、本の感想と、何でもないような日常の出来事を話してくれた。
「……ナディア?」
突然、クローヴィスは真顔になって呼びかけてきた。
「は、はい?」
「顔色が悪い。熱はない?」
「無いと思いますけど……」
自分で触ってみても分からない。
「失礼」
クローヴィスは手を伸ばし、額に触れてきた。
心臓が早鐘を打ち始めた。
ひんやりとした彼の手の下で、頬が熱くなってくる。
扇のような睫毛の下から、紫色の瞳がじっと見つめてくる。
待って。これは熱が無くても、上がってくるやつです。
こんな美人に見つめられたら、老若男女誰でも頭がぼうっとする。
「熱は……ないね。眠れてる?」
クローヴィスに言われて、少し考える。
そういえば最近は、次にヴィラントが押しかけてきた時に何を言ってやろうかとネタを考えて、夜更かしをしてしまう日々だ。
しかし、いつでも求婚を跳ね返せるようにしておかねば。
「……悩みごと? 私で良かったら聞かせて」
クローヴィスの真剣な声音に、心臓を素手で掴まれたように身動きできなくなる。
彼の声は、いつもそうだ。
選択権を与えているような響きなのに、自然と従いたくなってしまう。
(甘えたくなる)
いや。皇太子と言う忙しい身の上の彼を頼るのは良くない。ヴィラントについてなんて尚更、実兄である彼に相談する話ではないだろう。
要らない気を遣わせる。
「ナディア!」
「ひぇ、はい!」
クローヴィスらしからぬ厳しい声に、びっくりした。
クローヴィスの手のひらが両頬を包み込み、ゆっくり彼の方に顔を向けさせられる。
吐息がかかる距離で見下ろしてくる、紫の双眸。
「今、何を考えた? 私は、聞かせてほしいと言ったよ」
至近距離でロイヤルな威圧感を放たないでください。
この兄弟は、どうして鈍すぎるタイプと察しすぎるタイプなのだろう。
途方に暮れてしまった。
「ヴィ……ヴィラント様が」
クローヴィスの迫力の前に無言を貫けるわけもなく、結局私は最近の悩みのタネを洗いざらい話してしまった。
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