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20.違う形でも
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「もう朝?」
窓から射し込む強い光は、すぐに起きなさいと言わんばかり。
「んー、早めに寝たはずなのに眠いわ」
私は、ベッドから半身を起こして、おもいっきり両腕を上げ伸びをしながらぼんやりと数日前の出来事を思いだした。
「不思議な人や銀色の…あれは、きっと竜よね。あの時、ライル様がいてくれてよかった。1人だったら耐えられなかったかもしれない」
おもわず自分の唇を手でなぞった。
私、ライル様と。
「あまりにも気が動転していた私を落ち着かせる為だったのよ」
相手はお貴族様だ。
かたや、お母様が貴族だったとはいえ今は。お父様も懐中時計に彫られた事が本当だとしても、現在は隣国に統治されているから関係ないわ。
『もう少し調べる必要がある。また近々伺いたい』
昨夜、ラウル様から帰りがけにそう言われた時、私の心は弾んでいた。そんな状況ではないのに。
「あ、いけない!」
今日は、仕立ての仕事が来ていないか伺う日だ。
花祭が終わったから仕事もあまりないかもしれない。けれど、もしかしたら依頼があるかも。
一件あるだけでも、とても有難いもの。
「しっかりしなければ」
私は、足を床におろし勢いをつけてベッドから立ち上がり、急いで外出の準備をはじめた。
✢~✢~✢
「おはようございます」
「あらっ、待っていたのよ!」
「え?」
「花祭の時にお願いしたドレスがとても好評だったの。特に刺繍が素晴らしいと。見たことのない柄だし、またお願いしたいと言われたわ。それに興味をもたれて、新しいお客様からも注文がきているわ!」
お店の扉を開けたとたん物凄い勢いで話を始める店主のキャリルさん。こんなにも興奮している姿は初めて見たわ。
また忙しくなるような予感。でも、生活していく為にお金は必要だし。なにより評判がよかったと言われて悪い気はしない。
「お願いした柄を見せてもらえるかしら?」
「はい」
キャリルさんは、デザインを考える方で裕福な商家や貴族達からとても人気があるらしい。実際目にした事はないけれど、持ち込まれる生地はどれも上質の品ばかりだから噂は本当なのだろう。
「やっぱり見たことがない花ばかりね」
わたしが手掛けた模様をみてキャリルさんは不思議そうにしている。
「想像の物なので実在しておりません」
「それにしては、とても細かく表現されているわ」
「ありがとうございます」
本当は、これらの柄の花は実在しているはずよ。ただし世界が違う場所で。
花祭が始まる前に何かいい案はないかとキャリルさんに相談されふと思いついたのが、マリアージュを引き継いだ際に調理方法が記された脇にちらほらと花の絵が描かれていた。
それらはとても緻密で美しく。描いた人はサキコさんに間違いない。
「マリー? 奥で話しましょう。大体のデザインは出来ているから意見が欲しいの」
「あ、畏まりました」
「んもう、硬い話し方はやめてよ。いつも言っているでしょう?」
「キャリルさんは、本当に変わっています」
「そうかしら?」
クスクスと笑うキャリルさんの後につづきながら思う。
これらの模様が広まって、先の人達にも愛されれば。旅立っていったサキコさんが喜んでくれるかもしれない。
そう考える私は、自分勝手かしら?
でも何か遺したかった。彼女が存在していた事を。
窓から射し込む強い光は、すぐに起きなさいと言わんばかり。
「んー、早めに寝たはずなのに眠いわ」
私は、ベッドから半身を起こして、おもいっきり両腕を上げ伸びをしながらぼんやりと数日前の出来事を思いだした。
「不思議な人や銀色の…あれは、きっと竜よね。あの時、ライル様がいてくれてよかった。1人だったら耐えられなかったかもしれない」
おもわず自分の唇を手でなぞった。
私、ライル様と。
「あまりにも気が動転していた私を落ち着かせる為だったのよ」
相手はお貴族様だ。
かたや、お母様が貴族だったとはいえ今は。お父様も懐中時計に彫られた事が本当だとしても、現在は隣国に統治されているから関係ないわ。
『もう少し調べる必要がある。また近々伺いたい』
昨夜、ラウル様から帰りがけにそう言われた時、私の心は弾んでいた。そんな状況ではないのに。
「あ、いけない!」
今日は、仕立ての仕事が来ていないか伺う日だ。
花祭が終わったから仕事もあまりないかもしれない。けれど、もしかしたら依頼があるかも。
一件あるだけでも、とても有難いもの。
「しっかりしなければ」
私は、足を床におろし勢いをつけてベッドから立ち上がり、急いで外出の準備をはじめた。
✢~✢~✢
「おはようございます」
「あらっ、待っていたのよ!」
「え?」
「花祭の時にお願いしたドレスがとても好評だったの。特に刺繍が素晴らしいと。見たことのない柄だし、またお願いしたいと言われたわ。それに興味をもたれて、新しいお客様からも注文がきているわ!」
お店の扉を開けたとたん物凄い勢いで話を始める店主のキャリルさん。こんなにも興奮している姿は初めて見たわ。
また忙しくなるような予感。でも、生活していく為にお金は必要だし。なにより評判がよかったと言われて悪い気はしない。
「お願いした柄を見せてもらえるかしら?」
「はい」
キャリルさんは、デザインを考える方で裕福な商家や貴族達からとても人気があるらしい。実際目にした事はないけれど、持ち込まれる生地はどれも上質の品ばかりだから噂は本当なのだろう。
「やっぱり見たことがない花ばかりね」
わたしが手掛けた模様をみてキャリルさんは不思議そうにしている。
「想像の物なので実在しておりません」
「それにしては、とても細かく表現されているわ」
「ありがとうございます」
本当は、これらの柄の花は実在しているはずよ。ただし世界が違う場所で。
花祭が始まる前に何かいい案はないかとキャリルさんに相談されふと思いついたのが、マリアージュを引き継いだ際に調理方法が記された脇にちらほらと花の絵が描かれていた。
それらはとても緻密で美しく。描いた人はサキコさんに間違いない。
「マリー? 奥で話しましょう。大体のデザインは出来ているから意見が欲しいの」
「あ、畏まりました」
「んもう、硬い話し方はやめてよ。いつも言っているでしょう?」
「キャリルさんは、本当に変わっています」
「そうかしら?」
クスクスと笑うキャリルさんの後につづきながら思う。
これらの模様が広まって、先の人達にも愛されれば。旅立っていったサキコさんが喜んでくれるかもしれない。
そう考える私は、自分勝手かしら?
でも何か遺したかった。彼女が存在していた事を。
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