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22.赤い瞳のお客様
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「間に合ってよかった」
部屋は独特な香りで満ちている。
作っている最中から思うのだから来店されるお客様にとって、この匂いは強すぎるかしら?
迷いが今になってでてきてしまったわ。
とりあえず味見をと鍋からひと匙すくい息を吹きかけ口にいれてみれば。
「ん、美味しい」
⋯⋯何か言われたら、次からメニューからはずしましょ。
「さて、開店の時間だわ」
私は、手を丁寧に洗って鏡に映る自分の髪を手ぐしで整えた。
リンッー
「いらっしゃいませ」
開店と同時にドアベルが鳴った。
「そなたが店主か
?」
一人目のお客様は、褐色の肌に真っ直ぐな金色の腰まである長さの髪を持つとても美しい男性だった。
「はい。マリーと申します」
私は、平静を装い挨拶をした。
そう、実は心の中では少し怖かった。
とても美しい異国の男性は、とても近寄りがたい雰囲気を醸し出していて。
まるで鞘から抜かれた剣のよう。
「よい匂いだ」
お客様は、私の様子を気にするわけでもなく、匂いを追うように広くもない店内を見渡しゆっくりと歩き出した。それに合わせて腰から下がっている金色の何本もの繊細な鎖がシャラリと音をたて、女性のように裾が長い衣装もふわりと揺れる。
「何をお探しでしょうか?」
いつもの店はこの方がいるだけで空気が変わってしまったようだわ。
褐色の肌に不思議に合う赤い瞳は私を見て一言。
「命だ」
命。私の?
「そなたではない」
私じゃないのね。良かった。いえ、良くないわ。誰かの命という事よね。
「申し訳ございません。この店にはそのような品は…」
「違う」
少し焦れたような口調になり、思わずビクリとしてしまう。それだけじゃないわ。赤い瞳の強さが増しているような。
「私が欲しているのは、奪う物ではない。民を救う物だ」
「救う品…」
「ああ」
──なんだ。
つい止めてしまっていた息をゆっくり吐き出した。
「では、お手をお借りできますか?」
手に触れさせて欲しいとお願いしてみれば、意外にもすんなりと片手を差し出してもらえた。
その手は、見た目とは違い長い指だけれどゴツゴツとしていた。軽く触れ目をつぶれば。
カタリ
小さなでも確かな音がした。
「お待ち下さい」
硝子棚の中ではなく、その下にある小さな引き出しの中に木の小箱が1つ。
そのままお客様の元へ戻り、年月により飴色になった箱を渡してみれば。
「これが、この中の物がそうなのか?」
「はい」
疑いの口調。
私も何が入っているのかは知らない。
何故なら、鍵もついてないのに留め具が上がらないのである。
『これは本当に必要なお客様にしか扱えないから蓋すら開かないんだよ』
お父様が生きていらした時に箱を軽く振って「頑固でこまったよ」と話しをしていたのは頭の片隅にある。
それにしても、物に頑固があるのかしら?
私には理解ができないのだけれど。
「これは」
その箱は容易く開いた。
中から出てきた物は。
綺麗な水色の丸い硝子玉。
『あら、私を起こしたのはあなた?』
それだけではなく。
「…何ですか? これ」
「私が聞きたい」
その硝子の珠を抱えている生き物がいた。
部屋は独特な香りで満ちている。
作っている最中から思うのだから来店されるお客様にとって、この匂いは強すぎるかしら?
迷いが今になってでてきてしまったわ。
とりあえず味見をと鍋からひと匙すくい息を吹きかけ口にいれてみれば。
「ん、美味しい」
⋯⋯何か言われたら、次からメニューからはずしましょ。
「さて、開店の時間だわ」
私は、手を丁寧に洗って鏡に映る自分の髪を手ぐしで整えた。
リンッー
「いらっしゃいませ」
開店と同時にドアベルが鳴った。
「そなたが店主か
?」
一人目のお客様は、褐色の肌に真っ直ぐな金色の腰まである長さの髪を持つとても美しい男性だった。
「はい。マリーと申します」
私は、平静を装い挨拶をした。
そう、実は心の中では少し怖かった。
とても美しい異国の男性は、とても近寄りがたい雰囲気を醸し出していて。
まるで鞘から抜かれた剣のよう。
「よい匂いだ」
お客様は、私の様子を気にするわけでもなく、匂いを追うように広くもない店内を見渡しゆっくりと歩き出した。それに合わせて腰から下がっている金色の何本もの繊細な鎖がシャラリと音をたて、女性のように裾が長い衣装もふわりと揺れる。
「何をお探しでしょうか?」
いつもの店はこの方がいるだけで空気が変わってしまったようだわ。
褐色の肌に不思議に合う赤い瞳は私を見て一言。
「命だ」
命。私の?
「そなたではない」
私じゃないのね。良かった。いえ、良くないわ。誰かの命という事よね。
「申し訳ございません。この店にはそのような品は…」
「違う」
少し焦れたような口調になり、思わずビクリとしてしまう。それだけじゃないわ。赤い瞳の強さが増しているような。
「私が欲しているのは、奪う物ではない。民を救う物だ」
「救う品…」
「ああ」
──なんだ。
つい止めてしまっていた息をゆっくり吐き出した。
「では、お手をお借りできますか?」
手に触れさせて欲しいとお願いしてみれば、意外にもすんなりと片手を差し出してもらえた。
その手は、見た目とは違い長い指だけれどゴツゴツとしていた。軽く触れ目をつぶれば。
カタリ
小さなでも確かな音がした。
「お待ち下さい」
硝子棚の中ではなく、その下にある小さな引き出しの中に木の小箱が1つ。
そのままお客様の元へ戻り、年月により飴色になった箱を渡してみれば。
「これが、この中の物がそうなのか?」
「はい」
疑いの口調。
私も何が入っているのかは知らない。
何故なら、鍵もついてないのに留め具が上がらないのである。
『これは本当に必要なお客様にしか扱えないから蓋すら開かないんだよ』
お父様が生きていらした時に箱を軽く振って「頑固でこまったよ」と話しをしていたのは頭の片隅にある。
それにしても、物に頑固があるのかしら?
私には理解ができないのだけれど。
「これは」
その箱は容易く開いた。
中から出てきた物は。
綺麗な水色の丸い硝子玉。
『あら、私を起こしたのはあなた?』
それだけではなく。
「…何ですか? これ」
「私が聞きたい」
その硝子の珠を抱えている生き物がいた。
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