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19.喧騒から離れて
しおりを挟む「少し待っていて下さい」
私の動揺を知るよしもないグラン君は、その立派なベッドに私を慎重に下ろした後すぐに部屋を出ていった。
遠ざかっていく足音が聞こえなくなって、やっと力が抜けた。
「はぁ。よ、よかった。私の脳内が汚れているだけだった!」
でも、こんなムードたっぷりな部屋に連れてこられたら、そう思っちゃうよね。
「此所どこだろう?」
さっきの喧騒が嘘のような静けさだ。普通なら不安になりそうだけど、可愛い部屋となによりグラン君が一緒だと思うと不思議と怖くない。
気が緩むと一気に疲れもやってきた。だいたい服を着るまでの準備が長すぎだよ。
「えぃ」
そのままベッドに転がれば程よい弾力に迎えられ、そのあまりの気持ちよさに目を閉じた。
「はっ。私、もしや寝てた?」
その証拠に涎が口からでかかってたようだ。危ない! 私にも恥じらいはある。靴を履いたまま寝転んでいたので足元の圧迫感が強い。
「ううっ。地味にきてる」
激痛ではないものの両足の指に痛みを感じた。
「……脱いでもいっかな」
耳をすましたけど、まだグラン君が戻ってくる気配はない。確か、マナーの授業で爪先を人に見せるのはよくないとか言っていたような。
「ま、いっか」
とても行儀悪いけど足を目の高さ迄あげて踵を掴み片方を床に落とす。傷がついたらと小心者なのでそこは、なるべく丁寧に。靴から解放された片足は快感。
「よっ」
もう片方もと足を上げた時。
「何をやっているんですか?」
タイミング悪くドアからグラン君が入ってきて。私は、扉側に足をむけていた体制で片足をあげていた。一瞬ドレスの中が丸見えか?! と思い焦るが、そうだ、中はレースが何枚も入っているしと何もなかったかのように視線は合わせずスルーしたが、弱い私は真面目に報告してしまう。
「あ、足が痛いかなぁなんて。誰もいないし今ならいっかなぁとか。ぎゃあ!」
グラン君に両足をあげられた。いやいや! 流石に見えると転がったまま慌ててドレスを押さえる。
「直ぐ済みます」
グラン君はそう言うと、嵌めていた真っ白の手袋を口でくわえ外し、素手で私の足を触った。
何その男っぽい手袋の外し方! 時おりこういう一瞬の仕草に年甲斐もなくときめく私は、アホなんだろうか?
というか足を触られるのって恥ずかしい!
「あの、汚いし!」
「綺麗ですよ。少し風を感じるかもしれませんが、害はないですから」
アッサリ返され何も言えない。それに、痛みがない? 急に症状が消えて足元を見ようとしたら。
「お待たせしてすみません。お茶の用意と三重に結界をはったので時間がかかりました。行きましょう」
「えっ、歩けますよ!」
「ええ。痛みはないと思いますが」
私の言葉はスルーされ彼にまた抱えられた。
*~*~*
「うわ~!」
案内されたのは階段をひとつ上がった上の階のテラスだった。厚みのあるラグと大きいクッションを背にあてられるように置かれていて、膝にと薄い毛布をかけられて。
真っ暗な外のはずが空を見上げれば満天の星だった。
周囲が暗いからかまるで星の中にいる気分。
「よかった。気に入ってもらえて」
隣にいたグラン君は、近い場所に私と同じ様に腰を下ろして夜空を見上げた。緩やかな風がふき、グラン君の髪がなびく。綺麗な横顔に見とれていたら、その顔は左に私の方へと移動し。
「長くなりますが話をしようと思います。まず、先にどうしても伝えたい事は」
緑の私の好きな目は私に、私だけに向いていた。
「ミライ。俺は、貴方が好きです」
──時にストレート過ぎる言葉は凶器になる。
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