頑固な魔法使いは、絶滅危惧種

蝋梅

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16.魔法使いは、震えが止まる

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「まさかの乱暴さ! いや、でも興味深い」
「やはり変態だったんですね」

そうだとは思っていたけど。

「いやいや! 何言ってんの。そもそも意味が違うし」
「部長って…怖い」

 花がスッと部長から距離をとる。その際の彼女の視線には温度がない。

「撤回! 空ちゃん!今すぐ撤回してよ!あ、あれ?」

三人の身体の周囲が淡く光りだした。

「空ちゃん…何をしたのかな?」

 部長の顔が引きつっている。珍しいものを見れたかもと思いながら説明する。

「転移です。最短距離で安全な叔母のお店に飛ばします」

 転移の魔法は、難しい。なによりとても力を必要とするので代々の魔法使いが少しづつ溜めた力が込められている石を使用しても複数だと負荷がかかる。

「それ、とても大事だったんじゃない?!」

 確かに受け継がれてきていた物だ。

 こんなにも科学が進歩した世界なのに科学による生物の転移は未だ不可能だ。せいぜい手のひらサイズの物のみで、その機能を使用出来る人も限られている。

「物は使うものだよ。眩しいなら目を閉じて」
「ちょ、空っ!」
「結局、何の役にも立たなかったねぇ」

光は彼らを包み消えた。

「そんな事ないよ」

いい意味でスイッチが入った。

「ねぇ、海はどうして居るのかな?」

 三人を転移させた。なのにまだ存在する海は、にやりと笑っている。

「わかっただろ? 俺の能力」

なかった事にする力の保持者。

 海外では数名いると聞いてはいた。その人達は常に監視されているとも。

「ただね、厄介で条件が必要でさ。手を貸して」
「条件?」
「そ。でもナイショ。とりあえず今はコレなんとかしよう」

 目の前まで来ている波は、現実味がないほど高く、その存在は生きているかのように感じる。

「思いっきりやれ」

 海が再び私の手に触れ強く握った。

「言われなくともやるわよ」

自由な左手を波に向けかざす。
もう指先は震えていない。

「時よ、戻れ」

 緩やかに波打っていた私の作り出した壁は強く輝き上へと伸びる。波を包むように変化したそれは成功しているように見えた。

けれど勢いが強い。

「まだ足りないか」
「空? 何をするって、え?」

ガリッ

繋いでいる右手を口元に寄せ手首のチャームを引きちぎり歯で砕いた。

「我は魔法使いの血を継ぐ者。開放を命ずる」

言い切った瞬間、自分の身体が光る。

「空っ! 何を食った? 今食ったの食い物じゃねーだろ!?」

気になるトコはそこ?

思わず笑った。

「やっぱ、海はそうだよね」

 力が自分の限界を超えた。体がバラバラになったような感覚。

かい、防いだ波は反動がくる」

 この湾は防いでも、波を無理やり止めたのだ。その行き先は? 

「防ぎ威力をなるたけ削るけど、その後の波が他に行かないように私の力に触れた波に海の力を流して」

波をコントロールする。それには私の強すぎる力を浴びた波の勢いを徐々に削いで欲しい。素早く、けれど慎重に。

「めんどくせー」

 今度こそ、声を出して笑いそうになる。海は、緊張感の欠片もない。

「じゃあ、せーの」

かいに協力を拒否されるとは思っていない私は思いっきり力を放出した。直後にくる強い脱力感に役目は終わったとゆっくり抵抗せず目を閉じた。





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