頑固な魔法使いは、絶滅危惧種

蝋梅

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17.魔法使いは、眠り目覚める

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 最初はずっと真っ暗闇の奥底に深く沈んでいて、静かで誰もいない場所は不思議と恐怖心はなく穏やかな場所だった。

それが、いつからだろう。


 急に明るい日差しのような光の筋が一本現れた。

 何だろうこの光。その線はどんどん増えていき周囲がよく見えるようになった。

 一面たんぽぽが咲いている。時折、風がどこからともなく吹けば綿毛が空に舞っていく。

空?

ああ、私の名前だ。

『空と海ってなんか面白いな』

 浮かんだ言葉と共に景色が鮮明になる。青い空には大きな夏の雲が広がり、その下には光る波と一人の姿。

「襲うぞ」

急に、自分じゃない声を拾った。

 しかも襲うって何事? とても不愉快な気持ちになり、声の主を知りたくなった。

「─マジか? 攻めの台詞で反応するならもっと早く文句をぶちまけておけばよかった!」

 眩しくて、一度開いたはずの瞳は光を強く感じとり瞼を閉じた。

「空、やっと起きたな」

 聞いたことのある声に再び今度はゆっくりと目を開けると。


「…かい?」
「ああ」

とても違和感を感じる。

 何度も瞬きを繰り返し、やっと眩しさが辛くなくなり、海に焦点を合わせた。じっと彼を観察すれば、茶色い髪が前よりも黒く短い。それに雰囲気が私の知っている海よりずっと落ちついている表情。

「やっぱ気づいた?」

 いまだ起き上がる気力がない私は、何がと顔で疑問を顔に出してみた。

「あの時の災害、覚えてるか? 空が津波を防いだやつ」

 そうだった。あの時は必死で、力を思いっきり使って。

「私は、生きてる」
「ああ。空は生きてるよ」

 もう駄目だと思っていたのに。なら、あの最初の暗闇は何だったのかな。

「だけど」
「だけど…何?」

自分の声が酷く掠れていたけど、どうでもいい。

「そうだよ、そうでした。空は意外とせっかちなんでした」
「ハッキリ言わないのが悪い」

なんだかイライラしてきた。

「本当にどうしたの?」

 いきなり抱きつかれた。離してと背中を叩こうとしたけど、その身体が微かに震えているのに気づいてしまった。

「空は、あの災害から今まで眠っていた」
「ああ、確かに出した力は許容を超えていたしね」

生きてるのが不思議なくらいだ。

「六年だ」
「六年がどうしたの?」

 海の身体がようやく少し離れたけど両肩に置かれた手は強いくらいで。

「空が力を使い切って意識を失ってから六年が経過してんだよ。ようは今、空は21歳だ」
「に、にじゅういち?」
「ああ、成人しているな」
「…そんな」

 冗談でしょと海かいを見れば、その瞳には偽りの気配は微塵も感じとれなかった。




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