上 下
18 / 23

18.魔法使いが過去を知ろうとした日

しおりを挟む

「よう。体調はどう? あ、すみません」
「大丈夫。もう時間だから。あと、今週末に退院みたい」
「そっか」

二日ぶりの海との会話だ。

「じゃあ、我々は退散するかね」
「そうね。何かあったら必ず連絡して」
「はい。ありがとうございました」

 私は、双子の魔法使いに深く頭を下げた。

「なんか、貫禄あるな」

海の言い方に思わず吹き出した。

「うん。あの二人は世界でもトップレベルの魔法使いだから」

それに、かつて私の先生だった。

「…花は、クラスの人やビーチコーミング部だった人達は元気?」

 目覚めてから五日目にやっと言えた。声が震えているのはしょうがないよね。

「さっきの人達に聞いたのか?」
「うん。一昨日」

 私が深く眠っていた間に大きな地震と感染力か強い新たなウィルスが蔓延。その結果、人口減少は更に加速し、それは今も現在進行形との事。救いは、ウィルスについては、そのものが弱くなり季節ものの風邪という位置にまでになったという事か。

「アイツが簡単にくたばるわけがない。部の奴らも生きてるよ。ただ、クラス内では何人か死んだらしいのは花から聞いた気がする」


花は、生きてる。
よかった。

あとは残すところ一つか。

「……叔母の五月さつきさんの事、どれだけ知ってる?」
「それもさっきの人達から聞いたのか?」

 うみは、ふざけた明るい、ただ波に乗るのが好きな馬鹿な奴というのが私の印象だった。

「聞く前から察知はしていたよ」

 あの、弱っている動物や人を放っておけない人が、私が目覚めた時にいないのは不自然でしかなかった。

「だから、知ってたら教えてもらえるかな?」

 海は、実は優しい。それは雑な感じだけど。

「空はタイミングいいよなぁ。丁度持ってきたんだ」

 差し出さたれたのは、一通の封筒。

「古風だね」

 いまや紙は使わない。一部使用する人もいるから全くないわけではないけど。濡れたり破れたりする紙なんて不便だし。

 空色に白い雲が描かれた封筒は、夏を連想させる。

「でも、五月さんらしいな」

 海に小さくお礼を伝え、慎重に受け取った。

 猫の形のシールを破かないよう剥がし中を開くと、数枚の、これも珍しい写真と手紙が数枚二つ折りに入っていた。

そっと開くと。

『空ちゃんへ』

 ガタガタに歪んだ文字が並んでいた。


しおりを挟む

処理中です...