恋をする

蝋梅

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13.キス

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カチッ

「はまったね」 
「はい。あともう少しです」

 魔方陣とやらにはめる石も残り1つになった。

 今、私達は祖父の部屋にいた。私は、改めて周囲を見回す。本は高さをそろへ本来あるべき場所である本棚にほぼ全て収まっていた。

あとは、机の引き出しの中だけ。

 盤を床に置いていたので至近距離にランスがいた。下を向き盤を指でなぞる彼の伏せられた睫毛は影を落とすくらい長い。

「ホノカ?」
「あっ、ごめん。ぼーっとしてた」

名前を呼ばれた。

 この人に名前を呼ばれるのも、もう少しで終わりだな。

 一人が普通で元に戻るだけなのに。そう彼の盤をなぞる長い指を見ながら思う。

 不意に頭の後ろに手がまわされた感じがし、すぐにおでこに柔らかい感触が。それはすぐに消え、手も頭をひとなでされ離れていった。

おでこにキスをされたらしい。

 お互いしゃがんでいるので目線が同じ。彼を見ると顔が赤い。

「えっと、すみません。…とても悲しそうだったのでつい…」

ランスは目を泳がせて言った。

 おでこに自然と手がいく。映画で観た父親が子供にするようなキスだった。

 私のほうが恥ずかしがるのが普通なんだろうけど、ランスの優しさに笑みが漏れたのが自分でもわかる。

「うん。ありがとう」

 ふと、ランスのおそらくあの雰囲気だと付き合っていそうなヒュラルさんに申し訳なくなった。

あと少しだけ。
あと少しで彼を返すから。

私の人でもないのに、そう思った。




*~*~*



 その夜私はリビングで勉強したまま寝てしまったらしい。

ゆらゆらと心地よい揺れに気づいた。

 どうやらランスに抱っこされ部屋に運んでもらっているらしい。

どうしよう。目を開けづらい。

 ベッドにそっと下ろされタオルケットを掛けられたみたいだった。去っていく気配に目を開けようとしたら。

「ホノカ」

 彼はため息をつき小さく私の名前を呼んだ。次に口に触れる乾いた感触。

──キスをされていた。

今度こそ扉が閉まる音。

 私はゆっくり起き上がり、自分の唇に指で触れた。

 夢じゃないよね?彼女、ヒュラルさんがいるんでしょ?

「なぜ?」

今はいないランスに問う。私は、体育座りになり頭をうずめた。


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