恋をする

蝋梅

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20.勘違い

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「その傷、どうしたの?」

 床に座っているランスに抱えられているらしい私は、いつもならこんな近い距離でなんて、普通に話なんてできないだろうけど、今はそんなことよりランスの状態が気になり半身を起こし彼を見た。

 彼は、顔だけでなく服は破け全身ボロボロで。まるで刃物がたくさん掠めたようだった。

 言いたくなさそうな彼に目で圧を加える。ランスは、根負けし話し出した。

「あの強烈な光と風の後、ホノカ、ホノは気を失っただけでなく魔力が暴走した」

私のせい。

そういえば、何か体が変だ。

 中が暖かいような。例えるならホカロンをお腹に貼っている感じ。

「体調は?」

 自分がボロボロにも関わらず私を気遣う彼の目は不安げだ。

「体の中心が、ポカポカして変な感じ」
「他には?」
「う~ん。少し怠いくらい」
「なら、大丈夫かな」

彼は、はーと安心したように力を抜いた。

「正直、魔力量の放出が多く、俺が抑え込むのは不可能だった。諦めかけた時、石とホノの中から違う他者からの力が流れ込み補助してくれたんだ。だから休憩していい?」

 ランスは、床に大の字になり私を抱えたまま転がった。

「ちょっと」

もがくとよけい強く抱きしめられた。

「…もう駄目かと思った」

顔は見えないけれど、悲壮な声。

 顔をあげたランスと目が合う。綺麗な澄んだ湖のような瞳。

こんな、魔力とか異世界とか。やっぱり夢かもしれない。

 私は、無理やり彼の腕をはがして半身起き上がらせ両手で自分の両頬を叩いた。

痛い!

「ホ、ホノ?」

 驚いているランスを見下ろしお願いする。

「ちょっと叩いてくれない? 本気、はヤバそうだから、ちょい強めに」

 流石に男性の本気の叩きは恐ろしいしなと目をつぶる。

…あれ?

衝撃がこない。戸惑ってるのかな?

「ねぇ。私、本気で言ってるんだから早く!」

……?

 頭に手を添えられた感覚がして。すぐに唇に違和感が。

「んっ」

 目を開けると至近距離のランスの顔。瞼を閉じた彼の長い睫毛がしっかり見える。女の子より長く多い睫毛で羨ましい。

とゆうか、長い! 彼の腕を叩くとやっと離れた。

「つ、はぁ!何すんの!」

真剣なのに!

「夢じゃないですよ。それに、こっちのがよっぽどいい」

 苛立ちがMAXまでいった私は柄にもなく叫んだ。

私は、二股なんて絶対許せない。

「彼女いるんでしょ?! 何やってんの!」

あれ? 驚いてる? そして…怒っている。

「俺が恋人いるって、そんな事いつ言いました?」
「えっ ?ヒュラルさん彼女じゃないの?」

今度は固まった。

 そしてガシガシと頭を掻きながら唸っている。

「この際ハッキリ言いますけど」

水色の瞳がこちらを向く。

「俺が好きなのはホノカです」

それって。

「2番手?」
「違う!」 

珍しくランスが大声を出した。 

「そもそもヒュラルは男です。此方の世界でどうかは知りませんが、同性婚も少ないですけどありますが」
「え?」

あんな女性オーラ全開なのに? 

「う」

「嘘じゃない。アイツは、女っぽいけど中身は男だし女性の婚約者もいる」
「で、誤解は解けましたか?」
「えっと…ごめん」

 まだ、なんか色々展開についていけないけど。

とりあえず謝る。

「なら返事が欲しい」

そんなの言っていいのかな。

「ホノ」 

うっ。

「…好きです」

 大人げないけど恥ずかし過ぎて。もの凄く小さい声になった。

ホント無理だ。

「ブッ」

 また強く抱き締められた。ランスが、耳元で小さく話す。

「本当は、困らせるだけだし言うのをやめようと思っていた。だが、意識を失い魔力の暴走によって貴方を失うかもしれないと思った時、言わなかったことを後悔した」

ため息の後。

「調べたけど戸籍すらない俺は、この世界で生きていくのは難しい。でも、一緒に来て欲しいと自分の我が儘で言えなかった」

消えそうな声で。

「自分勝手だ」

ランスは、ごめんと小さく呟いた。

 これが、夢じゃなく現実なら曾祖母の言った事も事実なのだろうか。

「私は、この世界にいられないみたい」

ピクリとランスが動いた。

 彼は、ゆっくり体から私から離れていくけれど肩は掴まれたまま。

「それは、どういう事?」

ランスの目が鋭い。

「曾祖母に会ったの」
「全部話して」

まだ私の夜は終わりそうになかった。


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