亡霊たち

みや いちう

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呪い

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 お願いを聞けなかった私には罪悪感だけが残った。だけど無理だよ、うちんちだって苦しいんだもの。そんな大金、しかも勝手に持ちだせる大金なんか、ないよ……。
 私はずっとそんな言葉を並べていた。
バスに乗って、駅前には六時半前には着いた。少しウィンドーショッピングを楽しむ。橙色の壁がめぐらされた服屋の店員さんにいきなり話しかけられた。
「超美人なお客さん、今日は何をお探しですか」
あはは、と私がはにかむ。
「褒めてもらっておいてごめんなさい。今日は見に来ただけなんです」
「あ、全然。いっぱい見ていってください。何かお気に召したものがあれば言ってくださいね」
 それから店員さんは朗らかに訊いてきた。
「もしかして今日、デートですか?」
「いやいや、全然。今日は母とデートです」
「そっかーいいですねー!! 楽しんで下さいね」
 今度買いに来ますから。
 言い残して私は服屋を去った。栗毛のショートヘアをした店員さんはまだ手を振ってくれている。なんだか心が温もった。華子や店員さんに優しくしてもらって、母の恋人にも会えて、何もかもが満たされた気がした。ただ、彩香の件をのぞいては。
 不幸は幸運な時を突いてやってくるんだとは、この時得た教訓である。
 駅前の真新しい歩道橋にて、携帯で時間を見る。今は六時四十分。あたりはさすがに夏場だけれど薄暗い。闇が静かに忍び寄っている感じ。少し寒気がした。夕暮れで冷えてきているのだろうか。
「美佳―!!」
 向こうから、温かそうなカーディガンを手に持ったお母さんが走ってきた。ランプの明るいカフェの中から。あの中に、お父さんもいるんだ。新しい、私のお父さん。あ、お母さんの後ろから走ってきた。あはは、華子のはずれ。熊みたいな人だ。明日会ったら言ってやろう。あはは。
時計は六時四十四分をさした。その刹那だった。
「うっうぐううううう」
突然、私のそばに立っていた男の人が、喉を抑えて倒れた。
「だ、大丈夫ですかっ」
 思わず駆け寄る。目が点滅している。白に黒に、ああ、死んだ魚みたいに膜がはっていく。指がひたすらに宙を切っていく。私はぞっとした。
呪い、と書いているみたいだ。
「大丈夫ですかっしっかりしてくださいっ」
 ああ、ダメだ。目が完全に膜で覆われちゃった。いけない! こういう時は救急車を呼ばなきゃ。
「誰か、救急車をっ」
 この異常な事態に気が付いたのか、さらに隣にいたOL風の女性が駆け寄ってきて、男の人を揺さぶる。
「しっかりっ今救急車を呼びますから。うぐっ」
 次にはその人が倒れた。喉をおさえている。苦しそうだ。別な人も、さらに別な人も。この駅前の歩道橋に立っていた人がみんな喉をおさえてのたうちまわっていく。みんな指で宙を切る。これは呪いだ――。
お母さんが真っ白な顔をして私の肩を掴む。
「はやく、誰か助けを……うぐうううう」
 ついにはお母さんも喉をおさえて倒れた。
「お母さんっしっかり、お母さん!!」
 ああ、顔色が紫に、白に変じていく。近くにいた最後の男の人も倒れた。ああ、もう駄目だ。震える手で携帯を取り出し、救急車を呼ぶ。ああ、声が声にならない。恐怖と焦りとパニックで、
「あの、あのあの」
にしかまとまらない。電話をかけている間も、あたりは人の悲鳴と呻きが響き渡っていた。私は電話をし終えてあたりを恐る恐る見回した。あたりには死体ばかりが並んでいた。

 お母さんの葬式には近くにいたガス工事関係の人たちがやってきた。みなみな眼には涙をためて、このたびは本当に申し訳ありませんでした、と深々と頭を下げた。私は涙も出ずに
「いえ」
と首を振った。葬式の参列者たちは気丈な娘だと思ったらしいが、そうではない。私は真犯人が何だか知っていたから、そう出来た。
 あれは呪いのせいだった。
誰をも憎むことがなかったのは、呪いが私の家族を殺したのを知ったからだった。
 社会的には、ガス漏れによる昭和以降最悪の被害者を出した事件、となるであろう。実際そうだった。私のインタビューを使って、時の政権を倒そうとする政治家が現れたくらいだった。だけれど違った。だってガス漏れだったら、あんな風に人が死んでいくか? だいたい、なぜ私だけが生き残ったのか。それは、私が華子のお守りを身に着けていたせいだ。
誰かが私の家族を殺した。でも、誰が? 

 華子の死を知ったのは、母の葬式の後、一週間後に学校に登校した時のことだった。みなが私が登校すると一様に暗い表情に変じたことを覚えている。クラスのお調子者たちも、笑っていた者は一人もいなかった。あの太一でさえ私に話しかけなかった。
静まり返る教室にて、担任の小野が伸びた顎髭をさすりながら、告げた。
「クラスメートの悲しい知らせが続くものです」
 高遠華子さんが亡くなりました。
 私はその時、ようやっと華子の机に花瓶が置いてあることに気が付いた。

 私は茫然自失となったまま、華子の家である神社に向かった。お調子者も時間がたてば慣れるもので、仲良しの男子と笑いさざめきながら私の前で語っていた。華子は神社の杉の木の下で白くなっていたと。重篤の症状で病院に運ばれ、おととい亡くなったと。訳が分からなかった。どうして、私の母と、父と、友が一斉に亡くなるの? 私が何をしたの。
 ふらふらしながらバスに乗り込み、神社前で降りた。華子の遺影に手を合わせてこようと思った。ごめんね、華子。華子がお手製のお守りをくれたけれど、効果はなかったみたい。お母さんもお父さんも、死んじゃったよ。華子も。
 本殿あたりでうろうろしていると、制服の私に眼を止めたのか、社務所から一人の男が出てきた。紫の袴を纏ったその人を、私はすぐに誰か分かった。片腕がなかったのである。お父さんだ、華子の、と思った。さらに眼を奪ったのは、彼が連れている美しい女の人だった。その人は私の母と同じくらいの歳の人で、見かけは美しいが、すぐにおかしいと気づいた。私を見て唸り始めたのだ。獣みたいに。
「すいません。これは華子の母親で」
 と、お父さんが申し訳なさそうに語った。お母さんはすぐに笑顔になった。
「このたびのご不幸、ご愁傷さまでございました」
 お父さんがしきりに頭を下げてきて、私は内心困惑していた。いえ、そちらさまこそ、私がそういう旨のことを述べると、お父さんはいえいえ、と返してきてまた深々と頭を下げた。
 「……華子は、あなたが、美佳さんが大好きでした。学校のことをめったに口にしないあの子が、あなたのことを語る時だけは楽しそうに眼を輝かせて言っていたものです。私には親友が出来た、と」
華子……。私の眼にも思わず涙がこみあげる。それを手でぬぐいぬぐい、私は家に上げてもらい、華子の遺影に手を合わせた。
 華子、私も、あんたが好きだったよ。守ってもらったのに、ごめんね。
 華子のお母さんは、目がとろけたみたいに笑っていた。自分の娘が亡くなったのに、どうして笑えるんだろう。ああ、違うのか。この人は確か、自分の家族を呪いによって殺した。だから、おかしくなってしまったのだ。人に呪いをかけるとかえってきてしまうものなのだ。目の前でふふふふ、と声を漏らすお母さんを、私は哀れに思った。

そのお母さんが、遺影のある仏間にて、お父さんがお茶を淹れに席を立った折、突然私の手に何かを押し付けてきた。白い袋に入った、何か茶色のものを。
「これ、杉の木の下に、あったの。あんたの。もらって」
何だろう、これ。不気味に思い返そうとすると、お母さんはまた唸った。それが恐ろしくて、つい鞄の中にしまってしまった。お父さんが四人分お茶を淹れて戻ってきた。一つを華子の遺影の前に置く。私はまた、静かに泣いた。
 家に帰って、私は鞄からあのお母さんが手渡してきた白い袋をあけた。そこに、すべての真実が隠されていた。
 私は袋の中身を見た瞬間、笑いがこみあげた。あはは、ははは。声をあげながら、私の眼は涙をこぼし続けた。ああ、華子、あんたは私を裏切っていたんだね。
 その白い袋の中には、
【本条美佳】
と書かれた藁人形が入っていた。

 すべては華子の仕業だった。杉の木の下で頭の血管が裂けて重篤の症状に陥った華子が、私に呪いをかけていたのだった。華子は私を殺そうとした。だけれど何らかの妨害があり失敗した。そうして呪いが飛び散って、私は助かったけれど周りの人間が死んだ。
 華子が、やった。
私の大切な家族を、殺した。お父さんはあの後、華子のノートを私に渡してくれた。そこには
【美佳、ごめんね】
 と書かれていた。ブログを見てもコメントに同じことが寄せられていた。🌸のマークはなかったけれど。
私は親友とうそぶくものに騙されていた訳だった。
 父と母を失い、親友も裏切りによって死んだ私には、さらなる地獄が待っていた。
【あいつ、呪われているらしいぜ】
 そんな噂がどこからか駆け巡り、私の学校での地位は美しい蛾から呪われた蝶に転落した。みんなが私が歩くと道を避けた。後輩の自称霊感少女は私を見て気絶した。
誰かが私を呪っているみたいだった。
噂はどこからか漏れ聞こえて私を苦しめた。太一すら私と再び近づくことを拒否した。叔父の支援でなんとか大学進学を決めたのち、自由登校になった学校にはもちろんもう行かなかった。
その頃からだったか。私の眼の前に華子の髪の毛がそよぐようになったのは。

「つまり本条さんは、あのガス漏れ事件で大切な方が亡くなったのは華子さんのせい、そして自分が今幻覚を見て、学校で孤立しているのも華子さんのせいだと、そう考えているのですね?」
全てを聞き終えた女カウンセラーが語った一言に、私は深く落胆し、小さくだけ頷いた。そうです、とだけ。まあ、誰も信じられまい。自分を呪って死んだあの女の霊に、いまだに囚われているなんて。あの女が夜ごと、髪の毛を天井から垂らしているなんてこと。誰も信じられるものか。
ふいに落ちる、沈黙。
女カウンセラーはこの後デートの約束でもあるのか、いら立たしげに時計を見やった。
「私、どうしたらいいんだと思います?」
 私はこの沈黙に耐えられなくなって、叫ぶように問うた。
「まだ呪いは続いているんです。誰かが私を見張っているし、いつも声が聞こえるんです。死ね、死ねって。それが誰かの声なのかわかるようで、分からないんです。みんなに訊いても聞こえないっていうし。でも、華子はまだいるんです。あの杉の木の下で、私を呪っているんです!!」
  私が思わず絶叫したところで、女カウンセラーは私に冷たい一瞥を投げた。
「話は分かりました。あなたの症状は重いようね。病院に行きましょう」

 私は大学のカウンセリング室を出て、一人でぼーっと高架橋の下を歩き出した。夕暮れどき、見上げる空が燃えている。真っ赤に、真っ赤に、憎悪に。あたりに人はいない。けれど、一人いる。真っ黒な髪を垂らした、白いワンピース姿の華子が立っている。
「華子、これで、満足だった?」
 私は目の前に佇む華子に尋ねた。
「これで、満足よね? 私から家族を奪い、友も失って学校でも独りぼっちで!! 病気扱いされてっこれで私はあんたの呪いを受けきったわよ!! さぞや満足でしょう!!」
 私が涙混じりに絶叫すると、華子が消えて、代わりにあたりが女の笑い声で満ちた。あはは、うふふ、あはは。それは知っている誰かの笑い声のようであり、また違うようだった。
「やめてっもうやめてよお!!」
 私は我知らず悲鳴をあげ、その場に蹲った。だけれど笑い声はやまない。ずっと耳元に響いてくる。華子の呪いはやまない。まだ、あの杉の木の下にいて、私を呪っている。

私、このまま殺されるのかしら。いや。

 あいつは私から家族を奪った。幸せも。
絶対許さない。許すものか。そうだ、あいつを殺そう。あいつも殺しに来るのだったら、こっちから迎えうてばいいんだ。
 あの杉の木の下で、あいつを殺そう。
 私は気が付いたら、奥多摩行の電車に乗り込み、携帯を開いていた。そしてブログにすべてを書いた。誰も見ていないはずのブログに、今までのこと、今日のカウンセリングのこと、そして今よりのことを。
【私が死んだら誰も真実を知らないままだと思って、ここに記します。私は今から奥多摩に戻って、あの神社で華子をもう一度殺します。じゃないと私の人生は、何のためにあったのか分からなくなってしまうから。今から出るから神社には夜に着くでしょう。ちょうどいいですね、幽霊が出る頃合いです】
 私がブログにすべてを書き記した頃、奥多摩に電車は私を下した。

 その駅では誰も人が下りなかった。いや、一人男がいたくらいか。閑散とした駅には人気がなく、私は一人でバスに乗り込んだ。華子を殺して、呪いを解くんだ。呪いの解き方は華子に聞いていた。夜に、藁人形を打ち付けた杉に人形を取りに行って、一言謝るのだ。ごめんなさい、と。そうすれば恐ろしいことが起こるかわりに命は助かると華子は言っていた。私にはもう恐ろしいことなんてなかったから、平気だった。もう何が起きてもいい。バスには誰の姿もない。夜のしじまにバスのブレーキ音だけが響く。猫でも飛び出してきたのだろうか。バスが小刻みに揺れる。
 あたりは人家の細い灯りだけが浮いて見えた。もう夕飯の時間であろう。
 バスの運転手は何も言わずに薄暗い神社前で私を下した。私は料金を払い、杉の木が屹立する神社の奥の院に向かった。神社は不気味な程静まり返っている。何の音もない。人の気配がない。華子のお父さんもお母さんも、今頃は車で山を下りて麓の家にいると思わされた程の、静寂。
 杉の木の下に行こう。そこで、華子は私を待っているはず。私はゆったりした足取りで、本殿裏の奥の院にたどり着いた。あたりの杉の木が風で揺れる。どの杉の木にもお札が貼ってある。私は妙な高揚感と恐怖感に襲われながら、奥の院の一番背の高い杉の木に駆けだした。そこに、華子がいる。華子がいる。華子が待っている。
 あれ? 
 私は驚いて目をこすった。確かに背の高い杉の木の下に、女がいる。白いワンピースを纏った、髪の長い女が。だけれどその髪の色は白髪で、腰まで波打っていた。
あれは、華子じゃない。
あれは、
彩香――?
 彩香はにっこりしながら、私の方へと振り向いた。
「久しぶりじゃん。美佳。元気い?」
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