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月と悪戻 2
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「久しぶり、シン…。また、会えたね」
あの時の約束を果たしたロゼアラは俺にこう言って微笑んだ。
俺じゃない他の男の腕の中で。俺の父、ルサ国王フリュウの番となって。
※ ※ ※ ※
「お前が黒か? …酷い盤面だな…」
床に広げた数人用の手狭な敷物の上でロゼアラと女官のエマが遊戯盤を挟んで向かい合い一勝負を繰り広げている。二色の丸い駒を使って最終的な自軍の陣地の広さを競い合うランカという名の陣取りゲームだ。進行状況はまだ中盤と言ったところだが黒を持つロゼアラの敗色濃厚。あまりの一方的な戦況につい口にしてしまった。
「エマが強すぎるんだ! 定石通りに打っても手も足も出ない」
憤慨するロゼアラはいつもの装いだ。着衣を変えることを父は特に反対もしなかったが、結局自分の意思で装いを改めないことを決めたようだった。以前よりしっかり肩掛けで肌を隠しているから、一応俺の顔を立ててくれてるようで、そんなところはいじらしい。
「これはセンスもあるからな」
「シンもランカを打てるの? だったらシンもエマと打ってみたらいいよ。そうしたら僕のこと笑えなくなるから」
むぅっと口を尖らせるロゼアラ。手元の遊戯盤の黒は容赦ない猛攻を受けてもはや壊滅寸前である。
「面白そうだな。一局申し込む」
逆転不可能と判断したのかロゼアラは座っていた場所を俺に譲る。入れ替わるようにロゼアラの温もりが残るそこへ足を崩して座り込みエマへと勝負を挑む。
「エマ、僕と一緒で手心無しで打ってよ」
「かしこまりました」
ロゼアラの要望にエマは折り目正しく了承の返事を返し、俺との勝負が始まった。
今日はロゼアラのご機嫌伺いに出向いていた。あの襲撃の日から二日目。
神の使いとして常に崇められ丁重に扱われる彼にはあの一件はうまく消化できない事件だったろう。
その件の後始末があり、昨日はロゼアラとは会わずじまいだった。気落ちしているだろうと元気づけたかったが、それは俺の役目ではないと会いに行きたい衝動を堪えた。
実際ロゼアラは父にそばに居てもらい気持ちを落ち着かせたようだ。二人は番いなのだからロゼアラが父を求めるのは仕方ない。父もロゼアラ最優先なのでどんなに大切な政務があっても後回しにする悪癖がある。その帳尻合わせはロゼアラに報われない想いを抱く俺に回ってくるから皮肉というか、世の中はうまく成り立っているというか。
今日はその翌日で、俺の仕事も一段落したところだった。王城の中央広間の片隅にある一段低い造りになっている空間、昔はサロンだったという、今はロゼアラ専用の寛ぎ場所へと向かったのだ。
「うん…。なるほど。これは相当な手練れだな」
有利と言われる先手を貰ったが、戦局は劣勢だ。床に敷いた絨毯の上に直接置かれた遊戯盤を横から覗き込み戦況を見守っていたロゼアラも俺の言葉にうんうんと同意を示している。
サロン時代の調度品を全て取っ払っただだっ広いがらんどうの空間に小ぶりの敷物だけを敷く、椅子や机を使わない暮らしを好む未開拓部族のような低い生活で過ごすのがロゼアラの普段のお気に入りだ。豪華絢爛な広間でこの一帯だけやたらと質素だが、慣れれば居心地の良さは城内一かもしれない。
「だよね? エマには一生勝てる気がしない」
ロゼアラが嘆息する。エマの腕前は確かだった。それでもどうにか最後まで打ちきって、結果は俺の負け。善戦した方だろう。
「じゃあロゼアラ。俺と勝負だ」
「シンと?」
「女官殿以外には勝てると言ったじゃないか。お手並み拝見といこう」
「受けて立つよ!」
わざと曲解してにやりと煽ればロゼアラは面白いように思惑通りの勝ち気な反応を返してくる。単純だ。
「ハンデだ。エマに三回まで助言を貰ってもいい」
エマとの対戦でロゼアラの力量は掴んでいる。俺に勝とうとすれば多分三回では足りない。けど俺には別の企みがあった。狙うは辛勝惜敗。もちろん勝つのは俺だ。花を持たせようと下手に負ければロゼアラの機嫌を損ねることになる。なにせロゼアラは負けず嫌いだ。手加減されたとプライドを傷つけるかもしれない。かと言って大差で勝てばそれもロゼアラが臍を曲げかけねない。心象を悪くせずいい勝負を演出するならこの回数が妥当だろう。
そんな算段を俺がしてるとも気づかずにロゼアラは口をムッと尖らせた。ハンデを与えられたことにカチンときたのだろう。その仕草が可愛くて俺はついぷっと吹き出した。
更にそれがお気に召さなかったようでロゼアラの闘志に火をつけたのか、真剣な目でまだ真っさらな盤面を睨みつけるように見据えた。
「ロゼアラは誰に打ち方を教えてもらったんだ?」
一進一退の攻防を繰り広げながら俺はロゼアラに話しかける。
「アスターだよ」
勝負はやっと中盤へ差し掛かったところだがエマの助言を早々に使い切ってしまい、後がないロゼアラは盤上から目を離さず真剣な面持ちのまま答えた。
「へぇ。彼も打てるのか」
ランカは知名度の低い盤上遊戯だ。競技人口も少なくこの国では浸透していない。よっぽど通の人間が嗜む程度だ。そんなランカをここに居る四人全員がそれなりに打てるというのは奇跡に近い。
「アスターも強いよ」
「エマ殿には及びません」
一つ下がった場所で直立不動でロゼアラの警護をするアスターは短く謙遜する。
「エマは特別! この界隈で三本の指に入るんじゃない?」
「本場の方達には太刀打ちできませんわ」
我が事のように自慢げに胸を張るロゼアラに、側に控えるエマが珍しく相好を崩す。アスターと同年代の彼女は女官としてはベテランだ。元は行儀見習いとしてこの城へ上がって、先代国王の正妃の側仕えもしていたそうだ。ロゼアラが父の居室で寝食を共にするようになった時に世話役に抜擢された。仕事熱心で責任感のある人柄とこれまでの実績を高く評価されての人選だ。ロゼアラに対して思うところもあるだろうが親身になって支えてくれる忠実な臣下だ。
「そんな事ないよ! エマならきっと軽く薙ぎ払っちゃうよ」
「まぁ、ロゼアラ様ったら」
こんな風に砕けた様子を見せてくれるのは襲撃の一件で動揺を見せるロゼアラを彼女なりに気遣ってくれているからだろうか。
「聞き忘れていたがこの盤を用意したのはエマか?」
俺は今までロゼアラどころかアスターもエマもランカを打てるとは知らなかった。この場所へよく足を運ぶが、こうやって盤を囲んでいる光景を見るのは初めてだ。
「はい。ロゼアラ様とアスター様がランカを打たれる事は耳にしておりましたので気分転換にとお持ちしました。私も恥ずかしながら打ち手ですので何かお役に立てるかと思い今日ご用意させて頂きました」
やはり彼女なりの気遣いだったのか。
「シンは? 誰に教えてもらったの?」
ロゼアラに質問を返されて俺は苦笑した。
「祖父だ。小さい頃から毎晩手ほどきを受けていたな。祖父がいつでも気兼ねなく付き合ってもらえる対戦相手を育てていたというべきかもしれないが」
競技人口も少なく同好の士となかなか巡り会えない。居ないなら打てる人間を一から育てる方が手っ取り早いとの長期計画だ。目論見は成功して俺は祖父を唸らせるくらいには打てるようになったのだ。
ため息と共に肩をすくめるとロゼアラは目をまんまるくした後あどけなく笑った。エマもアスターも心持ち柔らかな顔をしている。
殺風景なこの場所に穏やかな時間が過ぎている。
俺が道化になるくらいで笑ってくれるならいくらでも笑われてやる。塞ぎ込んでいるよりよっぽどマシだ。
最近は安定している。あの頃の荒んだロゼアラを俺は見たくない。それが一時凌ぎのまやかしだとわかっていても俺は幸せそうに微笑む今のロゼアラを守り続けたかった。
※ ※ ※ ※
ロゼアラは常に夢と狂気の狭間で自分自身を見失っていた。
今から二年前、この国の凋落が始まった頃。その玲瓏さで周囲の人間を虜にし、神の子として崇め奉られる反面、すぐに心の闇に負けて発狂した。
一度そうなると誰もが手をつけれない。嘆き暴れて周囲を困らせた。そんな時は父か俺かのどちらかがロゼアラの気を宥めてやり過ごしていた。
正確には、父だけがロゼアラを落ち着かせる事ができるのだ。俺はただ父と間違われているだけ。
筋肉質な体格の父と細身の俺では似ても似つかないが、同じアルファで、父譲りの派手な金髪。正気を失ったロゼアラでは判別できないのだろう。どうしても父がその場にいない時は俺が父のフリをしてロゼアラを宥めた。周囲にもそれを望まれた。
抵抗はあるがロゼアラの役に立てるのならばと諦めもついたのだ。
結局俺も父と同じロゼアラ至上主義なのだろう。
俺の父フリュウは、とある地方の爵位を持たない娘と先代国王の間に産まれた庶子だった。
先代国王には正妃との間に王子が居たが、子供の頃から健康上の問題があり、成人した後も立太子される事もなかった。代わりに後継に選ばれたのが父だ。
戴冠前の王太子時代から意欲的に国政に関わりその片鱗を既に見せていた事もあり庶民出の新国王に期待する声も高かった。
その最も特異な偉業は貴族と庶民の格差を是正する為の教育機関の新設だろう。この国に住まう子供なら誰にでも入学資格があり、そこに掛かる学費は無償だ。どんなに優秀でも産まれた家でその後の人生が決まってしまう、そんな庶民の無力さ理不尽さを救済する施策はこれまでの身分格差による不利益を一掃する目新しい取り組みだと庶民の熱い支持を得た。
その他にも庶民に寄り添う政策を幾つも打ち出し、その類稀な指導力でその殆どを実現した才腕の塊だった。
前国王が崩御し、新しく国主へ戴冠した時も若く才能溢れ、そして親しみやすい人柄の新国王を賢君と称え熱烈に歓迎した。
そんな希望に満ちていた国の未来に暗雲が立ち込めたのは、他ならぬ国王フリュウの突然の変節が発端だった。
前人未到の改新に向けて国造りに邁進していた国王フリュウが、これまでの指標を自ら翻し、選民主義を宣言し、貴族への優遇措置を主張しだした。労働階級の庶民へは新たな税を課し、搾取の上に搾取を重ねた。
国庫は潤い、それを貴族に還元する。
これまでと正反対の政策に国民は戸惑いを隠せなかった。
新たな重い税金を課し、払えない者たちには国の財源の一つ、ハリル鉱山での貴石採掘の強制労働を強いたのだ。
それともう一点。国民に特定の宗教の信仰を義務付けた。
ムルトフ・ロラ教。
苦難からの救済を謳った新興の宗教団体である。
ルサ国は多神教の国だから、すでに国民たちは何かしらの信仰を持っていた。それを捨てムルトフ・ロラへの改宗を指示したのだ。
ムルトフ・ロラ教を国教に定める法案も法を司る貴族院により可決された。
信仰の自由を侵害されたくらいでは国民は黙っていただろう。そこへ今までの功績を無にする貴族優遇の法案。国民の怒りは一気に加速した。
重い税に喘ぐ多くの国民は疲弊し、その搾り取られた税でこの世の春を謳歌する貴族達を憎んだ。国のあちこちで反国家の活動が活発になった。国の摘発も厳しく、日々活動家との小競り合いが各地で勃発するようになった。
そうやってこの国は乱れ出したのだ。
そして程なく国民たちの王家に対する不信が爆発する事件が起こった。
王都から離れた地方領地。
ある程度の自治が認められていたその地を治める領主がムルトフ・ロラの信仰を拒否した。領主は産まれた時から信仰する神の敬虔な信徒だ。
改宗を拒否し、あまつさえ王家への不信感を露わにし叛意を示した。
そんな領主へ国は弾圧を行った。
軍による武力行使だ。
巻き添えを喰らったのはそこに住む領民で、改宗を誓った者諸共一人残らず殲滅した。
狂気の沙汰だ。
異教徒への見せしめとして行われた国主導による殺戮。この事件はこの国の行く末を決定づけた。
それを指示したのがムルトフ・ロラの神子ロゼアラだと言われている。
突然城に現れた神の代弁者を名乗る少年。年少ながらもその妖艶な媚態で国王フリュウを籠絡し軍による一連の蹂躙を行使させた。
そう言われるだけの根拠はあった。
国王フリュウは出会って間もないロゼアラと番契約を結んだからだ。
第二性持ち同士の特別な関係。
国王フリュウがアルファであることは公表されていたし、ロゼアラがオメガだと世間に広く知れ渡っている。
ムルトフ・ロラという怪しげな宗教を国民に強制したのも、ロゼアラがその教団の神子だからだろうと囁かれている。ロゼアラがオメガの特性でアルファの国王を誑かし色に溺れさせ傀儡にしたのだと。
一見、理屈は合っている。けれど第二性持ちの俺からすれば馬鹿げた推論だ。
第二性持ちの番の関係は絆を深める尊い物だが、悪く言えば隷属の関係だ。それを肌で感じることのできない単一性の人間には理解することは難しいだろうが、あくまでアルファがオメガを支配する、何があっても崩れない法則が二性持ちにはある。オメガは征服される弱者で、アルファは全能の強者。オメガがアルファを支配するような真似はできないし、大抵のアルファはそれを許さない。
ではロゼアラと父の逆転の関係性はどこから来るのか。その答えは俺にもわからない。父はロゼアラのいいなりで対応も甘々だ。それは父の本来の性格、懐の深さあってこそのもの。アルファは他者に服従しないのだから。
たまたま想い合った二人のそれぞれに置かれた状況や立ち位置が悪い方へ作用してしまっただけなのか?
そう結論づけるには父の所業は常軌を逸している。
いくら色恋に入れあげたとしても、そこまで盲目になるものか。人間には良識がある。人道的な善悪の判断力を鈍らせるものでは決してないはずだ。
けれどある日を境に人が変わってしまったように振る舞う父。悪い魔法にでもかかったのだろうか。…子供の読むお伽話ではあるまいが。
父への不信感を抱くのは国民だけじゃない。俺が父の変貌を一番訝しんでいる。父の事をさほど知っているという訳でもない俺ですら、その表現がしっくりくるほどには。
※ ※ ※ ※
俺が父に引き取られたのは十四歳の時。それ以前の父の事は噂でしか知らない。
公明正大・明朗快活。
庶民受けが良く、街に住む人達は父を悪く言う事はなかった。
俺が父に引き取られて、父がロゼアラをそばに置くまでの、俺の父に対する評価も悪くなかった。
父は調子がいいところもあるけれど、気っ風が良くてとても付き合いやすい。
俺に対して長年意図的ではないにしても放置していた反省か、父親というより友人のように対等な立場で関わってくれる。今更父親面できないと思っているのか、俺に引け目を感じているようで親としての責任を果たしながらも押し付けがましくはしない。既に俺がそこそこ分別のついた大人だからというのもあるのだろうけど。
そもそも父は俺の存在を知らなかったのだ。それを責めるほど俺は子供じゃない。
そんな俺たちだから衝突する事もなく、これはこれで親子としての一つの形だと思っていた。
それがロゼアラを側に置いた途端、上からの物言いに変わった。厳密にはロゼアラが関わるような話題の時にだけだ。ロゼアラが関わらない用件では会話は問題なく成立するのだ。それがロゼアラ絡みになるととにかく揉めてしまう。初めから答えがあって、そこへ辿り着かないような流れだと聞く耳を持たなくなる。そして牽強な理屈で話を終わらせてしまうのだ。
いくら付き合いの短い俺だとしてその変わりように疑問を持つのも仕方ないことだろう。
ムルトフ・ロラを城内に引き入れたのはロゼアラだ。そこから国の崩壊は始まった。
ロゼアラが諸悪の根源であることは誰の目から見ても明らかだった。けれど父はロゼアラを側に置き、あまつさえ番契約を結んだ。ロゼアラの意向は父の意向として国に伝達されることになった。
※ ※ ※ ※
「どうしたの? また難しい顔してる」
ロゼアラの見上げる目。縁取られたように境目のはっきりした黒い瞳。
「悪い。少し考え事をしていた」
駒を動かす手が止まっていた。
ロゼアラとランカで対戦中だった。集中しないとロゼアラに心配をかける。
「眉間に皺寄せてると跡になって縦皺になっちゃうから気をつけた方がいいよ。せっかくの格好いい顔が台無しになっちゃう」
「忠告痛みいる」
慇懃無礼に畏まればロゼアラが遠慮がちに口を開いた。
「でも本当に最近のシンは怖い顔の時が多いよ。昔みたいにもっと笑っていて欲しいなぁ」
昔。昔か。
確かに昔の俺は今のように無愛想な人間ではなかった。それなりに喜怒哀楽を表現する普通の人間だった。
しかし父の命のもと、ロゼアラの望むようにムルトフ・ロラの意向に沿わない無辜の民を虐げ、迫害した。その中で直接的間接的に少なくない人数の生命を奪った。この手はすでに汚れている。どの面を下げて笑えというのか。
冷徹なる月と呼ばれるようになるにはそれだけの理由がある。
世の中には思い通りにならない事なんて数えきれないほどある。それを嘆くだけではロゼアラの側には居られない。
俺は代償を払ってロゼアラと共にいる事を選んだ。
あの二人の襲撃犯を手引きした内通者がこの城にいる。ロゼアラの言うように城の警備を今は俺が全面的に担当している。昔と違って身元の確かな爵位を持つ者にしかこの王城を行き来できないようになっている。それを越えて侵入した犯人。その協力者が国側に仕える人間にいるのだ。
犯人達は組織の上からの指示で行動を起こしただけだ。侵入経路やそのお膳立ては組織上層部と協力者の間でやり取りが行われたらしく、実行犯からなんの情報も聞き出せなかった。
城に仕える者や往来を許された貴族一人一人を精査しなければならない。それを自分一人で負うのだ。膨大な手間がかかるだろう。
それでなくとも問題は山積している。いくら体力に自信があっても限界はあって。けれど諦めるわけにはいかない。ロゼアラの安全が掛かっている。誰からの信頼も得られない、誰も信用できないこの状況で、俺はそれこそ血反吐を吐きながらもロゼアラへの想いを貫く愚か者なのだろう。
あの時の約束を果たしたロゼアラは俺にこう言って微笑んだ。
俺じゃない他の男の腕の中で。俺の父、ルサ国王フリュウの番となって。
※ ※ ※ ※
「お前が黒か? …酷い盤面だな…」
床に広げた数人用の手狭な敷物の上でロゼアラと女官のエマが遊戯盤を挟んで向かい合い一勝負を繰り広げている。二色の丸い駒を使って最終的な自軍の陣地の広さを競い合うランカという名の陣取りゲームだ。進行状況はまだ中盤と言ったところだが黒を持つロゼアラの敗色濃厚。あまりの一方的な戦況につい口にしてしまった。
「エマが強すぎるんだ! 定石通りに打っても手も足も出ない」
憤慨するロゼアラはいつもの装いだ。着衣を変えることを父は特に反対もしなかったが、結局自分の意思で装いを改めないことを決めたようだった。以前よりしっかり肩掛けで肌を隠しているから、一応俺の顔を立ててくれてるようで、そんなところはいじらしい。
「これはセンスもあるからな」
「シンもランカを打てるの? だったらシンもエマと打ってみたらいいよ。そうしたら僕のこと笑えなくなるから」
むぅっと口を尖らせるロゼアラ。手元の遊戯盤の黒は容赦ない猛攻を受けてもはや壊滅寸前である。
「面白そうだな。一局申し込む」
逆転不可能と判断したのかロゼアラは座っていた場所を俺に譲る。入れ替わるようにロゼアラの温もりが残るそこへ足を崩して座り込みエマへと勝負を挑む。
「エマ、僕と一緒で手心無しで打ってよ」
「かしこまりました」
ロゼアラの要望にエマは折り目正しく了承の返事を返し、俺との勝負が始まった。
今日はロゼアラのご機嫌伺いに出向いていた。あの襲撃の日から二日目。
神の使いとして常に崇められ丁重に扱われる彼にはあの一件はうまく消化できない事件だったろう。
その件の後始末があり、昨日はロゼアラとは会わずじまいだった。気落ちしているだろうと元気づけたかったが、それは俺の役目ではないと会いに行きたい衝動を堪えた。
実際ロゼアラは父にそばに居てもらい気持ちを落ち着かせたようだ。二人は番いなのだからロゼアラが父を求めるのは仕方ない。父もロゼアラ最優先なのでどんなに大切な政務があっても後回しにする悪癖がある。その帳尻合わせはロゼアラに報われない想いを抱く俺に回ってくるから皮肉というか、世の中はうまく成り立っているというか。
今日はその翌日で、俺の仕事も一段落したところだった。王城の中央広間の片隅にある一段低い造りになっている空間、昔はサロンだったという、今はロゼアラ専用の寛ぎ場所へと向かったのだ。
「うん…。なるほど。これは相当な手練れだな」
有利と言われる先手を貰ったが、戦局は劣勢だ。床に敷いた絨毯の上に直接置かれた遊戯盤を横から覗き込み戦況を見守っていたロゼアラも俺の言葉にうんうんと同意を示している。
サロン時代の調度品を全て取っ払っただだっ広いがらんどうの空間に小ぶりの敷物だけを敷く、椅子や机を使わない暮らしを好む未開拓部族のような低い生活で過ごすのがロゼアラの普段のお気に入りだ。豪華絢爛な広間でこの一帯だけやたらと質素だが、慣れれば居心地の良さは城内一かもしれない。
「だよね? エマには一生勝てる気がしない」
ロゼアラが嘆息する。エマの腕前は確かだった。それでもどうにか最後まで打ちきって、結果は俺の負け。善戦した方だろう。
「じゃあロゼアラ。俺と勝負だ」
「シンと?」
「女官殿以外には勝てると言ったじゃないか。お手並み拝見といこう」
「受けて立つよ!」
わざと曲解してにやりと煽ればロゼアラは面白いように思惑通りの勝ち気な反応を返してくる。単純だ。
「ハンデだ。エマに三回まで助言を貰ってもいい」
エマとの対戦でロゼアラの力量は掴んでいる。俺に勝とうとすれば多分三回では足りない。けど俺には別の企みがあった。狙うは辛勝惜敗。もちろん勝つのは俺だ。花を持たせようと下手に負ければロゼアラの機嫌を損ねることになる。なにせロゼアラは負けず嫌いだ。手加減されたとプライドを傷つけるかもしれない。かと言って大差で勝てばそれもロゼアラが臍を曲げかけねない。心象を悪くせずいい勝負を演出するならこの回数が妥当だろう。
そんな算段を俺がしてるとも気づかずにロゼアラは口をムッと尖らせた。ハンデを与えられたことにカチンときたのだろう。その仕草が可愛くて俺はついぷっと吹き出した。
更にそれがお気に召さなかったようでロゼアラの闘志に火をつけたのか、真剣な目でまだ真っさらな盤面を睨みつけるように見据えた。
「ロゼアラは誰に打ち方を教えてもらったんだ?」
一進一退の攻防を繰り広げながら俺はロゼアラに話しかける。
「アスターだよ」
勝負はやっと中盤へ差し掛かったところだがエマの助言を早々に使い切ってしまい、後がないロゼアラは盤上から目を離さず真剣な面持ちのまま答えた。
「へぇ。彼も打てるのか」
ランカは知名度の低い盤上遊戯だ。競技人口も少なくこの国では浸透していない。よっぽど通の人間が嗜む程度だ。そんなランカをここに居る四人全員がそれなりに打てるというのは奇跡に近い。
「アスターも強いよ」
「エマ殿には及びません」
一つ下がった場所で直立不動でロゼアラの警護をするアスターは短く謙遜する。
「エマは特別! この界隈で三本の指に入るんじゃない?」
「本場の方達には太刀打ちできませんわ」
我が事のように自慢げに胸を張るロゼアラに、側に控えるエマが珍しく相好を崩す。アスターと同年代の彼女は女官としてはベテランだ。元は行儀見習いとしてこの城へ上がって、先代国王の正妃の側仕えもしていたそうだ。ロゼアラが父の居室で寝食を共にするようになった時に世話役に抜擢された。仕事熱心で責任感のある人柄とこれまでの実績を高く評価されての人選だ。ロゼアラに対して思うところもあるだろうが親身になって支えてくれる忠実な臣下だ。
「そんな事ないよ! エマならきっと軽く薙ぎ払っちゃうよ」
「まぁ、ロゼアラ様ったら」
こんな風に砕けた様子を見せてくれるのは襲撃の一件で動揺を見せるロゼアラを彼女なりに気遣ってくれているからだろうか。
「聞き忘れていたがこの盤を用意したのはエマか?」
俺は今までロゼアラどころかアスターもエマもランカを打てるとは知らなかった。この場所へよく足を運ぶが、こうやって盤を囲んでいる光景を見るのは初めてだ。
「はい。ロゼアラ様とアスター様がランカを打たれる事は耳にしておりましたので気分転換にとお持ちしました。私も恥ずかしながら打ち手ですので何かお役に立てるかと思い今日ご用意させて頂きました」
やはり彼女なりの気遣いだったのか。
「シンは? 誰に教えてもらったの?」
ロゼアラに質問を返されて俺は苦笑した。
「祖父だ。小さい頃から毎晩手ほどきを受けていたな。祖父がいつでも気兼ねなく付き合ってもらえる対戦相手を育てていたというべきかもしれないが」
競技人口も少なく同好の士となかなか巡り会えない。居ないなら打てる人間を一から育てる方が手っ取り早いとの長期計画だ。目論見は成功して俺は祖父を唸らせるくらいには打てるようになったのだ。
ため息と共に肩をすくめるとロゼアラは目をまんまるくした後あどけなく笑った。エマもアスターも心持ち柔らかな顔をしている。
殺風景なこの場所に穏やかな時間が過ぎている。
俺が道化になるくらいで笑ってくれるならいくらでも笑われてやる。塞ぎ込んでいるよりよっぽどマシだ。
最近は安定している。あの頃の荒んだロゼアラを俺は見たくない。それが一時凌ぎのまやかしだとわかっていても俺は幸せそうに微笑む今のロゼアラを守り続けたかった。
※ ※ ※ ※
ロゼアラは常に夢と狂気の狭間で自分自身を見失っていた。
今から二年前、この国の凋落が始まった頃。その玲瓏さで周囲の人間を虜にし、神の子として崇め奉られる反面、すぐに心の闇に負けて発狂した。
一度そうなると誰もが手をつけれない。嘆き暴れて周囲を困らせた。そんな時は父か俺かのどちらかがロゼアラの気を宥めてやり過ごしていた。
正確には、父だけがロゼアラを落ち着かせる事ができるのだ。俺はただ父と間違われているだけ。
筋肉質な体格の父と細身の俺では似ても似つかないが、同じアルファで、父譲りの派手な金髪。正気を失ったロゼアラでは判別できないのだろう。どうしても父がその場にいない時は俺が父のフリをしてロゼアラを宥めた。周囲にもそれを望まれた。
抵抗はあるがロゼアラの役に立てるのならばと諦めもついたのだ。
結局俺も父と同じロゼアラ至上主義なのだろう。
俺の父フリュウは、とある地方の爵位を持たない娘と先代国王の間に産まれた庶子だった。
先代国王には正妃との間に王子が居たが、子供の頃から健康上の問題があり、成人した後も立太子される事もなかった。代わりに後継に選ばれたのが父だ。
戴冠前の王太子時代から意欲的に国政に関わりその片鱗を既に見せていた事もあり庶民出の新国王に期待する声も高かった。
その最も特異な偉業は貴族と庶民の格差を是正する為の教育機関の新設だろう。この国に住まう子供なら誰にでも入学資格があり、そこに掛かる学費は無償だ。どんなに優秀でも産まれた家でその後の人生が決まってしまう、そんな庶民の無力さ理不尽さを救済する施策はこれまでの身分格差による不利益を一掃する目新しい取り組みだと庶民の熱い支持を得た。
その他にも庶民に寄り添う政策を幾つも打ち出し、その類稀な指導力でその殆どを実現した才腕の塊だった。
前国王が崩御し、新しく国主へ戴冠した時も若く才能溢れ、そして親しみやすい人柄の新国王を賢君と称え熱烈に歓迎した。
そんな希望に満ちていた国の未来に暗雲が立ち込めたのは、他ならぬ国王フリュウの突然の変節が発端だった。
前人未到の改新に向けて国造りに邁進していた国王フリュウが、これまでの指標を自ら翻し、選民主義を宣言し、貴族への優遇措置を主張しだした。労働階級の庶民へは新たな税を課し、搾取の上に搾取を重ねた。
国庫は潤い、それを貴族に還元する。
これまでと正反対の政策に国民は戸惑いを隠せなかった。
新たな重い税金を課し、払えない者たちには国の財源の一つ、ハリル鉱山での貴石採掘の強制労働を強いたのだ。
それともう一点。国民に特定の宗教の信仰を義務付けた。
ムルトフ・ロラ教。
苦難からの救済を謳った新興の宗教団体である。
ルサ国は多神教の国だから、すでに国民たちは何かしらの信仰を持っていた。それを捨てムルトフ・ロラへの改宗を指示したのだ。
ムルトフ・ロラ教を国教に定める法案も法を司る貴族院により可決された。
信仰の自由を侵害されたくらいでは国民は黙っていただろう。そこへ今までの功績を無にする貴族優遇の法案。国民の怒りは一気に加速した。
重い税に喘ぐ多くの国民は疲弊し、その搾り取られた税でこの世の春を謳歌する貴族達を憎んだ。国のあちこちで反国家の活動が活発になった。国の摘発も厳しく、日々活動家との小競り合いが各地で勃発するようになった。
そうやってこの国は乱れ出したのだ。
そして程なく国民たちの王家に対する不信が爆発する事件が起こった。
王都から離れた地方領地。
ある程度の自治が認められていたその地を治める領主がムルトフ・ロラの信仰を拒否した。領主は産まれた時から信仰する神の敬虔な信徒だ。
改宗を拒否し、あまつさえ王家への不信感を露わにし叛意を示した。
そんな領主へ国は弾圧を行った。
軍による武力行使だ。
巻き添えを喰らったのはそこに住む領民で、改宗を誓った者諸共一人残らず殲滅した。
狂気の沙汰だ。
異教徒への見せしめとして行われた国主導による殺戮。この事件はこの国の行く末を決定づけた。
それを指示したのがムルトフ・ロラの神子ロゼアラだと言われている。
突然城に現れた神の代弁者を名乗る少年。年少ながらもその妖艶な媚態で国王フリュウを籠絡し軍による一連の蹂躙を行使させた。
そう言われるだけの根拠はあった。
国王フリュウは出会って間もないロゼアラと番契約を結んだからだ。
第二性持ち同士の特別な関係。
国王フリュウがアルファであることは公表されていたし、ロゼアラがオメガだと世間に広く知れ渡っている。
ムルトフ・ロラという怪しげな宗教を国民に強制したのも、ロゼアラがその教団の神子だからだろうと囁かれている。ロゼアラがオメガの特性でアルファの国王を誑かし色に溺れさせ傀儡にしたのだと。
一見、理屈は合っている。けれど第二性持ちの俺からすれば馬鹿げた推論だ。
第二性持ちの番の関係は絆を深める尊い物だが、悪く言えば隷属の関係だ。それを肌で感じることのできない単一性の人間には理解することは難しいだろうが、あくまでアルファがオメガを支配する、何があっても崩れない法則が二性持ちにはある。オメガは征服される弱者で、アルファは全能の強者。オメガがアルファを支配するような真似はできないし、大抵のアルファはそれを許さない。
ではロゼアラと父の逆転の関係性はどこから来るのか。その答えは俺にもわからない。父はロゼアラのいいなりで対応も甘々だ。それは父の本来の性格、懐の深さあってこそのもの。アルファは他者に服従しないのだから。
たまたま想い合った二人のそれぞれに置かれた状況や立ち位置が悪い方へ作用してしまっただけなのか?
そう結論づけるには父の所業は常軌を逸している。
いくら色恋に入れあげたとしても、そこまで盲目になるものか。人間には良識がある。人道的な善悪の判断力を鈍らせるものでは決してないはずだ。
けれどある日を境に人が変わってしまったように振る舞う父。悪い魔法にでもかかったのだろうか。…子供の読むお伽話ではあるまいが。
父への不信感を抱くのは国民だけじゃない。俺が父の変貌を一番訝しんでいる。父の事をさほど知っているという訳でもない俺ですら、その表現がしっくりくるほどには。
※ ※ ※ ※
俺が父に引き取られたのは十四歳の時。それ以前の父の事は噂でしか知らない。
公明正大・明朗快活。
庶民受けが良く、街に住む人達は父を悪く言う事はなかった。
俺が父に引き取られて、父がロゼアラをそばに置くまでの、俺の父に対する評価も悪くなかった。
父は調子がいいところもあるけれど、気っ風が良くてとても付き合いやすい。
俺に対して長年意図的ではないにしても放置していた反省か、父親というより友人のように対等な立場で関わってくれる。今更父親面できないと思っているのか、俺に引け目を感じているようで親としての責任を果たしながらも押し付けがましくはしない。既に俺がそこそこ分別のついた大人だからというのもあるのだろうけど。
そもそも父は俺の存在を知らなかったのだ。それを責めるほど俺は子供じゃない。
そんな俺たちだから衝突する事もなく、これはこれで親子としての一つの形だと思っていた。
それがロゼアラを側に置いた途端、上からの物言いに変わった。厳密にはロゼアラが関わるような話題の時にだけだ。ロゼアラが関わらない用件では会話は問題なく成立するのだ。それがロゼアラ絡みになるととにかく揉めてしまう。初めから答えがあって、そこへ辿り着かないような流れだと聞く耳を持たなくなる。そして牽強な理屈で話を終わらせてしまうのだ。
いくら付き合いの短い俺だとしてその変わりように疑問を持つのも仕方ないことだろう。
ムルトフ・ロラを城内に引き入れたのはロゼアラだ。そこから国の崩壊は始まった。
ロゼアラが諸悪の根源であることは誰の目から見ても明らかだった。けれど父はロゼアラを側に置き、あまつさえ番契約を結んだ。ロゼアラの意向は父の意向として国に伝達されることになった。
※ ※ ※ ※
「どうしたの? また難しい顔してる」
ロゼアラの見上げる目。縁取られたように境目のはっきりした黒い瞳。
「悪い。少し考え事をしていた」
駒を動かす手が止まっていた。
ロゼアラとランカで対戦中だった。集中しないとロゼアラに心配をかける。
「眉間に皺寄せてると跡になって縦皺になっちゃうから気をつけた方がいいよ。せっかくの格好いい顔が台無しになっちゃう」
「忠告痛みいる」
慇懃無礼に畏まればロゼアラが遠慮がちに口を開いた。
「でも本当に最近のシンは怖い顔の時が多いよ。昔みたいにもっと笑っていて欲しいなぁ」
昔。昔か。
確かに昔の俺は今のように無愛想な人間ではなかった。それなりに喜怒哀楽を表現する普通の人間だった。
しかし父の命のもと、ロゼアラの望むようにムルトフ・ロラの意向に沿わない無辜の民を虐げ、迫害した。その中で直接的間接的に少なくない人数の生命を奪った。この手はすでに汚れている。どの面を下げて笑えというのか。
冷徹なる月と呼ばれるようになるにはそれだけの理由がある。
世の中には思い通りにならない事なんて数えきれないほどある。それを嘆くだけではロゼアラの側には居られない。
俺は代償を払ってロゼアラと共にいる事を選んだ。
あの二人の襲撃犯を手引きした内通者がこの城にいる。ロゼアラの言うように城の警備を今は俺が全面的に担当している。昔と違って身元の確かな爵位を持つ者にしかこの王城を行き来できないようになっている。それを越えて侵入した犯人。その協力者が国側に仕える人間にいるのだ。
犯人達は組織の上からの指示で行動を起こしただけだ。侵入経路やそのお膳立ては組織上層部と協力者の間でやり取りが行われたらしく、実行犯からなんの情報も聞き出せなかった。
城に仕える者や往来を許された貴族一人一人を精査しなければならない。それを自分一人で負うのだ。膨大な手間がかかるだろう。
それでなくとも問題は山積している。いくら体力に自信があっても限界はあって。けれど諦めるわけにはいかない。ロゼアラの安全が掛かっている。誰からの信頼も得られない、誰も信用できないこの状況で、俺はそれこそ血反吐を吐きながらもロゼアラへの想いを貫く愚か者なのだろう。
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