悪戻のロゼアラ

yumina

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トワとフリュウ

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「あら、あれは大公家の…」
「お相手は、もしかして王太子殿下…?」
「お忍びかしら。人目も憚らず」
「こちらのご主人とも懇意の仲だとか」
「相変わらずお盛んですわね」
「伴侶に相手にされないのも憐れなものですわね」
 ささめくように口々に噂される。
「ほら、まだ首に」
「ね、大公家のご子息、オメガだとか」
「よくある事ですわ。…不仲ですし、ね? あの方ですもの。適当にお相手を見繕ったんじゃありませんの?」
 こんな事くらいじゃ傷ついたりしない。もう慣れたから、平気。
「学院時代はそれはご執心だったと伺ってましたのに」
「あちらは政略でございましょう。きっと色々あるのですよ」
 こいつらなんかに絶対に無様な姿なんて見せない。


       ※ ※ ※ ※

 信じられない…。
 俺はその場に呆然と立ち尽くした。
 ここは学院の二回生棟の小アリーナ。一週間前に受けた試験の結果が貼り出され、確認に来た学院生達で賑わっている。
 一位 トワ・ヴァレリア
 俺の名前は上位三十名の一番上に鎮座。だからすぐに見つかった。
 いつもの上位集団を抑えて首位を獲得だ。もともと座学の成績は悪く無いから普段でも十位くらいにつけていた。今回は堂々の一番。
 試験前に過去を思い出して精神的にボロボロだったから、うんと順位を下げるかと思っていたけど、ひとまず安心。
 前回の記憶を持ったまま巻き戻ったから、今の俺の頭はこの学院で卒業までに学ぶ殆どのことを履修した状態になっている。きっと三回生に上がるまでは安泰だろう。
 禍福は糾える縄の如し、とかいう言葉がどこかの国にあったけど、まさにそれ。この先、未来を変えることだけに専念できるのは有り難い。

「お前、見た目と違って賢かったんだな」
 相変わらず神出鬼没。俺の後ろからフリュウが声を掛けてきた。耳周りのピアスの数が増えている。クラバットタイは外しているわ、袖は捲ってるわ、自由だ。ここは風紀にうるさくないけど、学院生は良家の子息ということでやっぱり体裁がある。ここまで奔放だといっそ清々しい。更にフリュウにはある種の、素直に感想を述べると持って生まれた為政者然とした風格も備わって、悔しいけど華がある。
「君はどうだったの?」
 張り出されるのは三十位まで。それなのにここに居るのは何故であろう。
「二つほど追試だな」
「え? それは凄くない? 基礎も怪しかったのに」
 この学院へ入る前までは読み書き計算の初歩的な教育しか受けてないと言っていた。それを考えればその結果はお見事としか言えない。ここ、曲がりなりにも高等専門学を扱っている所だぞ。
「まあ、俺様にかかればこんなもんよ」
「さすがラゼルと同じ血を引いてるだけあって優秀だね」
「あいつが優秀なのは俺と一緒の血が流れているからだっつーの!」
 俺が素直に褒めてあげたのに何が気に入らないのか言い返してくる。
 そんな事よりラゼルだ。どうしちゃったの?
 十三位 ラゼル・ベルン
 俺が驚いていたのはこっち。張り出されたリストに目を疑った。
 以前の俺より順位が下回っている。いつもは上位集団の常連で、三位以内から転落したことなんて無かったんだ。
「ラゼル、落ち込んで無かった?」
 努力家だし心配だ。
「俺が知るか。本人に聞けば良いだろ、昼飯の時にでも。腹立つな」
 フリュウは思い切り機嫌の悪そうな声を出す。
 なんでだよ。
「ところでお前、今褒めてくれたよな、俺の事」
「それが何?」
「じゃあさ、ご褒美をくれ」
「どうして俺が?」
「仮にも俺に勉強を教えた当人じゃねぇか。その俺の健闘を称えて、頼み事を引き受けろ」
 やたら偉そうに上から命令してくる。これも天賦の才かな。こんなところで発揮しなくてもいいのに。
「俺はラゼルに頼まれたから仕方なく勉強を見てやったんだ。色々あってほとんど何もしてやれなかったし。だからご褒美が欲しければラゼルに頼んでみればいいよ」
「なんであいつと出かけなきゃいけないんだ」
「出かける?」
 思いがけない単語にきょとんとする。
 フリュウは拗ねた様に肩をすくめた。
「引っ越してきてまだ間もないんだよ。この街のことに不案内で、穴場とか遊びに行けるとこ知りたい。けどここの学院の奴らとは仲良くする気はねぇし、かと言って他に当てはない。お前、俺を案内しろ」
「やだよ」
 ただでさえアルファとオメガで、お膳立ては済んでますって組み合わせなのに。変な誤解をされたくない。そもそも俺も良家の御坊ちゃまだぞ。フリュウみたいな奴が喜ぶ様な穴場なんて知らないっての。
「君の従者とか頼れる人は他にたくさんいるだろう」
 俺はにべもなくそっぽを向いた。
「明日休日だろ? 城下広場の噴水の前。昼までに一人で来いよ。護衛なら俺で充分だ」
 俺の態度を気にしたふうでもなくフリュウは得意げな顔をする。いや、護衛が要るのは君の方じゃ…?と突っ込みを入れたいのも我慢。
「行かない。君と仲良くするつもりは無いよ」
 君だけじゃなくて誰とも。俺はもう決めているんだ。
「気が向いたらでいい」
 そう言い残してフリュウは去っていった。


「ラゼル!」
 教室へ戻る途中、ラゼルの姿を廊下で偶然見つけた。本当は関わるべきじゃないと思っていても心配が勝ってやり過ごせず、つい呼び止めてしまった。
「あら、お姫様じゃん」
 ラゼルと連れ立っていた明るい茶髪が声をかけてくる。
 ラゼルと同じクラスのアハト・イーバーク。タレ目の伯爵家次男でフリュウとはまた違った軽薄さがある。気取ったところもなく鷹揚で悪評絶えない俺にも普通に話し掛けるラゼルの友人だ。
「トワ、何か用か?」
 ラゼルがいつもと同じトーンで俺に問いかける。すでに全ての科目が手元に返されているので、試験の結果を知らないというわけでは無いはずだ。それなのにこれといって変わったところは無く、落胆しているようには見えない。あえて気にしない様にしてるのかな…。
「え、えっと。その」
 どうしよう? 
 こんな事面と向かって聞けない。無策な自分を後悔しながら口籠る。
「そう言えば、首位おめでとー」
 アハトがまごつく俺に助け船を出してくれた。
「俺も見た。すごいな。前日、調子が悪そうだったから気になってたけど余計な心配だったみたいだ。おめでとう、トワ」
 ラゼルの思わぬ賛辞と笑顔に俺は虚をつかれてしまった。
「あ、ありがとう…」
 こんな柔らかい笑顔なんて本当に何年振りだろう。俺が魔法に掛かる前以来だな。
「ラゼルも惜しかったな。名前の記入ミスしてなきゃ同率一位だったのに」
「え? 記入ミス?」
 聞き返す俺にラゼルは苦笑した。
「そ。こいつ、名前の書き忘れで一科目丸ごと無効にされたんだよ。本来なら追試対象だけど、テスト自体は全問正解だったから今回は特別に追試は免除って先生がコイツに伝えに来たのを俺も横で聞いてたんだよ」
 アハトが可笑しそうに説明してくれる。
「なんだ、そうだったんだ。良かった…」
 いや、良くはない。
 そんな凡ミス、ラゼルがするなんて信じられない。
「どうしたの? ラゼルらしく無いポカだよ。どこか身体の調子悪かったの?」
「動揺してたのは自覚があった。ただそれがこんな形で出でくるとは思わなかったな」
 困った様に笑う。でも全然悔しくなさそうだ。
「あ、それって俺の様子が変だったせい?」
 思い当たるのはそれ。記憶を戻した俺は挙動不審に違いなかった。それをラゼルは間近に見ていたわけだし、それからラゼルの様子もおかしくなったし。
「俺自身の問題だ」
 否定しなかったけど、だからと言って俺のせいだとも言わない。
「でも…」
「姫さんはそれを心配してコイツに会いにきたのか?」
「ま、まぁそんなとこかな…」
 ここで違うと言い張るのもおかしいから素直に肯定する。
「そうか。心配かけたな。ありがとうトワ。会いに来てくれて」
 いつもは怜悧な目を優しく綻ばせてラゼルは微笑んだ。
 その眩しさときたら!
 ほんと、俺と一緒でラゼルも魔法が解けたんじゃないかと言うくらい、笑顔の大盤振る舞いだ。
「お前ら、雰囲気変わった? もしかしてとうとう付き合いだしたのか?」
 アハトが俺とラゼルを交互に見比べて聞いてくる。ほんの少し前の俺たちの関係性を知っていれば不自然に感じるのは当たり前だろう。俺が一番違和感を感じている。
「や、付き合っては無いよ? ラゼルとは友達!」
 俺は必死に否定する。やっぱりラゼルがおかしい。調子狂いっぱなしだ。
「…だって。どーなん?」
 好奇心丸出しの顔でアハトがラゼルに詰め寄った。
「友達だな。今はまだ」
 ラゼルも仕方なさそうに答える。
「おお、意味深」
 アハトが短く口笛を吹く。
「ラゼル⁈」
 俺はラゼルの返事に慌てふためく。なんだ、その、発言は? 今までそんな思わせぶりな事は一度だって言ったことなんて無い!
「じゃあトワ。まだ用事あるからまた昼にな」
 ラゼルは片手をあげて颯爽とアハトと共に去っていった。

       ※ ※ ※ ※

 今日は学院は休み。
 俺は一人で城下町へ繰り出していた。
 絡まれると面倒なので首を覆うハイネックのシャツに上着を羽織る。これでオメガの特徴を消す。首に巻いている保護用のベルト、これ自衛の為のものだけど、自分がそうであると宣伝してる様なものでもあるから厄介なんだよな。だから服でしっかり隠す。そもそも近くに来られたらアルファにはすぐに匂いでオメガだと見抜かれてしまうから、あくまで遠目で勘付かれない為の気休め程度の対策なんだけどね。フェロモンの方も屋敷を出る直前に追加で抑制剤を飲んで念を入れてもいる。
 旬のオメガは独り歩きもままならないとは誰が言ったか。この性に属した者の宿命だから受け入れるしかないけれど言い得て妙だと思う。屋敷を出る時も使用人達から心配されながら見送られた。
 普段は常にアスターや誰かに付いてきてもらっていたけど今日はちょっと特別。どうしても一人で行動したかったのだ。
 俺たちオメガが普通の人達と同じ生活を送るには一番の近道が番を作って頸を噛んでもらうことだ。そうすると番相手以外にフェロモンの効果が無くなる上、一度噛まれてしまえば他者による上書きもできない。だから番契約を成立させた後は頸を保護する必要もなくなり首を晒して普通に暮らしていけるのだ。でも俺は独身を貫くと決めているからその手は使えない。今回もまた、この保護ベルトとは長い付き合いになるんだろうな。

 俺は前回の人生でも保護ベルトと死ぬまで仲が良かった。文字通り。
 普通は夫婦になればアルファとオメガなら番契約をする。政略上の夫婦でも契約を交わす。長年一緒に生活していればよっぽどじゃ無ければ情は湧くものだ。伴侶がいつまでも保護具をつけているのも不仲の証で外聞が悪い。そんな事情込み込みでアルファオメガの夫婦は契約を結ぶんだ。
 けど俺はラゼルと番契約をしなかった。
 して貰えなかった。
 俺は契約したかったけど、ラゼルが拒否した。
 契約しなくても子供は出来るし、実際ロゼアラは産まれた。
 番契約を拒否するのは、アルファとオメガでは事情が違ってくる。オメガは番相手に依存してその他を受け付けなくなる。その唯一の番に捨てられることがあれば心を病んで死んでしまうこともあるという。だから、オメガの伴侶選びは慎重にしなければならない。
 オメガと違ってアルファは一度に何人もオメガを番にすることができる。甲斐性のあるアルファで一夫多妻制みたいな思考の奴がオメガを複数囲っていることも実際あるらしい。
 ラゼルはその辺生真面目だから愛人をって感じでは無い。十数年の結婚期間、仕事だと言って昼も時には夜も家を空けていた。俺も不在がちだったからラゼルの動向を把握してなかったけど、俺以外の誰か特別な相手が居たとは思えない。実直で誠実。ラゼルを言い表すならこの二つが最適。自分の役割に矜持を持っている。俺とのことは政略であり、多分王命だ。王太子候補のフリュウ襲撃の黒幕容疑が掛かっているから、叔父である陛下からも口添えされているはず。だから俺との婚姻も自分の役目だと解釈し、決してラゼルからは離縁を口にはしなかった。けれど番契約もしなかった。誠実故に。
 愛の無い俺に対しての線引き。
 それこそがアルファが番契約を拒否する事情だ。依存性が増す愛してもいないオメガなんて面倒以外の何ものでも無いだろう。
 そして言葉は悪いがアルファを誑かすオメガの誘引フェロモンを持ってしても俺はラゼルを落とせなかったと言える。

 行く先々で首の保護具を見られるたびに陰で嘲笑されて、死ぬほど悔しかった。けど誰にも泣き言は吐かなかった。ラゼルにも。
 あの頃の俺は見栄と虚栄心で既に心が捻れてしまっていたから。

       ※ ※ ※ ※

 会いたくない奴に偶然会ってしまうのはこの世の常なのだろうか。
「お前、何でここに居んだよ? 俺はさっきまで待ち合わせ場所でずっとお前を待ってたんだぞ!」
 目当ての店の扉を開けた途端、奥のカウンターで小物を見繕うフリュウにさっそく見つかってしまった。なんて間の悪い。
 ここは最近オープンした雑貨屋。以前ラゼルを誘ったお店だ。城下のメインストリートに面した店内は若い人達で賑わっている。
「約束してないよ」
「お前って薄情な」
 フリュウはつかつかと大股で俺の前まで来てつまらなさそうに愚痴った。今は昼過ぎ。昼下がりのお茶の時間に近い時刻だ。結構粘ったんだな。
「変に期待持たせないだけ親切でしょ」
 でも俺だって自分の未来がかかってるんだ。絆されるなんてことはあってはならない。
 素っ気ない俺にフリュウは金髪頭を掻きながら盛大にため息をつく。
 これだけはっきり態度に出してるんだから流石に暇つぶしに俺を構うのを諦めてくれないかなぁ。
「お前、ここに何買いに来たんだ。…アイツとお揃いの物でも探しに来たのか」
 けれどフリュウは俺の前から消える事なく会話を続行してきた。めちゃくちゃげんなりした顔で。そう言えばお揃いの物が欲しいとラゼルに言い寄った時にフリュウもその場に居たな。
「アスターに贈る物買いにきたんだよ」
「アスター? 誰だそれ?」
「俺の従者」
 隠す必要もないから正直に答える。
 もうすぐアスターと出会って四年。いつも俺の為に忙しく駆け回っているアスターへ日頃の感謝を込めたプレゼントを贈りたくて街に出てきたのだ。気恥ずかしいからアスター以外の使用人にも内緒にしておきたくて、だから今日は一人というわけ。
「男か?」
「男だよ」
「アルファか? 歳は何歳だ?」
「普通の十歳」
 食いつくなぁ。
「なんだ。紛らわしい…」
 最後は呟くように口の中でもごもご喋ってフリュウは軽く息を吐いた。
 今のやり取りが何を意味するのか分からないなんて言わない。
 フリュウは俺に気がある。それは過去、何度も冗談半分に口説かれたから、事実なのだ。興味を持たれているからには毅然とした態度を取らなくては。あの未来の二の舞はしたくないからね。
「お客様、お待たせしました。サイズの確認お願いします」
 カウンター奥から店員の声がフリュウへ掛かる。店員の前に指輪の入ったトレイが置かれてある。フリュウはいそいそとカウンターへと戻っていった。

「貴金属、好きだね」
「おう! かっちょえーだろ? ここの彫りんとこ最高にイカしてる。前、気に入ってた特注品の一点物、訳あって手放したからな。それの代わりになるやつを探しに来たんだ」
 あん時、それしか金目のもん持ってなかったからなぁ、と聞いてもないのに買ったばかりの指輪をはめた手のひらを俺に見せびらかせながら何かぶつぶつ続けている。
「いいんじゃない? 似合ってるよ」
 俺は無事、目当ての物を見つけてそれを買った。あとは屋敷の皆んなへのお土産を買って今日の用は終わり。後は帰るだけだ。そう決めて外へ出た時に仁王立ちで待ち伏せしていたフリュウに捕まったのだ。店の出入り口で傍迷惑な押し問答もできないから少し離れた広場まで仕方なしに足を向けた。

「本当はあの日はお前が心配で様子を知りたくて探してたんだ」
 大通りに続く広場の石畳の階段の隅に座ってフリュウはおもむろに語り出した。
 それは俺が過去の記憶を思い出し、学院の庭園の外れのベンチで一人物思いに耽っていた時のことで、試験前日混乱したまま逃げ去った事をフリュウは口にしている。
 今日のフリュウは町人風の出立ち。下町の柄の悪い兄ちゃんと説明すれば納得してもらえる服装だ。大柄だわ金髪は豪奢だわ、顔の造りも悪くない。アルファ然としたオーラを放っているしで正直目立つ事この上ない。女の子達をはじめ、行き交う人達の注目を集めている。本人は慣れているのか全く動じてないのはお見事です。
 で、そんな奴の前に俺。
 首元を隠しているけど、見た目からオメガだと推定はされている。
 この組み合わせってほぼ誤解されるんだよね。特に二人きりだと。やっぱり誰かに付いてきてもらったほうが良かったかも。
 そんな事をモヤモヤと考えている俺を尻目にフリュウはなんだか機嫌が良さそうだ。
 ちなみにどうして俺がここで大人しくしているのかと言えばあの件で脅されているから。
「俺の出自をどうして知っているのか親父の前で無理に吐かせてやってもいいんだぜ?」
 と言われてしまえば素直に要望に応えるしかなくて。公爵家の皆んなに迷惑をかけない。やり直しの人生で優先すべき項目の一つである。それを破るわけにはいかず渋々フリュウに従っている。畜生。権力の暴力だ。
「急に人が変わったみたいに怯え出して、俺たちから逃げるみたいに走り去られたら誰だって気になるだろ?」
 まあ、そうだね。
「それで少し様子が知りたくて昼休みにお前に会いに行こう思ったんだ。けどお前のクラスに行ってもお前は既に居なくて、昼飯に行こうとしてる奴捕まえて聞いてもお前の行方誰も知らないって言うし。仕方ないから学院内しらみつぶしにしたんだぞ」
 それは大変な労力だったろう。
 でもそれでどうしてフリュウがあんな場所に現れたか納得した。俺を探していたのか。
「やっと見つけたと思えば、初めて会った日みたいなトンチキっぷりも無くて全然普通に会話してるし、なに企んでるのかってちょっと警戒したな」
 その表現、やめて。今となっては黒歴史なんだよ。
「しかもお前、俺の正体知ってる謎の人物だし。他にもぶっ倒れて気絶するわ人前で発情するわ、どんだけ周囲を騒がせるんだよって。ぶっ飛んだ奴で逆に興味引かれた」
 ぶっ倒れたのはお前のせいだからな。
 フリュウの勝手な言い分に俺は口を尖らせて応酬する。
「君も相当変な奴だよ。初めからあの件を使えば俺に言うこと聞かせられて、何時間も待ち続ける事もなかったのにね」
「あ? デートに誘うのにそんな卑怯な手を使えるか」
 うわ、はっきり言われちゃったよ。
 やっぱりデートのつもりだったんだ。
「結局、同じ理由で今俺を拘束してるじゃない」
「今日は偶然会っただけのデートでもなんでもない日だ」
 わかるような、わからないようなこだわりだ。
「それでお前はこの先同じように俺に脅される事になるが、まだ理由を教える気にはならないのか? 俺はそっちの方が都合は良いけどな」
 目を細めてにやにや笑ってくる。嫌な奴。
 俺だってお前が信じてくれるなら話すっていうの。

 そんな不毛なやり取りをフリュウとしてる最中、俺の視界の端にそれは急に入ってきた。
 広場に出店している屋台の間をすり抜けて黒い影がこちらに突進してくる。
「ひぃ!」
 犬! なんでこんなところに⁈
 薄汚れているし首輪もしていない。大型の野良犬。獰猛な顔をしたヤツは何故かこっちに向かってくる。
「わぁ…っ!」
 俺は座るフリュウの横を駆け登って野良犬から逃げようとしたけど、段差に足を引っ掛けてしまい前のめりに倒れ込む。
「あぶな!」
 体勢を崩し階段にあわや正面から激突かと思われた俺を、フリュウは素早く片手で抱え救ってくれた。
 けど俺は天敵の出現に慌てるばかり。
「離してっ! 犬、こっちに来るっ!」
 しっかりと俺を抱えるフリュウの腕を必死で引き剥がそうと身体をがむしゃらに捩った。
「落ち着けって」
 そんな俺にフリュウは冷静な声で宥めてくる。
「やだっ! フリュウ離して!」
 俺はみっともなく喚いてフリュウの腕の中で暴れた。けどびくともしない。腕力で勝てるとも思ってないけど、力の差は歴然。俺は絶望して涙目になった。もう野良犬はそこまで迫っている。
 俺は子供の頃、自分と同じ大きさくらいの野犬に追いかけ回されて酷い目にあったことがあるのだ。屋敷の敷地に迷い込んだその野犬は、庭で遊んでいた俺の服の裾に噛みつき俺を引きずり倒した。すぐに家の使用人が気づいてくれて大した怪我はしなかったけど、その恐怖は大きくなった今でも拭いきれず俺の心にこびりついている。
 俺は血の気が下がった。フリュウの腕から逃れる事を諦めて身を縮こませて目を固くつぶる。
 もうダメだ…!
「わかったわかった。追い払ってやるから大人しくしてろ」
 フリュウはそう言うと反対の手で俺の背中をぽんぽんとあやすように軽く叩いて、それから俺の身体を守るように抱き込んだ。

「お前にも苦手なものがあるんだな」
 野良犬はフリュウが一睨みしただけで尻尾を巻いて何処かへ逃げていった。フリュウの発する威圧に負けたみたいだ。野生の勘でフリュウを上と見たのだろう。こんな芸当もできるってアルファって便利…。
「はぁ、びっくりした…。なんでこっちに来るんだよ…」
 野良犬の姿が見えなくなったけど俺の心臓はまだばくばくと落ち着かない。深く息を吐いて呼吸を整える。
「はは、お前の焦った顔、最高に可愛かった」
 揶揄うフリュウの声が近い。
 それに気づいて俺はやっと今の状況を把握。俺、階段に大股を開いて座るフリュウの脚の間に膝立ちの格好で向かい合って、上半身はフリュウの腕の中!
「うわっ!」
 反射で力任せに仰け反れば今度は後ろへとバランスを崩し尻餅をつきそうになった。フリュウはそれも難なく対処する。俺の両脇に素早く手を差し込んでしっかり俺の身体を支えてくれた。
「おっと。これ以上服を汚したら家の奴らに何かあったのかって心配されるぞ」
「…ありがとう。もう大丈夫だから手を離して」
 あまりのみっともなさに赤面だ。フリュウのごもっともなセリフにやっと冷静になる。俺がそう言うとフリュウは素直に手を離してくれた。
「ほら、お前の荷物。従者への贈り物が入ってんだろ? 割れ物じゃねぇだろうな?」
 地面に落としてしまった紙袋を拾い上げ土埃を払うフリュウ。
「あの、ごめん。俺、犬に嫌な思い出があって。迷惑かけたね」
 差し出された荷物を受け取りながら謝る。最近、謝罪してばかりな気がするなぁ…。
「そうか。じゃあ悪かったな。さっき、お前の顔をどうのって、別に揶揄ったつもりは無かったんだがお前にとっては嫌な気分にさせたな」
 馬鹿にされるかと思っていたけど意外な反応。それどころかふざけたところのない表情で真摯に非礼を詫びてくる。
 そんな風に来られるとは思ってなくて不意をつかれた俺は慌てて取りなした。
「別になんとも思ってない。フリュウが俺の顔好きなのは知ってるし…」
 なんせ俺に会うたび俺の美貌がどーだだとか、やたら誉め殺ししてきた。
「………」
 あんまりしつこくされるから、俺のどこが良いのかと尋ねたことがあった。そう、確かあれは俺がラゼルと結婚して子持ちになってからで……。
 ………。
 あれ? 俺、またやっちゃった?
「なんてね! 冗談だよ」
 慌てて誤魔化す。
「確かにお前の顔は滅茶苦茶好みだ」
 俺の、場合によっては勘違い発言とも取られかねないうっかりに言及もせずフリュウはあっさり認めた。潔い。でも今は悠長に感心している場合じゃ無い。
「いや、その、その話はまた今度で!」
 必殺、先伸ばし。俺の手数の少なさよ。
「だけど今はそれだけじゃ無いっての…」
 ボソッと口の中で呟かれた。
 意外な言葉にはっとフリュウの顔を見つめた。憮然としているけど照れているような色合い。いつもの泰然自若とした不遜な様子もない。
 俺は固唾を飲んだ。
 今はそれだけじゃ無いって…?
 フリュウの言葉を反芻する。
 俺、何処にも好きになってもらえる要素ないと思うんだけど…。
 昔のフリュウはとにかく俺の事を綺麗だ美しいと誉めそやした。それは外見に向けられた賛辞。フリュウにとって俺は自分を飾る装飾品みたいなもの。今現在のフリュウがそうであるように、昔のフリュウも貴金属を好んで身に付けていた。宝石なんかほとんど付いてない、とてもシンプルだけど、精巧な彫りの入ったアクセサリー。自分にとって価値があると思えば値段の多寡なんて気にしない。俺の事はその延長。そして本質は別にある。ラゼルへの敵対心だ。俺を奪い取って優越感に浸りたかったんだと思う。本気じゃない。火遊びだから俺の内面なんてどうでもいい。現に今のフリュウもラゼルに一泡吹かせたいからと明言しているし。あの頃も荒んだ俺に心を寄せるような物好きもいなかった。そう思っていたから、だから今のフリュウの言葉は俺にとって未知のもの。
「『公爵家のお姫様』の噂は事前に聞いていたけど実際ラゼルラゼルって尻尾振って媚びてんの見て驚いたし、けど俺には平気で牙を剥くし度肝抜かれた」
 そんな頃もあったな。今となっては消したい過去。
「俺のこととか本当に眼中にないくらいあいつの事好きなんだなって、逆にそんな一途なところがいいなって。…お前飽きない奴だよな。向こう見ずで鼻っ柱強くて、つい気になっちまうな」
 なんだ、この甘い雰囲気…。
 いやいや、この空気、早めに変えないと。
 何時もみたいに軽口で場を流せばいい。でもフリュウの顔があまりにも真剣だったから冗談も言えなくなった。
「家はどこだ? 帰るなら送ってやる」
 すっかり困り果てた俺にフリュウがそんな事を言ってくる。
「え? いいよ。そんなに遠くないし、それに屋敷の皆んなにあげるお土産のお菓子を買いに行かなきゃいけないし」
「でもなぁ。さっきの騒ぎでお前既に何人かに目をつけられてるぞ」
 その言葉に目だけを動かして周りを確認。こちらを伺っている男が数名。そのいずれもが俺に含んだ視線を向けている。俺の中身を知らない奴からよく投げかけられるのと同種のモノ。
「………お言葉に甘えます」
 俺だけじゃ対処出来ないと判断。悔しいけど今はフリュウのそばにいた方が安全だ。
「よし! 素直が一番だな」
 フリュウはにかっと男臭く笑って立ち上がった。

「お前今までそんなに無防備でよく無事だったなぁ」
 有名高級菓子店でクッキーの詰め合わせを買って、今は俺の屋敷への帰路。貴族邸宅街で綺麗に舗装された道をフリュウと並んで歩く。そんな道すがらの会話。
 先ほど指摘されるまで俺が周りのよからぬ存在に気づかなかった事に呆れられている最中。でも仕方ないじゃん。俺はオメガって言ってもモテた事無い。いつも秒で幻滅されるからしつこくされる事もなかった。そういった意味では気を払う必要もなくて確かに無頓着なのだ。
「街を一人で歩くなんて滅多にしないし、学院では俺と仲良くしようとする奴は殆どいないからね」
 クラスメイトすら近寄らない。ぼっち目指してたけど割と既にぼっちである。
「ふーん。あいつの側はいい牽制にもなってたっぽいな」
 フリュウの何気ない一言。でも俺は改めて気付かされた。言われてみるとそうかも知れない。いくら俺が公爵家の権力でラゼルに群がる不届き者を蹴散らしていたと言っても禍根は残る。俺が成敗した奴らが報復に出てきても不思議はない。けど俺は今までそんな憂き目にあったことはなくて。
 ラゼルはいつも、俺が騒ぎを起こすたび呆れたため息を吐きながらも、俺を突き放す事はしなかった。もしかして裏で俺のやらかした事に対して何か手を打ってくれていたのだろうか。
 誰彼構わず喧嘩を売るな、いつまでも無傷ではいられないと、あの日忠告してきたのは何もフリュウのことがあっての事じゃ無くて、前々から俺の尻拭いをしてくれてたから? 俺が揉め事を起こさないように、そもそも誰も俺に近づかないようラゼルが根回ししてたから? さすがに大公家へ喧嘩を売る馬鹿はいない…。
「知らずにラゼルの恩恵を受けてたのかな…」
 想像の域を出ないけど、それがもし当たっていたとしたら、恥ずかしい。誰の目にも俺は並外れた厚顔無恥と映っていただろう。
 仮にそうであったとして、ラゼルは何も悪くない。
 悪いのは当たり前のことに気が付かず、自分の力だと得意になっていた俺。あの頃は周りの評価なんてどうでも良かったから知ろうともしなかった。
「これからはしっかり自衛しろよ。なんなら俺が守ってやるぞ?」
 戯けるようにフリュウは俺の顔を覗き込んだ。
「これからは自覚を持って慎ましく行動します」
 今更気づいたラゼルの配慮と自分の振る舞いに反省しかない。
「まあ、頑張りな。俺が必要になったらいつでも言ってくれ」
 元気付けるように俺の背中をバン!と叩く。結構痛かった。でも丸まっていた背筋が真っ直ぐ伸びて何となく気合が入ったかも。
 俺はそっとフリュウへ視線を向ける。それに気づいたフリュウはいつもの顔で笑ってくれた。
 その野生的な笑顔にほんの少し見惚れたのは一生の秘密だ。
 
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「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

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