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第1話 開けてはいけない財布が、そこにあった。
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第1話 開けてはいけない財布が、そこにあった。
オレの名前は三田村バク。チャンネル登録者124人の底辺都市伝説系YouTuberだ。動画のタイトルはだいたいこんな感じ——「【閲覧注意】深夜2時に一人で心霊トンネルへ行ったらマジで●●だった」「【ガチで開けた】禁忌の神棚にある箱の中には…」——だが、再生数は二桁止まり。コメント欄には母親らしきアカウントが毎回「頑張ってね」って書いてる。哀しい。
ある日、ネタ探しのために行きつけのブックオフ(立ち読みしかしない)で都市伝説本をめくってたとき、異様に古くて黄ばんだ文庫本が目に入った。
背表紙に赤ペンで「廃棄」と書かれたその本は、なぜか棚の奥に押し込まれていた。タイトルは『徳川埋蔵金と禁忌の財宝』。著者名はない。
ページをめくると、そこには奇妙な記述があった。
「埋蔵金の鍵は、“開けてはいけない財布”の中にある。
それを開けた者は、時の外に放り出され、己の死を三度見る。」
意味不明だが、逆にグッときた。こういうオカルトめいた言葉は動画ネタになる。
オレはその本をポケットに突っ込むと、動画の構想を練りながら帰宅した。
その夜、さっそく撮影を始めようとカメラを回しながらブックオフで拾った文庫本を開いて解説していたところ、ページの間から何かがポロリと落ちた。
——財布だった。
黒くてボロボロの、昭和の遺物のような革財布。金具は錆びつき、まるで長年地中に埋まっていたかのような腐敗臭がした。
「え、ガチじゃん……」
まさかとは思うが、これが“開けてはいけない財布”なのか?
もちろん開ける。それがYouTuberの使命ってやつだ。
カメラを固定して、財布を手に取り、ゆっくりと開けた。
中には、紙が一枚入っていた。
——「開けたな。」
その三文字を見た瞬間、部屋の電気がバチンと切れた。
同時に、目の前の空間がゆがんで見えた。いや、ゆがむというより「ねじれる」感じ。まるで誰かが空間そのものをつまんで引き裂いたような——。
気づいたとき、オレは見知らぬ場所に立っていた。
まわりは真っ暗。地面は土。遠くにぼんやりと火が灯っている。
「どこだここ……?」
スマホを取り出そうとするが、ポケットにはあの財布しか入っていなかった。カメラもない。服もジャージじゃなくて、なぜか作務衣みたいなものに変わっていた。
足元には、藁。鼻をつくのは、人間の、汗と糞と血の匂い。
「……江戸時代?」
そんなバカな。けど、それ以外に説明がつかない。
耳をすませば、どこかで「百姓一揆だ!」「米を出せ!」という怒声が聞こえる。
混乱しながらも歩を進めると、朽ちた神社の鳥居があった。なぜかそこに、見覚えのある男が立っていた。——オレだった。しかも、死んでる。
木にくくりつけられたもう一人のオレの身体。首には縄。顔は青白く、舌を出している。腐敗が進んで、目玉がくぼんでいた。
「……ちょ、まじか……」
目の前の死体が、急に口を開いた。
「おまえ、また来たのか……三度目だぞ……」
——ここで、気を失った。
目が覚めると、自宅の布団の上だった。
部屋は荒れていて、ゴミ袋が山積み。日付は変わっていない。夢だったのか……?
と思ったが、あの財布は枕元にあった。
中にはまた一枚、新しい紙が入っていた。
「これが一度目。」
オレは息を呑んだ。夢じゃない。
この財布、本物だ。オレは確かに「己の死を一度見た」。
YouTube動画のタイトルを変更する。
【超絶ヤバい】開けてはいけない財布、開けたら死んだ自分がいた件【リアル警告】
登録者は124人のままだけど、オレの中では確信がある。
この財布の謎を暴けば、再生数は、世界を変える。
なぜなら——
埋蔵金は、まだ眠っているのだから。
オレの名前は三田村バク。チャンネル登録者124人の底辺都市伝説系YouTuberだ。動画のタイトルはだいたいこんな感じ——「【閲覧注意】深夜2時に一人で心霊トンネルへ行ったらマジで●●だった」「【ガチで開けた】禁忌の神棚にある箱の中には…」——だが、再生数は二桁止まり。コメント欄には母親らしきアカウントが毎回「頑張ってね」って書いてる。哀しい。
ある日、ネタ探しのために行きつけのブックオフ(立ち読みしかしない)で都市伝説本をめくってたとき、異様に古くて黄ばんだ文庫本が目に入った。
背表紙に赤ペンで「廃棄」と書かれたその本は、なぜか棚の奥に押し込まれていた。タイトルは『徳川埋蔵金と禁忌の財宝』。著者名はない。
ページをめくると、そこには奇妙な記述があった。
「埋蔵金の鍵は、“開けてはいけない財布”の中にある。
それを開けた者は、時の外に放り出され、己の死を三度見る。」
意味不明だが、逆にグッときた。こういうオカルトめいた言葉は動画ネタになる。
オレはその本をポケットに突っ込むと、動画の構想を練りながら帰宅した。
その夜、さっそく撮影を始めようとカメラを回しながらブックオフで拾った文庫本を開いて解説していたところ、ページの間から何かがポロリと落ちた。
——財布だった。
黒くてボロボロの、昭和の遺物のような革財布。金具は錆びつき、まるで長年地中に埋まっていたかのような腐敗臭がした。
「え、ガチじゃん……」
まさかとは思うが、これが“開けてはいけない財布”なのか?
もちろん開ける。それがYouTuberの使命ってやつだ。
カメラを固定して、財布を手に取り、ゆっくりと開けた。
中には、紙が一枚入っていた。
——「開けたな。」
その三文字を見た瞬間、部屋の電気がバチンと切れた。
同時に、目の前の空間がゆがんで見えた。いや、ゆがむというより「ねじれる」感じ。まるで誰かが空間そのものをつまんで引き裂いたような——。
気づいたとき、オレは見知らぬ場所に立っていた。
まわりは真っ暗。地面は土。遠くにぼんやりと火が灯っている。
「どこだここ……?」
スマホを取り出そうとするが、ポケットにはあの財布しか入っていなかった。カメラもない。服もジャージじゃなくて、なぜか作務衣みたいなものに変わっていた。
足元には、藁。鼻をつくのは、人間の、汗と糞と血の匂い。
「……江戸時代?」
そんなバカな。けど、それ以外に説明がつかない。
耳をすませば、どこかで「百姓一揆だ!」「米を出せ!」という怒声が聞こえる。
混乱しながらも歩を進めると、朽ちた神社の鳥居があった。なぜかそこに、見覚えのある男が立っていた。——オレだった。しかも、死んでる。
木にくくりつけられたもう一人のオレの身体。首には縄。顔は青白く、舌を出している。腐敗が進んで、目玉がくぼんでいた。
「……ちょ、まじか……」
目の前の死体が、急に口を開いた。
「おまえ、また来たのか……三度目だぞ……」
——ここで、気を失った。
目が覚めると、自宅の布団の上だった。
部屋は荒れていて、ゴミ袋が山積み。日付は変わっていない。夢だったのか……?
と思ったが、あの財布は枕元にあった。
中にはまた一枚、新しい紙が入っていた。
「これが一度目。」
オレは息を呑んだ。夢じゃない。
この財布、本物だ。オレは確かに「己の死を一度見た」。
YouTube動画のタイトルを変更する。
【超絶ヤバい】開けてはいけない財布、開けたら死んだ自分がいた件【リアル警告】
登録者は124人のままだけど、オレの中では確信がある。
この財布の謎を暴けば、再生数は、世界を変える。
なぜなら——
埋蔵金は、まだ眠っているのだから。
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