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その5『三角関係』編
第七話 こんなに美人でも
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第七話 こんなに美人でも
その頃、閉店後の店内で髙橋彩乃は浮かれていた。
『ハルト君』と呼べること。好きな人を下の名前で呼べることに気分を良くしていたのだ。
もちろん、犬飼真希という強敵がいることはわかっている。でも、今は自分と乾春人との関係が前進したことを素直に喜んだ。
(ンフフフフ。ハルト君♪ ハルト君♪)
「楽しそうね」
「わっ、びっくりした。マキ、まだ帰ってなかったの」
「トイレ入ってただけなのに閉店作業しちゃうんだもん。最後のハイボールまだ飲みかけだったしー。まあ、もう帰るけどさぁ」
「ごめんごめん。精算は済ませたわよね。ハイボールは今度来たとき普通料金でメガハイにしてあげるから許してね」
「ラッキー♪ ならいいよ」
「……ねえ」
「うん?」
「いや、いい、なんでもない」
「ハルトのことでしょ」
「うん……」
「アンタ本気なんだ?」
「そう言うマキも、そうなんでしょ」
「…………まぁ…ね」
「マキとは長い付き合いだけど……初めてだね、こんなこと。恋愛ドラマみたい」
「しかも昼ドラね。主婦の大好きな三角関係ドロドロなやつ」
「観るのは好きだけど、自分がやることになるなんて」
二人は見つめ合って、そして同時にフーーーーーと深いため息をした。
「マキはハルト君のどこが好きなの?」
「えっと、全部」
「ずるいってそれは」
「そうは言っても、あのコに欠点とかないしね」
「それは確かに」
「どうしたらいいんだろね」
「いっそ三角関係のまま仲良く暮らさない?」
「アハハ! それいい! それは可能になれば一番いいよ。ただ、ハルトの親御さんがそれを良しってするかは疑問だけど」
「私達と付き合うって時点で親御さんにはもう賛成されないでしょ。冷静に考えてさ。11歳上の子持ち&19歳上よ? 自分で言っててあれだけど。ハルト君の彼女になるにはちょーーーっと難しいよね。普通は」
マキはグラスを持ち上げ、ニヤリとした。
「こんなに美人でも?」
あやのもポーズをとって、髪をかきあげた。
「そ、こんなに美人でも」
「そっかーーーーー」
二人はまた笑い合い、静かな店内に笑い声が響いた。でも、笑い声が収まると、現実が戻ってくる。ハルトは若い。あやのより11歳、マキより19歳も若い。本来、彼の未来には彼女たちの知らない可能性が広がっている。
シングルマザーのあやのも、人生経験豊富なマキも、これがどんなに難しい恋かをわかっていた。
あやのは微笑みを浮かべ、そっと言った。
「まだ夢見ててもいいよね、ちょっとだけ」
マキはグラスを傾け、柔らかい目で答えた。
「叶う可能性も、ないわけじゃないしね」
店の外では、夜の町が静かに息づいていた。店内の二人は、難しいことのわかってる未来をそれでも夢見たのだった――
第七話 こんなに美人でも
その頃、閉店後の店内で髙橋彩乃は浮かれていた。
『ハルト君』と呼べること。好きな人を下の名前で呼べることに気分を良くしていたのだ。
もちろん、犬飼真希という強敵がいることはわかっている。でも、今は自分と乾春人との関係が前進したことを素直に喜んだ。
(ンフフフフ。ハルト君♪ ハルト君♪)
「楽しそうね」
「わっ、びっくりした。マキ、まだ帰ってなかったの」
「トイレ入ってただけなのに閉店作業しちゃうんだもん。最後のハイボールまだ飲みかけだったしー。まあ、もう帰るけどさぁ」
「ごめんごめん。精算は済ませたわよね。ハイボールは今度来たとき普通料金でメガハイにしてあげるから許してね」
「ラッキー♪ ならいいよ」
「……ねえ」
「うん?」
「いや、いい、なんでもない」
「ハルトのことでしょ」
「うん……」
「アンタ本気なんだ?」
「そう言うマキも、そうなんでしょ」
「…………まぁ…ね」
「マキとは長い付き合いだけど……初めてだね、こんなこと。恋愛ドラマみたい」
「しかも昼ドラね。主婦の大好きな三角関係ドロドロなやつ」
「観るのは好きだけど、自分がやることになるなんて」
二人は見つめ合って、そして同時にフーーーーーと深いため息をした。
「マキはハルト君のどこが好きなの?」
「えっと、全部」
「ずるいってそれは」
「そうは言っても、あのコに欠点とかないしね」
「それは確かに」
「どうしたらいいんだろね」
「いっそ三角関係のまま仲良く暮らさない?」
「アハハ! それいい! それは可能になれば一番いいよ。ただ、ハルトの親御さんがそれを良しってするかは疑問だけど」
「私達と付き合うって時点で親御さんにはもう賛成されないでしょ。冷静に考えてさ。11歳上の子持ち&19歳上よ? 自分で言っててあれだけど。ハルト君の彼女になるにはちょーーーっと難しいよね。普通は」
マキはグラスを持ち上げ、ニヤリとした。
「こんなに美人でも?」
あやのもポーズをとって、髪をかきあげた。
「そ、こんなに美人でも」
「そっかーーーーー」
二人はまた笑い合い、静かな店内に笑い声が響いた。でも、笑い声が収まると、現実が戻ってくる。ハルトは若い。あやのより11歳、マキより19歳も若い。本来、彼の未来には彼女たちの知らない可能性が広がっている。
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あやのは微笑みを浮かべ、そっと言った。
「まだ夢見ててもいいよね、ちょっとだけ」
マキはグラスを傾け、柔らかい目で答えた。
「叶う可能性も、ないわけじゃないしね」
店の外では、夜の町が静かに息づいていた。店内の二人は、難しいことのわかってる未来をそれでも夢見たのだった――
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