麻雀食堂−mahjong cafeteria−

彼方

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その7『家族』編

第二話 麻雀バカ兄妹

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第二話 麻雀バカ兄妹




咲刃さきやいばセンセ、咲刃センセ。テスト勉強は捗ってますか?」




 リビングのソファに寝転がり、スマホを片手にニヤニヤと笑う俺の声が、ダイニングテーブルに広げた教科書と格闘中の美咲に突き刺さる。

 美咲はペンを握りしめたまま、顔を上げてジト目で俺を睨んだ。




「ちょっと、変な名前で呼ばないでよ! ちゃんと勉強はやってるよ!」「お前がつけた名前だろ」 




「改名しよーかな……」 




 美咲はため息をつきながら、数学のノートに意味もなく円をグルグル描き始める。




「デビュー前からかよ」

「やっぱり『刃』はちょっと中二病だったわ。なんとなーく、クールな感じするかなと思ってさ……」 




 咲刃とは、美咲が小説を本格的に書くにあたり、勢いでポンとひねり出したペンネームだった。

 最初は「うおお、めっちゃクール!」ってテンションだったらしいけど、時間が経つにつれて、じわじわと恥ずかしさが襲ってきたらしい。人生、そういうことってあるよね。




「ま、これも人生経験だ。とりあえずその『咲刃』ってペンネームとしばらく付き合っていけばいいんじゃないか。ジュンコさんにもそれで登録して下さいって言っちゃった手前、今さら変えてと言うのもな」 




 ペンネームは咲刃でとジュンコさんに伝えたのはもう三日も前だ。

 ジュンコさんは仕事が早いタイプだから、三日もあればもうかなり咲刃の名前で進めているに違いなく、今更のペンネーム変更は迷惑になるだろう。




「はー……やっちゃったなー。さきやいば。さきやいば。……なんかキャッサバっぽくない?」 

「少しだけな」

「キャッサバと言えばタピオカミルクティー。ねえお兄ちゃん、テスト勉強を頑張っている妹にミルクティーをいれてあげてよ。タピオカ入ってなくていいからさ」 

「別に言われなくても飲み物くらい自分にいれるついでに出してやるつもりだったが、そう言われるとダリィな」




 と言いつつも結局キッチンに向かう俺。




 キッチンでティーポットにお湯を沸かし、紅茶の茶葉を準備する。いつもはコーヒー派の俺だけど、今日は美咲に合わせて紅茶にしてみる。

 キャビネットからアールグレイのティーバッグを取り出し、ポットに放り込む。ふわっと広がる柑橘系の香りが、なんとも優雅な気分にさせる。美咲にはミルクティー、俺にはストレートティー。ついでに冷蔵庫にあったクッキーも皿に盛ってみた。




 カップを手にリビングに戻ると、美咲はすでに教科書を閉じて紅茶の到着を待っていた。




「今日の分の勉強はおしまい。あとはゆっくり休むのも大切だと思うの」

「まぁな。じゃああとは知性を磨く時間とするか」

「そうだよね。そう来なくちゃ!」




 そう言って俺達兄妹は麻雀アプリ『雀ソウル』を開いた。これはそう、寝る前の頭の体操だ。




 東風2回だけのつもりが結局6回やって3勝3敗。決着がつかなかった。




「引き分けかー」

「また明日やろう」

「明日はもうテスト前日だから無理だよ」

「まあ俺も朝早いから無理かな」




 そう言いつつもまた、明日もやってしまう麻雀バカ兄妹なのだった。

 俺ってちょっとダメ兄貴か?


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