75 / 76
その8『新しい生活』編
最終話 恋は食卓にある
しおりを挟む
75.
最終話 恋は食卓にある
今日はメタさんがいのりを預かる日で、あやのさんとマキの2人とも俺の部屋に来ていた。
ちょうどいい機会だと思い、俺は自分の悩みを夕飯の時2人に打ち明けた。
部下だった人間が上司になりモチベーションが下がっている――と。
情けない話だがこれ以上自分の中だけでモヤモヤさせているのは無理だった。人に聞いてもらいたい。アドバイスが欲しい。
俺は精神的にも追い込まれていた。
「じゃあ辞めちゃいなよ」
「えっ」
「そうだよ、そんなつらい思いしてまで会社勤めすることないよ! それしか道がないならまだ分かるけどハルトには稼いでくる嫁がいるじゃん!」
「しかも2人もね。なんなら食堂で雇ってもいいし」
「スナックで雇ってもいいよ?」
思いつきもしなかった。仕事ってやめてもいいんだ。そう言われた瞬間肩の荷がおりた気がして気付いたら津波のように一気に涙が押し寄せた。外でなら我慢できる涙も自分の家ではもう無理だ。
なんの涙が出たのかも分からなかったが、止めどなく溢れ出る。
「明るく生きてこーよ! ほら唐揚げできたから!」
ゴトッ
食卓に揚げたての唐揚げが大皿で用意された。
ニオイだけで食欲をそそる。米が炊けるまであと2分。たった2分が待ち遠しい。
「ホラホラ泣かない泣かない。オネーさんがチュッチュッしてあげるからねー。ンー、チュッ♡」
「あー! マキずるいよ。私にだけ仕事させといてー」
「だってアタシは料理うまくないもん」
「ウソつけ!」
「そンじゃー仕方ないからアタシは飲み物用意するねェ~♪」
そう言ってマキは冷蔵庫からアルコールを何種も取り出した。
「えへへ~。こんな時にはやっぱりお酒でしょ。ハルトの気の済むまで飲んだらいいよ。カクテルとか作ろっか?」
「もー、マキは自分が飲みたいだけでしょ! ハルト君は付き合うことないからね」
「いや、今日は俺も飲むことにするよ。缶ビールもらっていいかな」
「オッケー。アタシが注いだげる」
ビール専用の細長い摺りガラスのグラスにトクトクトクトクと缶ビールを注いでいくマキ。
俺は缶に直接口付けてもいいんだが、マキ曰く缶ビールは注がれること前提で味が調整されているからグラスに移し替えて初めて最高の仕上がりになるんだという。
ちなみにこの摺りガラスはなぜそうなっているかと言うとビールがキンキンに冷えているように見せかける視覚的効果を狙ったものなんだとか。確かにこれだと飲み物が冷えてるように見える、ガラス職人さんも面白いことを考えるものである。
ピッピーーー
米が炊けた。
「はい、ごはん持ってってー。自分の箸と小皿も持っていってねー」
「はーい」
ごはんと箸と小皿を持って食卓に持って行こうとすると「あっ、ハルト君はちょっとまって」と呼び止められた。なんだろうと思って振り向くと――
チュッ♡
「えへ……。マキばっかりずるいから……私からも♡」
「あーーーーーー! あやのがハルトにチューしたーー!」
「アンタもしたでしょ」
「アタシはいいの!」
「私だっていいの!」
「「ムーーー!」」
「ちょっとちょっと、待ってよ。2人とも、とりあえずごはん食べよ?」
唐揚げが痴話喧嘩してないで温かいうちに食べてくれと言っていた。
素敵な恋はいつも食卓にある――
「「いただきます!!」」
麻雀食堂-mahjong cafeteria- 終
最終話 恋は食卓にある
今日はメタさんがいのりを預かる日で、あやのさんとマキの2人とも俺の部屋に来ていた。
ちょうどいい機会だと思い、俺は自分の悩みを夕飯の時2人に打ち明けた。
部下だった人間が上司になりモチベーションが下がっている――と。
情けない話だがこれ以上自分の中だけでモヤモヤさせているのは無理だった。人に聞いてもらいたい。アドバイスが欲しい。
俺は精神的にも追い込まれていた。
「じゃあ辞めちゃいなよ」
「えっ」
「そうだよ、そんなつらい思いしてまで会社勤めすることないよ! それしか道がないならまだ分かるけどハルトには稼いでくる嫁がいるじゃん!」
「しかも2人もね。なんなら食堂で雇ってもいいし」
「スナックで雇ってもいいよ?」
思いつきもしなかった。仕事ってやめてもいいんだ。そう言われた瞬間肩の荷がおりた気がして気付いたら津波のように一気に涙が押し寄せた。外でなら我慢できる涙も自分の家ではもう無理だ。
なんの涙が出たのかも分からなかったが、止めどなく溢れ出る。
「明るく生きてこーよ! ほら唐揚げできたから!」
ゴトッ
食卓に揚げたての唐揚げが大皿で用意された。
ニオイだけで食欲をそそる。米が炊けるまであと2分。たった2分が待ち遠しい。
「ホラホラ泣かない泣かない。オネーさんがチュッチュッしてあげるからねー。ンー、チュッ♡」
「あー! マキずるいよ。私にだけ仕事させといてー」
「だってアタシは料理うまくないもん」
「ウソつけ!」
「そンじゃー仕方ないからアタシは飲み物用意するねェ~♪」
そう言ってマキは冷蔵庫からアルコールを何種も取り出した。
「えへへ~。こんな時にはやっぱりお酒でしょ。ハルトの気の済むまで飲んだらいいよ。カクテルとか作ろっか?」
「もー、マキは自分が飲みたいだけでしょ! ハルト君は付き合うことないからね」
「いや、今日は俺も飲むことにするよ。缶ビールもらっていいかな」
「オッケー。アタシが注いだげる」
ビール専用の細長い摺りガラスのグラスにトクトクトクトクと缶ビールを注いでいくマキ。
俺は缶に直接口付けてもいいんだが、マキ曰く缶ビールは注がれること前提で味が調整されているからグラスに移し替えて初めて最高の仕上がりになるんだという。
ちなみにこの摺りガラスはなぜそうなっているかと言うとビールがキンキンに冷えているように見せかける視覚的効果を狙ったものなんだとか。確かにこれだと飲み物が冷えてるように見える、ガラス職人さんも面白いことを考えるものである。
ピッピーーー
米が炊けた。
「はい、ごはん持ってってー。自分の箸と小皿も持っていってねー」
「はーい」
ごはんと箸と小皿を持って食卓に持って行こうとすると「あっ、ハルト君はちょっとまって」と呼び止められた。なんだろうと思って振り向くと――
チュッ♡
「えへ……。マキばっかりずるいから……私からも♡」
「あーーーーーー! あやのがハルトにチューしたーー!」
「アンタもしたでしょ」
「アタシはいいの!」
「私だっていいの!」
「「ムーーー!」」
「ちょっとちょっと、待ってよ。2人とも、とりあえずごはん食べよ?」
唐揚げが痴話喧嘩してないで温かいうちに食べてくれと言っていた。
素敵な恋はいつも食卓にある――
「「いただきます!!」」
麻雀食堂-mahjong cafeteria- 終
11
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる