あの視線の主人【高校〜のストーリー】

kouji

文字の大きさ
52 / 67

結人が消えた 徹視線

しおりを挟む
部屋に戻らなかった一晩、寝ずに待った。

 次の日、職場に姿を見せないと知り、指が、震えた。

 (電源を切ってる? ……なぜ)

 四日目。メッセージを十件送っても、反応はなかった。
 五日目、結人の実家に行ってみたが戻っていない。

 六日目、職場の前で何時間も待った。
 誰も、現れなかった。

 そして七日目。
 ついに、徹の中で“ある感覚”が崩れた。

 (……逃げられた? 俺から……?)

 頭の奥で、何かがきしんだ。
 苦労して編み込んできた繋がりが、音もなく崩れていく。

 思わず、壁を殴った。
 拳に鈍い痛みが走る。けれどそれさえ、現実感をくれなかった。

 「なんで……俺が、何をした……」

 声が出た瞬間、もう止められなかった。

 「全部やってきた。おまえのこと、俺がどれだけ……!」

 誰に向かっているのかもわからない。
 部屋の中、ひとり。
 崩れる息と共に、喉の奥からこみ上げる怒りと、泣きそうな声。

 「どうして……俺を置いていく……
 俺にはおまえしかいないのに」

 床に崩れ落ち、胸を押さえる。
 心臓の奥が、焼けただれていくようだった。

 結人の私物がまだ残る部屋。
 彼のシャツ。歯ブラシ。読みかけの本。

 それらが徹を嘲笑っているように見えた。

 (俺のものだった。俺だけの……)

 震える手でスマホを握りしめる。
 発信履歴には結人の名前しかない。
 通話ボタンに指をかけ――けれど押せなかった。

 もう、出ないとわかっている。
 あの子はもう、自分に触れてこない。

 ――なら。

 「壊してやる……」

 低く、乾いた声が落ちた。
 その顔に浮かんでいたのは、泣き出しそうな哀しみと、底の見えない執着。

 「戻ってこないなら……全部、壊して取り戻す」

 白衣を脱ぎ捨て、黒い上着を手に取った。

 理性も、計算も、静かな優しさも――すべて、今夜は不要だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!

はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。 ******** 癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー! ※ちょっとイチャつきます。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

処理中です...