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第三章 初等部
第25話 人助けと、人脈
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「もう死にたい……」
彼は、男爵家の次男坊。
田舎者であり、優しく気弱。自然が好き。
中性的な風貌のせいか、中等部に入ってから、女子に人気が出始めた。
それが気に入らない男達。
幾人かが集まり、彼の足を引っ張ろうと考え始めた。
「お前、男なのか?」
「女じゃないのか? 脱がしてみろよ」
そんないじめが始まった。
それを見て、かばってくれた女の子達。
それが気に入らず、さらに、行為をエスカレートさせていく。
相談をしても、学園の教師陣は語る。
「虐められるのは、お前が弱いからだ。精進をしなさい。強くなれば良いだけだ」
そう、この世界では、命が軽い。
弱い者は死ぬ。それが自然。
それがいやなら、強くなれ。
無論貴族の子弟として、そんな事は理解をしている。
何かがあれば、自身が兵を率いていく立場。
だが、勇名を馳せる武の家とは違い、相続により細々と続いてきた家。
クリスティアーノが七歳の時、いきなりスキルありと判定をされて、彼の家はあわてて学園へと彼を放り込んだ。
彼の家には、武に対するノウハウが無いためだ。
兄であるコンラートは、跡継ぎとして、幼い頃から武術と教育を受けるために、寄親である伯爵家へと通っていた。
だが、残炎ながら、彼にスキルは生えなかった。
次男だからと、花を愛で、母親と共に草花を育てていた少年。
神のいたずらなのか、なぜか、彼にスキルが与えられた。
兄は、それでも態度を変える事がなく、彼に優しかった。
だが、兄の願いにより、学園へ向かう前、模擬戦を行った。
武に対して全くの素人。その戦いは、スキルだけに頼った拙いもの。
だがそれは、兄が数年の努力の末に得たものを圧倒をしてしまう。
倒れ込む兄に、手を差し伸べたとき。
彼は兄の気持ちを垣間みる。
その時に見せた、悔しそうな兄の表情は、今でも記憶に残っている。
そう俺は努力をしたのに、神に与えられただけで……
兄はまだ幼く、その理不尽に納得が出来ていなかった。
だが学園に来れば、スキルだけに頼る戦いは対人においては弱く、発動の早さと、つなぎを重視される。
無論、スキルを発動をした振りからの、フェイクも重要。
そんな世界で、彼は素直で、ただ優しく、凡庸であった。
それでも、初等部時代は友達も出来て楽しく、友達と呼べる者も出来た。
だが、中等部になり、体は変化をしてくる。
特に、女の子は早く変わり、それに引っ張られるように、早熟な奴らは、女の子の美醜や体型を気にし始める。
貴族の結婚は早く、成人を迎える一五歳を過ぎれば、そんな話は普通に出る。
そう、中等部の間に繋がりを持たねば。それを過ぎれば、女の子は帰ってしまう。
気に入った子が居れば、自分を売り込むのは必定。
そのためには、弱点を攻め、他人を蹴り落とす。
下手に見目がよく、他の男子と違い、物腰が柔らかで女の子に人気があったクリスティアーノが、標的にされたのは当然ともいえる。
「お顔立ちが綺麗で、優しくても、実家が男爵家。体術が弱いのは、不安ですわね」
そう意外と、女性はシビア。
騎士爵や、男爵家はモンスターの氾濫など、有事には兵を率いる事が多い。
弱ければ、未亡人に一直線となってしまう。
こうして、彼の人気は落ちていく。
それに伴い、守ってくれるものが居なくなった彼は、憂さ晴らしの標的という立場のみ残ってしまった。
目が合うだけで、適当な場所に引っ張り込まれて殴られる。
この時には、すでに心は折れ、防御のスキルを発動する事も無くなっていた。
もういやだ、帰りたい。
スキルなんて、皆が持っていると意味がないじゃ無いか。
あの時。悔しそうな顔を浮かべた、兄の顔。
心の痛みを理解できる。
だが、新学期。
わざわざ人を呼びだして、虐め始めた奴ら。
新たに入学してきた中途組は、普通いじめの対象となるのに今年は違った。
そう彼は、強かった。
「貴族の常識を知らないくせに」
「やだなぁ、知らないから習いに来たのですよ。先輩として教えてくださいよ。スキルと武術は教えてあげますから。ねえ弱っちい先輩ぃ」
彼は、周りを囲む者達を逆に打ちのめし、それにより三年編入組をまとめ上げた。
相談をしたときに、先生が言った言葉。
「虐められるのは、お前が弱いからだ。精進をしなさい。強くなれば良いだけだ」
そうまさに、彼はそれを周りに示した。
デューラー十二歳。
彼は、ダンジョンの近くにあるスラム育ち。
十二歳で選定に引っかかり、力を見せる事により、ダンジョン守護である、オルガ=シュゴーデン侯爵に拾われた。
「僕とは違う。彼は力で、あっという間に皆に認められた」
ぐじぐじと思いながら、虐められるために二階のトイレについて行った。
いつもの様に、周りを囲まれ憂さ晴らしの対象として囲まれていた。
だが、数人が別の奴も連れてくると言って、連れてきた相手。
到着の隙を見て、個室へと逃げ込んだ彼。
外では、何かが起こり、奴らが叫びながら逃げていった。
人気が無くなり、周囲に光が満ちる。
そして、気の抜けるような声が響く。
「これは知らなかったな。内緒だよ」
よく分からないが、返事をする。
「はひぃ」
声が引っくり返る。
そしてその声の主は、言葉を続ける。
「変わりたければこい。教えてやる」
その言葉が、なぜかすっと心に入ってきた。
そっと覗く。
立っていたのは、平民の格好をした子ども。
学園内で、平民?
スキル無し……
だけど、確かに周りを囲んでいた連中は、いなくなっている。
彼が何かをしたのだろう。
水系の魔法なのか、水音はした。
その後、奴らのうめき声。
そして、バチバチとあまり聞いた事のない音と、少し生臭い匂い。
これは放電による、オゾンの発生だが、彼は知らなかった。
その後、日々を虐められながら暮らし、考えた末に彼を訪ねる。
彼によくしてくれた、下級貴族の娘が、戯れに手込めにされて退学をした。
彼女は、元平民でスキルにより拾われたもの。
その立場は、弱かった。
親の方も、きっと純潔を散らされた彼女を責めるだろう。
そう王国は、そんな場所。
「僕を強くしてください」
半信半疑。
彼は、スキル無しの平民。
単なる学園の清掃員なのだ。
普通に考えれば、おかしな話。
だが僕は、もう弱い自分がいやになった。
「では、早速始めよう」
彼は不敵に笑う……
「はい。お願いします」
九歳だという、年下の子どもに僕は頭を下げる……
強くなるために。
大事なものを、守るため……
彼は、男爵家の次男坊。
田舎者であり、優しく気弱。自然が好き。
中性的な風貌のせいか、中等部に入ってから、女子に人気が出始めた。
それが気に入らない男達。
幾人かが集まり、彼の足を引っ張ろうと考え始めた。
「お前、男なのか?」
「女じゃないのか? 脱がしてみろよ」
そんないじめが始まった。
それを見て、かばってくれた女の子達。
それが気に入らず、さらに、行為をエスカレートさせていく。
相談をしても、学園の教師陣は語る。
「虐められるのは、お前が弱いからだ。精進をしなさい。強くなれば良いだけだ」
そう、この世界では、命が軽い。
弱い者は死ぬ。それが自然。
それがいやなら、強くなれ。
無論貴族の子弟として、そんな事は理解をしている。
何かがあれば、自身が兵を率いていく立場。
だが、勇名を馳せる武の家とは違い、相続により細々と続いてきた家。
クリスティアーノが七歳の時、いきなりスキルありと判定をされて、彼の家はあわてて学園へと彼を放り込んだ。
彼の家には、武に対するノウハウが無いためだ。
兄であるコンラートは、跡継ぎとして、幼い頃から武術と教育を受けるために、寄親である伯爵家へと通っていた。
だが、残炎ながら、彼にスキルは生えなかった。
次男だからと、花を愛で、母親と共に草花を育てていた少年。
神のいたずらなのか、なぜか、彼にスキルが与えられた。
兄は、それでも態度を変える事がなく、彼に優しかった。
だが、兄の願いにより、学園へ向かう前、模擬戦を行った。
武に対して全くの素人。その戦いは、スキルだけに頼った拙いもの。
だがそれは、兄が数年の努力の末に得たものを圧倒をしてしまう。
倒れ込む兄に、手を差し伸べたとき。
彼は兄の気持ちを垣間みる。
その時に見せた、悔しそうな兄の表情は、今でも記憶に残っている。
そう俺は努力をしたのに、神に与えられただけで……
兄はまだ幼く、その理不尽に納得が出来ていなかった。
だが学園に来れば、スキルだけに頼る戦いは対人においては弱く、発動の早さと、つなぎを重視される。
無論、スキルを発動をした振りからの、フェイクも重要。
そんな世界で、彼は素直で、ただ優しく、凡庸であった。
それでも、初等部時代は友達も出来て楽しく、友達と呼べる者も出来た。
だが、中等部になり、体は変化をしてくる。
特に、女の子は早く変わり、それに引っ張られるように、早熟な奴らは、女の子の美醜や体型を気にし始める。
貴族の結婚は早く、成人を迎える一五歳を過ぎれば、そんな話は普通に出る。
そう、中等部の間に繋がりを持たねば。それを過ぎれば、女の子は帰ってしまう。
気に入った子が居れば、自分を売り込むのは必定。
そのためには、弱点を攻め、他人を蹴り落とす。
下手に見目がよく、他の男子と違い、物腰が柔らかで女の子に人気があったクリスティアーノが、標的にされたのは当然ともいえる。
「お顔立ちが綺麗で、優しくても、実家が男爵家。体術が弱いのは、不安ですわね」
そう意外と、女性はシビア。
騎士爵や、男爵家はモンスターの氾濫など、有事には兵を率いる事が多い。
弱ければ、未亡人に一直線となってしまう。
こうして、彼の人気は落ちていく。
それに伴い、守ってくれるものが居なくなった彼は、憂さ晴らしの標的という立場のみ残ってしまった。
目が合うだけで、適当な場所に引っ張り込まれて殴られる。
この時には、すでに心は折れ、防御のスキルを発動する事も無くなっていた。
もういやだ、帰りたい。
スキルなんて、皆が持っていると意味がないじゃ無いか。
あの時。悔しそうな顔を浮かべた、兄の顔。
心の痛みを理解できる。
だが、新学期。
わざわざ人を呼びだして、虐め始めた奴ら。
新たに入学してきた中途組は、普通いじめの対象となるのに今年は違った。
そう彼は、強かった。
「貴族の常識を知らないくせに」
「やだなぁ、知らないから習いに来たのですよ。先輩として教えてくださいよ。スキルと武術は教えてあげますから。ねえ弱っちい先輩ぃ」
彼は、周りを囲む者達を逆に打ちのめし、それにより三年編入組をまとめ上げた。
相談をしたときに、先生が言った言葉。
「虐められるのは、お前が弱いからだ。精進をしなさい。強くなれば良いだけだ」
そうまさに、彼はそれを周りに示した。
デューラー十二歳。
彼は、ダンジョンの近くにあるスラム育ち。
十二歳で選定に引っかかり、力を見せる事により、ダンジョン守護である、オルガ=シュゴーデン侯爵に拾われた。
「僕とは違う。彼は力で、あっという間に皆に認められた」
ぐじぐじと思いながら、虐められるために二階のトイレについて行った。
いつもの様に、周りを囲まれ憂さ晴らしの対象として囲まれていた。
だが、数人が別の奴も連れてくると言って、連れてきた相手。
到着の隙を見て、個室へと逃げ込んだ彼。
外では、何かが起こり、奴らが叫びながら逃げていった。
人気が無くなり、周囲に光が満ちる。
そして、気の抜けるような声が響く。
「これは知らなかったな。内緒だよ」
よく分からないが、返事をする。
「はひぃ」
声が引っくり返る。
そしてその声の主は、言葉を続ける。
「変わりたければこい。教えてやる」
その言葉が、なぜかすっと心に入ってきた。
そっと覗く。
立っていたのは、平民の格好をした子ども。
学園内で、平民?
スキル無し……
だけど、確かに周りを囲んでいた連中は、いなくなっている。
彼が何かをしたのだろう。
水系の魔法なのか、水音はした。
その後、奴らのうめき声。
そして、バチバチとあまり聞いた事のない音と、少し生臭い匂い。
これは放電による、オゾンの発生だが、彼は知らなかった。
その後、日々を虐められながら暮らし、考えた末に彼を訪ねる。
彼によくしてくれた、下級貴族の娘が、戯れに手込めにされて退学をした。
彼女は、元平民でスキルにより拾われたもの。
その立場は、弱かった。
親の方も、きっと純潔を散らされた彼女を責めるだろう。
そう王国は、そんな場所。
「僕を強くしてください」
半信半疑。
彼は、スキル無しの平民。
単なる学園の清掃員なのだ。
普通に考えれば、おかしな話。
だが僕は、もう弱い自分がいやになった。
「では、早速始めよう」
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