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第三章 初等部
第35話 皆の変化
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昨日と今日で、随分と変わったと思う。
それは、クリスティアーノだけではなく、アレクセイ達も感じていた。
モンスターを倒すと、その命の一部を吸収し、己の体が強化をされると学校で習っていた。
短時間で、フロアボスを倒しまくる皆。
ついでに、魔力切れの状態から、枯渇寸前にまでされて、超回復により強化された。
シンの指導により、相手の動きを見て予測をする。
どうして相手はそんな事をするのか、その反応を研究する。
これが意外とおもしろい。
読みが当たると、なんとなく相手をコントロールをする喜びが、心の中に湧いてくる。
そのため、何時しか皆は、笑顔を浮かべて攻撃をしていた。
レイナルドは真面目だが、それだけの子として見られていた。
スキルの獲得で、彼はようやく家での立場を得たが、元々は力がなく。あまり期待された子どもではなかった。
騎士爵は、父親の代のみで、継ぐことなど出来ない。
兵として、討伐などで武勲を立てなければ、後が無い。
そんな家で、優秀な兄がいるため、ただおまけの様に育った。
エルミーヌやマリレーナは、女なので良家との縁を繋ぐため学園に放り込まれた。
「いい男がいれば、体を使っても良い。繋がりをもて」
実の父親から、そんな命令を受けていた。
ヘルミーナ以外は皆、後が無いような連中ばかり。
家も弱く、本人も弱い。
だから、マッテイスの作ったリストに載ったのではあるが。
つまらなかった学園生活が、今確かに変わった。
そんな時に、シンから声が掛かる。
「おおい。場所を変われ」
それと同時に、皆が総攻撃をして、龍は悲しそうに消えていく……
「皆は休憩。この二人が、教えたことが出来るのか実践じゃ。皆は見学」
「はい」
リポップをさせるため、今度はクリスティアーノが走っていく。
気のせいか、うんざりしたような表情で、龍がリポップをする。
「先ほどはやられたが、今度は負けん」
そう言って、グスターは身体強化をして、走り出すが、制御が出来なかったようだ。どこかへ走って行ってしまった。
「ナニをやっているのかしら?」
呆れたような、セレーナ。
見せて貰った、雷を使って見る。
だが、雷の理屈を理解していないので発動をしない。
「むう」
今度は炎。
今度は氷。
土で盾を創りながら、隠れてこそこそと魔法を撃ち込む。
やがて、やっとグスターが戻ってくる。
「身体強化やべえ」
失敗をしたのに、にまにまとしっぱなしで、そんな事を言いながら。
「早く。何とかしてよ」
「はいよ」
空から、滝のような水が降ってくる。
「魔力量がすごいな。ただ無駄使いだけど」
だが、砂龍も耐えられないのか落ちてくる。
そして、さっきの滝のおかげで、ぐちゃぐちゃになっている泥に入って行き、二人はずぶずぶとハマっていく……
「たぁーすうけぇてぇ」
もがきながら、どんどんと沈んでいく。
とりあえず、砂龍を倒してから、二人を救出をする。
シンは思った。
こいつら、揃っておバカだと……
きっと脳みそまで、筋肉でできているのではないかと。
そこから座り込んで、戦術の話を始める。
「複数で退治をするなら、一人が防御でもう一人が攻撃や、一人がおとりで、もう一人が意識外から攻撃を仕掛けると上手く行く事が多い。駄目なのは、馬鹿正直に正面に並んで、攻撃を一発を食らって、二人が飛んで行くことだな。それに、土は濡れるとぬかるむ。農家のくせに知らないのか?」
「いや、知っているさ」
「なら、どんな魔法を使えば、環境がどうなるのか考えろ。水魔法でずぶ濡れになった後、雷を使えば死ぬぞ」
二人共が、えっと言う顔をする。
だめだ、この世の決まり事を知らないらしい。
結局時間がないのに、二人のために時間を割き、色々な常識について説明をする。
「そう、私欲のために民に対して搾取と圧政を敷くと、それの守護のために結局余分な警備をしなければいけない。普通に暮らせれば穏やかな民も、自身や家族のために犯罪もおこせば反乱も起こす。それが大きくなれば国が倒れることもある。逆に国がよければ民だって守ろうと考えるじゃろ」
「それはそうね」
グスターは、今一解っていないようだが、セレーナは理解をした様だ。
そして、雷だが……
「ほら、天気が悪いときに髪の毛が逆立ったりするじゃろ。あれが、電位差。帯電状態という。物質は正と負の力を持っており、力が加わるとそれが分離をする。ところがそれだと不安定だから元に戻ろうとする。その時の負の流れが雷となる。雷は空気と言われる目には見えないが、周囲に存在する気体の中に細かな水があり、それが暖かい地面から離れた高いところでは凍ってしまう。その氷同士がぶつかると帯電状態となる」
「へえ。空気?」
二人は、ぽかんとして周囲を掌でかき混ぜる。
「風は、その空気の流れじゃ」
「ああ、なるほど」
「物質、帯電? 負の電荷?」
シンの説明は、この世界とリッチの解釈なので、多少は違うがなんとなく理解できたようだ。
「物質の持つ負。それを相手に対してぶつける」
グスターは雷をイメージしたのだろう。無事にビリビリしていた。
だが、セレーナは農民の時に何かがあったのか、黒い何かを放出する。
それは、生徒達が戯れていた、砂龍に当たると急に苦しみだして、体が溶け始めてしまった。
その一撃で砂龍は消えてしまう。
「何じゃ今のは?」
物は、雷と言うより、黒い霧。
「負の物質?」
やった本人も、きょとんとしている。
シンは記憶に残る術の中で、思い当たるものを検索するが、思い当たる物が無かった。
闇魔法の系統という事は理解ができる。
操るとか、捕らえる物はあるが、相手が溶けた……
「今の魔法は、見たことがない。気を付けて使え」
「見たことがないの?」
そう言って、セレーナは喜んだが、シンにはいやな予感しかしない。
それは、クリスティアーノだけではなく、アレクセイ達も感じていた。
モンスターを倒すと、その命の一部を吸収し、己の体が強化をされると学校で習っていた。
短時間で、フロアボスを倒しまくる皆。
ついでに、魔力切れの状態から、枯渇寸前にまでされて、超回復により強化された。
シンの指導により、相手の動きを見て予測をする。
どうして相手はそんな事をするのか、その反応を研究する。
これが意外とおもしろい。
読みが当たると、なんとなく相手をコントロールをする喜びが、心の中に湧いてくる。
そのため、何時しか皆は、笑顔を浮かべて攻撃をしていた。
レイナルドは真面目だが、それだけの子として見られていた。
スキルの獲得で、彼はようやく家での立場を得たが、元々は力がなく。あまり期待された子どもではなかった。
騎士爵は、父親の代のみで、継ぐことなど出来ない。
兵として、討伐などで武勲を立てなければ、後が無い。
そんな家で、優秀な兄がいるため、ただおまけの様に育った。
エルミーヌやマリレーナは、女なので良家との縁を繋ぐため学園に放り込まれた。
「いい男がいれば、体を使っても良い。繋がりをもて」
実の父親から、そんな命令を受けていた。
ヘルミーナ以外は皆、後が無いような連中ばかり。
家も弱く、本人も弱い。
だから、マッテイスの作ったリストに載ったのではあるが。
つまらなかった学園生活が、今確かに変わった。
そんな時に、シンから声が掛かる。
「おおい。場所を変われ」
それと同時に、皆が総攻撃をして、龍は悲しそうに消えていく……
「皆は休憩。この二人が、教えたことが出来るのか実践じゃ。皆は見学」
「はい」
リポップをさせるため、今度はクリスティアーノが走っていく。
気のせいか、うんざりしたような表情で、龍がリポップをする。
「先ほどはやられたが、今度は負けん」
そう言って、グスターは身体強化をして、走り出すが、制御が出来なかったようだ。どこかへ走って行ってしまった。
「ナニをやっているのかしら?」
呆れたような、セレーナ。
見せて貰った、雷を使って見る。
だが、雷の理屈を理解していないので発動をしない。
「むう」
今度は炎。
今度は氷。
土で盾を創りながら、隠れてこそこそと魔法を撃ち込む。
やがて、やっとグスターが戻ってくる。
「身体強化やべえ」
失敗をしたのに、にまにまとしっぱなしで、そんな事を言いながら。
「早く。何とかしてよ」
「はいよ」
空から、滝のような水が降ってくる。
「魔力量がすごいな。ただ無駄使いだけど」
だが、砂龍も耐えられないのか落ちてくる。
そして、さっきの滝のおかげで、ぐちゃぐちゃになっている泥に入って行き、二人はずぶずぶとハマっていく……
「たぁーすうけぇてぇ」
もがきながら、どんどんと沈んでいく。
とりあえず、砂龍を倒してから、二人を救出をする。
シンは思った。
こいつら、揃っておバカだと……
きっと脳みそまで、筋肉でできているのではないかと。
そこから座り込んで、戦術の話を始める。
「複数で退治をするなら、一人が防御でもう一人が攻撃や、一人がおとりで、もう一人が意識外から攻撃を仕掛けると上手く行く事が多い。駄目なのは、馬鹿正直に正面に並んで、攻撃を一発を食らって、二人が飛んで行くことだな。それに、土は濡れるとぬかるむ。農家のくせに知らないのか?」
「いや、知っているさ」
「なら、どんな魔法を使えば、環境がどうなるのか考えろ。水魔法でずぶ濡れになった後、雷を使えば死ぬぞ」
二人共が、えっと言う顔をする。
だめだ、この世の決まり事を知らないらしい。
結局時間がないのに、二人のために時間を割き、色々な常識について説明をする。
「そう、私欲のために民に対して搾取と圧政を敷くと、それの守護のために結局余分な警備をしなければいけない。普通に暮らせれば穏やかな民も、自身や家族のために犯罪もおこせば反乱も起こす。それが大きくなれば国が倒れることもある。逆に国がよければ民だって守ろうと考えるじゃろ」
「それはそうね」
グスターは、今一解っていないようだが、セレーナは理解をした様だ。
そして、雷だが……
「ほら、天気が悪いときに髪の毛が逆立ったりするじゃろ。あれが、電位差。帯電状態という。物質は正と負の力を持っており、力が加わるとそれが分離をする。ところがそれだと不安定だから元に戻ろうとする。その時の負の流れが雷となる。雷は空気と言われる目には見えないが、周囲に存在する気体の中に細かな水があり、それが暖かい地面から離れた高いところでは凍ってしまう。その氷同士がぶつかると帯電状態となる」
「へえ。空気?」
二人は、ぽかんとして周囲を掌でかき混ぜる。
「風は、その空気の流れじゃ」
「ああ、なるほど」
「物質、帯電? 負の電荷?」
シンの説明は、この世界とリッチの解釈なので、多少は違うがなんとなく理解できたようだ。
「物質の持つ負。それを相手に対してぶつける」
グスターは雷をイメージしたのだろう。無事にビリビリしていた。
だが、セレーナは農民の時に何かがあったのか、黒い何かを放出する。
それは、生徒達が戯れていた、砂龍に当たると急に苦しみだして、体が溶け始めてしまった。
その一撃で砂龍は消えてしまう。
「何じゃ今のは?」
物は、雷と言うより、黒い霧。
「負の物質?」
やった本人も、きょとんとしている。
シンは記憶に残る術の中で、思い当たるものを検索するが、思い当たる物が無かった。
闇魔法の系統という事は理解ができる。
操るとか、捕らえる物はあるが、相手が溶けた……
「今の魔法は、見たことがない。気を付けて使え」
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そう言って、セレーナは喜んだが、シンにはいやな予感しかしない。
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