ツキも実力も無い僕は、その日何かを引いたらしい。- 人類を救うのは、学園最強の清掃員 -

久遠 れんり

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第四章 中等部

第62話 頼れる力

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 日増しにモンスター達は拡散をする。

 そんな中で、いち早くやって来たのは、近くの国であるフィリップ商国。
 そこのと言うよりは、そこに行っていた探索者達。

 無論、緊急時におけるギルドの規定はあるが、褒美も出る。

 商国のダンジョンで、騒ぎも終了をして、稼ぐだけ稼いで帰ろうとした連中がついでに来た様だ。

 対モンスター。専任者達の持つパワーはすさまじかった。
 スキル有る無し関係なし、対モンスターに特化した連中。
 奇妙な武器や魔導具。
 独自のスタイルで、モンスター達を駆逐をしていく。

 そんな中、すっかり壊れてしまった某チーム。
 チームリーダのロイスと、斥候のベルナルトも参加をしていた。
 もう、チームとしては、人数が少なく小規模な仕事で繋いでいた。
 でまあ、身軽だしやって来た。

「まさか、皆いなくなるとは思わなかったよ」
「またか…… ぼやいたって仕方が無いだろ」
 あれから後、ロイスはずっとぼやいていた。

 壊滅、そしてなんとか戻れば、カミラは男にひょいひょい付いて行ってしまった。
 そんな所にギルドからの通達。
 異変の連絡。
「エンフィールド王国で氾濫。いける奴は行ってやってくれ」

 その発表に、場が騒めく。
「氾濫? そんなの、行ったところでもう終わるだろう?」
「それがどうも、未発見のダンジョンができたらしい。その情報で各国が大騒ぎだ」
 古来、ダンジョンは決まった数しか存在をしていなかった。
 その常識が崩れた。

 話を聞いた各国は、国内を探査する。
 そして、エンフィールド王国は慣れない氾濫で壊滅状態。
 政治的意味合いもあり、対処できなければ軍まで送ろうかと考えていた。

 そう、エンフィールド王国は、イングヴァル帝国進軍の蓋になっている。
 過去、幾度となく大陸制覇を掲げて、彼らはやって来た。
 大陸の中央には、ディビィデ山脈があるため大陸の北側へ来るなら、大きく迂回をする必要がある。
 そしてそこには、オーケルフェルト公国という小国と、エンフィールド王国が蓋をしている形となっている。
 実際、オーケルフェルト公国は、攻め込まれ一度帝国に統合された後、貴族が力を持ちなおし独立をしただけなので、帝国といえる。

 そう、田舎だが位置的に重要な国。
 エンフィールド王国へと、身軽な探索者達から移動を開始をした。

 そう、そこはある意味天国だった。
 国全体が平和。

 力が無くとも、探索者で生計が立てられる国。
 農家の長男以外は土地を継げない。
 そのため、受け皿として探索者ギルドが機能をしていた。
 娘達も含め、探索者として討伐ではなく、斡旋される雑用をメインで行う者達も多い。

 今回のような氾濫さえなければ、逃げ出した羊を捕まえるとか、柵の補修。たまに出てくるゴブリン達を複数チームが対応する。
 そんな感じで、生活ができた。

 つまり、若くあまり力の無い女の子達でも、探索者として活動ができていた。
 それが、エンフィールド王国。

 それを知った、ロイスとベルナルトは燃える。
 探査に出るにも、ある程度人数が必要。
 人数の少ない二人は、地元のチームと組むことになる。
 そうそれは、出会いの場。
 妙な熱気に包まれるギルド。

 いくつかの任務をこなして、気のあったチームと仲良くなる。
 チーム『農園の守護者』。
 元々幼馴染み達で、村から、同世代の子ども達が出てきて探索者となった。
 最初は五人で町に出てきて三年。そうつい最近まで、チームには男が二人いた。
 ヴァリオ十七歳とハルティ十八歳。

 そして、女の子が三人。エミーリヤ十九歳とサーロヴァ十九歳。そしてサーロヴァの妹であるスティーナ十八歳。

 今回の氾濫で、任務中に巻き込まれ、女の子達を逃がすために、男二人は犠牲になった。

「ばかよ。残された私たちのこと…… あの時の叫び声が耳から消えないの……」
 そう言って涙ぐむエミーリヤ。

「分かるよ。俺達もダンジョンで仲間をなくしてな」
「ああ、あの時は悲惨だった」
 二人がしみじみと語る。

 今回、丁度五人になるからと組まされた相手。
 傷心のチームが二つ。

 周辺探査が終わり、ギルドへと報告をしてその後お疲れ会を行っていた。

 いくつかのチームは交代で、モンスターの動向を見ながら、人数を派遣をして押し返している状況。
 幾ら言っても探索者達が、考え無しに突っ込んでいくようなことはない。
 氾濫時は一応命令が出て、動くようになっている。

 彼らは、命令を受けて他のチームが見張っているところへ、食料などを届けつつ情報を拾ってくる。人数が少ないとそんな仕事しか出来ないが、掃討戦では皆一緒に突っ込んでいく。

 彼女達も今は同じ感じで裏方をやっていた。
 だが、男女混成チームだと疎まれたり睨まれたり。
 男だけのチームだと、人気の無いところへくると、いきなり襲ってきたり。
 散々だったようだ。

 だが、ロイスの顔は怖いが、今までの経験がある。
 彼女達に、いい人として認識されたようだ。
 そう、男として地雷ともいえる、いい人認識。

 ともすれば、便利な人とイコールとなり、恋愛への抑止の言葉となる。
 ベルナルトは、ロイスの肩に手を置きながら、すでにスティーナの手を握っていた。
 彼女は、エミーリヤと密かに付き合っていた、ヴァリオのことが好きだった。
 だけど告げられぬまま。その思いは、誰にも言えないまま苦しんでいた。

 そんな彼女の悲しみを、ベルナルトは気が付き、話を聞いて彼女を慰めた。
 彼が亡くなったのは、彼女達を逃がすため。

 振り返ることは出来なかったが、最後の声は聞こえた。
「みんな…… 逃げろ…… と」
 だけどそのつらさは、エミーリヤと共有するわけにはいかない。

 よく分からないが、男と違い、『俺もあいつのことを好きだったよ』などと、男と同じ乗りでいうと喧嘩の種になったりするようだ。

「ベルナルトさん……」
「辛かったな……」
 と、なったようだ。
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