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第五章 人は生き残れるのか?
第90話 旧王都制圧
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「行けー」
「おおおっ」
兵達が走る。
手には剣。
だがその剣の背には、妙な筒が付いている。
魔力を込めると、土魔法による針が飛び出す。
速成の針のため、瞬間の強度はあるが、三分もすれば土に戻る、だが、攻撃用としてはとりあえず問題ない。
そう、見た目は小型のガンブレード。
強化された兵達は、少し重いこの武器を片手で振り回す。
シールドは、左手につけられたバングルと指輪が連携をして力場を発生する。
構造的には、触れた物の物理的慣性を停止させる。
空間魔法の利用である。
ただ、一瞬でもかなり魔力を持って行かれる。
だが、強化された兵は、最近シールドをほとんど使わずとも戦えるようになった。
「おらぁ、止まるんじゃねえ、躱せぇ、見るな感じろぉ」
モニカは、兵の訓練を、子育てのストレス解消に使っていたようだ。
おかげ? で兵達は強くなった。
いや、強くならざるをえなかった。
「ああ? 折れただと?」
治療魔法の光が降りそそぐ。
ズレた骨が、痛みを伴いながら戻っていく。
そう、わざと痛みを感じさせる。
「ほら来い!!」
動のモニカ。
笑顔を浮かべ、そっと静かに、躊躇無くひどい攻撃をするのはヘルミーナ。
静と動、フェイントというのもおかしい、実の剣の中に虚が混ざる。
兵達は、惑わされ、切られる。
防具はあるが、わざと痛みは抜ける設定になっている。
二人とも見た目のイメージ的には女神、だが中身は阿と呍。鬼と悪魔?
兵からすると、どちらも最悪。
だが、最もひどいのは旦那のシン。
「えっ、なんでこれで吹っ飛ぶの?」
常識がおかしい……
だからためらいが無いというか、仲間達の特訓レベルで攻撃をするから、新参者は一瞬で死にかかる。
あの、モニカ達がコロコロと転がっていく姿を見て、驚愕をした兵達。
「ああ、いかん。此処の奴ら手応えがなくて、きっとモニカ様から見た俺達はこんな物なんだろうな」
「納得だが、戦闘中につまらんことを喋るな、兵達より隊長級の俺達の方がもっとひどかったんだ」
思い出したのか、隊長の声が涙声になる。
「そうですね。ずっと、シン様からの特訓でしたね」
「あの人は、人という種族の限界を読み違えている。幾度も死んだぞ」
「こら、無駄口を叩くな」
「「はい」」
大隊長も、話にはなっとく。
だが、なぜか思い出したくない……
「あら、おいシン。コイツ心臓が止まっているぞ」
マッテイスがシンに向かって叫ぶと、無言で光が飛んでくる。
「あれ? じいちゃんばあちゃん?」
「寝ぼけるな来い」
あの時は、川向こうでじいちゃんとばあちゃんが、手を振っていたんだよなぁ。
懐かしかった……
だがなぜか、それを思い出すと、体が震えて冷や汗が流れ始める。
そして、思い出すなと脳がストップを掛ける。
そう、かれはシンの放った衝撃波を避けそこね、両手はへし折れ、肋骨も粉砕、眼球すら飛び出して、確かに一度死んだ。
まあ、異世界転生はしなかったようだが、起こってもおかしくない状態だった。
周りの人間は、それを見たが、ひどさのあまり口には出さない。
生き返ったから良いか…… と思考を放棄する。
「そのまま王城へ行け」
「承知」
兵達の一団が、乗り込んでいく。
門の横、詰め所で酒を飲みながら遊んでいた奴らが二人。
兵達は、侮蔑の視線を向け、無言で切り飛ばす。
「なんか、少しの間に草が生えて、廃墟感がすごいです」
そう数ヶ月で、整備されずほったらかしの城内。
手を掛けないと、あっと言う間に駄目になるようだ。
流石に、入り口には兵達がいた。
だが、それは間者達。
シールド用のバングルを見せてくる。
「真面目に働いている者は、大体仲間です。まあ間違っても、あなた方では切れませんがね」
一言多く、嫌みを言われた。彼らはシン部隊。人間をはみ出した連中。
「承知。いくぞ」
一国の王城が、こんなに簡単に侵入できて、簡単に制圧できる。
少し涙が出た。
上階へ上がり、大扉を開ける。
防御用で分厚いが、この騒ぎでも閂すら通っていない。
そのまま踏み込めば、退廃的な匂いが充満していた。
酒と糞尿、男と女の匂い。
「こりゃひどい。魔法、換気をしろ」
「はい」
その瞬間に、城内に突風が吹き抜ける。
普通の突入では、考えられない暴挙だが、状態は聞いてる。
「もうあいつら、脳が腐ってますから大丈夫です」
間者からの報告。
兵達が突入すれば、裸の男女。
兵を見ても、気にする感じではない。
「おう酒が切れた。持って来い」
「あら立派な体? 突いてくださらない」
そういって尻を向け、広げて見せてくる。
「遠慮する。縄を打て」
おもしろいことに、新しいプレイとでも思っているのか、縄を打たれてよろこぶ。
裸のまま、全員を地下の牢へと引きずっていく。
中に、王妃もいたようだが分からなかった。
四十九歳だが、退廃的な生活で急に歳を取ったようになっていた。
肌の張りはなくなり、目はくぼみ、まともに食事もせず眠りもせず……
全員、おかしな感じだ。
連絡が来て、王達が帰ってきた。
だが急に、廃墟となった王都に顔をしかめる。
「長年かけて発展をしたのだが、滅ぶのは一瞬だな」
「そうね。わたくしも、多少は思い出もありますが……」
王と第二王妃オルネラが、城へ続く大通りから、王城を眺める。
第二王子デリックと第三王女アドリアーノは、王都内をまじまじと見るのは始めてである。
見ても馬車で通るだけ。
そもそも、それすら数年に一度のこと。
王妃マティルデのおかげで、視察も親善も許されなかった。
そう一度の親善が、ひどく評判が良かった。
そのためその後は、なんだかんだと理由をつけて許されなかったのだ。
ゆっくりと歩きで、城へと踏み入れる。
三ヶ月で、すっかり変わり果てた城へ。
「おおおっ」
兵達が走る。
手には剣。
だがその剣の背には、妙な筒が付いている。
魔力を込めると、土魔法による針が飛び出す。
速成の針のため、瞬間の強度はあるが、三分もすれば土に戻る、だが、攻撃用としてはとりあえず問題ない。
そう、見た目は小型のガンブレード。
強化された兵達は、少し重いこの武器を片手で振り回す。
シールドは、左手につけられたバングルと指輪が連携をして力場を発生する。
構造的には、触れた物の物理的慣性を停止させる。
空間魔法の利用である。
ただ、一瞬でもかなり魔力を持って行かれる。
だが、強化された兵は、最近シールドをほとんど使わずとも戦えるようになった。
「おらぁ、止まるんじゃねえ、躱せぇ、見るな感じろぉ」
モニカは、兵の訓練を、子育てのストレス解消に使っていたようだ。
おかげ? で兵達は強くなった。
いや、強くならざるをえなかった。
「ああ? 折れただと?」
治療魔法の光が降りそそぐ。
ズレた骨が、痛みを伴いながら戻っていく。
そう、わざと痛みを感じさせる。
「ほら来い!!」
動のモニカ。
笑顔を浮かべ、そっと静かに、躊躇無くひどい攻撃をするのはヘルミーナ。
静と動、フェイントというのもおかしい、実の剣の中に虚が混ざる。
兵達は、惑わされ、切られる。
防具はあるが、わざと痛みは抜ける設定になっている。
二人とも見た目のイメージ的には女神、だが中身は阿と呍。鬼と悪魔?
兵からすると、どちらも最悪。
だが、最もひどいのは旦那のシン。
「えっ、なんでこれで吹っ飛ぶの?」
常識がおかしい……
だからためらいが無いというか、仲間達の特訓レベルで攻撃をするから、新参者は一瞬で死にかかる。
あの、モニカ達がコロコロと転がっていく姿を見て、驚愕をした兵達。
「ああ、いかん。此処の奴ら手応えがなくて、きっとモニカ様から見た俺達はこんな物なんだろうな」
「納得だが、戦闘中につまらんことを喋るな、兵達より隊長級の俺達の方がもっとひどかったんだ」
思い出したのか、隊長の声が涙声になる。
「そうですね。ずっと、シン様からの特訓でしたね」
「あの人は、人という種族の限界を読み違えている。幾度も死んだぞ」
「こら、無駄口を叩くな」
「「はい」」
大隊長も、話にはなっとく。
だが、なぜか思い出したくない……
「あら、おいシン。コイツ心臓が止まっているぞ」
マッテイスがシンに向かって叫ぶと、無言で光が飛んでくる。
「あれ? じいちゃんばあちゃん?」
「寝ぼけるな来い」
あの時は、川向こうでじいちゃんとばあちゃんが、手を振っていたんだよなぁ。
懐かしかった……
だがなぜか、それを思い出すと、体が震えて冷や汗が流れ始める。
そして、思い出すなと脳がストップを掛ける。
そう、かれはシンの放った衝撃波を避けそこね、両手はへし折れ、肋骨も粉砕、眼球すら飛び出して、確かに一度死んだ。
まあ、異世界転生はしなかったようだが、起こってもおかしくない状態だった。
周りの人間は、それを見たが、ひどさのあまり口には出さない。
生き返ったから良いか…… と思考を放棄する。
「そのまま王城へ行け」
「承知」
兵達の一団が、乗り込んでいく。
門の横、詰め所で酒を飲みながら遊んでいた奴らが二人。
兵達は、侮蔑の視線を向け、無言で切り飛ばす。
「なんか、少しの間に草が生えて、廃墟感がすごいです」
そう数ヶ月で、整備されずほったらかしの城内。
手を掛けないと、あっと言う間に駄目になるようだ。
流石に、入り口には兵達がいた。
だが、それは間者達。
シールド用のバングルを見せてくる。
「真面目に働いている者は、大体仲間です。まあ間違っても、あなた方では切れませんがね」
一言多く、嫌みを言われた。彼らはシン部隊。人間をはみ出した連中。
「承知。いくぞ」
一国の王城が、こんなに簡単に侵入できて、簡単に制圧できる。
少し涙が出た。
上階へ上がり、大扉を開ける。
防御用で分厚いが、この騒ぎでも閂すら通っていない。
そのまま踏み込めば、退廃的な匂いが充満していた。
酒と糞尿、男と女の匂い。
「こりゃひどい。魔法、換気をしろ」
「はい」
その瞬間に、城内に突風が吹き抜ける。
普通の突入では、考えられない暴挙だが、状態は聞いてる。
「もうあいつら、脳が腐ってますから大丈夫です」
間者からの報告。
兵達が突入すれば、裸の男女。
兵を見ても、気にする感じではない。
「おう酒が切れた。持って来い」
「あら立派な体? 突いてくださらない」
そういって尻を向け、広げて見せてくる。
「遠慮する。縄を打て」
おもしろいことに、新しいプレイとでも思っているのか、縄を打たれてよろこぶ。
裸のまま、全員を地下の牢へと引きずっていく。
中に、王妃もいたようだが分からなかった。
四十九歳だが、退廃的な生活で急に歳を取ったようになっていた。
肌の張りはなくなり、目はくぼみ、まともに食事もせず眠りもせず……
全員、おかしな感じだ。
連絡が来て、王達が帰ってきた。
だが急に、廃墟となった王都に顔をしかめる。
「長年かけて発展をしたのだが、滅ぶのは一瞬だな」
「そうね。わたくしも、多少は思い出もありますが……」
王と第二王妃オルネラが、城へ続く大通りから、王城を眺める。
第二王子デリックと第三王女アドリアーノは、王都内をまじまじと見るのは始めてである。
見ても馬車で通るだけ。
そもそも、それすら数年に一度のこと。
王妃マティルデのおかげで、視察も親善も許されなかった。
そう一度の親善が、ひどく評判が良かった。
そのためその後は、なんだかんだと理由をつけて許されなかったのだ。
ゆっくりと歩きで、城へと踏み入れる。
三ヶ月で、すっかり変わり果てた城へ。
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