はい。ちゅうもーく。これから異世界に向かいます。 - 私立徳井天世高校の修学旅行 -

久遠 れんり

文字の大きさ
8 / 95
第二章 冒険者時代

第8話 そんなこんなで大航海時代

しおりを挟む
「おらー行くぞ」
 そう言って張り切り、新築筏に飛び乗る…… 縛っている蔓が切れて、海中へ……

 もう何度目だろう。

 釘さえあれば。
 彼らはそう考えた。

 だが、蔓も皮をはぎ、中の繊維だけを茹でれば、もう少し柔軟になるのに、時間がたつと乾燥をして固く扱いにくくなってしまう。水に濡れれば確かに絞まる。
 だが、強引に結び折れた部分が、修復されるわけではない。

 農家の子どもが居ても、最近は縄のない方を知らない。
 何でも売っているのが、知識を得る弊害となっている。

 昔は、年末が近付くとしめ縄は、自分たちで作っていた。
 だがそんな景色を見ることは、なくなってしまった。
 便利な生活は、知恵を失わせる。
 作るとなれば、なぜ、どうやってを考えるが、売り物なら買って、それで終わり。どうやって作られているかを考えない。

「なんとかしろよ」
「モンクばかりじゃなく、考えろよ」
 そんな、他人に責任を問うことばかりが、飛び交う現場。

 早くしなければ、秋が来て、また恐怖の冬が来る。

 そんな中、ある集団が一組の集落跡を発見をする。
 竹をパイプにして、水道が作られ、木が何かで切断された跡。
 金属製や、石製の楔。
 余った板。

「これはすごい」
 探査をすれば、海まで道ができていて、海の近くには木を運んだ木馬キンマが残されていた。

 彼らは、二年四組の一部。
 星野 広之ほしの ひろゆき片山 千智かたやま ちさと進藤 孝直しんどう たかなお砂山 麻衣すなやま まいたち。

「船を造ったのか」
「そりゃいいが、人数がいるな」
 木を切り出して、枝を払い板を作る。
 だがその時に、気になるものを発見をする。

「この板乾燥をしているし、この断面一体どうやって切ったと思う?」
「スッパリだな、まるで麻衣のむねうぎゃあ……」
きじかずばたれまいに」
 少し小柄な砂山 麻衣が、少し身をかがめて肘をだしている。
 丁度、進藤の鳩尾あたり。

「息が、いきができにゃい」
「自業自得」
 麻衣は、確かに小柄でぺったんだが体術は強い。
 そして、進藤と付き合っている。

 無論、星野は片山とペア。
 こちらはまあ普通。

 だけど、こう見えて進藤と麻衣はラブラブなのだ。
「あいつはな、感度が良いんだよ」
 いつか星野に語っていた。

 小さいが為に反応が良く、下手すれば胸だけで……
 などとまあ、色々とある様だ。

「先ずは、面倒だが人数集めだな」
「ああ、せっかくの文明、使わせて貰おう」
 麻衣のおかげでうやむやになったが、切断面の鮮やかさは星野と進藤共に悩む事になる。

 ナイフのセレーションじゃ無理だし、刃の方で?
 いやそれでは、こんなにスッパリは切れない。

 立木の切り株は、斧のようなもので切っていた。
 板は、楔で作っていたようだし、そんなに道具が色々とあったわけでもない様だ。

 そう、魔法の力。
 細かな制御はできなかったが、実は直径十センチくらいならスパッと切れた。
 だが魔法などないと思っている者に、それを想像するのは無理だった。


 他のグループも、いい加減長くなってきた修学旅行に、じれてくる。
「一体いつになったら終わるんだよ」
「やっぱり、向こうに行くんだよ」
「それとか、お宝があってそれを取ったらとか」
「ボス戦だろ。あの山の向こうが怪しいだろ」

 三組のDランク、川上 圭介かわかみ けいすけ石川 雄希いしかわ ゆうき西村 達也にしむら たつや大垣 美咲おおがい みさき

 彼らは抜け出した後、すぐに修学旅行を終わらせるために色々なところを探し回った。
 そして、見ていないのは山地の向こう側のみ。
 海岸の端っこから回っても、かなり厳しく山を登らないと反対側に行けない事が判った。

 だが彼らは、行ったことを後悔する事になる。

 苦労をして、山を越える。
 稜線から反対側へ。

 だが徐々に傾斜は厳しくなり、突然目の前が開ける。
 そこには高さ数百メートルの崖……

 そう、体は戻ってきても、荷物は崖下。
 もう回収はできない。

 グラウンドの片隅で反省文を書きながら、大いに反省をする。
 何もかも失った状態で秋に突入……
 そこには絶望しかない。


「いよーし。できた」
 二年五組の一部。
 伊藤三兄弟が居るチーム十名は筏を作った。
 無論兄弟と言っても本当じゃなくなぜかクラスに三人も伊藤がいた。
伊藤 和夫いとう かずお伊藤 幸介いとう こうすけ伊藤 賢作いとう けんさく

 他には今井 眞由美いまい まゆみ尾形 寛子おがた ひろこ三島 小百合みしま さゆり芦塚 裕樹あしづか ひろき浅田 清美あさだ きよみ阿部 将宏あべ まさひろ荒井 麻理子あらい まりこの以上十名。

 当然だが、伊藤三人は名前の呼び捨て。
「おい、和夫。行って見ろ」
「えっ、オレだけ?」
「ああコレまで幾度ばらけて、濡れたと思っているんだ。作った奴が責任を取れ」
 その言葉に、周りの女の子も頷く。

 夏の盛りには、意外と楽しかったが、最近は水温も下がってきた。
 クラゲもいるし……

 一応、丸太を縦横に組み合わせている。
 強度は十分だが、ツタが切れる。

 ちなみに、かれらはナイフでひたすら削り、根性で丸太を作った。
 そうコツコツと、キツツキが木を削るように……

 それを通して、努力は結ばれると理解をした。
 だがそこからだ、筏など簡単だろうと思ったが、作っては壊れ、壊れては直す。
 それをひたすら繰り返した。

 ダボを使おうとしたが、穴が開けられず、少し削って組み合わせるに留まった。

「自信作だ、大丈夫さ」
 そう言って彼は飛び乗る。
 オールを持ち、砂浜を押す。

「見ろいけるぞ」
 だが、波がうねりを作る。
 ミシッ……


「さあ、次だ次。丸太を回収」
「結局濡れるじゃないか」
「最悪……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

氷弾の魔術師

カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語―― 平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。 しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を―― ※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。

処理中です...