科学は魔法のある風景を創り出した。そして、世界は終末を迎える。

久遠 れんり

文字の大きさ
10 / 27
第二章 人類復活計画

第10話 秘密組織と展望

しおりを挟む
 目の前で、また金属の塊が吹っ飛んでいく。

 実は俺達も、あれのテストには参加をしたことがある。
 最初の千メートル走をこなせなくって、思いっきりキラキラを振りまき、『おまえは首だ』そんな宣言をされた。

 館野守、二十八歳。
 元下級兵士。この世界、大戦があってから、国も人々も考えが変わった。
 あるとき、どこかの大国が、世界に向けて宣言。我が国は一方的な攻撃を受けた。反撃をする。

 国際組織が調査に入る暇も無く、武力を持たない国は、攻撃をしたと言いがかりをつけられて消滅をした。そこまでは良い。だが、その周辺国にもどさくさに紛れ、戦渦は広がる。明らかに侵略国が攻撃をしているのに、被害国の誤射だろうで世論を無視する。装備や制服がおまえの所だろう。そう伝えても、そんなものは、欺瞞だろう一言で終わり。

 近隣の国が発する世界へ向けての助けを求める声が、気に食わなかったのか、『平和が』とか『平和を』と言って、『右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ』。それを実践した国は、すぐに攻撃を受けて、そして、わずか数日で蹂躙されつくされて消滅をした。当然同盟国の救援や準備など間に合わない。

 この時、世界から平和という願望。思い込みは消滅した。
 そして、自国で軍備を平時から準備をしていないから、救援が間に合わなかった、非常に遺憾だ。そんな声が、同盟国から出される。
 むろんこの時には、その国は滅んでいるから、発言が百八十度変わっていても問題は無い。力無き者は、話をする暇無く滅ぶ。

 よくニュースになる、何かあれば警察に連絡をしてください。
 被害者の、加害者への抵抗は認めない。到着が間に合わず、亡くなっていれば、全力で捜査はいたします。規模は違うが、そんな状態。

 情報化されていた社会。その様子はリアルタイムで流され、言葉の通じない獣のような存在が、国家として存在をしていたことを理解する。
 訴えかける人々に、聞く耳持たず一方的な暴力と蹂躙。
 それを目にして、始めて理想と現実の違いを理解する。

 攻撃したら反撃されてもっと悲惨になる? だが、何もしなければ、全滅。
 悪を利するだけ、目の前で家族友人がなぶられ殺される。
 そのリアルが、ネットを通じて世界に流れた。

 そして人々は、理解する。平和は、お互いの凶悪な暴力により、その均衡の上に成り立っている。
 そんな常識を理解した。


 そんな世界で始まった、志願兵制度。
 下級兵士というのは、一般募集兵。
 二等兵から始め、軍曹が最高位。

 丁度職にあぶれた館野守は、二十四歳の時に会社がいきなり倒産して、困った末。志願する。ほんの軽い気持ちで。
 衣食住が保証されている。

 だが、一般人が思っているよりも、この世界はすでに壊れていた。

 海洋から、地上の偵察。
 そして、土壌や海水。そして生物。
 サンプル採取をして、船へ戻れば良い。

 そんな簡単なお仕事。
 いくつかの班単位で、現地で散らばる。
 目的物を採取していると、騒ぎが聞こえる。

「なんだ?」
 陸側を見ると、女性が、よく分からない化け物に襲われている。

 速やかに、陸で土壌採取をしている者達が、対応する。
 被害者が、怪我をしているそうで、船へと送られた。
 普通なら、何も問題にもならない行動。
 だが、船に乗っていた数百名は、全員ゾンビとなって下へ降りてきた。

 見知った奴らを撃ち殺し、班の奴らと必死で戦った。

 だが、弾も尽き、ナイフで倒す。

 奴らは疲れなしだが、こっちは違う。生理現象もある。色々垂れ流しながらの戦闘。やがて、油断とも言え無いミス。噛まれた。
 隊の奴に頼んで、噛まれた左腕を落として貰う。

 そんな、もう諦めかけた時、通信が来ない船を確認しに、別の船が来た。

 そして助けられて、俺は隔離された。
 腕は切ったが、噛まれたのは事実。

 そうして、腕をなくした俺は、研究所へ回される。
「君、左手が無いね。欲しくない?」
「そりゃ、欲しい。ですけれど」
「それは良かった。うんうん。軍人なのも都合が良い。こっちだ、付いてきなさい」

 そうしておれは、新しい世界に足を踏み入れた。
 改造された体は、今までの三倍以上のスペックを持っているという。
 だが実験段階で、全力を出すと骨が折れると注意されている。

 その後、同僚となった、浅見や、今吹っ飛んでいった、新世。
 新型になればなるほど、パワーアップしているようだ。

 オフレコだがと、前置きをされて聞かされた計画では、戦隊よろしく最強の軍団を造るようだ。

 むろん俺の体も、データが集まり次第、パワーアップを行う。

 そして、使えなかった機械も振動や上下動をカバーするため、本物は液槽フロートタイプとか言うものになるようで、随分ましになるとのこと。

「来たるべく、人類救済のための特殊機関が設立される」
 担当者は、ひどく興奮してしゃべっていたが、後で上官に叱られていたから、言ってはいけないところまでしゃべったのだろう。

 そして、飲みに行って、新世と顔合わせ。
 夜間の、身の回りのフォローと、警護のために浅見と代わる。
 約束より遅れ、デートにでも行くような気合いが入った浅見が、やって来たときには新世は潰れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...