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第二章 人類復活計画

第11話 謎の感覚と能力

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 相変わらず、俺は吹っ飛んでいた。
 どこかを強化すれば、どこかが壊れる。
 速度と、反応はこれでもまだ、抑えているということだ。

「駄目だぜこれ」
 走ってきたスタッフに、苦情とも言えないぼやきを聞かせる。

「質量がなあ、強化をすると重くなる。重くなればさらに負荷が掛かるから、ねじれや支点部分が限界負荷を超えちまう」
「こんな、アングルみたいな骨じゃなく鋳物で良いからブロックにすれば?」
「それをすると、すごく重くなるぞ。でもまあ、一体成形か。ブロック削り出しで造って、肉抜き」

 うむむと悩みながら、彼は本部テントへ戻ってしまう。
「助けてくれないのかよ」
 何とかまあ、フレームから這い出してくる。

 俺も本部へ行くと、喧嘩中だった。
「新世君。一週間休みだ。フレームを作り直す」
「はっ?」

 周りでスタッフが、頭を抱えていますが良いんでしょうか?
「分かったね。お疲れ」

 そう言って、追い出された。

 やることもないので、家へと帰る。
「じゃあお疲れ、出かけるときには連絡をするよ」
 館野と別れて、部屋へ入る。

「お帰りなさい」
 そう言って、彩佑が迎えてくれる。
「ただいま。ひどいことに一週間休みになった」
「あら、それじゃあ。ゆっくりできるわね」
 そう言って、微笑んでくれる。

 それからの、一週間。買い物に出る以外は二人は何かを埋めるかの様に求め合った。
 その中で感じた繋がり。
 彼女が寝ているときに、不意に頭に浮かぶ悪夢。
 俺はその中に乱入して、高校生だろうか? ガキどもをぶん殴ると、拘束されていた彼女を救い出す。
 そんな夢を見た。

 翌朝、目が覚めると、俺に抱きつき彼女が泣いていた。
「どうした?」
 そう聞くが、彼女はじっと人を見つめ。
「ありがとう」
 そう言って、ダイニングへ向かう。

 それ以降、なんとなく彼女がいるところを感じる。
 繋がりというものだろうか?
 聞くと、彼女もなんとなく、繋がりを感じるらしい。

 そして、それ以降。何かの力に目覚めた様に、俺は超能力が使える様になった。

 意識をすれば、思ったところに物理現象が起こせる。
 水が欲しいと思うと、目の前に水が浮かぶ。
 意識して、制御をしないと、大変なことになりそうだ。
 彼女も試すが、できないようだ。

 だけど、エイメスが言っていた言葉。
 神経の接続を補うために君に埋め込んだプラント。
 それは、意識を具現化する。

 そう言えば、挿管されていた管を抜管後、声が出せなかった時に、意識を繋ぐ実験をしたな。
 考えれば、あれも超能力じゃ無いか?

 そう言えばあれから、憑きものでも落ちたかの様に彼女の表情が穏やかになった。きっと何かがあるのだろうが、言ってくれるまで待とう。
 いや、なんとなく分かっている。
 あの夢は、きっと現実なのだろう。
 夢の時には、介入したが、しなかった場合どうなったか、想像できる。

 その時俺は、その事に思い至ったために復讐を決意する。
 彼女は望まないだろうが。

 そして、ただれた生活から現世へと戻る。
「さあ、新型だ。あんたのおかげで、一週間寝ずにフレームから設計し直した」
「その言い草はひどいな、あんたらの上司命令だろう」
「そうだけど、新世が壊すからだろう」
「壊れるのが悪い」
「だあー。まあ乗ってくれ。衝撃の緩衝システムも手直しした」

 そうして、テストを始めて、また俺は吹っ飛んで転がる。
 今度は壊れたのでは無く、踏ん張りがきかず。滑って転んだ。
 足の裏に、引力的なフィールドを発生させて、地面を掴む様だが、その限界を超えた。

「仕方が無い。これはまあ、設定で調節できる。ほれ、これで大丈夫」
 わずか数分で、調整が終了して、乗り込む。

 わずかに、動きが重くなった?
 走るのは、大丈夫。
 そして、鬼門の反復。

「どっわぁぁ」
 足は確かに掴んだ。だがそれに上が付いていかない。めくれて吹っ飛ぶ。

「どうがんばって重心を落としても、めくれて飛ぶぞ」
「もう、どうしようも無い。動ける範囲で動いてくれ。足のフィールドはちょっと緩める。滑る方がましだからな」

 結局、反復横飛びは諦めた様だ。

 その後形になり、外装が装着され、装備として実践に投入されることになった様だ。

 日本軍、機械兵団。
「対モンスターでは、怪我や噛まれるだけでリスクだから、体を囲う必要があった。だが囲うと装備の重量で思う様に動けない。そのため開発されたのがサポートアーマーだ。諸君の活躍を期待する」
 大々的に発表し、正式採用が決まった。

 だが、その一月前。
 俺のテストが終了して、候補生達は涙と自身のキラキラ地獄、悪夢の様な三週間を乗り越えた。
 改良しても、振動とGは凄いんだよ。
 きっと、宇宙飛行士なみのGが、移動をするたびに別方向からやってくる。
 ものすごく、過酷な環境。

 レースをやっていた俺でも、経験したことが無い世界だからな。
 いやイメージとしては、タイヤバリアに突っ込みながら走る感じだろうか? 壁に沿って走る、小さな4駆に実際乗ったらこんな感じじゃ無いだろうか?

 とにかく、頑張れ。
 心の中で応援をしながら、隊列を組む隊員を見送る。
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