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第4章 少しずつ変わって行く世界

第6話 とりあえず、殺(や)ってみよう。

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 蒼い顔に変わり、目の前のおっさんは携帯を持ってお辞儀している。
 アメリカ人でも、するんだな。

 ちょっと、親近感がわいた。
〔それでは、失礼いたします〕
 おっさんがそう言って、携帯が美月に帰って来た。
 お礼を言って、通話を切ると携帯が俺に帰って来た。

〔では作戦を説明しよう。我々は、イエローストーンから東側を、掃討作戦として東に向かい実行中だ〕
 でかい地図が出てくる。
 見ると東の方は切られたエリアが大きいのに、実行中の作戦エリアはすごく小さいな。

〔全土に兵が分散されて、このエリアでは3000の兵が任務中だ。私はクラスターの使用を進言したのに、こんな子供が来るとは…… まあいい。勝手に作戦に入ってくれ。好きにしていい〕
「ダンジョンは、殺していいのか」
 とつい言うと、
〔ダンジョンは、全部潰して良いのですか?〕
 と美月が通訳してくれた。

〔かまわん。あんなものは要らん〕
「yes sir. 後で、文句を言うなよ」
 軽く、敬礼をして外に出る。

 人のいないエリアに出てきて、作戦地図を見る。
 おお広いな。
「どうします?」
 芳雄が、聞いてくるが、
「ちょっと待っていろ。新型魔法を今作って、食らわすから」
 そう言って、考える。
「すごい、悪い顔をしてるわね」
 美月が玲己に言っているな。この二人仲がいいよな。

 いかん。集中しないと、作戦中の兵まで消してしまう……。
「いざ、裁きの雷。魔石回収機能付き。実行」

 その瞬間。
 指定エリアが光に包まれ、中にいたモンスターが、一瞬で消滅した。
 そのすぐ後、目の前へ魔石が転送されてきて、山積みになる。
 周りに見られないうちに、亜空間収納庫に収める。
 
 その後、雷のせいで、ものすごい音がこだまする。
 その後、周りのすべての音が消え、みんなが呆然と空を眺める。

 後で話を聞くと、いくつかの電子機器が余波でとんだらしいが知らん。

 よし終わったな。

 それじゃあ、見つけたダンジョンへ行ってみるか。
 大体作戦と言っても、集合時間だけ。
 期間も終了条件すら書かれていないから、さっさと殲滅するのに限る。
 対象が無くなれば終わりだろう。
 早くすませて、観光でもしよう。

 ちょっと大きめの…… いや、かなり大きめのダンジョンが、イエローストーン国立公園が含まれる山の中にあった。

「何だ、これ?」

 まるで、飛行機の格納庫みたいな規模だな。
 みんなで、ぞろぞろと入っていき、空間をつなげてフェンとフレイヤを引っ張り出す。
〈にゃ、ボーナスポイントかにゃ。竜種がいる〉
〈にゃ、じゃない、竜種だと? それで、こんなに大きいのか〉
 手をついて、システムにアクセスをする。

 奥まで、5階しかないな。
 ただ、一階層が10km~15km、2階層はもう少し広く20kmくらいはあるな。それが最大なのか、5階までその広さだ。

 1~2階層まではワイバーンで、そこからレッドドラゴンにブルードラゴン5階は混合か。

「ワイバーンが居る。戦ってみたい奴いるか?」
「どうやって、倒すんですか?」
 一翔が、ぼけたことを言う。

「なぐりゃあ、良いだろう。そんなもん。ほかに、どうするんだよ」
「いや、空を飛んでいるんでしょう?」
「それは、落とす」
 と言って、雷を周辺にまき散らす。

 すると、上で飛んでいたのが落ちてきた。だが、打ち所が悪かったのか、何匹か消えた。

「ありゃ? 落とすと死ぬなあ。意外と虚弱体質だぞ」
 言っている間に、美月が炎をまき散らす。

 フレイヤとフェンは、フェンの上にフレイヤが乗って走っていく。
 そのままフェンが飛びあがり、飛び上がった状態でその上から2段ロケットの様にフレイヤが打ち出されている。
 完全に、遊んでいるな。

 
 瀬尾みゆきちゃんが、手を広げて迎える。
 なぜかそこに、ワイバーン達が集まって来る。
 それをなでると、消滅していく? 癒しだったのになぜだ?

 その横で、芳雄もぶん殴って消滅をさせていく。

 まあ後は、玲己が水で切り裂き、水から逃れたやつには雷が落ちている。

 一翔と霞ちゃんは、踊っているなあ。
 近くまで、えさだーという感じで降りてくるんだから、その時に合わせて殴ればいいんだが。まあ、この場に居れば、経験値は吸収できるだろう。


 小一時間経ったので、
「よし、もういいか」
 みんなが頷いているので、フレイヤ先生出番です。
 そういう感じで場を空ける。

 しゅたっと立ち、大仰に手を空に向ける。
 その瞬間。
 わさわさ居たワイバーン達が、ぼふっと魔石になって降って来る。
 結構大きいから危ないな。
 意識を広げて、適当に収納していく。

「さあ、次の階段まで移動するぞ」
 とゲートを開く……。
 ここまで来て、ゲートって共有できるよな。と思いだした。

 でも、美月は危ないから絶対ダメだ。
 ほかのやつらも悪さしそうだし、まあ玲己には共有しておこう。


 移動して、2階。面倒だから、フレイヤ先生出番です。
 移動して、3階。レッドドラゴンエリア。

 おおっ、火を吹いているぞ……。
「暑いから、フェン頼む」
〈はいよ、主〉

 一気に、気温が下がる。
 その瞬間、みるみるうちにレッドドラゴン達の動きが悪くなり、地上へ降りてくる。
 まあいいか、
「よしいいぞ、殺(や)ってみろ」


 そんな頃、デンバー国際空港東側、一般駐車場仮説基地。

 無線から、口々に報告が入る。
 モンスターが消えた。
 雷が降って来た。
 神か? 悪魔か? と大騒ぎであった。

 大統領が日本から呼びつけたあのチーム。
 テントから出て行ってすぐのこの騒ぎ。
 何が一体起こったのだ? 

 すでに一時間前。
 落雷が大音響とともに各地に降り注いだ。
 間近でそれを見た兵は、晴天の空から突然光が降って来たと形容していた。
 それが、すべてモンスターに直撃。
 モンスターは消えた。
 魔石もすぐ後に消えた。
 という報告だ。
 兵が掠め取ったのかと思ったが、本当にすべてが消えたようだ。

 これを、あいつらがやったというなら、大統領は一体何と契約をしたんだ?
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