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第4章 少しずつ変わって行く世界

第9話 アメリカの判断

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〔ハワード陸軍大佐だ〕

〔やかましい。こっちはアメリカ陸軍大将ハロルドだ。至急、β-1地点ダンジョンを神崎達に対してオープンにしろ。彼らの邪魔をしてはならん。大至急だ〕
 彼はそう言い放って、無線を置く。
 肩で息をしながら、再びモニターを眺める。

 さすがに、すぐに連絡が行ったようだ。

 一同が、安堵する。

 ところが、解放されたダンジョン入り口で、神崎が手をつき何かをしている。
 振り返り、何かを仲間に伝える。
 そんな彼の背後で、ダンジョンがいきなり消えた。

〔はあぁ? 〕
〔今、何が起こった? 彼は、中にも入らなかったぞ〕

 その後、彼達は消えた。

 次にあらわれたのは、デンバー国際空港だ。
「両替所はどこだ?」
「こっちに、World Wide Money Exchangeという、両替商があるけど、手数料10~15%って書いてある」
「面倒だな。カード位使えるだろう。それで、良いだろう。それと、童顔な奴は美月から離れるな。通報されるぞ。じゃあ、行ってくる。面白そうなのが居たら、念話でもするよ」

 そう言い残して、一司はフレイヤを連れ、ダンジョンを検索する。
 此処は前に兵が居ない。
 野良ダンジョンだよな。

 サーチをしては、消していく。

 その頃、モニターには彼らが一切映らなくなって、大統領たちは暇を持て余していた。
〔どうなったんだ? 彼はどうした?〕
〔情報が来ています。 今回新たに発見されたダンジョンが、兵が監視につく前に消えていくそうです。現場は大騒ぎです〕

〔そうか。彼はダンジョンの場所が分かる。わざわざ、兵の居ないダンジョンを選択して潰しているのか〕
〔彼がさっきの勢いで、ダンジョンを消すとなると。日が落ちるまでに、いくつ消えることか〕

 そんなことを言っている間に、200個ほどのダンジョンを消す。さすがに飽きて、昼飯を食べていた。
「14時か。眠いし、飽きたから帰ろうか? 」
「帰っていいか、お友達アプリで聞いてみたら? 」
 美月にそう言われて、それもそうかと一司は携帯を出す。

 取り出した携帯に入力する。
『ダンジョンを200個消した。俺たちは帰るがいいか?:I erased 200 dungeons.
We're leaving now, It’s okay?』
「日本語入力をすると、自動翻訳された。まあいいか。送ろう。意味位分かるだろう」

「ちょっと、送る前に見せてよ」
「大丈夫、たぶん。あっ、返って来た」
『Thank you for your kind assistance.:ご協力に感謝致します』

〔おっ、200もダンジョンをつぶしたらしい〕
〔このわずかな間で、ですか?〕
〔『ありがとう、ご協力に感謝する。』っとこれでいいか。しかし素晴らしい。この短時間であのエリアを一瞬で開放。さらにロッキー山脈の、中にあった厄介なα-1を消滅。それプラス200のダンジョンか〕
 そう言いながら、うんうんと納得しているのは、やはり大統領のみであり。周りは、もうすでに終わっていた。完全に精神が、やられたようだ。

〔大統領。失礼ながら、彼はどう考えても危険です。何とかしなければなりません〕
〔何を、どうするんだ? 彼に手を出せば、アメリカが滅ぶ方が、確実な未来として私には見えるぞ。だからこその、お友達作戦だろう。うまくいったじゃないか〕
 すかさず、周りにいたシンクタンクの代表が意見を言う。
〔彼たちは、対案を出して何とかしようと思ったが、何をどうしても、大統領の言う通りの未来しか浮かばなかった〕


 その後大統領は、会社に対して1千万ドルと個人に100万ドルずつ振り込んだ。
〔いや、安くつくな。兵を3000人運用で一月。それで、結果を出せなかったものが、あっという間に結果を出した。
 装備や弾薬等消耗品。
 それに、作戦期間中の兵站も含めた経費。
 ダンジョンを200個沈黙させるなど、考えただけで頭が痛い〕
〔それにプラス、遺族への補償も考えると、さらに経費はかさみます〕

〔そうだ良いことを思いついた。カナダ。あそこも友好国だからおしえてやるかい? あそこは、日本人も多いのだろう〕
〔カナダのロッキー山脈にもα-1通称エアプレーハンガーと同じタイプがあります。中に翼竜。えーと彼のいうワイバーンでしたか、うようよしていてやばいそうですよ〕

〔カナダに貸しが作れるな。相談に乗って、そうだな。アメリカからということで、派遣しようか? 〕
〔おう、それは素晴らしい。WIN-WINですね。大統領も色々考えますな。ふっふっふ〕
〔いや、君ほどじゃないさ。はっはっは〕
 まるでどこかの、悪代官のような話がまとまり、必然的に一司たちは、アメリカに使われる様である。

 話を持って行っても、少しはもめるかと思われたこの話。

 どこかの番組の影響か、一司がカナダと聞き。
 そうだ、川を下ろう。と思いつく。

 ノリノリで「どうだい? ユーコン川でも下ってみるかい」と社員に同意を取り、あっさりと話がまとまる。
 日時の調整と座標を教えてもらい、その日は、近くに兵が居ないようにしてもらう段取りで話が決まった。

 だが、その話を聞きつけて、彼たちは日本の会社で、日本人を派遣するのに、日本の頭越しは困ると日本政府からクレームが入る。
 その為1週間ほど派遣予定が伸びた。
 原因は美月以外、パスポートを持っていなかったからである。

 まあ持っていてもチェックなど受けないし、必要はないのだが、一応様式美である。
 一応カナダからも、社員分のご意見無用カードをもらった。
 これを見せると、どこかの印籠の様にへへーぇとなるらしい。

 奇しくもその日は、壮二の修学旅行出発日。
 昼間に学校に送って行き、万歳三唱で出発を見送ると、皆夕方からカナダへ向かう。
 時差の関係で、夕方に出れば、十分夜中に帰ってこられる。
 そんな事実が、分かったからである。

 ちなみにユーコン川下りは、今回はあきらめて、再度8月にしようとなった。
 ちょうど5月から6月は熊が出てきて、人に害をなす。
 そうすると殺処分となるため、近づいてはいけないらしい。
 それに、まだ寒い。

 気温も14度くらいから25度くらいのようで、川も所々凍っているそうだ。

「熊って、おいしいのかなぁ……」
 と美月の方からボソッと聞こえたが、わが社は無用な殺生はしません。
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