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第4章 少しずつ変わって行く世界

第8話 コバルト君来襲。あれっ?

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〔次はどこへ行った? 〕
〔次はβ-1です〕
〔よく強力なダンジョンが把握できるな。これも神崎君の能力かな? 〕
 すごくうれしそうな顔で、ほほ笑む大統領。
 喜んでいるのは、この部屋の中で大統領のみ。
 他の者は、非常識の連続で、口が空きっぱなしである。

 そんな折、α-1通称エアプレーハンガーの跡地で、空間がゆがむ。
 あん? なんで同胞のダンジョンが、無くなっているんだ? モニターの故障かと思ったが、本当になくなっている。
 消されたということは、誰かがマスターになったという事だな。

 上で見ていると、せっかく作ったドラゴン種のダンジョンが消失した。
 アラートを確認して、そんなはずはないだろうとわざわざ見に来たコバルト君の分体の分体。
 折角なので、竜人モデルではなく、オリジナルを模している。
 ドラゴンだが、古竜に近く羽が2対ある。
 黒光りする鱗も再現済みだ。

 運悪くその地点へ、本部の命令により、ダンジョンの状態を確認するために訪れた米軍部隊が居た。

 突然現れたドラゴンを、ぼーぜんとしながら見ていたのだが、部隊用の戦術無線機を通して隊長の檄(げき)が飛ぶ。

〈ブラボー隊。上を見ろ大物だ。よーしみんな、生き残って帰ったら、Emma(エマ)の店でうまい酒を飲むぞー。続けぇ!! 〉
〈おおっ。生きて帰るぞぉー!! 〉〈俺は、エマに告白するぞ〉〈今のは、誰だ? 俺が先だ〉〈なんだと、てめえ……〉〈俺は、Isabella(イザベラ)がいい〉〈やかましい、エマは俺に惚れているんだ。金を払うときに、いつもありがとうって、ニコッと笑って、言ってくれるんだぞ〉
 それは、単なる社交辞令だろう。
 隊長以外の全員の心が一つになった瞬間である。

 とは言っても、省エネ版コバルト君の分体だが、優に(ゆうに)20mは超えている。
 小銃と意気込みだけでは、話にならない。
〈SMAW ロケットランチャーを食らわせろ。遠慮はするな、撃て〉

 撃ち出される弾頭は、対モンスターの為、サーモバリックと言われる燃料気化爆弾が採用されていた。
 コバルト君の分体が、大きな炎に包まれる。

 射手の想いが乗っているため、結構効いているようだが、強靭な鱗には影響がないようだ。
〈畜生!(damn it!)、対戦車用砲弾HEAT、成形炸薬弾は持ってないのか? 〉
〈持っていません〉

〈畜生、サーモバリックじゃだめだ。本部α-1地点。対象ドラゴンだ、M1A2C『エイブラムス』(汎用戦車)でも送ってくれ〉
〈こちらオペレーター。馬鹿野郎。そんな険しい山に入れるわけが無いだろう。手持ちで何とかしろ〉
〈ジーザス〉
 本部の回答を聞き、ブラボー隊隊長ジェンソンは、無意識に胸の前で十字を切る。

 他に方法がないので、さらにサーモバリック弾頭で攻撃を加える。

 
 β-1地点に来た一司だったが、何かが現れたのを感知する。
〈フレイヤ、何かごっついのが来たぞ。体は大丈夫なのかね〉
〈分体かな? 空間が繋がっている。どこかから、人形を送って来たみたい〉
〈さっきの所だな。ちょっと見て来るか〉
「おい、適当に攻略しといてくれ、ちょっと行ってくる」
「「「はーい、行ってら」」」

 ゲートを開き、α-1地点に一司が来ると、熱と衝撃波が襲ってくる。
「うわ、攻撃中だったか? あそこだな? まあいいフレイヤ。あのドラゴン殺せ」
「にゃ〈死ね〉」

「ぐわぁぁ……」
 神言は分体を通して、本体にまで影響が届く。
「なんだ、今のは? 中継地の分体まで死ぬところだったぞ。まさか。誰か管理者が、あそこに居たのか……」
 当然、地上に居た分体の分体は消滅した。
 ただ、落ちてきたのは、50cmほどの魔石だった。

〈ちっ、人形だから、図体のわりに魔石が小さいな。まあ良いか帰ろう〉
 再び、ゲートをくぐる一司。

〈おい、何が起こった? 説明しろ。魔石も途中で消えたぞ。だれか、見た奴はいないか〉
〈見ました。あそこに人間が。黒い渦から出てきて、猫を抱えていました〉
 兵は、元ダンジョンの入り口があった辺りを指さす。

 ジェンソンは周りを見回すと、監視用ドローンを発見する。
〈ああ良い。カメラが見ていただろう。α-1地点ダンジョン消失。ドラゴンも消えた。以上。基地へ帰投する〉
〈本部了解〉
〈ちっ〉
 ジェンソンは小さく舌打ちをして、帰るぞと大きくゼスチャーをする。


〔見たかね。あんなでかいドラゴンが、一瞬だよ。すごいな彼は〕
 大統領は大興奮。
 こちら側では、しっかりと見ていた。
 当然、至近距離でサーモバリックの余波を受けていやな顔をしていた所も、ばっちりと。

 すべて見ていた軍首脳部は、青い顔になって死にそうになっている。パクパクしているが、声は出ていない。

〔いったい、彼は何をした? あれだけ散々打ち込んだランチャーの弾頭が効かない強力な奴が、彼が現れて一瞬だぞ〕

 そう彼らは、想像してしまった。
 一個人が、強力な力を持ち。
 なおかつ神出鬼没。

 静かに表れ。殲滅して、静かに消えるその恐怖。

 彼の愛国心が、どの程度かは不明だが、彼と日本はやばい。

 彼に比べれば、核兵器など、近づけなければ良いだけの話だ。

 だが彼は静かに現れ、言うのだろう…… 死の言葉を。
 そう…… だれかが言ったように。きっと彼は、ルシファーだ。
 死を連れて、誰も気が付かぬうちに静かにやって来る。

 モニタールームでそんな空気が、流れる中。
 β-1地点ダンジョン守備隊と、彼の大事な仲間が、言い争いをしている姿がモニターに映る。

 そして、そこへ向かうのは彼だ。

 モニターを見ていた陸軍大将ハロルドは、作戦用戦術無線機に割り込みをかけて、指令室のハワード陸軍大佐につないだ。
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