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第4章 少しずつ変わって行く世界
第19話 夜明けの作戦
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ゲートをくぐると、そこは戦場だった。
一緒にやって来た、大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギが、
〔アメリカから援軍としてやって来た。責任者は何処にいる? 私は、アメリカ大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギというものだ〕
そう言って、男に声をかける。
適当に、その辺りでうろついている男を捕まえたようだが、見た目が欧米人だから、補佐官も声をかけやすかったのだろう。
現在絶賛戦闘準備中で、トーブと呼ばれる民族衣装は、ほとんどが着ていない。
さらに声をかけた相手は、頭部布まで被っていなかった。
〔なんでアメリカの偉い人がこんな所へ。私は元海兵隊マイケル・サイモンです。此処の司令官は、サキですが、家名は何だっけ? ビン・アブドゥルアズィーズか?〕
〔なんでこんなところに母国の人間がいるんだ。まあいい、そのサキと呼ばれる司令官の所へ案内してくれ〕
〔援軍と言っても2人だけか? そいつは中国人? それとも日本人か?〕
怪訝そうな顔をしながら、マイケルがこちらを見る。
〔日本人だ〕
〔奇遇だな。此処にも一人いるぜ。凄腕がな。まあ案内するよ。こっちだ〕
少し離れたテントへ入る。
〔おーい、居た。サキ。アメリカから援軍だとよ〕
〔今大統領から、電話をもらったところだが、何かの能力持ちか。司令官のサキだ〕
〔私は、アメリカ大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギと申します。よろしくお願いいたします。私は単なる付き添いですが、彼が力になるでしょう〕
〔一人なのか?〕
そう言って、頭部布を纏わず、刺すような鋭い眼光をした司令官は聞いて来た。
あわてて、ジャレッドがフォローを入れる。
〔彼は魔法使いだ。普通じゃない。一般の兵5千や1万よりも強い〕
どんな紹介だよ。無茶苦茶なハードルの上げ方をして来るな。
〔中国人か?〕
〔いや日本人だ〕
〔そうか、うちの部隊にも凄腕の日本人が居るよ。真(まこと)というんだが、今はハンガーの方かもしれんな。彼はパイロットだからな〕
パイロット? 気になって聞いてみる。
〔攻撃は基本的には、飛行機から?〕
〔そうだ。ターゲットは、ワームタイプで口の直径が5m~10m位まで。本体は砂の中だから正確な全長は不明だが、頭が5mの奴でも20m はあるだろう。地上から攻撃しても携帯用ランチャーじゃHEATやHPの成形炸薬弾を使っても豆鉄砲だ。あっと言う間に距離を詰められて喰われるだけだ。だが最近は、向こうも魔法だろうが石礫の混ざった物を航空機に対して使うようになってきた。うちの兵では太刀打ちができないから、彼ら傭兵を雇ったのさ〕
そう言ってサキは、服装がまちまちな一団を見つめる。
〔退治するのは、サウジアラビアの奴だけでいいんだよな?〕
横にいる、ジャレッドへ質問をする。
〔そうだ。それでいいですよね。サキ様〕
〔簡単に言うが、我が国は広い。君の母国の6倍近くもある〕
そんな言葉を聞き流して、意識を広げ国全体を鳥瞰(ちょうかん)する。
全部が砂漠というわけでもないようだな。今でも結構な機数が飛んで攻撃を繰り返している。
なるほど、あれか。
確かにでかい。だが、危険を感じるとすぐに砂に潜るようだ。
ただ、あまり深くはないな。
深いと砂は重いからきついのかもな。
試しに、頭を出して、今まさに飛行機へ攻撃を仕掛けようとしている奴へ、雷を落としてみる。
命中して当たった所が吹っ飛び、抉れているが、横倒しになった奴は、まだうごめいている。
もう一発撃ちこんでみると、表面を電気が流れているようだな。なんか出しているのか? いや、細かな毛が生えていてそれが電気を流すのか。
〔いやー。こいつ丈夫だな。今攻撃をしてみたけれど、死なないわ。表面の毛が意外と仕事をしているみたいだな〕
〔攻撃? 今か? どこの辺りだ〕
そう言って、サキが地図を持ってくる。
〔この辺りです〕
そう言って、半島の狭い所が広くなった所の西側を指で押さえる。
〔マイケル、この辺り、今作戦中だな。誰かいるだろう、聞いてみてくれ〕
戦術用無線機を、装備しているようだ。すぐに連絡が取れたみたいで、すぐに回答が来た。
〔ゲイツがいたよ。雷が落ちて一匹腹を出しているって。こいつが、ここからやったのか?〕
〔そうらしい〕
反応を見ると、少しは驚いてくれたようだ。
横倒しで、ぴくぴくしている奴は、空間魔法で切った。
やっぱりこれが早いか。
〔飛び回っている航空機を下げてくれ。一気につぶしていく〕
〔わかった、ただし弟を食った奴だけはこっちで仕留めたい。この辺りに大きな奴がいるだろう〕
そう言って、地図のフフーフ近郊を指し示す。
〔でかいやつ? これか?〕
砂の下を、ぐるぐると回っている奴を見つけた。
近くの道路から伝わる振動を、探っているのか? 道路側には戦車部隊までが並んでいるが、静かに息をひそめているようだ。
お互いが、けん制しあっているのか。
雨を降らせば、窒息するかな? 蜘蛛ダンジョンと同じ感じで水を撒いて感電させてみよう。
そう考えて、部分的に水魔法で雨を降らせる。
砂の中、5mくらい下でぐるぐるしていた奴が、砂が濡れるにしたがってじたばたし始めた。やがて顔を出す。その瞬間、道路側からミサイルがやって来る。
ああ、じゃまだ。ミサイルごと巻き込んで雷を降らす。しっかり感電したようで横倒しになった。
〔サキ。目標の奴は、地上へ引っ張り出した。道路からのミサイルも巻き込んだが〕
〔ミサイル?〕
〔道路側に部隊が居るぞ〕
〔くそ、父上か。でるぞ、用意しろ〕
そう言って、走って行った。
〔だから、飛行機は邪魔だというのに〕
走っていくサキを眺めながら、そうぼやく。それでも砂漠に雨を降らせて、全部がじたばたし始めるのを確認する。
「そりゃ」
国全体に雷を降らせる。
ここでも、ドーンという音が聞こえて、周りがざわめき始める。
神の怒りがどうこうと騒いでいるが、先に仕事を済ませる。
顔を出したワーム達。輪切りだと復活しそうだから、縦切りにしよう。
さらに、切れたところへ雷さんをとどめ。
周辺に、ドーンという音と香ばしい匂いが立ち込めてくる。
魔石はもらっていいんだよな。
残った魔石を、マークして収納をする。
〔よし、一匹以外は終わったぞ〕
髑髏のマークが書かれた白い機体が攻撃をしている。やがて、ワームは黒い煙となって消えて行った。
〔終わったな。帰ろう〕
ジャレッドを誘う。
〔早いな。じゃあ帰ったと伝えておいてくれ〕
そう近くにいたマイケルに伝言を頼み、俺たちはゲートをくぐった。
入れ違いにやって来た、日本人パイロット。
〔さっきから、雷がすごい勢いで落ちてきて、危なくて飛べん。なんだ一体?〕
〔ああ、真か。さっきのは、日本人の魔法使いがやったことらしい〕
〔日本の魔法使い? そうかすごいな。30歳まで……〕
〔うん? 若そうだったぞ。さっきも、黒い渦を出して帰っちまった〕
〔まあいいか、基地へ帰ろうミッキー(マイケルの略称。マイクやミックとも呼ばれる)。いま、撤収の連絡が来た〕
耳の戦略用通信機を外す真。
夜が明け始めた空を、そっと仰ぎ見る。
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一つお断り。言いたいことは分かりますが、突っ込み禁止です。
砂漠が舞台、そう考えた瞬間。なぜかキャラの名前が、空から降ってきたんです。
マイケルなど、全米名前ランキング6位くらいだし、多いんだよきっと。
一緒にやって来た、大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギが、
〔アメリカから援軍としてやって来た。責任者は何処にいる? 私は、アメリカ大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギというものだ〕
そう言って、男に声をかける。
適当に、その辺りでうろついている男を捕まえたようだが、見た目が欧米人だから、補佐官も声をかけやすかったのだろう。
現在絶賛戦闘準備中で、トーブと呼ばれる民族衣装は、ほとんどが着ていない。
さらに声をかけた相手は、頭部布まで被っていなかった。
〔なんでアメリカの偉い人がこんな所へ。私は元海兵隊マイケル・サイモンです。此処の司令官は、サキですが、家名は何だっけ? ビン・アブドゥルアズィーズか?〕
〔なんでこんなところに母国の人間がいるんだ。まあいい、そのサキと呼ばれる司令官の所へ案内してくれ〕
〔援軍と言っても2人だけか? そいつは中国人? それとも日本人か?〕
怪訝そうな顔をしながら、マイケルがこちらを見る。
〔日本人だ〕
〔奇遇だな。此処にも一人いるぜ。凄腕がな。まあ案内するよ。こっちだ〕
少し離れたテントへ入る。
〔おーい、居た。サキ。アメリカから援軍だとよ〕
〔今大統領から、電話をもらったところだが、何かの能力持ちか。司令官のサキだ〕
〔私は、アメリカ大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギと申します。よろしくお願いいたします。私は単なる付き添いですが、彼が力になるでしょう〕
〔一人なのか?〕
そう言って、頭部布を纏わず、刺すような鋭い眼光をした司令官は聞いて来た。
あわてて、ジャレッドがフォローを入れる。
〔彼は魔法使いだ。普通じゃない。一般の兵5千や1万よりも強い〕
どんな紹介だよ。無茶苦茶なハードルの上げ方をして来るな。
〔中国人か?〕
〔いや日本人だ〕
〔そうか、うちの部隊にも凄腕の日本人が居るよ。真(まこと)というんだが、今はハンガーの方かもしれんな。彼はパイロットだからな〕
パイロット? 気になって聞いてみる。
〔攻撃は基本的には、飛行機から?〕
〔そうだ。ターゲットは、ワームタイプで口の直径が5m~10m位まで。本体は砂の中だから正確な全長は不明だが、頭が5mの奴でも20m はあるだろう。地上から攻撃しても携帯用ランチャーじゃHEATやHPの成形炸薬弾を使っても豆鉄砲だ。あっと言う間に距離を詰められて喰われるだけだ。だが最近は、向こうも魔法だろうが石礫の混ざった物を航空機に対して使うようになってきた。うちの兵では太刀打ちができないから、彼ら傭兵を雇ったのさ〕
そう言ってサキは、服装がまちまちな一団を見つめる。
〔退治するのは、サウジアラビアの奴だけでいいんだよな?〕
横にいる、ジャレッドへ質問をする。
〔そうだ。それでいいですよね。サキ様〕
〔簡単に言うが、我が国は広い。君の母国の6倍近くもある〕
そんな言葉を聞き流して、意識を広げ国全体を鳥瞰(ちょうかん)する。
全部が砂漠というわけでもないようだな。今でも結構な機数が飛んで攻撃を繰り返している。
なるほど、あれか。
確かにでかい。だが、危険を感じるとすぐに砂に潜るようだ。
ただ、あまり深くはないな。
深いと砂は重いからきついのかもな。
試しに、頭を出して、今まさに飛行機へ攻撃を仕掛けようとしている奴へ、雷を落としてみる。
命中して当たった所が吹っ飛び、抉れているが、横倒しになった奴は、まだうごめいている。
もう一発撃ちこんでみると、表面を電気が流れているようだな。なんか出しているのか? いや、細かな毛が生えていてそれが電気を流すのか。
〔いやー。こいつ丈夫だな。今攻撃をしてみたけれど、死なないわ。表面の毛が意外と仕事をしているみたいだな〕
〔攻撃? 今か? どこの辺りだ〕
そう言って、サキが地図を持ってくる。
〔この辺りです〕
そう言って、半島の狭い所が広くなった所の西側を指で押さえる。
〔マイケル、この辺り、今作戦中だな。誰かいるだろう、聞いてみてくれ〕
戦術用無線機を、装備しているようだ。すぐに連絡が取れたみたいで、すぐに回答が来た。
〔ゲイツがいたよ。雷が落ちて一匹腹を出しているって。こいつが、ここからやったのか?〕
〔そうらしい〕
反応を見ると、少しは驚いてくれたようだ。
横倒しで、ぴくぴくしている奴は、空間魔法で切った。
やっぱりこれが早いか。
〔飛び回っている航空機を下げてくれ。一気につぶしていく〕
〔わかった、ただし弟を食った奴だけはこっちで仕留めたい。この辺りに大きな奴がいるだろう〕
そう言って、地図のフフーフ近郊を指し示す。
〔でかいやつ? これか?〕
砂の下を、ぐるぐると回っている奴を見つけた。
近くの道路から伝わる振動を、探っているのか? 道路側には戦車部隊までが並んでいるが、静かに息をひそめているようだ。
お互いが、けん制しあっているのか。
雨を降らせば、窒息するかな? 蜘蛛ダンジョンと同じ感じで水を撒いて感電させてみよう。
そう考えて、部分的に水魔法で雨を降らせる。
砂の中、5mくらい下でぐるぐるしていた奴が、砂が濡れるにしたがってじたばたし始めた。やがて顔を出す。その瞬間、道路側からミサイルがやって来る。
ああ、じゃまだ。ミサイルごと巻き込んで雷を降らす。しっかり感電したようで横倒しになった。
〔サキ。目標の奴は、地上へ引っ張り出した。道路からのミサイルも巻き込んだが〕
〔ミサイル?〕
〔道路側に部隊が居るぞ〕
〔くそ、父上か。でるぞ、用意しろ〕
そう言って、走って行った。
〔だから、飛行機は邪魔だというのに〕
走っていくサキを眺めながら、そうぼやく。それでも砂漠に雨を降らせて、全部がじたばたし始めるのを確認する。
「そりゃ」
国全体に雷を降らせる。
ここでも、ドーンという音が聞こえて、周りがざわめき始める。
神の怒りがどうこうと騒いでいるが、先に仕事を済ませる。
顔を出したワーム達。輪切りだと復活しそうだから、縦切りにしよう。
さらに、切れたところへ雷さんをとどめ。
周辺に、ドーンという音と香ばしい匂いが立ち込めてくる。
魔石はもらっていいんだよな。
残った魔石を、マークして収納をする。
〔よし、一匹以外は終わったぞ〕
髑髏のマークが書かれた白い機体が攻撃をしている。やがて、ワームは黒い煙となって消えて行った。
〔終わったな。帰ろう〕
ジャレッドを誘う。
〔早いな。じゃあ帰ったと伝えておいてくれ〕
そう近くにいたマイケルに伝言を頼み、俺たちはゲートをくぐった。
入れ違いにやって来た、日本人パイロット。
〔さっきから、雷がすごい勢いで落ちてきて、危なくて飛べん。なんだ一体?〕
〔ああ、真か。さっきのは、日本人の魔法使いがやったことらしい〕
〔日本の魔法使い? そうかすごいな。30歳まで……〕
〔うん? 若そうだったぞ。さっきも、黒い渦を出して帰っちまった〕
〔まあいいか、基地へ帰ろうミッキー(マイケルの略称。マイクやミックとも呼ばれる)。いま、撤収の連絡が来た〕
耳の戦略用通信機を外す真。
夜が明け始めた空を、そっと仰ぎ見る。
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一つお断り。言いたいことは分かりますが、突っ込み禁止です。
砂漠が舞台、そう考えた瞬間。なぜかキャラの名前が、空から降ってきたんです。
マイケルなど、全米名前ランキング6位くらいだし、多いんだよきっと。
応援ありがとうございます!
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