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第4章 少しずつ変わって行く世界

第18話 砂漠に虫が湧いているらしい

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〔神崎君、ありがとう〕
 そんなことを言って、アメリカ大統領から電話がかかって来た。

〔何の件です?〕
〔何の件? もちろん、あれだよあれ…… 白い……〕

 思い出せないようだ、からかってみよう。
〔白い? アメリカで白と言えばハウスか粉ですかね。合わせるとシチューになりそうですが、食べると死にそうですね〕
〔ハウス? 粉? いや違うよ。この前、試しに貰ったじゃないか、モンスターに効くかもと言ってくれた奴だ〕
〔ああ、聖魔法の結晶ですか?〕

〔そうそれだ。あれは効くよ、非常にいい。もっとくれないかね〕
 やっぱり危ない粉の様だ。
〔そうですね、2回目ならグラム150ドルくらいで、3回目は1000ドル位?〕
〔何の話をしているんだ?〕
〔白い粉でしょう? それなら、毎回値上げをしないといけないでしょう?〕
〔いや確かに…… あれ無しでは、もうモンスター退治が出来んほど、依存はしているが、さすがに毎回10倍は辛いな。何かのバイヤーみたいなことを言わず、レートを決めよう〕

〔効き目はどうだったんですか?〕
〔ゴブリンならバーストを使わなくても、セミオートで大丈夫と言う結果が出ている。オーガまでは3点バーストで大丈夫だそうだ〕
〔弾頭一つに何グラムですかね?〕
〔3mmの結晶で、十分効果が出るらしい〕
 検索してみる。うんーと3mmだと0.04g?
  弾の特殊な奴が500円から2000円、普通のNATO弾だと高くて100円。
 0.01gが100円だとグラム10000円か、でも今円が安いから73ドルくらい? あれ? 金より安い。金よりは貴重だよな。パラジウムで9300円くらい? もうグラム100ドルで良いか。

〔グラム100ドルで行きましょう〕
〔よしそれでいいのか? 本当だな〕
〔将来的な価格保証ではありませんけどね〕
 一応逃げを打っておく。

 そういやどっかのメーカー900円位のセンサーを右から左で2万で売っていたよな。失敗したか?

 この後俺は、聖魔法の結晶を作りながら3日ほど悩んだ。
 まあいいや、人助けだ。こうして日本を中心に魔素の濃度はガンガン下がって行った。

 こうして、毎日の納品にアメリカへの結晶配達が追加された。
 なぜか、俺だけ仕事をしている気がする。
 まあ、地道な役所からの依頼は、高校生組に任せているけども、そう言えば遊んでいる奴が一人、いや二人いるが一人は家事を任せているから、一人居るな。
〈玲己。おーいどこだ?〉
〈うん? 呼んだ?〉
 この前から、大学をさぼって居付いている奴。

 ぽてぽてと、やって来た。

「なあに、だーりん」
「ここから、大学に通うにも大変だろう。ゲートを共有してあげよう」
 その瞬間、目が輝き、満面の笑みを浮かべる玲己。

 おれは、コンソールを操作して玲己と共有をする。
「よしこれで、ゲートが使えるはずだ」
「うーんと、うん。なんだか分かる」
 そう言ってにへにへしている玲己の前にどさっと、亜空間庫から納品用の部材を取り出すと、ずいっと玲己の方へ押し出す。
「行ってこい。納品だ」
 その瞬間、すべてを悟ったようだ。
 笑みが消え、目元に網点のスクリーントーンがかかる。
「えー」
「仕事だ、行ってこい。近場の工場じゃなくアメリカに行くか?」
 俺がそう言うと、少し悩んで敬礼をして来る。
「いえ、行ってきます」
 そういう奴は、まだパジャマだ。
「美月みたいにそのまま行くな。着替えてから行けよ」
「ほーい」
 そう言うと、物が消えた。

 よし、俺はそう言って、結晶を抱えると、大統領の執務室へと移動した。

〔まいど。神崎印の配達人です。印鑑をください〕
 そう言って、ゲートから出ると、なんだか不穏な雰囲気。

〔出直してきます〕
 そう言って、踵を返すが捕まった。
〔実に良い所へ来てくれた。実はサウジ近辺で砂漠に虫が湧いてね。それが、ちょくちょく人間を襲うんだが、今回王族が犠牲になってね。憤慨した王から依頼が来たのだが。あそこは日本とも仲がいいだろう。行って損はないと思うよ〕

〔例の協会からの依頼ですか?〕
〔まあ選定中ではあったが、候補の一つだ〕
〔虫ってどんな?〕
〔砂の中に居て、振動だろう感知して襲ってくる。全長は不明。見えている部分は直径5m~10m〕
〔ワームと言う感じですか?〕
〔たぶんそうだろう。サウジだけで良いから、よろしく頼むよ〕
〔そう言っても、陸続きなら他の奴がまた来るのでは?〕
〔その時は、その時だ〕

〔じゃあちょっと見て来ます〕
〔それならこれを〕
 そう言って、パスケースに入った身分証明とタグを渡して来た。
 うちの社員分だな。特権用タグか。

〔それと、単独ではあれだから、ジャレッド付いて行け〕
〔公式に、許可もなくですか?〕
〔今から電話をする〕
〔大丈夫ですか? きっとまだ夜中ですよ〕
〔さっき連絡が来たんだ、誰か居るだろう〕

 大統領が電話をすると、すぐつながった。
 王族が亡くなった為、砂漠へと特攻しようと準備をしているらしい。

〔神崎君。急いで行ってくれ〕

〔わかりました。じゃあ行きましょうか?〕
 そうして、大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギを連れてゲートをくぐった。
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