勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり

文字の大きさ
126 / 167
第4章 少しずつ変わって行く世界

第22話 家に来る娘は、普通じゃない

しおりを挟む
「ただいま」
 そう言って元気よく、壮二が帰って来た。

 ただし女の子を連れて。
「一司兄ちゃん。この子、鵜戸神音(うとかぐね)さんと言うんだけど、修行させてくれないかって言うんだけど、良い?」 

「修行?」
 そう言って俺が、怪訝そうな顔をすると、
「初めまして。私、鵜戸神音と申します。少林君に修学旅行先で助けてもらって、その時に少林君の気力に驚いてしまって。話を聞くと、モンスターを倒して力を付けたみたいなので、ぜひ私も修行させてください」
「壮二に助けてもらった?」

 そう聞かれた鵜戸さんは、にこやかに説明を始めた。
「……それで、ひとにらみで相手が腰を抜かしちゃって。それで普通じゃないと確信したんです」
「ほーう。壮二やるなあ。それで君は、壮二に惚れたと」
「はい」
 聞いた一司兄ちゃんも、俺も驚いた。
「ほんとに?」
 一司兄ちゃんが、念押しで聞くが。
「はい」
 そう毅然と答える、鵜戸さん。

「じゃあ良いか。しかし修行ねえ。お家は何屋さんなの?」
「神社で、父は宮司を務めています」
 その瞬間に、一司兄ちゃんの顔が曇る。

 スマホを取り出し何かを調べて、
「ここじゃないよな?」
 そう言って、鵜戸さんに地図を見せる。
「違います。此処の宮司さんも知合いですが、家はもっとまともです。もう少し山側に鵜戸神社と言うのがあるはずです。ここですね」
 そう言って、一司さんに画面を見せる。
「ならいいか。でも、宮崎県日南市に有名な鵜戸神宮があるけれど、かかわりがあるの?」
「いえ、ありません。苗字になっている鵜戸は洞穴みたいなとか窪んだみたいな意味があって、家は地獄につながる穴を封じていると聞いています。社の後ろに、一般の方は入れませんが穴があります」
「へーぇ。ダンジョンにはなっていないの?」
「大丈夫だと思います。昔、学者さんが調べに来て、このあたりが海だった時にできた海蝕洞窟だろうということです。深さは結構あるようですけれど」

 そう言った彼女の言葉に、何かを考えている一司兄ちゃん。
「そうなんだ。まあいいや。いつからにする?」
「いつでも。心は常に常在戦場(じょうざいせんじょう)が家の家訓ですから」
「そうか、ずいぶん物騒な家だな」
「お父さんは信じていませんけれど。穴から鬼が這い出して来ると、おじいちゃんは言っていました。それで、この家訓が決まったようです。そのおかげで、恒常的に力を出す。それが基本とされて、恥ずかしくて力が出せないなんて言う事がないようにと、子供の頃は裸で修業させられたんですよ」

 その言葉を聞いて思わず、壮二と顔を見合わせてしまった。
「それはまた、気合が入っているなあ」
「冬場の稽古で、組手から薙刀まで通して、その後木の間を躱しながら走って、あっその時はわらじを履いています。最後は滝行で終了。もう寒くて辛くて泣きながらやっていました」
「どこかの、武士か忍者かという感じだな」
「それでも、壮二君の気力にはかないません。ぜひお願いします」
「ああ分かった。向こう側に部屋も用意しよう」
「向こう側? 部屋?」
「家のダンジョンだ。秘密だよ」

 そう言って、壁に手をつき入口を登録モードにする。
「ここに手をついて」
「ここの壁ですか?」
「そう。うんできたな。じゃあ、部屋を作ろう。壮二の隣でいいな」
 そう言って、一司さんは壁に入っていった。
「魔法?」
「大丈夫。僕らも行こう」

 手を繋いで、中へと入って行った。
 中にはリビングがあって、犬と猫が居たけれど、ただならぬ気配を持っている。
 前を行く一司さんの後について行き、ドアが並んだ所へやって来た。
 奥側が壮二の部屋で手前に作ると間違えそうだから、さらに奥側に作ろう。
 そう言うと、一司さんが手をつくとドアの間隔が広がり、そこに新たな入口が、口を開ける。
「ドアは後でつける。中はどんな感じがいい?」
「どんな感じでもいいんですか?」
「いいよ」

「じゃあここにトレーニングルームと居間を兼用で、壁にボルダリング のホールドを付けるのでネジ径はM10のメスが欲しいです。こう、グルーっと一周」
 そう言って、壁から天井を通り反対の壁まで指をさす彼女。
「おおうっ。わかったM10ならピッチが1.5だよな。並目だよな」
「そうです。ここって、ほかの部屋に音が聞こえます?」
「閉空間だから聞こえないよ。ドアの所は選択できるけれど」
「ドアの所?」
「完全に閉じると、ノックの音が聞こえなくなるんだ」

「許可した人だけが、通れるようにできるんですよね」
「そうだな」
「じゃあ、完全でお願いします。これで木人も持ち込める」
 これは少し、脳筋なのか? 風呂は必要だな。

「じゃあこっちに、風呂場とトイレ。洗面所と洗濯機も設置しよう。向こう側にはベッドやら机、それに本立てを作って」
 できたと思ったら、さっそく本立てで懸垂しているよ。倒れることは無いから大丈夫だけれど。

 壮二に近づき、
「この子。見た目と違い、ちょっと変わった子だな」
 というと、
「ここまでとは、思わなかった」
 と肩を落としていた。

 その後、彼女と壮二を連れて、頼まれていた蜘蛛のダンジョンと蟻のダンジョンをいくつか潰して回った。ついでに管理クリスタルも持たせて、荷物を持ち込む為に亜空間収納を取らせた。まあ部屋も閉じたから、念話が必要だしな。

 ふらつく彼女を、家の神社までゲートで送っていく。
 俺が抱えている彼女を見て、作務衣を着て箒を持っていた爺さんの目が光る。
「そこのお方。その子はうちの孫娘だが、どうしてそんな状態に? なんぞ、よからぬ薬でも盛ったのか?」

「家族の方か。よかった。彼女に頼まれて、今日から修行を始めたんだが、レベル酔いでこんなになっちゃって。一晩寝れば元気になりますから」
「レベル酔い? やはり一服盛ったか。なら言葉は要らんな。言い訳無用。死ね」

 爺さんはそういうと、箒の柄が仕込みだったようだ。
 いきなり真剣を抜いて袈裟懸けに振り下ろしてきやがった。

 見た感じ、直刀の両刃。
 一応刃ではなく側面。
 刀身部分で打ち付けるつもりのようだが、当たると痛そうだ。

 左の小脇に、彼女を抱えているので、右手の手のひらを外側にして刀身に添えると放り投げるように体の外の方へと流す。
 すると爺さん、流された刀を、そのまま振り上げてきやがった。
 刃がついているから切れるというのに。
 
 かわすのもしゃくだな。

 もう一度、右手のこぶし。
 手の甲部分で強めに刀身を弾く。
 さすがに放しはしなかったが、体の正面が開く、突っ込もうとしたら、ちゃっかり膝が出て来てやがる。
 軽く折れない程度に、軸足の脹脛(ふくらはぎ)へとカーフキックを決める。

 それでも爺さん、歯を食いしばり刀を振ろうとしやがったから、刀を持っている左手を抑えるように、刀身の普通なら鍔が付くあたり、上身(かみ)と茎(なかご)の境目辺りを踏みつける。

 さすがに動けまい。
 だが、右手の一本貫手(いっぽんぬきて)で刀を踏んでいる俺の右足脹脛(ふくらはぎ)を穿ちに来た。
「はあっ?」
 その根性に驚いた俺は、やれやれと呆れながら、
「スタン」
 と雷魔法を爺さんに打ち込む。

「うぎゃ」
 と言って、動かなくなった。

 死んでないよな。
 彼女を、壮二に渡して、爺さんを抱える。
 刀を、箒に戻そうとしたが、刀身が歪んでいて途中までしか刺さらなかった。

 全部を抱えて、社務所へと向かう。
 また襲ってこないよな?



 その頃、ヨーロッパのある国。
〔ええい何とかしろ。アメリカの思い通りになるものか。我が国の防衛はわが国で何とかしろ〕
〔通常弾では効率が悪すぎます。アメリカの発表した、モンスター用スペシャル弾を購入してみてはどうでしょう?〕
〔あの弾一発で、3ユーロもするんだ。通常弾の3倍だぞ〕
〔しかし、このままでは、農産物もブドウも被害が大きすぎます。特にブドウはダメージを食らうと、数年は使い物にならなくなります〕
〔ううむ。背に腹は代えられん。依頼するか。うろついている野良さえいなくなれば何とかなるんだな?〕
〔はい〕
〔わかった。下がっていい〕
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

処理中です...