人類最強は農家だ。異世界へ行って嫁さんを見つけよう。

久遠 れんり

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第3章 アミサム王国 動乱

第106話 事実上の滅亡と魔王の願い

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 そんな会話をしていると、また集団から5人ほど。
 あわてて、駆け出してくる。
「魔王様。一人で行くなど、馬鹿ですか。あんたは」
 そう叫んでくるのは、当然宰相や4天王。

 だが途中で、歩みが遅くなる。

 魔族の中でも、選りすぐりの5人。
 当然相手の強さが分かる。

 のほほんと立っている集団。
 その中に化け物が幾人も居る。

 そして、魔王様が話をしている相手。
 あれは、人ではない。
 5人の目には、濃密な魔力のため。空間が歪んで見えていた。
 広大が力をおさえていても。魔力を理解する能力が人間と違う。
 魔族は、角で魔力を捉える事が出来る。

 おバカな魔王を追いかけてきたが、体が動かず。
 言葉も発することが出来ない。

 そんな、事をしているもっと後ろ。


 その頃。魔族軍後方。
「なんだ、そこの奴ら。どけ。進軍のじゃまだ」
 王の前で、手柄を立てるため。張り切っている貴族の子弟が叫ぶ。

 周りの人間は止めているが、気がついていない。
 そう。明らかに、前にいる大軍は人間ではない。
 恐怖の象徴。魔族の集団。

 アルテリウム王国の進軍は、完全に停止をする。

「貴様ら、聞いているのか?」
「やかましいぞ。何だ、おまえは?」
 そう言って、のっそりと出てきたのは、馬に乗っている貴族の子弟と目線がほとんど代わらない。

 いや。それはいい。
 その男の風貌は、鬼そのもの。額から立派な角が一本生えている。
 黒光りする、かぎ爪。筋骨隆々の体躯。
 その男が来たことで、子弟が乗った馬以外が皆。下がっていく。

「んんっ? なんだ、おまえは」
 多少。小さくなった声で、問いかける。
「魔王領。ケミ村から来た。タルヴォだ。おまえは誰だ?」
「魔王領? 魔族。まぞくう!! うひゃあ」
 そう叫び、逃げようとするが、馬は動かない。

 馬上で、バタバタしていると、馬が怒ったのか、後ろ足で立ち上がる。
 振り落とされ、 ヤルヴェラ家次男。ソレミロは、腰を抜かす。
 落ちたときに、右手をついたのか。右手が折れている。だが、本人は気がついていないようだ。ズリズリと、後ろ向けに這いずっていく。

 一方。王の馬車へ伝令が行く。
「王様。前方に、魔族の集団が居て、進軍できません」
「何っ。魔族?」
 あわてて、馬車の外へ出て、前方を見る。

 自軍の兵よりも、一回り大きな集団が、前方を埋め尽くしている。
「何で、こんなときに」
 馬車に戻り、考える。

 完全に予想外だが、魔族の後背を付いている状況。
 これは、好機ではないのか?
 いやいや待て、相手は魔族。
 こちらは、兵も少ない。
 前回の戦いでは、一瞬で数万の兵が死んだ。

「父上。これは好機。魔族といえど、こちらに背を向けております」
 おバカなアルヴが、愚策を進言する。

「いや、さすがにちょっと待て、魔族が何のために来ておるのかが問題だ」
「何を仰います」
 そう言うと、アルヴが馬車を飛び出る。そして、いきなり魔力を練り上げ。魔法を放とうとする。

 魔族は、その気配を感じ、素直に反撃。
 アルヴは、額を射貫かれる。

 練り上げた魔法は、すぐに霧散を始めるが、発射直前だったため。多少周辺を燃やしながら落下をする。

 そう。すぐ脇には、王の乗った馬車。
 それに加え。要職に就くような人間は、王の周りに固まっていた。

 普段なら、王都から出てくることはないが、今回の標的は、本来複数の人間。
 人数あわせに、皆を連れてきていた。

 そんな不幸の上に、不運が重なり。
 王子の放った。伝説の勇者が使った青い火球。伝承の強力な魔法。その一撃により、文字通りアルテリウム王国の中枢はその時。燃え尽きた。


 無論。広大達は、そんなことなど知らない。
 人なつっこい笑顔を浮かべて、魔王は話を切り出す。
「会えて良かった。ちょっと助けてほしくて。広大。友達としてお願い。今魔族は滅びようとしている」
 ちょっと真剣な顔になる。

「理由は?」
「魔力が欠乏をしている。世界全体がきっとそうなる。症状が出始めれば倦怠感や発熱、頭痛。そして、体中の臓器が腐り死んでしまう。これはこの世界に生きるものすべてだ。人だって例外じゃない」

 魔王は、似合わない真面目な顔をして、かなり必死になってくる。

「あー。あのなあ。今ここで、症状が出ているか?」
「えっ」
 そう言えばと、驚き。目をつむって周辺を探査する。
「魔力が濃い。まだ爆弾の影響があるのか?」
 そう言って、あわてて口を押さえる。

「爆弾の影響はもう薄れた。今濃度が上がってきているのは、再散布を始めたからだ。魔素というものは、古代の人類が開発をして振りまいた、ナノマシンというものだ。先日、遺跡を発見をして、再稼働させた」
「そうそうだ。50年ほど前に、前魔王が派遣した、調査隊を一緒に探して貰おうと。それも、頼みに来たのだが」

「調査隊の一員なら、そこに居るぞ。生まれはこっちらしいがな」
 そう言って、ぼーっと立っている、ダニエラを指さす。

「ダニエラ。魔王様だぞ」
 そう言うと、ダニエラの顔が引きつる。

「はっ初めまして。調査隊長オリヴェル・イーセキと共に、古代遺跡を調査していました。ダニエラでごじゃいましゅ」
「おっそうかそうか。さすがは広大。すでに把握をしているとは」
 広大は、言葉を続ける。
「今お試しで、散布マシンの小型のものを作っている。持って帰れば。施設再稼働までのつなぎになるだろう。元々は、日本へ適当に設置するつもりだったが、まあいい」
 そう聞いて、魔王が飛びついてきたので、掴んで横にうっちゃる。
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